映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「ドクター・ストレンジ」

2017年01月30日 | バトル映画

マーベル・シネマティック・ユニバースの第14作品目です。
この作品は現在のところ単体で、シリーズ1作目につき、
マーベル映画1本も見てないけど、どれか見てみたい…というかたは
今回おすすめです。これを逃すとまたしばらく続編が続きます。

・BBC「シャーロック」のベネディクト・カンバーバッチ主演
・魔法の表現がすごい
・戦闘のアイディアが個性的

以上3点がセールスポイントです。
天才外科医の主人公は富も名声も手に入れ、順風満帆の人生を送っていたが、
不注意から交通事故に遭い、両手を損傷してしまう。
数度の手術やリハビリの甲斐もなく回復の兆しの見えない事に絶望し、
主人公は噂を聞いたネパールの寺院に向かう。
そこで出会った1人の女性は、主人公に想像を絶する世界を見せる、というあらすじ。

冒頭のシーンが一番ガツンときました。
ビル群が、まるで草原のように、トランスミッションのように、
万華鏡のように、エッシャーの絵のように、そよいで折れて回転していくところ、
すごかった。映像に携わっているひとは「ヤラレター」って感じだったと思う。
スピードや滑らかさが、天地が入れ替わる系映像の現時点の最高傑作。
(3D鑑賞のかたが「映像酔いした」と仰っているのを何度か見掛けたので苦手な方はご注意)

予告映像
https://www.youtube.com/watch?v=PMl_7JDSNqY

内容ばれ

MCUは資金と擁しているスタッフが潤沢なため、
映画として大ハズレはないけど、逆にシリーズ最高傑作になるのもハードル高い。
この映画も、映像すごい、コメディうまい、ラブロマンスありと健闘していますが、
上位3作に入るにはちょっと足りない。
純アクションについては、組立のアイディア、カメラワーク、リズム、において
チームルッソによるCAWS、CACWを越えるのは難しい(たぶん他の全エンタメ映画でも)
ので、この映画ではアクションステージのアイディアに凝るという手法をとっていて、
それは大正解だったと思います。
まず天地が常に入れ替わるアクション(撮影が面倒くせぇな!これ!って思いました)、
つぎにアストラル体によるアクション(現実の干渉を若干受ける事でコメディ要素もありました)
最後は戻っていく時間の中でのアクションです。
破壊の中でのドンパチにはいい加減飽きていたので、
再生される街、死んだ人が生き返り、修復されていく壁、
それらをうまく格闘に織り込んであるのはすごいと思いました。映画はアイディアだなあ!と。
ラストバトルがドカバキではなく、ちょっとトンチ風味&根気勝負だったのもよかった。

キャラクターは、マントが最高にかわいかったです。
ストレンジの涙を拭いてあげたりとか!
今後は甲斐甲斐しくお茶を入れてあげたり、
音楽を掛けてあげたり、一緒にチェスをして鬼強かったり、
彼女に「寂しい」とか、なりすましメールを送ったりしてほしい。

残念だったのは、カエシリウスの掘り下げ。
拘束とか壁尻とか、マッツ・ミケルセンがお色気担当みたいじゃないですか!
1人の人間など宇宙の中では染みのようなものだという主張以外にも、
ストレンジと鏡合わせの存在で、一歩間違えれば彼もああなっていたみたいな描写は
もうちょっと欲しかった。彼が失った愛しいもののエピソードでもいい。あと数分。
元カノも、あまりにもいい人すぎてちょっと…。医師というより看護師みたいだったので、
あと数分医者らしいエピソードがあればよかった。
あと、アナザー・デメンションの光景は一体どうしたというくらいダサ…いやレトロだった。
回転する都市風景と同じスタジオ製作なのかあれ?

監督・脚本スコット・デリクソン 。
ホラー畑からアメコミ映画に抜擢された人はとりあえず全員応援する構えですが、
また気が向いたらホラー撮ってよね!って思ってます。

ストレンジの師匠エンシェント・ワンの配役については、
白人がキャスティングされたことで事前にちょっともめましたが、
原作通りのキャスティングをすると中国市場をまるごと捨てる事になるという説明があったりしました。
(むずかしいですね)
そしてティルダ・スウィントンの顔の造形には古代から生きているという圧倒的説得力があり
前腕の動きだけで「このひとは魔法が使える!」と観客を納得させる力がありました。
今作の中で一番すぐれた配役だと思います。

例のごとくオマケ映像が2回あります。


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「沈黙 -サイレンス-」

2017年01月24日 | 古典名作

遠藤周作原作の「沈黙」を
マーティン・スコセッシ監督が映画化。
ロドリゴ神父をアンドリュー・ガーフィールドが、
フェレイラ神父をリーアム・ニーソンが演じます。
キチジロー役は窪塚洋介。

