映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「バーバレラ」

2021年02月02日 | R18

旧作映画の感想は、通常1年分まとめて索引つきサイトにあげていますが、
新作映画が軒並み延期なので、
別のWEB日記に書いている旧作映画の感想を順次あげます。ひまつぶしになれば幸いです。


1968年のカルト映画で、
ジャンルはエロティックSFです。
スターウォーズより10年早い。
特撮風味のポルノなんですが、ギミックが面白く
プラスチックやファーを使った衣装がオシャレ。
主人公はジェーン・フォンダで、天真爛漫なバーバレラを愛らしく演じます。

地球大統領から、行方不明の科学者を探せという命令を受けた
宇宙飛行士のバーバレラは、タウ星に向かうが…というあらすじ。

バーバレラがピンチになったりセックスしたり
ピンチになったりセックスしたりします。
ピンチは、人形に全身を齧られたり、
おびただしい数の小鳥につつかれたりする、
特撮ヒーローあるあるの、ピンチシーンの、もっと正直なやつ。
性行為は、バーバレラを助けた人が要求するんですけど、
駄目だったらいいんだけど的なニュアンスで
しかもバーバレラも、うん、別にいいわよてきなノリなんですよね。
そしてどっちも楽しんで満足する。性行為に加害性がないんです。

話は脱線しますが陰湿なポルノでよくある
嫌がっている女性に腕力とか脅迫とか薬物とかで
無理やり行為に及ぶやつ、
あれって性行為でもなければエロでもないんですよね。加害。
暴力的エロティズムを好む人はいてもいいけど、
大勢が、あれこそエロだと認識しているのは異常だと思う。
そもそも普通に裸や交尾で興奮できなくて
オプションで加害を付けないといけないのは
性欲が弱まってきているせいで、
その種族の滅びの時なんだと思います。

内容ばれ

冒頭の無重力ストリップと、
女性を絶頂させて殺すオルガスマトロンのシーンが有名です。

オルガスマトロンはグランドピアノくらいのサイズの複雑なマシーンで
女性を楽器の中に入れて悪人が演奏すると女性は快感を得ます。
バーバレラも最初は「気持ちいい」とか言ってるんですけど
だんだん快楽が大きくなってきて、喘ぎ始めます。
でもバーバレラのキャパが大きすぎて、装置が爆発してしまいます(笑)
悪人が「淫乱め!」とかプリプリ怒っている。
でもバーバレラに「服を取って」って言われると
新しくておしゃれな服を渡してあげる。渡すんかい!

バーバレラへのSM行為ですが性行為とは分けられていて、
しかも盲目の美しい男性も縛り上げられたり、
悪徳の都の住人につつかれたりします。
それと逞しい男が漬けられて悶えている丸い水槽から
伸びたチューブを水タバコのように楽しむ女たちがいたりして、
(「男エキス」なのだそう)女性も楽しめる。
あと悪の皇帝は女性なんですが
最初の出会いの時は身分を偽っていて、バーバレラのピンチを救って
「かわいこちゃん」って呼ぶんですよ…。
この映画50年早かったのでは。

それと高度に科学の発達したこの世界での性行為は、
一緒に薬を飲んで、座って手を合わせるだけで快感が得られます。
絶頂すると髪がクルンクルンになったりして面白かった。

全体的に妙にオシャレかつユーモラスなので楽しく見られました。

余談ですがこの監督、ジェーン・フォンダ、カトリーヌ・ドヌーブ、
ブリジットバルドー、アネットヴァディム、と結婚なさったらしい。
まあきっと才気煥発で面白い人だったのでしょう。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ハウス・ジャック・ビルト」

2019年06月27日 | R18

ラース・フォン・トリアー監督

殺人鬼ジャックが
過去に殺した女たちの話を老人に語る話。
小動物への虐待、子供、女の残酷な殺害、
死体の激しい損壊、冒涜、様々な要素を含みます。
あとウルトラギャラクティカマグナムミソジニー映画なのでご注意。
(昔はちょっとは隠してあったけど最近はもう丸出し)
(男性の被害者に知性はあるが、女性は全員足りない風に撮られている)
(あと女性の犯罪被害について超理論が展開する)

実際のシリアルキラーの詳細な回顧録よりも
この架空の映画のほうがリアルで刺激的かもしれない。
それは単にシリアルキラーは表現の天才じゃないって事なんだけども。
しかしこの作品の核はグロ描写じゃなくて、
この世あると言われている愛とか善とか、それらは存在しなくて、
便宜上善良な人といわれているあれは実は単なるバカで、
この世はバカと、多くの性悪なバカと、
少数の性悪な利巧しかいない最悪の場所だから、
みんな全てを憎め、さっさと殺すか死ぬかしろ、
ワシのこの苛立ちと絶望を、類まれなこの才能で共感させてやる、という
メッセージ性、圧力だと思う。

