映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
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「ロケットマン」

2019年08月26日 | ミュージカル映画

類まれな音楽の才能を持って生まれたが、
両親からの愛情は得られなかった英国の少年が、
やがて一生のパートナーとなる作詞家と出会い、
世の耳目を集め一気にスーパースターとなり、
自らのセクシャリティに気付き、
やがてプレッシャーと疲労から薬と酒とあらゆる依存症に陥り、
危ういところまで転落するが、自己と向き合い、立ち直っていく、
エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル。

監督は、「ボヘミアン・ラプソディ」を
シンガー監督からバトンタッチして仕上げたデクスター・フレッチャー。
このかたマシュー・ヴォーン映画の常連役者さんで、
なおかつ「イーグル・ジャンプ」で
監督として今回の主演タロン・エジャトンと仕事してらっしゃる。

「ボヘミアン・ラプソディ」と比較されることが多いですが、
こちらのほうがミュージカル要素が強い。
あと、舞台に立つのも曲を作るのも、
彼は1人でグループではないので、
つらいシーンはこちらのほうがきつい。
こちらの映画のほうが心の問題の扱いが大きい。

歌も担当するタロン・エジャトンが、はちゃめちゃに上手い。
「Sing」ですでに披露済みだけど、高音もスローな曲も
本職のような安定した歌声だった。

あとものすごく美しくて悪い魔性のゲイが出てくるので
そういうの好きな方におすすめ。枕で世界を操る男。

ラストばれ

本当の愛と出会えてエルトンは幸せになりました!
というところにフォーカスしなかったのが、結末の肝だと思う。
ありのままの自分に、完璧な愛情を与えてほしい、
愛してほしい、愛してほしい、愛してほしい、という
与える発想のまったくない飢餓状態の人がいたとして、
その人物をエルトンは、愛せたかと言うと答えはNOだろうし、
大抵の人間はそうだろう。
まずは自分を愛して抱きしめるところがスタートラインで、
他人を愛して、愛される関係になるのは次の段階なのだ。

ジェイミー・ベル演じるバーニー・トーピンがとても良かった。
出会って意気投合して、喋って喋って喋り倒して、
2人の背景の空の色で時間がものすごく経過しているのが分かって、
「オフ会で魂の双子に会ったオタクやん…」と思いました。
2人の共作が魔法のように完成していく様子は、
ボヘミアン・ラプソディ作曲のくだりや
「ジャージー・ボーイズ」の作曲のくだりを思い出した。
そして完全な愛情を求めるエルトンに対して
あくまで自立した大人同士の友情を要求した
バーニーはとても強かった。

タロンさんは全シーン丁寧に演じてらっしゃったけど
ゲソゲソのボコボコになった表情から、
薬をキメてニカッって笑うところがやばかったです。
そういえば本人に寄せるためか前歯がスキッ歯になってたけど、
あれは歯の表面に何か貼ってあったのだろうか。

ジョン・リードは、ヴィランのような描きかたですが
まあたぶん彼視点にすると違った事実も出てくるのでしょう。
彼はエルトンと破局したあと、ビジネスは続けながら
クイーンのフレディとよろしくやって、上手くいくかに見えたけど、
魔性のゲイその2に蹴落とされるという末路が待っています。
この映画のマッデンさん演じるジョン・リードと、
「ボヘミアン・ラプソディ」に登場するジョン・リード、
それとご本人様の写真を見比べると面白いです。

ただちょっと他の人への丁寧な描写に比べて
奥さんへの扱いがあまりに雑で、
彼女だけ3分間クッキングだったのは気になった。
セラピーシーンにも出てこなかったし。
ほかにも省略されている人物がいるのだし、
彼女も省略してよかったのでは…。

「キングスマン2 ゴールデン・サークル」で
今回の主演タロン・エジャトンとエルトン・ジョンが共演してらっしゃるので、
興味のある未見の人は見てみるといいでしょう。


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「イソップの思うツボ」

2019年08月18日 | サスペンス映画

「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督と、中泉裕矢監督、浅沼直也監督、
3人で撮られたサスペンス。

内気な女子大生の美羽は、タレント一家の娘を筆頭とする
派手なクラスメイト達に馴染めず、1人ぼっちで学生生活を送っていた。
ある日受講しているクラスの教授の臨時代理に、若い青年が着任し、
タレントの娘は早くもアタックを開始するが…という話。

