映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「美女と野獣」

2017年04月24日 | ミュージカル映画
1991年製作のアニメをディズニーが実写化。
ベルをエマ・ワトソンが演じます。
ディズニーの威信をかけた総力戦という感じで、大変豪華で眼福でした。
特にオープニングの「朝の風景」は
圧倒的舞台美術と情報量で殴ってくる感じがよかったです。
村のセット(セットだと思うけど)は高低差が意識されていて、
どの角度から見ても美しかった。

場面の内容、ベルのしぐさなどはアニメ版を踏襲しつつ、
現代感覚も控えめに取り入れ、細やかに歌詞も変え、
(うろ覚えなんですが、宗教的価値観を窺わせる歌詞が変わってたり)
オリジナル要素も少しだけ入ったリメイクでした。
特にル・フゥのキャラクターアレンジと、
城の従者たちの演出の強化がとっても良くて、
見終わったあと幸せな気持ちが更に増しました。

頭の中で1991年アニメ版、劇団四季版、
2014年フランス版が同時に進行して忙しかった。
そして比較しながらベヨベヨ泣いてました(笑)。
そういえば観劇したことのある劇団四季の演目の中では
「美女と野獣」の舞台美術が一番好きです。

内容ばれ
「強いぞ、ガストン」も変幻自在のカメラワークと、
ルーク・エヴァンスの熱演で、本家越えしたな…と思ったんですが、
唯一ダンスシーンだけは、記憶の補正もあるかもしれないけど、
アニメ版に敵わず…と思いました。
なんだかボウルルームが小さく見えたのですが、
もしかすると城の外観と比較して、あれが正しいサイズとか、
実はそういうのがあるのかも。
あと世界の好きな場所に行ける本というアイテムは、
最後に開放すべき閉塞性を破壊してしまうので、ちょっとそれはどうだろう派。

ル・フゥに関しては、並みのヒロインよりよほど一途でけなげで、
「幸せになれよ…」という感じでした。間違いなくラストのカタルシスの一端を担ってた。
ファンタスティック・ビーストのヒロインにして天使、コワルスキーさんといい、
ハリウッドぽっちゃり天使の時代が来るのかも。
(マーベル作品もルイスやフォギーといった天使ぽっちゃり完備ですし)
彼の同性愛描写が問題となり、国によってはシーンのカットを要求したが
ディズニーが拒否したため上映が中止になったりR指定になったりしたそうです。
同性愛描写といっても、別にキスをする訳でも告白をする訳でもないのですが、
同性愛者は画面に映るのも駄目だが、異類婚姻はいいとか、レベルが高すぎてよく分からない。

王子が野獣になった理由、1991年アニメの方は
罪に対してペナルティが重すぎやしないかな?という気がちょっとしましたし、
2014年版はペナルティが軽すぎるので
王子は野獣のまま野たれ死ぬべきと思いましたが(個人の意見です)
今回の演出は、ほどよい感じでした。
あ、アニメに比べて表情の種類が減るのは仕方ないですが、
尻尾が大型犬風でなかったのと、あまりフォーカスされなかったのは残念でした…。
あれかな、野獣状態の王子があんまり可愛いと、
また「野獣のままが良かったのに…」とか20年にわたって言われるので
加減したのかな…。

ベルのドレスの金糸の刺繍(?)や、父親の作る発条のからくりと作業部屋、
オペラハウスを模した衣装ダンス(ロイヤルボックスが貴金属入れになってる!)
ベルの部屋の内装、みっしり装飾の施されたチェンバロ、
大道具も小道具も美意識炸裂で絵本のようでした。



