映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち」

2022年05月31日 | ドキュメンタリー
20世紀末から21世紀初めにかけて特にご活躍なさった
映画に携わる有名造形職人とアーティストが
当時の話をするドキュメンタリー。
ホラー寄りの内容かと思っていたけど、そうでもなかった。
早口で喋りながら、 ろくろを回すポーズをなさるかたが多くて
ほっこりしました。

登場する映画は「エクソシスト」「ザ・フライ」「遊星からの物体X」
「グレムリン」、「アビス」、「ターミネーター2」
「ジュラシック・パーク」、「ヘルボーイ」
「スターシップ・トゥルーパーズ」、「スパイダーマン2」等々。

当たり前ですけど、モンスターデザインに興味のある人むけ。

ラストまでばれ

私はクリストフ・ガンズ監督が元気そうなのが見られて、
デル・トロ監督がいいこと言って、
「ヘルボーイ」の死の天使がバラバラのパーツになっているところを見られて満足です。
なんて美しいんだろう死の天使。

ジュラシックパークの頃が過渡期だったようで、
フィル・ティペット氏は関わっていたジュラシックパークの仕事を
CGが代行すると決定したショックで肺炎になられたらしい。

CGか、 実在物質造形か、というのは全体的なテーマとなっており、
現在は製作期間を短くして費用を絞る方針にCGが合致しているけども、
それは必ずしもCGのほうが優れているわけではなく、
両方によいところがあるので共に必要な技術である、
という結論に納得しました。
逆にCGが手抜きで貧しい技術だとも思わないが、
短納期で仕上げる場合、 作家性が出にくいな、とは思う (私は)。
既視感のあるテクスチャと動作、重力、等々。
それにしても昔のハリウッドはお金があった…。

「ターミネーター2」のT-1000の効果、
破壊されるところは実物で戻るところはCGだったのか、とか
「アビス」の特殊効果、72秒に1年かけたのか、とか
ヨーダのCGの動きはアーティストの皆さんには不評なのか、とか
知らないことが色々ありました。
気になったのは、
ゴムの作品の寿命が来て変形変質しているという発言です。
たかだか数十年前なのに、ゴムって耐久力が低いのか!
石油王のファンよ…作品の保存を…と思いました。

映画音楽作曲家のインタビュー集の時も思ったが、
有名造形アーティスト達も白人男性率9割以上だな。
現在はもう少し偏りがましになっているといいのですが。



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「トップガン マーヴェリック」

2022年05月30日 | バトル映画
36年前の大ヒット映画「トップガン」の続編。
輝かしい戦歴とフライトテクニックを持つピートは
生来の無鉄砲を発揮し、危く職を失いそうになるが
エースパイロットたちの教官として迎え入れられる。
そこにはかつての相棒、グースの息子がいた…というあらすじ。

前作の登場人物が引き続き出ているので、前作を忘れている人は見たほうがいいかも。
(回想シーンや説明台詞でフォローはしてくれるけども)
36年間で撮影技術は格段に向上しているので
戦闘機の位置や動きが分かりやすく、なおかつ迫力もあった。
飛行機好きにおすすめです。
奇をてらわない王道の、見本のような良い続編でした。
が、若い人がどう感じるかは正直分かりません。

ラストまでバレ

このシリーズは、ピートがいなくなった男性をずっと思っている。
前回は父、今作はグースを。
そして毎回親しい男性との別離がある。
前作では俺が!俺が!俺が!という性格だったピートだけど
今作では大人の落ち着きを身に付けていて、
特に対人は、後進を案じ、親友の息子を案じ、
女性に対しても引き際と遠慮を心得ていたのが大変良かった。
若者が圧倒的に強いお年寄りをチヤホヤする内容の映画が時々ありますが
ああいうのでなくて安心しました。

冒頭の、誘導員と戦闘機の水平ショットで
おっ!この映画、旧作へのリスペクトが極大値…?と思いました。
そしてダークスターのデザインや軌跡や背景がとても奇麗だった。
空のシーンはシミュレートを含めどれもよかったが、
あの、機首を90度上げると空気抵抗によって極端に減速する、あれが派手でよかった。
コブラ機動って言うんですね。編み出されたのがそれほど昔ではないようですが
思いついた人は頭がおかしいな。
あとピートのミサイルをかわした第五世代機の動きも良かった。
神フライトテクってコントロールされた墜落だなと思いました。
それと、ルースターのためにフレアを発射するところ、
翼で雛を守る母鳥のようで、空中戦の構図は全部決まってました。

前作はホモソーシャルりょくが高くてちょっと胸やけがしたビーチバレーのシーン、
今作のアメフトは淡白に仕上がっていて、ニッコリ笑顔でした。
女子が混ざっているからとかではなく、なんとなく牧歌的というか。
ピートが保護者目線で見守っているからかな?
あとヒロイン交代は少し残念でしたが、ペニーは前作でピートが狙ってた女子の1人なんですね。
主人公男性の命懸けの終盤の闘い、
邦画だとヒロインが祈ったり、泣きながら出迎えたりしますが、
この映画のペニーはクルージングに出かけてて
帰ってきたピートがアッルェ~?って顔しているのも、おかしみがあっていいです。
ヒロインにはヒロインの人生がある感。

ピンチの時、難易度の高い飛行をしている時、
もちろんピートは緊張してるんだけど、
同時に一瞬笑っているような、幸福そうな顔に見える時があって、
演技力なのかトム・クルーズの人生なのか分からなくなることが何度かあった。

さすがに今回の敵国は国名を言わないし
人種も分からないようにしてあった…。イランではないかという話だけども。


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「犬王」

2022年05月29日 | アニメ映画
原作:古川日出男さん「平家物語 犬王の巻」
監督:湯浅政明さん
脚本:野木亜紀子さん
キャラクター原案:松本大洋さん

壇ノ浦に沈んだ三種の神器の呪いで視力を失った友魚は
琵琶法師となって流浪するが、
京の都で異様な体を持つ犬王と出会い、意気投合し、
彼等のパフォーマンスで新しい平家物語を表現しようとする…というあらすじ。

めちゃくちゃ人を選ぶし、欠点は幾つもありますが私は好きです。
類似作品が他にない。
強いて言うなら「どろろ」と「グレイテストショーマン」を混ぜたような話でした。
あと、ながいけん「まんがでよくわからない日本史」を混ぜて、
そこにBLを足した感じ。
平家物語が好きな人は見に行くといいと思います。
繰り返しますが普通の楽しさを求めて見る映画ではない。
反体制的という意味で非常に中世パンクな作品。
ボーイがガールにミーツして記憶を失ったり時間を越えたり
おしゃれな音楽が鳴って、ピュアでエモで、
そういう一切合切、しゃらくせえ!という人むけ。

全員同じ方向を目指すのは非効率的だと思うので
湯浅監督、正解だし誰かお金を出してあげてほしい。

今年はイヤー・オブ・平家物語で
アニメ「平家物語」、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、
ジャンプ連載漫画「逃げ上手の若君」(100年以上あとの北条時行主人公。2021年より連載)
いずれもトップレベルの娯楽作品ですが、この映画も面白かった!

ゴア表現があるのでお子様向けではありません注意。

内容ばれ

犬王、腕の形と位置が左右対称ではなく、
顔も頭部はそのままで顔面だけ90度歪んでいる造形ですが
主人公2人が盲目と異形って、そんなアニメこれまでにあったろうか。
あと冒頭から南北朝の説明が始まって、やばい感がありました。

ショー演出は、途中まで中世の技術でなんとか対応してましたが
竜はもう超常現象の域だった。いや、全然いいです。
中盤以降、歌とループに頼った映像が増え、
予算が尽きたのか…?と思ったので、今度は倍額あげてほしい。

犬王と友魚の出会い、琵琶とダンスのセッションで
運命の出会いと好意を表現していて良かった。

別にいいけど、かつて見た中で一番荷物のでかい壇ノ浦入水だった。
三種の神器、過剰包装じゃない?冷蔵庫かと思ったよ。


劇中歌「腕塚」歌詞付き映像
https://www.youtube.com/watch?v=b3tP4huFvlE

平家物語を読んでから見ると、ますます楽しめるが
忙しい現代人、そうもいかないだろうから、このへんが知識にあるといいですよ。
湯浅監督のTwitterより
https://twitter.com/masaakiyuasa/status/1528288397537648640

https://twitter.com/masaakiyuasa/status/1528151065509564416


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「バブル」

2022年05月23日 | アニメ映画


突然起こったた原因不明の爆発と、同時に発生したバブル群により
重力の狂った東京は水没し、都市機能を失った。
人々は避難したが、 天変地異で家族を失った子供たちは東京に留まり、
チームを作ってバトルクールという競技に熱中していた。
主人公はバトルクールの名手だったが不意の事故で水中から脱出不能になり、
あわやと言うときに謎の少女に助けられる・・・ というあらすじ。
脚本が虚淵さん、キャラクターデザインが小畑さん、
監督がアニメ進撃の荒木哲郎さん、ワーナー資本Netflix配信ということで、
めちゃ当てにきてるな? という気合を感じました。

