映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「エル ELLE」

2017年08月31日 | サスペンス映画

ゲーム会社を経営する女性主人公は、
屋外に出ていた猫を家に入れようとドアを開けた瞬間、
押し入ってきた覆面の男に白昼性的暴行を受ける。
犯人が逃走したあと、彼女は警察には知らせず
これまで通りの生活を続ける。
仕事で辣腕を振るう彼女を恨む人間が社内に幾人か存在し、
また別れた前夫、現在肉体関係のある既婚男性、等々
複雑な人間関係の中に疑わしい人物が複数いるのだった。というあらすじ。

私は、性暴力を受けたヒロインが衝撃的な復讐を遂げる!
というような紹介文を見て、
バーホーベン的血みどろリベンジを期待して映画館に行ったのですが、
それはどうやら見間違いだったようで、この映画は復讐ものではなかったです。
というか、無理矢理分類するとしたらサスペンスになるんでしょうけど、
この映画、どのジャンルでもない内容です。見終わってしばらく考えました。
フランス、ベルギー、ドイツ製作。舞台はフランス。監督はポール・バーホーベン。
原作小説はあるようですが、79歳でこれまでのスタイルとは違う、
ジャンルを越えるような映画を撮れるのはすごい事です。

強さというのは、他者を圧する強さと、自分が揺るがない強さの
2種類があると思のですが、この映画の主人公は後者で、圧倒的強者です。
主演はイザベル・ユペール。お姿も立ち居振る舞いも、ものすごくお美しいです。
見ていて楽しくなるとか愉快になるとかではないが、なんかすごい映画です。
でも人を選びます。

ラストばれ

最初は、出来事は全部彼女の目論見通りで、
母を殺し、父を自殺に追い込み、元夫を新しい彼女と別れさせ、
親友の夫を寝取ったと見せかけて実は目当ては親友で、それも手に入れ、
あの事件を利用してショックを受けた息子を取戻し自分の支配下に置いて、
欲しいものを全部取り戻したハッピーエンドなのだと思ったのですが、
どうやらそうではないようです。

あやういバランスで成り立っていて、
下手をすると自分をレイプした男を愛してしまう、
性欲旺盛な哀れな老女の話、
または過去の事件のせいで
心を失ったサイコパス女の話になってしまうところですが、
(そういう風に読み取ったひともいると思うけど)
けれど彼女は美しく、地位も財産も友人も、
人の羨むものは全て持っており、そして王者のように心が強い。
性暴力は彼女を傷つけたりはせず、
それは日常の雑音の延長で、彼女は楽しんでもいいし、相手を破壊してもいい。
すべては彼女が決める。という話なのだと思いました。

途中で麻痺してしまうくらいクズ満載で、
女社長の触手凌辱エロ動画をCGで作ってしまう部下、
性暴力を受けたばかりの主人公に「やろうよ!平気だよ!手だけでもいいよ!」
って迫ってくる愛人、近所の人を20人以上殺した父と
「どうして父さんに面会してあげないの!?」って叱る母、
定職に付けずどう見てもヤバイ女に骨抜きにされ、
生活費をタカってくる息子…と挙げるときりがないです。
親友の旦那を寝取ったり、近所の妻帯者を誘惑したりする主人公が、
かわいく思えるくらいです。
それにしても甘やかした風でもないのになぜあの息子はあんなアカン子に育ったのか。
まあ、母が理性の権化なので、好きな女の子が感情の権化になっちゃうのは分かるけど(笑)

どうでもいいけど相変わらず「ぴゅたーん(畜生)」だけは聞き取れる…。

予告(性暴力のシーンがあります)
https://www.youtube.com/watch?v=_hycHCHryVI&app=desktop



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「HiGH&LOW THE MOVIE2 END OF SKY」

