映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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「ボーはおそれている」

2024年02月18日 | 精神系
アリ・アスター監督。
精神に問題を抱える中年男ボーは、母親の誕生日に実家へ行こうとするが、
様々なトラブルが起こり出発の機会を逃してしまう。
そうこうするうちに、母親が急死したという連絡が入り、
ボーはパニックを起こす…というあらすじ。

まずこの映画のジャンルはホラーではない。
アリ・アスター監督の抱える問題と、人生の恐怖を3時間の映像にした作品です。
ストーリーらしきストーリーはない。

家族仲が良好で、精神に全く問題のない生活を送っている人が見たら
気持ち悪い汚物を顔にくっつけられたような気分がするでしょう。
おすすめしません。
この作品が猛烈に好きな方もいらっしゃるだろうけど。

嘔吐あり。

ラストまでばれ

天井に中年男!からの全裸脱出!撃つ気満々の警官!
そして割礼全裸殺人鬼!の流れはわりと面白かった。
このリズムで3時間だとしたらすごいやん…
と思ったがそんなことはなかった。

不条理な状況全て、ボーの認識能力のせいかと思わせ、
そこから実はすべて母のマネーパワー&従業員による仕込みか?
と引っ張り、最終的には審判?なに?よく分かりません。
監督曰く、「ユダヤ人にとってのロードオブザリングス」。
???????
序盤に、迷子になった息子を怒鳴っている女性が出たり
カメラの映像を早送りしたシーンに後半の映像があったり、
全体の筋としては審判なんだろうなとは思うんだけど。

柄の悪い友達が家に入ってきて母親の使用済みのぱんつの臭いを嗅いだり
そのまま盗んだりするのを黙認したってエピソード、
詳細すぎて、監督またはほかの誰かのリアルメモリーなのでは…。
弱い犬や猫って、他の動物がテリトリーに侵入してきて
自分のエサを食べられたりしてる時ああいう佇まいをしてるよね。

「ヘレディタリー」との共通点、
息子の母、その母の母、3代にわたる呪縛、そして屋根裏…。
なにがあったんだろうか。

森のパートで少し寝てしまった。
「オオカミの家」のアーティストによるものだそうで、
私と相性がよくないのかもしれない。

全体的にボーが「え…あの…ボクは…」ってモゴモゴ言ってるうちに
周りがどんどん話を進めてくれ、
セックスまで女が乗っかって
全自動でやってくれるコメディ仕様に少しイラっとしますが、
そこは終盤に、ちゃんと鬼詰めされるのでよし。

監督のことが少し心配になりました。
また他人に阿ったホラーも撮ってほしいです。



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「TAR ター」

2023年05月14日 | 精神系
女性指揮者リディア・ターはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者で、
その繊細な解釈は他を圧倒し、世間からも注目される芸術家だった。
しかし一方で彼女は若い女性音楽家に手を出し、
不要になれば切り捨てるというような非情な振る舞いをしており、
ある日それが明るみになるというあらすじ。破滅する天才系の話です。
珍しいのは主人公が女性で、同性愛者だというところ。

ケイト・ブランシェットの演技が凄くて、
感性の鋭さを示す神経質な仕草と、
美しい肉食獣のようなパワー、威厳を矛盾なく表現なさっていた。
指揮をするときの指先や表情は一見の価値ありと思いました。
(ファッションも素敵でした)
全体的には音の扱いが特に巧みだった。
遠く鈍く微かな音や、近く鋭く怖いような音や。

最初にスタッフロールがあります。
嘔吐があるのと、ほんの少しホラーっぽい表現があるので苦手な人ちゅうい。

ラストまでばれ

誰かモデルになった指揮者さんがいて、その自叙伝の映画化で
冒頭とか、流出したメッセージをそのまま使っているのかと思った。
(同性愛者の有名な女性指揮者さんはおられるようだけど)
セクハラパワハラで欧州を追われて東南アジアに逃れ、仕事をしているパート、
冗長に感じられたけど事実なら仕方ないと思ってたよ…。
マッサージに行ってげろ吐いているところとか、実家に一瞬帰るシーンとか、
あれ普通だったら編集で切るよな?
プロフィール詐称も原点回帰もほかの演出で代替え可能だし。
ラストのコンサート、あとで調べたらモンハンだと分かった。だから権利者が大阪!
みじめな場末の仕事なのか、新しい音楽への挑戦と描いてるのか判断しかねる。
(監督的に「都落ちです」とは口が裂けても言えないだろうから発言は真に受けない)

セクハラパワハラに関しては、ロシアのチェリストへのアプローチを見るに
ターは芸術家の美女を創作の刺激としたい漁色家という自認なのかも。
ただ不要になった人間への処遇が容赦ないので到底擁護できませんけど。
これターが男性だったら全世界で無数に起こっていることで
ありふれ過ぎていてここまでは劇的にはならなかった気がします。
(カラヤンも熱をあげている若い演奏家を抜擢し物議を醸した事件がある)
そして男性だったら権力者の友人が何人も出てきて鎮火にあたってくれそうなものだけど
転落があそこまで急激なのはターが女性だからという…?
映画から逸れますが、音楽、美術や学術、スポーツ、あらゆるジャンルで、
セクハラが不可能になるシステムを作るべき。
(ベルリンフィルにはコンプライアンス研修がない?いやあるよね絶対)