ボーイミーツガールもの、都市崩壊、美麗な背景作画、キャッチーな曲、
ちょっとサークル交流っぱいニュアンスで、
難しい設定やドロドロした人間関係、難解な長台詞はナシ。
「君の名は。」を含め、ヒットしたアニメを分析して作られたのだろう。

バトルクール(パルクール)の動きがよかったです。

内容ばれ

主人公ヒビキが謎の少女ウタに惹かれていく過程をシチュエーションや台詞だけではなく、
パルクールでも表現していたのが今風だなと思った。
人魚姫モチーフの話なのでウタはスピリチュアルな存在かつ
主人公への恋愛感情以外の情動が薄いのですが
知能がないわけではないですよ、という知的好奇心のシーンもあったので
一応配慮をしていたのだろう。

当たる要素を組み合わせたお話だけども、
今のところ勢いは弱いようだ。
「君の名は。」が当たった時と今は、
客の求めているものが微妙に変わっている気がするけどどうだろう。

気になったのは、幼い頃、日常生活が困難なほどの聴覚過敏描写があったヒビキが
ウタと出会えて本当の自分になれたことで、それが治ったような表現だったが
それはちょっと…!?ということと、あと
もうすぐ公開の映画「ONEPIECE FILM RED」のヒロインの名も「ウタ」で、
当然ながら歌がキーとなり、予告に「ウタ!」と名を呼ぶシーンがあって、
偶然かぶったのでしょうけど、両方のスタッフのかた
「ウワー!」って思われたのではないかしら……。




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「ハケンアニメ!」

2022年05月22日 | 成長モノ
伝説の天才アニメ演出家の復帰作品と、
新人女性演出家のキャリアをかけた初監督作品が
同じ時間帯に放映されることになり、
2つのアニメは視聴率バトルを煽る形で宣伝される。
創作に身を捧げる2人の監督の、仕事エンタテインメント映画。
2012年から2014年まで連載された、辻村深月さんの同名小説の映画化。

作中作のアニメ
「サウンドバック 奏の石」と「運命戦線リデルライト」が
よくできていて、1クール2本のアニメを見守ったような気分になりました。
ピンクとブルーで色分けする演出もよかった。
架空の世界が好きで創作が命という登場人物が多く
ともかくこれが好きだ!という情熱を浴びる作品。
でもガチオタク向けというわけでもなく
非オタクのひとも楽しめると思います。

ただ、責任ある仕事をしている女性が詰められまくって詫びたり
うっすらセクハラを受けて我慢する描写があるので、
現在お仕事でストレスを受けている女性にはきついかもです。

エンドロール後に1シーンあります。
内容ばれ

原作だと3人の女性がそれぞれ主人公になるのですが、
映画は斎藤監督がメインになり、
作画の並澤さんのエピソードはほとんどカットされます。
(リア充の人が「リア充」をリアルしか充実してないという蔑称だと勘違いする部分は残った)

並澤さん、オフの日に外出先から無理やり呼びつけられ、
自分の仕事場でもなく自分の仕事道具もない状態で、複数の人が見ているなかで
超特急で絵を描かされて、せめて自分の名前は入れたくないと交渉しても
名前を入れさせられるの、地獄かよ…せめて相場の金額の倍をもらうといいです。
でも素人の想像する神絵師そのままの挙動でした。

皆の拘束時間を延ばして頑張ればクオリティが上がるという表現だったため、
現在の日本のアニメ業界の一番の問題点、
低賃金とやりがい搾取を100%スルーだったのは少し気になりました。
それでも視聴者が「サバク」と「リデル」に熱狂していく様子は魅力的だったし
この2本のアニメを見られて、毎週キャーキャー言える人たちが羨ましかった。
とくにリデル、序盤から「主人公と黒い子の百合では…」と思ってたんですが
百合大勝利のラストっぽかったので、脳内のSNSが二次創作で溢れました。

伝説の天才演出家の王子監督のモデルは、幾原監督だそうです。
ということは「ヨスガ」は「ウテナ」なんでしょうね。

原作は辻村深月さんのほかの作品とリンクしているのですが
映画版ではカットされたようです(私が見落としてなければ)。

ルックスで大人気だが演技が棒という設定の女性声優さんを、
高野麻里佳さんという声優さんが演じておられましたが
本当に女優さんのようなルックスに100%のアニメ声をなさっていて、
私は声優さんに全く詳しくないので知りませんでしたが、
こんな架空の存在みたいな方が実在するとは!

時々思い出したように差しはさまれるオタクネタは、なくてもよかったかもだ。

予告映像
https://www.youtube.com/watch?v=Y1Xjo79xzaI


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