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「T2 トレインスポッティング」

2017年04月14日 | 美学系

監督ダニー・ボイル
原作アーヴィン・ウェルシュ

ドラッグ、犯罪に手を染める若者たちの
疾走する青春を描いた前作から20年、
同監督、同キャストで続編が撮られました。

細かい前作ねたが入るので、直前に1を見ておいた方がいいです。
私はどうしても時間がなくて復習できず、
案の定、音楽ネタとか全然分からなかった…。

英国映画なので、ドラッグはだめとか犯罪はだめとか
友情フォーエバーとか、そういうのは期待しない方がいいです。
男どもは全く成長してなくて、相変わらずダメ人間とクズ。
20年歳を食っただけあって、佗寂の感じられるダメっぷりだった。
ドラッグで回転数が上がって世界が明確になる感じ、
とっても楽しそうに撮れてました(笑)。

仲間たちを裏切って金を持ち逃げしたレントンがエジンバラに戻り、
ある者は怒り、ある者は受け入れる。
犯罪とドラッグは相変わらず彼等の近くにある、というあらすじ。
作家性が強い作品なので、合う人にはすごく合うし、
合わない人にはまったく合わないでしょう。

予告
https://www.youtube.com/watch?v=TzfWRu12gE0
予告編にいいシーンを使いすぎている気はする。

中の人、レントン46歳、スパッド45歳、サイモン44歳で
ベグビーだけが55歳なのか。

内容ばれ

正真正銘の人殺しで、日常的に窃盗を繰り返して、
もう到底普通の友情は保てないけど、
不能だったり父子に複雑なロマンを持っていたり、
完全なモンスターでもない憎めない人物っていうベグビーの描き方が
英国だなあという感じがしました。
あとあのカトリック死ね死ね団のシーンのセンスとかも。
ああいう集団って実在するんですかね?

2つか3つに綺麗に絞られていた「ムーンライト」の色彩設計とはまた違って、
画面の中に沢山の色があって、でも統一感がありました。色がパワフルだった。
1カットが短く、挿入されるカットも多く、そのスピードは物語と合ってましたが、
でも途中「時系列?」って思ったところもあった。

まあ全員が全員、若くパワーがあって愛する友人がいて、恋人がいて、
向上して成長しなければいけないという訳ではないので、
いいんじゃないですかね、老けたダメ人間がなんとなく生きてても。
それでときどきちょっとだけセンチメンタルになったりして。そういう映画です。

地球の危機と戦う系映画と比べると製作費が一桁違う。



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「はじまりへの旅」

2017年04月12日 | 成長モノ

政府と社会に敵意を持つキャッシュ家の父は
6人の子供を森の中で文明から隔離して育て、
肉体的な厳しい訓練と、あらゆる文化的な知識教育を施していた。
ある日、双極性障害を患い実家で静養していた一家の母親が
自殺したという知らせが入り、
火葬を望んでいた仏教徒の彼女の遺体が、義父によって
教会で葬儀を行われ土葬されると知った一家は、
母親の遺体を取り戻すべく、森を出て都会に乗り込む、というあらすじ。
ヴィゴ・モーテンセン主演。監督脚本マット・ロス。

近代的な生活を一切知らない子供たちが、
水洗トイレや電化製品やテレビに驚いて騒動を巻き起こす的な
ほんわかコメディ映画だと思ってたら全然違った。
コミカルではあるんですが、時々「うーん…」っていうシーンがあって、
都度色々考えちゃうんですよ!

内容ばれ

森で草食動物を狩って自分達の手で解体し、
格闘術を身に付け、あらゆる書物を読み、幾つもの言語を学び、
火を囲んで楽器を演奏し、家族で歌うというのは
おとぎ話のような風景だと思いました。
でも読んだ本の感想をあんな風に口頭で、すぐさま言わされるのは嫌だ。
しばらく考えないと身に入ってこない本もある。
(あらすじ語り禁止、「興味深い」って感想禁止は笑いましたけど)

お父さんの行動には下記に書いた通り色々問題があるのですが、
ヴィゴのヴィゴりょくにより、押し通った感じ。
終盤ヒゲとか剃ったりして、
うわー!これでもうすぐ還暦なのかー!まじかー!ってなりました。
でも、お義父さんを、かわいそうなヴィゴをいじめるブルジョアおじいではなく
ちゃんと好ましい人物に描いていたのには好感がもてました。

「社会活動は消費だけ」っていう大衆批判は耳に痛いです。
浅学にしてノーム・チョムスキーを知らず、ざっと調べたら面白かった。
あとSweet Child o' Mineを検索したら、知恵袋に
「ガンズ&ローゼズの曲で、チャラララチャラチャラ~と
前奏でギターのソロが長いこと続く曲のタイトルは何? 」
っていう質問があってふいた。ファンはそれだけで分かるもの!?

正論アワー&ラストばれ

ダイナーに入ったとき、子供たちが
ホットドックやパンケーキを食べたがったのに、毒だからと食べさせてあげなかった件、
チョムスキー祭りで食べたケーキと生クリームの方がよほど体に悪そうに見えるけど、
あれは結局子供を自分の命令に従せるのが快いだけなのでは?

スーパーで、子供達と一緒に盗みを働いた件、
随分盗み慣れているけど、「人民に力を」じゃないの?
人民同士で食い合いをするの?あのスーパーは巨大資本だからいいのかな?
普段も個人経営のスーパーからは盗まないの?
盗んでいいスーパーと駄目なスーパーは誰がどういう基準で決めるの?
あとホラー映画だったら泥棒したやつは死ぬ。

権利章典の内容を把握してない甥っ子を鼻で笑い、
自分の幼い娘に暗唱させ考察させますが、
甥っ子が知っていて、自分の子供たちは知らない知識もまた膨大だと思います。
何より悪いのは文化的に造詣が深くない人を見下す姿勢を継承してしまう事、
あと他の子供と接する機会を奪って対人関係構築の勘やスキルを潰してしまう事。

あの暮らしが虐待か虐待じゃないかで言えば私は虐待だと思う。
父親がバカにしている某宗教の原理の人たちがコロニーを作って子供に施している教育と
皮肉なことによく似ていると思う。
というか奥さんは早期に入院して適切な処置を受けていれば
死なずに済んだのでは?それが幸福かどうかは別問題だけど。

最後、お父さんバンザイ!お父さん大好き!今まで通りずっと一緒だよ!
で終わったらどうしようと思ってましたが、中庸の生活に変化してよかったです。




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「レゴバットマン ザ・ムービー」

2017年04月11日 | コメディ

名作映画は黒から始まる。
そしておどろおどろしい音楽…
保護者と配給会社を不安にさせる…。
そして訳の分からないロゴがいっぱい出る…。
っていう感じの冒頭ナレーションからメタジョークが効いてて最高でした。
ゴッサムを守る孤独なヒーロー、バットマンが、
宿敵ジョーカーから向けられる特別な感情を拒み、
唯一の家族アルフレッドや、協力関係にあるバーバラ、
ふとしたことから知り合った孤児のディック、皆からの好意も拒み、
大切な人を持つことを恐れて生きている彼が救済されるお話です。
本家のDCEUで今後長々と描くであろうテーマを一発解決した!

レゴの人形が動いてその映像に声の付くシリーズなのですが、
毎回脚本にうならされる感じです。
今回の脚本原案はセス・グレアム=スミス。
「リンカーン/秘密の書」の原作脚本、
「高慢と偏見とゾンビ」の原作のひとです。

内容ばれ

DC映画というよりスーパーワーナー大戦なので、
ヴォルデモートやサウロンやキングコング、ダーレクが大暴れします。
(ヴォルデモートやサウロンやキングコングは
現在登場作品の権利を持っているのはワーナーですが、
「ドクター・フー」に関してはちょっとよく分からない。
DVDを販売しているようではあります)
ヴォルデモートは浮遊術を連発、
即死呪文や服従呪文など、もっとえぐい魔法があるにもかかわらず
イッチ年生御用達の呪文を愛用するなど可愛げがありました。
めっちゃ情けない感じで負けたのですが、原作者大丈夫なのかなこれ!?

本当にバットマンが大好きすぎて
彼の言動に傷付いて泣いてしまうジョーカーが
うざかわいかったです。
周囲のヴィランも「かわいそうでしょー」「責任取りなさいよー」
みたいな態度で、女子高生みたいだった。
考えたら、バットマン総愛され映画といえる…。

アルフレッドの声がレイフ・ファインズって気付かなかった!
せっかくだからヴォルデモート卿の役をおやりになればいいのに。



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「ゴースト・イン・ザ・シェル」

2017年04月10日 | SF映画

「攻殻機動隊」のハリウッド映画化です。
私は原作のめんどくさい原理主義で、押井さん、神山さん、冲方丁さん(脚本)による
映像化すべて、「うん……」って感じで見守ってきました。
今回もまあ「うん……」という感じですが、
アニメが二次創作とするなら、今回の実写は三次創作という気がします。
原作未読、アニメ未見のかた、または
原作およびアニメの、人物&テクノロジーのビジュアル面が好きなかたは
満足されると思います。
でも攻殻の、想像科学技術の最先端の部分や、
膨大な設定に支えられた世界観、
軍事、諜報の危ういバランスで成り立っている緊張感、
感情ではなく利で動き、
個ではなく盤面のなかの一部分として機能するプロフェッショナルな人々が好きなかたは、
残念ながらいまひとつかも…。

肉体の一部分を機械化して機能を向上させるテクノロジーが定着しつつある近未来、
テロの攻撃を受けた難民ボートに乗船していたミラは、
一命を取り留めたものの、肉体の損傷が激しく、脳以外の生体を機械化していた。
彼女は公安9課に所属し、日夜テロ対策に追われていた。
ハンカ・ロボティックス社重役の暗殺事件を捜査していた彼女は、
その殺人には裏があることに気付くと同時に、
事件と自身の関わりについて知る事になる、というあらすじ。

内容ばれ
不倫で干されてたルパート・サンダース監督やないですか!
復帰しとったんかワレ!
「機械に同情心はない」とか「あなたは人間よ」みたいな序盤の台詞で、
あ、はい、昭和のあたりまで戻るのね合点承知。と思いました。
その代り、都市の3D広告を始めとする、画的な完成度は高かった。
(近年のSFでは3D広告や拡張現実による公告は美しくないよね、という流れのようですが)
(まあそれは小説の話なので、絵的には巨大広告でのインパクトを狙いたくなるのは分かります)

細かくアニメねたが入って、ビジュアル面でのリスペクトを感じます。
(あ、バセット・ハウンドは飼うのが難しいヨ!って一言ほしかったかも…)
登場時から「このひとがトグサでないといいな」と思った人がトグサだった(笑)
バトーの目…?と思ってたらあとで付いた。
イシカワとサイトーについては、随分遅れて気付きました。
ビートたけしさんはずっと日本語で喋ってた。彼以外は英語。
母親役で桃井かおりさんが出てます。
EDに傀儡謡が流れて「えっ」って思った。

日本ではビートたけしさん効果と攻殻ファンで健闘すると思いますが
世界的には興行成績が振るわず、それは日本人設定の少佐を
人種の違うスカヨハが演じたせいだと言われています。
でもそれには理由があったし、スカヨハは、ちゃんと少佐だった。
思うにあまり尖りすぎると大衆受けしないからと、丸めすぎたのではないか?
SF部分をふわふわにしすぎたのではないか。

約25年前に出版された攻殻以降、
あれを塗り変えるキャッチーでオリジナルなSF世界・システム・テクノロジーを
私はまだ見ていないのですが、もうそろそろ更新されてもいいんじゃないかと思います。
同じく士郎正宗さんの「仙術超攻殻ORION」(これも25年以上前)とか、
神話神道の理をデジタルテクノロジ-で分解した、
ちょっと似たもののない世界観なので、映像化したら面白いと思うんだけど、
関西っぽいコミカルなシーンが特に多いせいか、
今のところ何の企画も聞こえてこない。
そういえば攻殻も、何度映像化されてもコミカルな部分は
いつもばっさり切り落とされるけどなぜだ。

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