映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「ダークナイト ライジング」

2012年07月29日 | アクション映画

ノーラン監督のバットマンシリーズ完結作品です。
自滅と幸福の間をあやういバランスでよろよろと歩いていた彼。
崇高な精神を持つ、現代に蘇った騎士。
そのありえないくらいの自己犠牲は、人生をかけたSMプレイに見えたほどです。

でも彼は体ではないどこかを病んでいて、常に蝕まれていた。
飢えを満たすため、正義に中毒していた。
ノーランとベールの作り上げたブルース・ウェインは彼らだけのもので、
他の誰にも動かせないキャラクターだと思います。
何年か後に他の監督によってリブートシリーズがスタートするでしょうけれど
本当に気の毒です。
この3作を越える話も登場人物も、ちょっと想像が出来ない。


ネットでねたばれを目にする前に、早いところ見ておいた方がいいです。

内容ばれー

・ノーランの映画は予告で「こんなすごい所見せちゃっていいの!?」って思っても
 本編で必ず「うわー!あんなの全然大したことなかったー!」って思わせてくれるので好きです。
・ノーランの作品は7割の人を「ちょっとむずかしいけど派手で面白いねー」と楽しませつつ、
 残りの2割の人をも振りかえらせる歪んだ要素、職人芸を入れてくるのが
 王者の中の王者たる匠の技だと思う。
 (多くの人が楽しむものは何であれ受け付けない1割の人はさすがに無理だけど)
・あんなに色んな人に「死にたいんだろ?」的なことを言われるヒーロー、
 ほかにおるだろうか。
・最初のシーンで赤川次郎先生の某トリックを懐かしく思い出したのはたぶん世界で私だけ。
・トンネルでのバットマン復活のシーン、燃えたわー!
 アメリカのひとは本国で我慢できずウェーブしたに違いない。
・警官に撃たれたバットマンが、咎めるような眼でじっと相手を見つめて
 警官があやまるところ、さすがおぼっちゃまって感じでした。ジェントリィ!
・なんで最近の映画は相思相愛の男2人が泣きながら別れるシーンが多いんだろう。
 とりあえずアルフレッドを泣かした罪でおまえんちの電気を止めてやる!
・deshay deshay! basara basara!(でしでし!ばさらばさら!)って
 「rise」または「he rises」っていう意味なんですね。
 「登る」もしくは「飛び立つ」。考えると泣ける…。
・シリーズ通して女運は最悪だったけど、男には総モテだったな…
 ある意味ウハウハの人生とも言える…。
 紳士方はみなさん素敵で、っどなたか一人とか到底選べませんが
 ゲイリーは小さくて「あー、弾は当たらなそうだよねー」って思いました。
 爆弾と一緒に詰まってる姿は緩衝材みたいでした。
 (裏切りのサーカスの)スマイリーと同じ人には全然見えませんでしたが
 激昂すると、「アズカバンで苦労した!」って叫んでたシリウスの演技が連想されました。
 一瞬だけ出てきた方はマジ格好よくて、マジ格好よくて(2回)
 なんて贅沢なキャスティングだろうと思いました。格好良すぎて拝んだ。
・ただ、「持たざる者が、踏みつけてきた者を排除する」という暴動は
 日本でも、或いは世界規模で起こる可能性はまったくゼロではないと思って
 どきどきしたのに、途中で遺志を継ぐ話にすり替わってしまったのがちょっと残念だった。
 (子子孫孫まで大貧民役をさせられるトランプゲームなど面白い訳がない。
 プレイヤーを全員殴ってトランプを終了したくなる気持ちは分かる)
・作中に出てきた「核融合炉」は
 ウランやプルトニウムを使う「核分裂炉」に対して
 水素やヘリウムを利用するため放射能はほとんど出ず(完全に出ない訳ではなさそう)
 放射性廃棄物もあまり出ないらしい(完全に以下略)。
 現実に各国協力のもとフランスに実験炉の建設が計画されていて
 日本もいっちょ噛みしてるらしい。
 現実すげえ!私の知らないところで理系の人はどんどんSFな事を!
 ただべらぼうに金がかかるらしいので、ゆっくり進めるっぽい。
 そりゃウェイン産業がちょっぴり傾くくらいだもんね……。
 詳しくはwikipediaのページで!
 暴走を引き起こさない代わりに、エネルギーを得るのが難しいテクノロジーみたいだから
 どっちかというと簡単に中性子爆弾化できたのがファンタジーのようですね。
・ブルースに近寄って熱烈なキスをしたキャットウーマンの次に
 順番待ちのゴードンが近寄ってきたので彼もキスするかと思いました。
 というかあの瞬間まで正体を知らなかった彼にむしろ噴く。
 高橋留美子先生のラブコメ漫画のヒロインか!?
・作中でのドンデン返しは2つ…3つ?あ、4つ?ありましたが、
 3つは分かったし、ラストがどんな場面になるかも途中で分かりましたが、
 最後のドンデンについては本当にびっくりしたし、やられたー!って思いました。
 伏線も幾つかあったんだよな…なんでこのやりとり
 2回も繰り返すんだろって思ったりとかしたよー!

細かいネタが色々繋がっているので、前2作は予習必須。


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「メリダとおそろしの森」

2012年07月27日 | アニメ映画

よりにもよって同じ時期にぶつけてこなくても、の母子もの。
どうしても「おおかみこども」と比べてしまいますが
すみません、私はメリダの方が好きです。非国民でごめんなさい。
演出は「おおかみこども」の方が優れてますでもしかし。
両方見比べて「あー分かるー」って言ってほしい(笑)

ピクサー初の女性主人公映画です。
(そして初の女性監督作品になる予定でしたが途中で降板、解雇された模様)
母と娘の冒険ものって結構珍しくないでしょうか。
(生き別れになったのを探して、とか
売られて、とか流され系の受難の物語ではなく闘う系の)
母娘で映画館に行って、
お母さんは王妃に感情移入して、娘ちゃんはメリダに感情移入して、
両方すっきりニコニコして帰れる映画です。

興行的にちょっと苦戦しているようですが、がんばってほしい。
風呂敷はそんなに広くないですが、それは上映時間が100分未満なので仕方のないところ。
あと男性が感情移入して気分が良くなるヒーロータイプが不在なので、
それが「つまらない」という評価につながっているのではないかと。
というかこれまでの冒険映画は
強くてたくましいヒーローが世界の命運を決する方に偏り過ぎたので
女児や主婦や老人や玩具が、
ご近所で冒険を繰り広げる作品を、これからもどんどん増やしてほしい。
方向は間違ってない。

おはなし
王女メリダは、父王と母王妃から縁談を押しつけられ、
城を飛びだして行った森の中で魔女に会い、
独善的な母を変えてほしいと頼むのだった。

みどころ
10世紀頃のスコットランドが舞台らしいです。
(バイキングが攻めてきたりローマ軍が攻めてきたりという会話があった)
(ノーパンキルトの男性もいる)
音楽がケルト風で、好きな人にはたまらない風味。
あとメリダの髪が世界最高峰にフワフワしている。
たしかラプンツェル母の頭もフワフワだったけど、あれの3倍くらいフワフワ。
CGは髪や水を描くのは苦手って言われてた時代がうそのようです。

内容ばれ

王妃様が完璧超人で、美しく賢く亭主をうまく操作して、でも愛されていて
誰からも一目おかれ、上品で機転がきいて、優しく子供思い。
そんな母は存在だけでメリダを威圧するのですが、
でもきちんと欠点も描かれます。
一見ダメ父に見える王がその欠点を補っている事も分かります。
そして森に行ってからのお母さんは全然何の役にも立たず
面白いことばかりします。
でも、その挙動がいちいち可愛くて萌えます。

こちらの映画も我が子のために身を呈する母親の愛情は描かれるのですが
「熊と素手で殴り合う」とかダイナミックなものなので、
息苦しさを感じないで済むのはよいです。

相手を説得して考えを変えさせることしか頭になかった2人が徐々に変わっていく、
テーマも分かりやすかった。

伝説の王国を滅ぼした原因はあの魔女だけども、
別に悪い存在ではなく、
むしろアフターケアもかなりきちんとしていると思う。企業として。
結局のところ悪役がいなかったのはいいですね。
メリダも一応4人きょうだいな訳ですが、
伝説の王国のような悲劇は起こらなさそう。
というかあの3人の弟、ティムの映画から出てきたかのような暴れぶりだったな。

AKBの大島さんが吹き替えをされてましたが、
そんなに違和感なかったです。私はエンディングを見るまで忘れてた。

エンドクレジットのあとに1シーンありますのでお忘れなく。
そうそう、あとこの映画3本立てなのです。
(同時上映「月と少年」「ニセものバズがやって来た」)
特に何も書いてなかったのでびっくりした。





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「ファウスト」

2012年07月23日 | 古典名作


アレクサンドル・ソクーロフ監督
権力者4部作最終章。
ゲーテの「ファウスト」を下敷きにした物語です。
全てのシーン全ての瞬間が絵画のモチーフのようでした。
狼藉者が洗濯場から若い娘をかどわかそうとするのを
張り手で阻止しようとするおかみさん方、
なにかに気を取られている若い娘のスカートをめくって
パンツを見るおっさんたち、
押し合いへしあいする葬儀の列、
酒屋での軍人たちの喧嘩、
薄暗く埃っぽい店の中に差す光。

しかしながら割と序盤のシーンで気持ち悪くなってしまって
監督には申し訳ないですが「早く終われー早く終われー」
とずっと念じていました。うん…ちょっと夏バテ気味かも…。

難解、というのではないが、
なんとなく納得できない不可解な展開が続きます。
私は物語の中の暗喩は、よほど興味が持てない限りは一切スルー派なので、
誰かの夢の世界を見ているようでした。
常に飢えていて、常に金に困っていて、常に怒っている。
男が恋をしているが、発情期の犬のようなそれである。
私が眠っている時に見る夢は全然あんな風ではないし、
ああいう夢を見たいとも思わないけど。

内容ばれ(気持ちの悪くなる話)

死体の解体で内臓ドベチャァァァー!とかは平気だったんですが、
ゆでたまごを食べるところがね…。
私、体から出たものを再度口に入れるのがどうも苦手っぽいです。

監督のインタビューを読むと、
「最後にファウスト博士は、魂を要求する存在を打ち倒し、
自由を得て権力者になった」
というような事が書いてあり、えええーっ!ってびっくりしました。
最後ファウストは破滅したんだと思ってた…。

やたら狭い所にぎゅうぎゅうおしくらまんじゅう状態になるのと
男同士の過剰なスキンシップのシーンが多かった。
監督の萌えなのかしら。



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「おおかみこどもの雨と雪」

2012年07月22日 | アニメ映画

「サマーウォーズ」が「天空の城ラピュタ」だとすると、
この映画は「となりのトトロ」かな?と思いました。
客の入りは盛況でなによりでした。

ダイナミックな自然と、
ひたすら萌えこどもな雪ちゃんと雨くんの動きと声。
ショタ萌えの素養のある監督によって描かれる
雨くんのフェティッシュな魅力の数々。
あと細やかな感情表現は、数多あるテレビ系アニメ作品とは一線を画して
ブランドの力を見せつけていました。

内容ばれ

雪ちゃんと雨くんの萌え力は別格として、
あと草平くんな!
雪と草平の教室の告白シーンはもう本当によかった。
あんな格好いい小学生男子、いていいのか!
クラスの女子全員、校内女子全員(若干男子含)惚れてまうやろ。
教師も惚れるやろあれは。

それと畑のハートマン軍曹も、とんでもないツンデレキャラだったので
フェードアウトが惜しまれます。



モヤモヤ部分(色々ばれ)
難癖に近いのでモヤモヤした人だけお読みください。

初産で完全自然分娩、その後も医療機関には一切頼れない
それどころか親も義理の親もだれも頼れる人がいなくて1人で育児、
1歳違いの子が2人、上の子は健康だけど下の子は手のかかる難しい子、
お金もほとんどなくて食べ物自給自足って、これ完全詰んでますよね…。
それを熱意と努力だけで何とかしてしまう、
明るくていつもにこにこ優しいお母さんって、
ちょっと人間の限界を越えた宇宙母でモヤーンとしました。

それもこれもたかお(仮)が買い物帰りに道草とかするから!
たかお(仮)が悪い!そもそもどうしてあの状況で子供を作るのか!たかお(仮)め!

工務店に勤務していたとかでもない丸素人の女性が
あの規模の廃屋をリフォームするのは絶対無理だと思います。
そして床が腐っている家は、大抵屋根も腐っているので、
大屋根にのぼるとかは、やめた方がいいよ絶対に。
(東北の方の家は積雪に備えて丈夫に作ってあるのかもだけど)
緊急の場合に誰も助ける人のいない状況では登っちゃ駄目。

あとドラマ上不要だからと分かってはいますが
花さんは女の友達が1人もいないの?とか、
奨学金は返済してください……とか
たかお、あの死に方では3年経たないと花さん再婚できないし
7年経たないと死んだ事にならない、とか
変なところがちょっと気になった。



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「アメイジング スパイダーマン」

2012年07月02日 | バトル映画

ライミ版が好きな方も、前3作見てない方も、
今回のリブートは劇場で見て損はないよー楽しめるよー!
(高所恐怖症の人除く)
ライミ版と比べてどっちがどうって聞かれると難しいですが、
私は主役は前シリーズの真面目で気弱なピーターが好き。
でも脚本は今回の方が剛腕。すごい。ぐいぐい来るわよ。

シャレオツ失恋映画で有名になった監督なので、
どうせガールフレンドとくっつきそうでくっつかない、けどやっぱりくっつく、
甘酸っぱいウフフアハハなスパイダーマンになるんでしょ!
と思っていたら、恋愛パートはそこそこで、
ベンおじさんとメイおばさんとピーターの絆の描写が一番繊細でした。

内容ばれ

・この作品のピーターは、いじめられっこなのは最初の10分ほどで、
 あとは割と強気でした。
 エピソードが多すぎて、いちいち気弱設定を出している暇がない感じ。
・この作品のスパイディーは首から肩、背中にかけてのラインがとても美しかった。
 中の人は主に俳優さんなのかな?所謂、細マッチョなのだと思う。
・スパイダーマンでなければ見られないアクションシーン満載でした。
 立ち姿は重心が微妙に前にあり、戦闘シーンになると極端な前傾姿勢。
 CGもあると思うが中の人お疲れ様!
・ベンおじさんとメイおばさんの話はどれも素晴らしい!
 ミートローフのエピソードとか!
 温厚なおじさんが、おばさんが夜に12ブロック歩かされた時は
 大激怒したりして男らしい惚れる……。
 あ、このシリーズではもしかしてベンおじさんは死なないのかな? 
 だってこんなに丁寧に描いているんだもの!…って思ったりしました。 
 ……そんなわけなかったぜ……orz……。
・ベンおじさんの留守録メッセージ、使い方がうまかった。
 続編でもまたピーターが聞いているといいな。
・いじめっこのエピソード、死ぬほどうまかった。
 お前の名前は剛田だな!?しかも映画版だな!?
・高所作業車のエピソード、死ぬほど(略)
・卵(略)
・救出した子供が父親と抱き合うのを、後ろで首をかしげて見ているシーン、
 強いヒーローなのに守ってあげないといけないような幼さがあり、ガワ萌えした。
 中でピーターがどんな顔をして何を考えているのか分かった。

蛇足

・高校生がナイフとフォークでの魚の食べ方が分からないというのは、
 「……?」だった。格差社会…?日本だと学校でテーブルマナー教室があったりするけど…。
 アメリカの普通の家庭ではあまりナイフとフォークを使わなくて、レストランにも行かないの…?
・しかしおじさんを亡くしたピーターを慰めるために食事に呼んだんだろうに、
 「ディナーなのにその格好なの?」とか
 パパがまったく気を使ってなかったりするのは解せぬ!
・漫画家のヒラコー先生は前シリーズのヒロインMJが死ぬほどお嫌いで
 私の中でMJといえば=ヒラコー先生なのですが、
 今シリーズのヒロイン、グウェンをお気に召すか今から心配です。
 (とりあえず二股はかけてない)
 (原作は長いので、ガールフレンドが通算3人いるとかだったかな)
・エンドロールにソニーのレコード会社所属の日本のバンドの曲が日本版主題歌として流れます。
 どうか監督が意図した通りの映像と音楽を最後まで見せて下さい。
 あたちたちがお金を払って見ている映像に自社製品のCMを流すのはヤメテー。

映画予告
「ハンガー・ゲーム」(アメリカ産「バトロワ」)の予告を初めて見ました。
アメリカでも中2設定のラノベは爆売れするんだなあと思うとなんだか笑顔になります。
「XFG」でチャールズの妹を演じたジェニファーさんが主役なので、勿論応援しに行く所存。


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