キャンセル・カルチャーについても書こうかと思ったけど長いのでやめます。
関係ないけど最近ピカソの絵画の価値が下落していて、
その理由は彼がセクシストである故ではと推測されている記事を見かけましたが
まあその現象が恒久的に続くかどうかは不明ながら、
倫理がダイレクトに金額を上下させるのは面白いなと思った。

不自然なヅラのマーク・ストロング氏が
ターアタックを受けて吹っ飛ぶシーンでキャッキャしてしまった…。



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「ジョーカー」

2019年10月07日 | 精神系

精神疾患を抱えて母と2人貧しく暮らすアーサー・フレックは、
ピエロに扮して日銭を稼ぎながらコメディアンを目指していた。
しかし国の福祉の予算縮小によりカウンセリングのサービスを受けられなくなり、
薬の入手もままならず、とうとう失業してしまったアーサーは追い詰められ…
というあらすじ。

見る人の年齢や経済状態や心身疾患の有無で感想の変わる映画。
アメリカでは(以前「ダークナイトライジング」プレミア上映会で
ジョーカーに感化された青年が銃を乱射した事件も踏まえて)
暴動を警戒して、劇場に警官が配備されたと聞きます。

作るなら今この時しかない、最高のタイミングの話だった。
貧富の差が拡大して、どこの社会も貧者を弱らせて殺して、
国の負担を減らそうとしているのではないかという厳しい状況で
強い共感を得られる映画だと思う。

「社会が差別に敏感になったいま、昔のようなコメディは作れない。
だからこの映画を撮った」というような意味の事を監督が述べて、
本国でちょっと燃えた。
(差別にうるさくなったからコメディが作れない!と解釈された)

おちばれ

私は、バットマンの、あの路地裏の出来事の意味合いを、
この映画が変えてしまったところに
おお!っと思いました。すべては主観なので、きっとどれも正しい。
今後もあの路地裏のシーンは撮られるでしょうけど
私はそれを見るたびにこの映画を思い出すでしょう。

同じ階の女性に関して、リプレイして説明したのは
とっても分かりやすくて、多くの人の理解を助けただろうけど、
解釈の幅を狭めてしまったようにも思う。
最初から最後まで全部でたらめ、
最初から最後まで全部本当、どちらのルートも残しておいてほしかった。

優しくしてくれたのはお前だけだ。だから殺さない、というのは
津山三十人殺しの犯人が実際に言った言葉を彷彿とさせたけど、
あれも幻覚だったら素敵だなと思って。

トッド・フィリップス監督の作品に「ハングオーバー!」シリーズがあります。
あれに出てくるアランは、発達障害、鬱病と診断されているが、
裕福な家に生まれ、気にかけてくれる肉親と、
どれだけ加害しても味方になってくれる仲間に恵まれた男性なので、
別アースの幸せなアーサー・フレックだと私は思う。
あとトッド・フィリップス監督のジョークセンスって差別というより
お下劣が8割なので、時流は関係ない気がする。
強いて言えば、お下劣ジョークは徐々に受けなくなってるかなー?くらいの。

殺したいと思った時に、簡単に殺せる道具が傍にあるっていうのが、
そもそも精神にすごい負担をかけるんじゃないかしらと思います。
吹き矢じゃだめかしらアメリカ(ゴッサム)市民?
そして、心身に特に問題なくても日本の普通の独身者は、
あんな広いお家で、あんな凝ったセンスの調度品に囲まれて
生活するのは難しいのでは?
アーサー以上のストレスを仕事で受けている人が多いのでは?
日本が銃社会じゃなかったお蔭で一部の人は命拾いしたなと思います。

あと「このどすこい人はアルフレッド…?ちがうわ弱いもん…」
って思ったら、エンドクレジットにアルフレッド・ペニーワースってあって
解釈違いでした(笑)。従軍経験のないアルフレッドなんだろうか。

余談ですが私と同じ疑問を持った人の無駄を省くために書いておくと
ジョーカーの昇り降りしていた階段は
映画「エクソシスト」に登場した階段、所謂Exorcist Stepsとは違うようです。
エクソシストが38.905601, -77.070191
ジョーカーが40.835996, -73.924215
まあエクソシストで神父は階段から落ちるけど、
結局は1も3も悪魔に打ち勝つ話だもんね。



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「アンダー・ザ・シルバーレイク」

2018年10月16日 | 精神系

「イット・フォローズ」の監督デヴィッド・ロバート・ミッチェルの
不条理サスペンス。
主演はアンドリュー・ガーフィールドさん。
あー、そうかー、ホラー監督になりたくないからそっちに行ったかー…
という若干のがっかり感。