さすがに監督もお年なので、若干支配力は衰えてきて、
それを残虐性で補おうとしている風に感じられた。

内容ばれ

鈍ったのか?って思ったのは、
例えば狩猟のエピソードからスッと切れ味鋭いラストにつなげていれば、
世界中の影響されやすいイキったひとが複数
ジャックなりきりで女を殺すほどの強い影響力があったと思うけど、
エピローグがかつてないほど無駄冗長グダグダで、
いい具合に気が抜けたラストで大丈夫そうだし、
あと老人への告白っていう形式は前作でも使ったし、
(わざとかもだけど)
肝心のジャックの家は、初見なら感嘆しただろうけど、
もう類似品をドラマ版「ハンニバル」で見てるからな…
美術ではあっちに軍配が上がるし…とか色々。
(あとブレイクもグールドもレクター博士のシリーズに出てくるね)

でも潔癖症コントとか、
コントの音楽に凡人はユーモラスな曲を合わせて過剰にしてしまうところを
打楽器のみにするという渋いセンス、
死体写真アートにコメディ要素を取り入れたって自分で悦に入るジャック、
果実まるごとすりおろし国道、
きちんと分類されている獲物の鳥瞰、
あのあたりの尖り具合はさすがだなって感じでした。

帰ってから「ダンテの小舟」と間違い探しをしたけど
川の男性のハンサム平均値がさりげなく上がっていた気がする(笑)
あとダンテが影響を受けた詩人だから「神曲」に出ただけで、
別にウェルギリウスは地獄の案内人を仕事にしている訳じゃないよ…。
迷惑よ…。
(あっでも中の人が「ベルリン・天使の詩」で天使を演じたから、
それも重ねているという説をネットで読みました。なるほど)
(ブルーノ・ガンツ氏はこの映画のあと3本ほど撮って、亡くなられたようです)



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「フィフティ・シェイズ・ダーカー」

2017年06月26日 | R18

「トワイライト」のファンがネット上に上げた二次創作ポルノが映画化された、
「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の続編です。
SM行為に恐怖を覚えたヒロインが社長と別れたのが前作ラストですが、
しかし社長はヒロインの事を忘れがたく、ぐいぐいと迫り、
もうSM行為はしないとまで約束したのでヒロインはよりを戻します。
ある日、ヒロインは自分に似た女性に声を掛けられます。
彼女はかつて社長と支配者被支配者関係にあった女性で、
ヒロインに対する嫌がらせ行為が始まります、というあらすじ。
基本、こじれる→ベッドシーン→こじれる→ベッドシーン、の繰り返しです。
たしか6回くらいベッドシーンがあった(朝チュン含む)。

さすが元二次創作だけあって、
BL二次創作のよくある話の流れと全く同じで、
男(攻)は自分の財力や支配力などのパワーを誇示し、
女(受)にアタックする当て馬が出てきて
男(攻)は猛烈に嫉妬して敵を排除します。
男(攻)は女(受)の虜で、常にその肉体を欲します。
申し訳程度のあらすじがあって、ベッドシーンとベッドシーンの間を埋めます。
やっぱり多数の女性が求める物語の黄金パターンなんですね。

内容ばれ
突然なんの脈絡もなくヘリが落ちた時は、
もう本当に声に出してツッコミを入れたかった。な、なんでやねーん!
主人公が就職した企業を社長が買収しようとしたときもツッコミたかった。
入社したてのヒロインが、辞めたセクハラ上司の替りに、
編集長に抜擢された時も(実力で)、なんでやねーん!って言いたかった。
あと社長、あんまり仕事してないね。

社長のお母さんの物語、長年の親友が
自分の息子と肉体関係を持っていてそれを秘密にしており、
しかもSM調教までしていたという、こちらの方が物語としては重厚だと思います。

SMに関しては今回はマイルドで、強制開脚足枷とスパンキング、
あとレストランでパンツ脱げって命令したり…これはSMなのかな…。
足枷を持ち上げて体を反転するシーンは、腰痛持ちさんは即死すると思ったけど、
人種の違いによりあちらのひとは若い腰痛持ちとか存在しないのかな。
ところで社長が、自分はドミナントではなくサディストだって弁解してたけど、
ドミナントの方がやばいという認識なのか…?