2017年08月29日 | バトル映画

ドラマシリーズ1、2「HiGH&LOW THE MOVIE」
「HiGH&LOW THE RED RAIN」鑑賞済です(伝道師に見せてもらった)。

強大な力とカリスマ性を持った男が土地を支配し、その一帯を治める。
彼に対抗できるのは並外れた強さを持った2人の兄弟だけだった。
男は突然親友を失い、復讐を誓って何処とも知れず消え去り、
時を同じくして兄弟2人も姿を消す。
やがてその土地には5つの勢力が台頭し、それぞれを5人の姫的な存在の男達が治めた。
5人の姫的な男を慕う荒くれどもが集まり、
彼等は小規模な戦闘を繰り返しながら土地を守った。
という、ハイファンタジーの骨格をマガジン喧嘩漫画で肉付けしたような物語です。
舞台は現実とは少し違う感じの日本。テクノロジーの水準は現実に準ずるけど、
治安と福祉がものすごく悪い。
どのチームが好きとかでキャッキャできるので女性向け。
あとアクションの質と量は邦画ではトップクラスだと思う。
前回のあらすじはやってくれるけど、
「THE MOVIE」と「RED RAIN」は最低限見ておいた方がいいです。

ホワイトラスカルズの対抗勢力であるダウトの、
伝説の統率者蘭丸が刑期を終えて出所する。
彼は仲間を集め、ホワイトラスカルズ潰しに着手した。
一方、雨宮兄弟の入手したUSBメモリには
九龍グループを潰せる情報が入っており、それを公表するため
兄弟と琥珀、九十九が動き始める…というあらすじ。

内容ばれ

私は龍也さん←琥珀さん←九十九さんという報われない関係、
あとロッキーさん単体、あまりにも可哀想すぎる雨宮兄弟、
アクションとしてはルードボーイズが好きです(息継ぎなしで)。
今回は雨宮兄弟+琥珀さん+九十九さんという、
S.W.O.R.D.全勢力と均衡するような最強タッグと渡り合う
源治さんというキャラクターが出てくるのですが、
彼が強すぎてもはやホラーでした。
中の人の身体能力が優れているので動く動く。
2回格闘シーンがありましたが、どちらも緊張感ありました。

・ロッキーさんを鎖で繋いでる蘭丸さんが表紙の本が
 何冊か出る未来が見えました。
・LDHの財力をもってしても窪田正孝さんのスケジュールは何ともならんのか!
 という登場シーンの短さ!うん…引っ張りだこですもんね彼…分かる…
 けどせめて冒頭の円卓会議には居てほしかった。
 でも全員と予定合わせないといけないし撮影時間長引くから無理なんだよね…うん…。
・ルードボーイズに対する「貧乏人!」という煽りにふいた。
・案の定テッツを認識できなくなってしまった。
 ところで内政をおろそかにして他国の紛争に国力を割くのか?という山王の問題、
 結構シビアですね…。
・壊れたラジオのように龍也さんの話ばっかりする琥珀さん最高です。
・エンドロール前の衝撃の展開、というかこれはもはや3作目冒頭なのでは?
 あと雨宮次男酷い目に遭いすぎではないか問題?
 HiGH&LOW世界で一番ひどい目に遭ってるのでは?
 死なないとは思うけど身内を3回も殺されるのはやりすぎでは?
 3回くらい闇堕ちしてもいいのでは?



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「ワンダーウーマン」

2017年08月28日 | バトル映画

世界を救うために戦う女性が主人公のエンタテインメント映画です。
これが本当に数が少なくて、百本に1本レベルなので、
(最近ではゴーストバスターズやSWの新作やハンガーゲームがあります。ダイバージェントもかな)
女児ちゃんたちに見てほしいです。
女性が主人公の映画って多くは恋愛頑張る、病気と闘う、友情すてき、
家庭やお仕事がんばる、たまに事件と戦う、生き残るために戦う、
ごく稀に公共の利益のために頑張る、という感じで、
多数のために強大なパワーを使って何かと戦うという作品は滅多にありません。
そして女性監督。この手の派手なビッグバジェットムービーを
女性監督が単独で撮った作品はものすごく珍しいです。というか私は初めて見るかも。

DCエクステンデッド・ユニバースの4作目です。
4作の中では1番の出来だと思います。
マーベルで喩えるとソーとキャプテン・アメリカを足して割ったような感じのお話。

ゼウスによって作られた女戦士アマゾン族は、
不思議な力で守られた島で心身を鍛えながら暮らしていた。
王女ダイアナは母の反対を押し切って将軍に師事し、
誰よりも強い力を身に付ける。
ある日島に不時着したアメリカ軍所属のトレバーと出会い、
ドイツ軍がガス兵器を開発している事を知った彼女は、
正義を行うために島の外の世界へと飛び出していく…というあらすじ。

冒頭のアマゾン族の訓練風景、すごい格好いいです。
ファンタジー女戦士が剣でつつきあってるのではなく、
ガチで身体を鍛えている人が本気の戦闘民族を演じてます。
そしてドイツ軍と戦うダイアナ、めちゃくちゃスカっとする。
銃弾の雨を盾でしのぐ溜めのポーズからの突撃、
あの高揚するテーマ曲、女神のような美しさ。

そしてダイアナが並外れて強大だからといって、
男性は陰に守られてキャーキャー言ってるだけの添え物という、
男性客にとって面白くとも何ともない映画かといえばそうではないです。
この映画で一番優れている点は実はトレバー大佐の性格造形だと思います。
それとワンダーウーマンとのパワーバランス。
冒険物語の大半は男性主人公であるので、男性鑑賞者の多くは(一部の熟練者を除いて)
女性キャラクターに感情移入する必要も経験もありません。
ゆえに彼等が自己投影して満足できるような男性登場人物が必要になります。
監督か脚本の人はこれを熟知していて非常にうまくやった。
少年漫画青年漫画で女性戦士が主人公の場合、
多くはハンドラー、教官、指揮官、指導者、助言者などの男性が付きますが、
トレバー大佐の場合は助言者ですね。
これは演じているクリス・パインさんの雰囲気もあると思うのですが、
ダイアナを押さえつける言動はなく、彼女の話を聞き、
食い違う双方の事情を一生懸命すり合わせようとする。
客観的に物事を見るがピュアな面もある。紳士。もちろんイケメン。
ダイアナは生まれてから島を出た事がないので世間知らずで、
世界情勢もマナーも風習も分からないことだらけです。
男性から見ても女性から見ても満足できる難しいラインを、
綺麗にクリアしている感じ。
もちろん「逆」ベクデル・テストも通ります。

ラストばれ

アレスくんは、きょうだい全員ぶっ殺したわりには、
末の妹のダイアナちゃんにだけはなぜか執着していて、
仲間になる?なる?ならない?なろうよ?ってめっちゃ勧誘激しかった(笑)。
シューリス先生、長い指での念動力攻撃きれいでした。
でも、ちょっと、その兜は、ださい。最終戦はややもっさり気味だった。
というか公開前に映画サイトでデヴィッド・シューリス(アレス役)って紹介されてましたけど
それあかんやろ!!ねたばれやろ!!

アレスに操られ不和に囚われた人間たちを救ったアマゾン族が
その人間たちに奴隷として扱われ、
もう彼等の世界には関わらないっていう風になったのも分かるし、
それでも人間を救わなければ!アレスを倒さなければ!ってなる
ダイアナの気持ちも分かる、
あとアレスがいてもいなくても争いは起こるし、人間は善良な部分ばかりではない、
でもそれでも守りたいっていうトレバーくんの気持ちも分かる。
アイスクリームや雪や音楽や、心の傷や信頼を学んで、
ダイアナが女神として完成されていく映画でした。
「ジャスティス・リーグ」楽しみです。
(登場人物のなかにヒッポリタ女王の名前があるけど、あの島はできればそっとしておいてほしい!)

「町山智浩 映画『ワンダーウーマン』を語る」
ひたすら「へー!」「へー!」「へー!」と言うしかない紹介記事。
ネタバレはないですが、バイアスがかかるので
鑑賞後にご覧になった方がいいです。
http://miyearnzzlabo.com/archives/43736


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「ベイビー・ドライバー」

2017年08月24日 | 成長モノ

子供の頃の事故が原因で耳鳴りが消えないベイビーは
凄腕のドライバーで、現在はドクという元締めの指示で
犯罪者専門の逃がし屋をやっていた。
彼は常にお気に入りの音楽をかけ、耳鳴りを打ち消していた。
というあらすじ。