一応、見ているうちに次々と話が覆っていく形式は踏襲されているが、
今回はかなり早い段階でオチが分かってしまうし、
ちょっとフィクションっぽいふわっとした設定もあり、
そしてあまりハッピーな話ではないのでカタルシスは少なめ。
「カメラを止めるな!」レベルの面白さを求めていくと
ちょっと肩透かしをくらうかもです。

義理とか人情とか色々なご事情はおありでしょうが
元からユニットではない複数の監督が
オムニバス以外で合作するとあまり良い結果を生まないような気はします。
10月封切りの上田監督単独作品「スペシャルアクターズ」、期待してます。

ラストばれ

妻を殺した初老の妻子持ちに、更に娘まで差し出して
おもちゃにさせる復讐方法を選択する父親って何割いるだろう…。
そのへん現実的じゃないなあって…いや、あの変なお金持ちモブもだけど。
しかもそこまでしても修復の兆しがすぐに見えているし、死人が出てるし。
あのあとどうなるんだろう…。
それくらいなら娘と母のリベンジポルノ(言葉通りの)をネットにばらまいて、
あとで理由を告げたほうが、破壊力大きくかつ労力少なくはないだろうか。

復讐代行の娘さん、目線の強い印象的な女優さんでしたが
紅甘さんというお名前、読めぬ!と思ってしらべたら
「ぐあま」さんで、3番目に産まれた事からガンマが由来なのだそう。
というか内田春菊さんの娘さんだ!?





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「ライオン・キング」

2019年08月14日 | アニメ映画

25年前のアニメをフルCGリメイク。
ディズニーは、しばらく冒険(新作)はやめて、
過去の遺産で小休止なのかな。
動物たちはおおむね本物っぽく、完全に実写を見ている感じ。
リアルで凄いというのもあり、コミカルな表情や動きがなく少々寂しくもある。
ライオンの顔って基本スン…ってしてるからなあ。
特に皮膚病のネコみたいになったスカー…。

今回は細かいキャラクター補完以外大筋に変更はなく、
台詞もわりとオリジナル版に忠実です。
冒頭のサークル・オブ・ライフ、オリジナル版は
動物が生きても死んでも何も変わりないという断固とした強さがありましたが、
リメイク版はなんかピンチには助けてくれそうな優しい感じでした。
私はオリジナル版が好きかな?
しかし久しぶりに見ると「ライオン・キング」は矢張り
しみじみ名曲揃いだなあと思いました。

すごくいいなと思ったのが、セス・ローゲンのプンバァ!
キャスティングした人が神だと思うんですが、
そういえば彼、人間の姿が既にプンバァっぽいわ!

内容ばれ

ティモンが「Be Our Guest」を歌い始める新演出、笑い声があがってましたが
ちゃんとエンドロールの使用楽曲の中に「Be Our Guest」ありました(笑)。
「Be Our…」しか歌ってないのに!!

あとザズーの英語、イギリス英語…?って思ったら
声が英国のかたでした。
サイチョウってアフリカにいない鳥なので、そのへんを表現してるのかな…?

大人になって見てみると、
お話の趣旨としては、過去と伝統、血筋と責任からは逃れられない、
使命を放棄して気楽に生きる人生は間違っているという流れなんですが、
ティモンとプンバァに過去に背を向けろ!って教わらなかったら
シンバは成体になれなかったと思うので、あの世界も、
あれはあれで正しいなと考えたりしました。
(予告で使われてた「ライオンは寝ている」、とても好きです)

虫が苦手な人はやめたほうがいいです。



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「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」

2019年08月08日 | アニメ映画

監督 山崎貴・八木竜一・花房真
脚本 山崎貴

「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」を3DCGアニメ化した作品。
賛否両論というか、今のところ酷評しか目にしていませんが、
しかしまあ実写デビルマンと並ぶとか、そこまでではない。
(まだ実写進撃のほうが肉薄している)
思うにデビルマンが撮影された時代とは予算への意識が違うので、
ああいう札束をドブに流すような失敗作は
今後そうそう撮られることはないのじゃないかと思います。