エンドロールの途中に3作目の予告が入ります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」

2015年02月15日 | R18

R15
アメリカで「トワイライト」の二次創作としてネットで発表されていた小説が
ものすごい人気になって、登場人物の名前を変えて書籍化されて、売れて、
映画化された作品です。この小説で「マミーポルノ」という言葉が生まれました。
二次創作史的にはターニングポイント的な作品になるのでは?と思って見に行きました。
ただし「トワイライト」で書かれなかったベラとエドワードのえろが見たい!という
作者の萌えが全面に出ている話なので、ひたすらわっしょいわっしょいする映画です。
(黒ボカシがすごいだいかつやくをしますぞ)
見に行かれる際はご注意。しかもこれ話が完結してなくて、めっちゃ途中で終ります。

あらすじ
風邪を引いたルームメイトの代わりに若き会社社長のショートインタビューを
することになった女子大生の主人公。
会社社長は少し強引な超イケメン。お互いに惹かれるものを感じながらも
曖昧な態度を取る社長。なぜなら彼はSM行為でしか女性を愛せない体質で…。

内容ばれ(dis入ります)
社長室に入る時に転んで見事にビターンするようなドジっ子で、
男性と付き合ったことがなくて、お洋服ももっさりしていて、
人といるよりも本が好き…っていうヒロインを
ヘリコプターで連れ去ったり車をプレゼントしたり、
親しい男友達に嫉妬したりする強引な金持ち…
もうこの…バブルの頃の同人誌で死ぬほど見た…っていうシチュエーション…。

あと攻…じゃなく男性が地位もしくは才能、財産に恵まれており
女性側がパートナーより知力または経験値が低く、繊細で、純潔って組み合わせは、
現代ではアジアの一部地域でしか流行らない嗜好かと思ってましたが、
アメリカでも受けるんだ!?それともリバイバル的な…?
(関係ないですが上記の要素、BLの受に盛られる事が多くて、ふふって思います)

原作の感想を読むに、社長の過去のトラウマが明らかになるにつれ
盛りあがっていき、2人の関係も対等になるらしいですが、
果たして続編は可能なのかしら興行成績的に…。

社長の嗜虐嗜好が、不幸な生い立ちによる病気的な描かれ方をしているようなのが
ちょっと気になる。後半で印象が変わるのかな?
とりあえず愛していても相手に触れられたくないひとは普通に存在するし、
これもし同性愛がこういう描かれ方をしたら炎上ですよね。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ニンフォマニアック VOL2」

2014年12月05日 | R18

色情狂の女性の一生を描いた映画の後篇です。
1よりは2の方がきついです。
まさかの満席でした。洋画で満席なんて滅多にないんですが、
あのひとたちが全員トリアー監督のファン…な訳はないし、
やはり半分くらいは性的なシーン目当てのひとなのか…?
ブラックユーモアの発想といい間の取り方といい本当に巧いですが、
全方位に耐性がある人以外あまりおすすめしません。

内容ばれ

身構えていたのでそれほどダメージはなかったです。
むしろそんな雑な手段で観客に傷をつけようとは、ヤキが回ったな!
という印象(←戦っている?)

VOL2ではSMとカウンセリングと同性愛が描かれます。
15歳×50歳(役柄の年齢)の百合かー!と思ったけど、
あまり百合萌えのひとたちの喜ぶ百合ではなかった。

今回サディスト役で出てきたジェイミー・ベルが素敵でした。
ある程度の経済状態、性格の水準を満たして(たぶん)選ばれた女性だけが
事務所のようなところで夜通しひたすら待ち、
その日、彼に選ばれた者だけが鞭を受けることができる秘密の会合。
金銭の授与はなし(たぶん)。性行為もなし。
服装は普段着で部屋も素っ気ない事務室なんですが、道具は使い込まれていて
なによりSM行為にのぞむ彼の真剣さ。
あっ、なんかこの人の事が理解できると思いました。
なんとなく趣味の創作をする姿勢にすごく近いものがあったような…。
このひとはジョーにキスをされて動揺して拒絶するのですけど、
ああ、真剣に合同誌の内容を検討している時に
突然せまられた感じなんだろうなきっと…とそう思いました。
そしてこの人は全然ヨゴレのシーンがなく、
上半身すら脱がないままフェイドアウトした。
(脱がないまま終わったと言えばウィレム・デフォーもそうですが)
このひとが縛り上げられる二次創作小説が読みたいです。英語ならあるかしら…。

独白の聞き手セリグマンのつっこみも、後篇なだけあって冴えてきて、
わりと頻繁に笑いがおこっていました。

セックス依存症題材の映画は
スティーヴ・マックイーン監督の「SHAME」がありますが
見比べるととても面白いです。
「SHAME」のほうが主人公に対して優しく甘い。感傷的。
「ニンフォマニアック」は主人公に対して冷笑的。
むしろ性的な事柄すべてへのリスペクトと探究心を強く感じます。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする