映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「マイケル・ムーアの世界征服のススメ」

2016年06月01日 | 考察映画

第二次大戦以降戦争に勝てなくなってしまったアメリカの陸海空軍のトップから、
アメリカを何とかしてほしいという依頼を受けた(この部分は捏造ジョーク)マイケル・ムーア監督が
世界の国々を回って、アメリカに役立つものを略奪しまくるという体裁のドキュメンタリー映画。

イタリアの労働時間、フランスの豊かな学校給食、世界一の学力を誇るフィンランドの教育、
スロベニアの学費無料の大学、ドイツの労働環境、ポルトガルの麻薬合法化、
ノルウェーの快適な刑務所、チュニジアの女性権利獲得の戦い、
アイスランドの完全男女平等、などコンセプトの割に結構真面目です。

イタリアには土日祝以外に通常8週間の有給休暇がつくらしく、
「アメリカには基本的に有給制度はないんだよ」って言われた時の
「何を言ってるのか理解できない」という感じのイタリア人の目が印象的でした。
あと、フランスの給食はコース仕立てになっていて、
日本のレストランだと2000円くらいかな?って感じの豪華な内容なんですが、
同じようにアメリカの給食の写真を見せられたフランスの子供たちが
「オエー!気持ち悪い!」って顔してたのも面白かった。

今回いつものあの痛烈な皮肉やジョークが少なくなって、
しかも作品全体的に対象を糾弾するものではなく、
希望のある内容だったので、
何か心境の変化がおありになったのか、
それとも世界全体的に色々やばいので、
逆に気持ちを上げるような作品を撮られたのか、
どうなんだろうって思いました。

内容ばれ

優れた点の挙がっている国々には深刻な問題もあると思うんですが、
まあとりあえずそのへんには触れられていません。
(あと優れた点として挙がっている、再犯率の少ないノルウェーの刑罰制度、
犯罪者は適切でない環境でそうなっただけで、正しく教育もしくは治療すれば
必ず正常な集団生活が営めるという性善説に基いたもので、
私はあまり賛同できない。私が被害者または被害者の親しい者なら
犯人に更生など望まないし劣悪な環境で暮らしてほしい。
それがダメでも、罪人の快適な生活のために税金を使わないでほしい)
(世界史上、単独犯最高殺人数の「ノルウェー連続テロ事件」の
被害者の父親のインタビューが映画内にあって「犯人のレベルまで下りて
復讐などしたくない」という回答が入っている。そのあたり周到だなと思う)

監督はベルリンの壁崩壊や、マンデラ大統領誕生などに影響を受けた世代で、
その経験を踏まえて「世界は変わる」と断言します。
なんとなくアメリカのバーカ!バ-カ!で終わると思っていたのでびっくりした(笑)



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「99分、世界美味めぐり」

2016年02月01日 | 考察映画

ミシュランの星付きレストランを食べ歩き、
SNSでレビューを書いて紹介するブロガーは
「フーディーズ」と呼ばれ注目を浴びている。
中でも人気の5人が登場し、
世界の有名店を訪れ、批評していくという内容。
日本のお店も登場します。
2014年スウェーデンのドキュメンタリー。

冒頭のシーンから
「嫌いなシャンパンの味だな。モエ・エ・シャンドンは嫌いなんだ」
という突然のdisから始まってふきました。
なぜこれを冒頭に持ってきたし!?
そのへんから推察されますが、
わりとエンタメをしようという意思は薄い感じ。
シェフと美食家さんの言い争いがだらだら続いて、
「これ、いつかこの美食家さんは料理人に殺されるんじゃ…」
って思った事もあった。
お料理は、おいしそうというより盛りつけが美しくて工芸品みたいでした。

内容ばれ

・三ツ星レストランは世界に100と少しらしいのですが、
 全制覇した人が1人しかいないのは意外だった。
 まあ旅費も合わせたら500万円くらい予算が必要だろうし
 選ばれしひとの趣味ですね。
・でも三ツ星のお店、日本に20数軒あるんですが、
 5分の1が日本にあることになってしまう。
・日本の事を美食家にとっての楽園、と
 随分持ち上げてくれてました。
 でもデパチカの物凄い値段の高級フルーツ、
 買って食べる普通のおうちって少ないのでは?
 1個2万のメロンとか、
 黒塗りの高級車に追突してしまったとか以外の用途を思いつかない。
・美食家のおじさん2人の個性が強烈。
 あとグルメだからって食べ方がエレガントかと言えばそうでもなかったぜ…。
 若手3人は、なんというか常識的。
 スーパーモデルのアイステさんは日本贔屓で好感度高い。
 香港の女の子は、実家住まいのOLさんで給与を美食につぎこんでいる。
 なんかオタクと似たライフスタイル。
・大腿骨の骨髄と脳と野菜を混ぜたサラダは、私にはちょっと無理…。
・世界で一番予約の取りにくいスペインの店エル・ブジは私でも名前を知ってた。
 いつの間にか閉店してた。そしてメニューを継承した店がオープンしてた。
 旅行してでも行く価値があるそうです。
・砂浜を模した粉末の上に、中身入りの避妊具を模した食べ物を載せている料理を
 大枚はたいて食べたい人が世界にたくさんいる事が驚きだ。
・三ツ星レストランに行った事がないので、紹介されていた日本の店には行ってみたい。
・味の形容、英語の使い方はおもしろかった。



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「ROOM237」

2014年02月18日 | 考察映画

スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督のホラー映画作品
「シャイニング」を基にした考察映画です。
タイトルは、映画の中で女の霊が出る部屋の番号なのですが、
原作では217号室なのです。
237号室に変更した理由として、
モデルになったホテルの部屋番号とかぶらないようにするため、
と監督は説明したようですが、実際のホテルに217号室はなかった……
というちょっとした謎があるようです。

何人かの人が出てきて自説を展開します。
様々な象徴を駆使してホロコーストを表現しているとか、
インディアン虐殺をほのめかしているとか、
迷宮のミノタウロスを意味しているとか、
いやいや家族と社会の暗喩だとか。
みなさんよく見てらっしゃる。背景に使われている商品のタグとか
部屋に張ってあるポスターとか、駐車場にある車の数とか。
ダニー少年が座っている時と立ち上がった時には
カーペットの模様が逆になっているとか、
足漕ぎバギーで走っている時に1階から2階へワープしてたとか、
何回も見ているのに全然気づかなかった。
オーバールックホテルの平面図とか、当然書かれているんですね。
どのジャンルでもオタクさまはいい仕事してらっしゃる……。

ただ、だいたいはこじつけというか、
中には頭は大丈夫なのかちょっと聞きたくなるようなひともいて、
(ミノタウロス推ししているひとが特にひどかった)
「シャイニング」のファン以外は見なくていいなこれ…とは思いました。

あの何かの数字と何かの数字を足すとどうのこうのとか、
そりゃあ2ケタ程度の数字だったら何かには当てはまるよって思うし、
このシーンの事務用キャビネットが男性器に見える!とか、
ちょっと可哀そうなものを見る目になってしまうし、
神話を意味しているとか聖書の何某とか、個人で楽しむのはいいと思うけど
この作品の高尚さを分からないなんてとか、映画は原作よりも視点の高度な作品とか
後者は実際言っていたのでカチーンときた。そういうのは違うと思いますプン!
原作は人間の強さや善意や愛情を描いたホラーで、父は悪意に打ち勝った。
映画は原作の善を一切排して映像美で押し切ったホラー、父は悪意に取り込まれた。
でもどっちも同じくらい名作。

しかしシャイニングの有名なシーンの幾つかを大画面で見られたのはよかった。
映画館で見たのは初めてです。テレビ画面で見るにはやっぱり勿体ない画でした。
他のキューブリック作品も何作か映りましたが、やっぱりキューブリック作品は綺麗ですね。
趣味のいいチョコレートのパッケージみたい。
あとお金と手間がかかっている。

冒頭の空撮からしてただなるぬ気合が感じられ
まるで這う蛇のようになめらかで不吉。
最近ありがちな「予算あるからとりあえず上から撮ったよ!」っていう空撮とは違って
空撮でなければならぬ!っていう空撮。
色も印象的です。エレベーターとトイレの赤、ゴールドルームの礼服の黒、
カーペットのオレンジ、もちろん雪の白。

「シャイニング」はヨセミテ公園にある高級ホテルで
ロケしたのだと私は思っていましたが、それは勘違いで、
実在のアワニーホテルを綿密に調査して、
ロンドンに巨大セットを建てたのですね。ひゃー。
あそこまで作ったのならホテルにして開業すればよかったのに。
潰してしまうなんてもったいない。
(外観はティンバーラインロッジだそうです)
実際のホテルと映画内のホテルを比較した面白い映像。

https://www.youtube.com/watch?v=OQ9ngMA6nCA

いつか行ってシャイニングごっこするのもいいかな、と思ったのですが
1部屋1泊6万円前後か…うむ…。

映画の客層が面白かった。
男女半々くらいで、みな会社員には見えない、
かといって父にも母にも見えない、どういう人か分からない外見だった。
(ハッ!ということは私も…?)


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