・ドラクエ5はSFC版をクリアしてます。
・実写デビルマンは劇場で観ました。

ゲームのエピソードを半分近く切って、
嫁選びをメインに据えています。ビアンカもフローラもとても可愛く、
特にフローラに足されたオリジナルエピソードは、
ビアンカ派も、きゅんとすること間違いなしです(ビアンカ派)。
ラストに大きなオリジナル要素があって、そこが主に叩かれている理由ですが、
うーん、確かにドラクエは超王道ファンタジーシリーズで
お話は毎回必ず予想の範疇に収まるので、
そのまま映画化しても本当に普通の鉄板ファンタジー映画で終わっただろうから、
炎上商法的にああいうラストにして、本来の客層+野次馬で
興行成績を上げるのはありかなと思いました。
ただああいう外連味のあるラストは、どちらかというとFFのほうがしっくりきたでしょうね。

オチを書きます

つまりメタおちな訳ですけど。
リメイクされたDQ5をプレイしている青年がいて、
ラスボスを倒そうとした時に
ドラクエのようなオタクカルチャーが嫌いなプログラマーが組んだウィルスが出てきて
ゲーム世界はただのプログラムだと嘲笑し破壊しようとするが、
この世界は嘘っぱちじゃない!みたいなゲームを愛する心が云々。

この監督は色々な作品から小技を拾ってきて
適当に組み合わせて、多くの人が泣ける作品を仕上げるのがお上手ですが
技に体重が乗ってないので軽い気がします。
でも適度に軽いものを好む人も多いですもんね。

あと近未来の、全感覚再現型筐体によるリメイクっぽいですが、
女性、女児プレイヤーのことがまったく考慮されてないリメイクなので
どこの国か知らないけどジェンダーギャップ指数の低い国なんだろうなあ…!
と思いました。たぶん世界でもビリあたりをフラフラしてる国ですね。
(元のシリーズがそもそも父権制血統主義大肯定なとこありますが、
双子の妹を完全抹消したのは唖然とした)

ゲマのデザインと吉田鋼太郎さんの演技は大変良かった。
山寺さんも相変わらず上手い。
それから音楽には大満足しました。

余談ですがDQ5をノベライズされた久美沙織さんが、
小説版の主人公の名前を無断使用、および無断改変された事に対して
製作委員会を提訴されました。



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「ワイルド・スピード スーパーコンボ」

2019年08月05日 | アクション映画

ワイルド・スピードシリーズのスピンオフ。
監督は「アトミック・ブロンド」のデヴィッド・リーチ。
登場人物が少ないだけあって、お話はシリーズで一番整っているかも。
過去作を見てなくても全然問題ないので、
今さら8本履修とか無理…という人は、今回お試しのチャンス。

愛娘と暮らす元DSS特別捜査官ドウェイン・ジョンソンと、
元MI6のジェイソン・ステイサムが、
殺人ウィルスを奪って逃げたMI6の女性を保護するために
嫌々ながら協力し、共通の敵と戦うというあらすじ。
2人は本編主人公と、対立したり共闘したり、
曖昧な立ち位置のキャラクター。
今回は、ずーっと口喧嘩しているので、
そういうのお好きな人におすすめです。
あと敵の改造人間がかわいそうな子なので、不憫萌えの人にも。

アクションはキャラクター性があって時々コミカルで、
スピーディーかつ見易かった。あと少しカメラを引いてくれたらもっとよかった。

内容ばれ

今回の敵は科学の力で世界をより良い方向に導く
「エティオン」という組織で(家電屋さんと紛らわしい)、
むかしステイサムに射殺された設定のイドリス・エルバが全身改造されて復活し、
2人の前に立ちはだかるのですが、
かつて自分の頭にめり込んだ弾丸を今も持っていて時々眺めているし、
ハチャメチャにステイサムに執着しているし、
怪我をするたびにえっちな修理をされて悲鳴をあげているし、
人気のでそうな人だなあと思いました。
あ、あれだ。MCUのウィンター・ソルジャーを思い出します。

このシリーズは価値観がヤンチャ寄りなので、
車!女!そして家族!みたいなノリは今回も変わらず。
お客さんの中の、ネックレスした男性客の割合が格段に高いです。

サモアのお母さんも草履で悪い息子をしばき回すんですね。
メキシコ、サモア、そして大阪。共通点は何だろう。

ライアン・レイノルズのカメオ出演、
カメオと言うにはバッチリ出すぎている気がする(笑)。

人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のねたばれがあったらしくて、
視聴途中の人達は阿鼻叫喚だったそうですが、
私は見ていないので、何の事だかさっぱり分かりませんでした。
エンドロール中に幾つかおまけ映像があります。
なんか今回のウィルス、落語に出てくる蛇含草みたいだな…と思った。



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