ロサンゼルスのシルバーレイクでのし上がろうとしている主人公は、
職もなく、家賃も滞納し、生活に困窮している。
ある晩、近所に住む美女と知り合っていい雰囲気になったので
翌日も彼女を訪ねていくと、家は空き家になっており彼女は消えていた。
主人公は消えた美女を探して情報を収集する、というあらすじ。

陰謀論とロサンゼルス、セレブと美女、犬殺し、フクロウ、乳尻太もも。
他人の夢を強制的に見せられているような映画です。
その夢は性欲を持て余した20代男性の夢で、
話がちびっと進行しては、ふらふらと乳尻太ももに舞い戻るのを繰り返す。
お向かいの色っぽいお姉さんが乳を丸出しにして窓ふきをしていて、
チャイムを鳴らしてお宅訪問しただけでなぜかベッドインできるという
ハメンジャーズもびっくりの展開には笑ってしまった。
乳尻太ももを堪能するか、あるいはアンドリュー・ガーフィールドさんの
全裸や嘔吐や自慰シーンがあるので、ファンがそれらを鑑賞するにはいいと思う。
あるいは不条理系映画の好きな人むけ。

こういう悪夢とモチーフのネックレスになったような作品は
レフン監督やリンチ監督が競合相手になるので、
ちょっと分が悪いのではないか。

排便シーンおよび糞便がばっちり映ります。苦手なひと注意。

内容ばれ(貶)

色で読み解いている人もいらっしゃるし、
ハリウッドの不審死で読み解いている人もいらっしゃるようです。
(監督の第一作ともリンクしているようですが私は未見)
私は三と三角がやたら出てくるのが気になりました。
イエス(三位一体)、吸血鬼の花嫁の三人、
セレブの副葬品の美女も三人、ゼルダの伝説と言えばトライフォース、
ミュージシャンの大便も三角形(たぶん)、
シェルターの中にあったホルスの目のマークも三角。
(プロビデンスの目かもしれませんが、下に曲線が描いてあった気がするので)
でもこの手合いは考察すると、つけあがるから考察しない(←?)。
そういえばレフン監督の「ネオン・デーモン」にも謎の三角形出てきてたな。

ビジュアルに統一感がなかった。時々ものすごく雑な画があって目立った。
シェルターから出るあたりとか、セレブの庵訪問とか。
お墓で気絶するシーン、ヒッチコック(墓石!)風に撮りたかったんだろうか。
だとしたら上手くいってない。

なぜか死体がバーンと分かれて道の左右に吸い込まれるシーンは好きです。

私は謎解きも物語も好きだけど、
大物になりたいとか、異性にもてまくりたいとか、なぜ自分を認めないんだとか
そういう感情はほぼゼロに近いので、この映画は刺さらなかった。
せめて音楽に造詣が深かったら、もう少し楽しめたのかも。




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「ネオン・デーモン」

2017年03月13日 | 精神系

ニコラス・ウィンディング・レフン監督

田舎からロサンゼルスに出てきたモデル志願のジェシー。
生まれつきの美貌と細い肢体に恵まれた彼女は
すぐさまモデル事務所の社長や有名カメラマンの目に留まり、
順調にのし上がっていくが、
業界の熾烈な争いや嫉妬の渦に飲みこまれていく…というあらすじ。
同監督の「ドライヴ」をデビルマンとすると
「ネオン・デーモン」はデビルマンレディーです(アニメのほうね)。
デーモンだけに。(うまい事言った感)
きらきら光って、とても禍々しい世界。
宣伝では綺麗な写真が使われていますが、
イテテテっていう表現や、カニバ系気持ち悪いシーン、
特殊なエロシーンもありますので、人を選ぶ映画だと思います。

内容ばれ

事務所に所属した段階で社長に事情を話して
安モーテルから引越しをするべきだと思うんですがどうですかね。
まあピューマくんコンニチハとか、
近くの部屋の女の子が襲われてるとか、
あのモーテルで起こった事はメタファ~なんでしょうけど、
それにしてもキアヌはなんであんな役引き受けたのよ…。
ピューマでっかいですね。金属バットを持っていても勝てる気がしない。

でも頑張ってスクリーン鑑賞してよかったです。
神々のトライフォースシーンが長すぎて、
自宅モニタで見ていたら、確実にあそこで寝てたと思います。

妙に普段映画館で見かけないタイプの、男性客が多いなあ…
って思ってたんですが、内容見て納得しました。
昨今の洋画では珍しいくらい裸と特殊な性的シーンが多かった。
しかしあちこちで携帯の振動が鳴りまくり、
映画を見る時は…電源を切るか…無音マナーモードにしようね…
って思いました。
たぶん映画が趣味という訳ではないあのひとたちは
どこでそういう情報をキャッチするのだろう…。

パク・チャヌク監督にしろレフン監督にしろ、
暴力描写に定評のある監督たちの間で百合ブームが到来したのかな。


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