最初から最後までベイビーが音楽を聴いているのですが、
人物の動作や効果音が、主要な場面でずっと音楽のリズムに同期しています。
映画の予告編にはよくある手法ですが、2時間ずっと、というのは
ミュージカル映画を別にして私は初めて見ました。
(この映画はミュージカル映画ではありません)
どうして誰もやらないかというと、たぶん物凄く手間がかかるから。
そして音楽がきっかけで人と知り合い、音楽について犯罪者と会話し
耳の聞こえない養父が振動で音楽を楽しむのを見守り、
ベイビーの時間は音楽と共に進んでいきます。

「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」
「 ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! 」
のエドガー・ライト監督。
彼はずっとアホブロマンスとブラックジョークが持ち味で、
「大人になんかならないもーん!」って舌を出すような映画を撮ってきたのですが、
今回はアホブロマンスなし、悪趣味なジョーク控えめで、
映画通が唸るような繊細な作品を仕上げました。
そんな引出しが!と、びっくりしたのと同時に少しだけ寂しい。

ラストばれ

でもベイビーが自分への称賛の声をサンプリングした曲をみんなで聞くシーンは、
この映画最大の笑いどころだと思うんだけど、
ものすごい溜めが長くてどきどきした。ダーリンが笑ってくれてよかった。
(観客は誰も笑ってなかったけど……)
バディとダーリン、色々あってたくさん殺したんだろうけど素敵なカップルですね。

展開の歪みは全部ドクが背負ってくれた。
何をどうしたかったんだあのひと。どうしてバッツを殺っておかなかったんだ。
ベイビーの初デートをストーキングしていたのは、ちょっと気持ち悪いです。
でも妙に嫌いになれない変な人。

ラスト、ベイビーが手を血で汚して女を置いて消え去るラストにした方が
純度が上がって、これまでとは違うコアなファンがいっぱい付いちゃったと思うんですが、
でもあそこまできちんと描いて、なおかつ幻覚オチも匂わせないところが監督っぽいな、
健全で好きだな、と思いました。

車と音楽に詳しいともっと楽しめる映画だと思います。
アクセルターンを決めて側面後部で撥ね飛ばすの、
なんか近年のカーアクションの流行りだな。


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「バイバイマン」

2017年08月15日 | ホラー映画

ステイシー・タイトル監督
1969年、ある記者が突如精神に変調をきたし、
近所の住人を射殺して回るという事件が発生した。
記者は犯行の最中、全被害者に対して「あの名前を誰かに喋ったか」と尋ねていた。
それから50年近くが過ぎ、その家に3人の学生が引っ越してくる。
新生活を意気揚々とスタートした彼らだが、やがて屋敷で不可解な出来事が起こり始め、
学生の1人エリオットは、ナイトテーブルの引き出しの中に
「口にするな、考えるな」という異様な落書きと共に、「バイバイマン」の名を見つける。
というあらすじ。

名前を知ってしまうと周囲にバイバイマンが現れ、
幻覚を見てしまい周囲への怒りにかられ、
やがて親しいひとの殺害に至ってしまうという、
リングとシャイニングを足して薄めたようなホラーです。
口伝えでも名前を聞いてしまうとアウトなため、拡散が早い。

猟犬、コイン、地下鉄、と意味深な映像が流れますが、
バイバイマンがどういった経緯で発生した呪いなのかは明らかにならないまま終わります。
短いながら佳作のホラー。

エリオットの人間関係が良くて、
幼馴染の親友とか、早くに両親を亡くしたために親代わりになってくれた兄とその娘とか、
メインでは扱われないけども、なんとなく年月の積み重ねが感じられた。

ラストばれ

命懸けで秘密を守ろうとしているのに、
ナイトテーブルの扱いはあまりにも杜撰で、
「燃やせよ!!!!!」って思いました。
姪っ子ちゃんが見なくて良かった。
「パパは私がピカーっと光るとでも思うの?」
っておしゃまな突っ込みに、へへへそうだよねえって思いました。
女性刑事さんは、もうあれは自業自得だ。
せっかくエリオットが情報を止めてくれたのに。



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