2人の若い宣教師は、師であるフェレイラ神父が
日本で棄教したという話を聞き、真偽を確かめるため日本へ渡る。
途中、マカオで日本人のキリスト教徒キチジローを通訳として拾い、
寂れた村に密入国するが、そこは苛烈なキリスト教徒弾圧に晒されていた。
激しい尋問と拷問で命を落とす信徒達を見ているうちに、
ロドリゴ神父は、神の試練と沈黙に対して考えずにはいられなくなる。
そして彼はかつての師と再会し、対話する……というあらすじ。

やはり宗教関連のお客様がちらほらとお見えでした。
しかしこれ…同列に語っては罰当たりですが、
私は麻痺しているからいいとして、
苦手な人は拷問シーン、だめなんじゃなかろうか…。
簀巻きにして海にドボン、斬首に火あぶり逆さ吊り、
熱湯責め、磔溺死、色々あります。

ラストばれ
私は無神論者とまではいかないのですが、
キリスト教には、色々思うところがあって、
このお話に感銘を受けたりは出来ないのですけど、
まあ何にせよ主義の押し付け合いはよくない。

途中「キリスト教を伝える事で(日本人は)動物から人間になれる」
というセリフがあり、
ブッダは神でなくて人であるから宗教とは認められない、
というやりとりもありました。
「日本人は自然以外に神を見いだせない」
「この国は沼で、何も育たない」というセリフも。
これカップリングの左右をおすすめしたら、
なんか嫌がられて殴られたので相手の推しをdisったみたいな感じじゃないですか…。
そういうの本当によくない。いくら善意でも。もちろん暴力もよくないけど!
(卑近すぎる譬え)
伝来当初の日本のキリスト教の教義が、
オリジナルと比べるとかなり歪んでいるというのは同意です。
でも別に自然にしか神を見ないという事はない。

さすがに日本の時代劇映画レベルに言葉や服装、建造物は
きっちりしてました。時代考証までは分からないけれど。
キリシタンを弾圧する立場の役人たちが、ふと月を見上げて
きれいだと言ったり、
牢番たちが惨劇をよそに
お前って歳幾つよ?的な雑談をしているのはなんだかリアルでした。
アンドリュー・ガーフィールドさんは2代目のスパイダーマンですが、
繊細な、いい演技だった。

結局ロドリゴ神父は己の神と信仰を見出しますが、
なんだかふんわりした記憶ですが、原作はもっと静かな話だった気がする。
あと言語!小説は確かオール日本語だったと思いますが、
キリシタン村人の皆さん、私よりよっぽど英語上手い!!



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「ザ・コンサルタント」

2017年01月23日 | アクション映画

現在のバットマン役ベン・アフレック主演のダークヒーローもの。
生まれつきの障害で音や光に弱く、
行動パターンを乱されるとパニックを起こし、過集中気味だった主人公は
父親から己を律する技術と格闘技を叩きこまれて、
現在では会計事務所を営んでいた。しかしそれは表の顔で…という話。
普通のキメキメアクション爆発炎上ものかと思ったらそうではなく、
お話に「……?」という個性的な部分があり、そこがうまい具合に味になってます。
エキセントリック暗殺者ものというジャンルがそろそろ必要な気がしてきた。
「ジョン・ウィック」や「処刑人」がそうですね。「エージェント・ウルトラ」もそうかも。
邦画だと「脳男」。(感情のない少年が狂った祖父の英才教育で
殺人技術を仕込まれ、成人して悪を狩る話。割と近い)
彼等はみなハンデがあって、もしくは個性的すぎて
普通の人々のようには暮らしていけない。
でもそれでも、むしろそれこそが魅力的だというのが特徴です。

ラストばれ
この映画の「……?」は弟ですね。
私、最初は非実在弟なのかと思ってたんですよ。
でも実在した!というかお兄ちゃん大好き大好きだった!
あの美少年の謎めいた視線は愛情だったのか…。
弟の怒りのパンチのところ、結構まともに入っているのに
お兄ちゃんにまったく効いてなくて笑いました。
お兄ちゃんが躊躇いがちに来週会えるか?って聞いたところも
「これ何の映画だっけ…!?」ってなりました(笑)。
そしてラスボスが兄弟喧嘩をポカーンと見守っているのも面白かった。
逃げた方がいいよ、おじいちゃん!
(隠し資金を知られたくなくて殺し屋を雇って関係者を全員殺す、
マンションでも農場でもお構いなしに銃を撃つって本末転倒してる…)

男の血族の結びつきが骨子なので、
父アゲ母サゲがやや気になったり、
ヒロインの、いなくても大筋には全く影響ないっぷりはすごいんですが、
ラストで正体が明らかになるところは、
「あー!冒頭のシーンがここで!」ってなりました。
あそこで全体評価の2割くらいの数字が一気に加算された。

主人公周辺の設定が魅力的なので続編が見たくなります。


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