映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「アムステルダム」

2022年10月30日 | サスペンス映画
第一次世界大戦で親友になった男女3人が、
将軍暗殺事件に関わったことから命を狙われるというサスペンス。
実話ベース。でもなんとなくのんびりしたテンポの作品。

クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、
ジョン・デヴィッド・ワシントン、ラミ・マレック、
ロバート・デ・ニーロなど、出演者がとても豪華です。

監督デヴィッド・O・ラッセルは姪へのセクシャルハラスメントと
現場でのパワーハランスメントの両件で、
しばらく(7年ほど?)監督業から離れていたとのこと。
7年でカウンセリング、謝罪、等が済んで解決したと考えていいのかな…?

「世界にひとつのプレイブック」「アメリカン・ハッスル」とは
少し違った作風に感じられた。
複数の独白が入って、登場人物の空想が混ざり、
名前紹介が遅れたテンポで出るあのテイスト、
少しテレンス・マリック監督やウェス・アンダーソン監督ぽい?

クリスチャン・ベール、「フォードvsフェラーリ」と同じく、
不自由そうに生きる風変わりな人物でとても魅力的だった。
豪華なキャスティングなので画は贅沢で、
俳優さんの演技は圧力が高かったが、内容はやや薄めかも。

ラストまでばれ

クリスチャン・ベール演じる医師が非常に儚い印象だったので
ラストまで生きられるか?大丈夫か?と心配してましたが
まあとりあえず生きてた。あのあとどうなったかは分からないけど。

以前は美しかったクリスチャン・ベールの肉体は
大戦で醜い傷を負い、その背を撫でまわして性的に興奮する妻、
やめてほしいと懇願する夫、というマニアックなシーンがありました。
ふむふむなるほどね!
全身にめり込んだ破片を摘出する手術を受ける
クリスチャン・ベールとジョン・デヴィッド・ワシントンが
互いの手を離さないという友情のシーンもあった。
ふむふむふむふむ!

散漫な印象のまま終盤に入ったが
ロバート・デ・ニーロの演説でぎゅっと締まって
サスペンスっぽい体裁がついた。さすが名優の仕事。




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「RRR」

2022年10月23日 | バトル映画

「バーフバリ」のS.S.ラージャマウリ監督の新作。
大義を持った2人の英雄が出会い、偽りの身分のまま友情を結ぶが、
やがてその大義が激突し、苦悩に身を焦がされるという超直球な物語に、
恋や民族運動、あっと驚くアクションシーン、歌に踊り、信仰、
ありとあらゆるエンタテインメントをぶち込んだ娯楽超大作です。
インド独特の世界観と画作りが花開いて、実写とアニメと歌劇のハイブリットみたいな映像でした。
(英国完全悪なので英国贔屓の人にはつらいかも。あと痛いシーンはそれなりにあります)

温順な性質の森の部族を守る戦士ビームは、
英国の総督夫人に連れ去られた少女を取り返すためデリーに潜伏していたが
そこで鉄道爆発事故に巻き込まれ、飛び込んできた見知らぬ男と息の合った救出活動で
少年の命を助ける。
勇敢で優しい気性の男を好ましく思ったビームは男と親しくなるが、
彼は総督より直々に森の戦士を狩る役目を仰せつかった警官、ラーマだった…というあらすじ。

Wikipediaを見て主役2人が実在の人物だったことを知りました。
実際は出会わないまま亡くなっている独立闘争の英雄なので歴史IFものなんですね。
それで、どう見てもビームが年上だが兄貴…?と思ってましたが
実在のラーマがビームより年上だった。

Komaram Bheem (1900/1901~1940)
Alluri Sitarama Raju(1897/1898~1924)

映画を見てから2日経ってますが、まだこの曲が頭の中を回っています。
(わりと目玉のシーンなので、鑑賞予定の人は見ないほうがよい)
https://www.youtube.com/watch?v=OsU0CGZoV8E

ラストまでバレ

ダンスシーンもそうだし、肩車アクションシーンも、
「絶対に頭の中の画を成立させる!」という鉄の意志と技術の円熟を感じました。
人が思いついてもやらないことを、100倍派手にしてやり遂げている。
邦画だったらどういう映像になるかな…って想像するんですけど、
照れが入っちゃうと思うんですよね。あとまあ、しょぼくなるか、おとなしくなるか。

その辺に生えてる雑草でエリクサー生成か?とか、
ダイナマイトがあまりにも無防備かつええ感じに誘爆させる保管すぎとか、
マッリのお母さん生きてたにしては気絶した様子が死体すぎとか、
総督夫人その棘付き鞭は寝室で使用するやつなので?総督は毎晩豚なので?とか、
突っこむところたくさんありすぎますが勢いが強くてまあいいか…ってなります。
普通の映画だったら終盤の見せ場級のハイカロリーシーンが20分に1回くらいある。

今年見たドラマ「ミズ・マーベル」で分離独立が印象的に扱われていて、
それで先日の女王の逝去の時のインドの人たちの反応が理解できたのですが、
この映画の設定の数年あとが、
最近見た「ダウントン・アビー 新たなる時代へ」の年代なので
豊かで文化的な時代というのは搾取なしになりたたないのかも…
一切の搾取をやめると(奴隷労働搾取、女性の無償家事労働搾取、等々)全員慎ましい暮らしをするしかないのかも…
それが嫌な国が時代を逆行して隣国を侵略しているのかも…
などとちょっと考えました。

1点不満なのは、総督の姪っ子さん。尺を割かれなかったので、
保護者的な存在の伯父と伯母を殺した相手を笑顔でハグする少々謎めいた結末。
あと親しくなりたい相手の車を壊して困っているところに声を掛けるってのは野蛮だと思った。
ラーマが持ち掛けたアイディアを、ビームが「そんなことしてはいけない」と言って欲しかったかな。

ラーマとビーム、仲良くなっていくシーンがダイジェストだったので
なにかあのあたりのショートムービーがほしいところですね。特典とかね!そういうやつで。



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「スペンサー ダイアナの決意」

2022年10月16日 | 実話系

悲劇のプリンセスとして知られるダイアナ妃が、
1991年のクリスマスイブに
王室の慣習として親族が一堂に会するサンドリンガム・ハウスにて
追い詰められ神経をすり減らし、やがてある決断をするに至る3日間の話。
実話をもとにした寓話であると冒頭で提示されます。

王室には何十年も、または何百年も続いてきた慣習が無数にあり、
(クリスマスのゲストは滞在前に体重を測らなくてはならないだとか、
寒くても暖房を入れられないであるとか)
理由は不明ながらそれを厳守せねばならず、
スケジュールおよび衣装まで厳密に定められていて、
感情や気分の出る幕は一切ない。
そしてダイアナは常にマスコミの標的にされており、
本来なら彼女を守って安心させてくれるはずの配偶者は不倫に耽溺して、
彼女をさらに苦しめるのだった。

あの髪型のせいかクリステン・スチュワートがクリステン・スチュワートに見えず、
かなりダイアナ妃に見えました。
しかしダイアナ妃よりも痩せておられて、不安になるスタイルだった。
ファッションはどれも素敵でした。
摂食障害、不潔恐怖症、幻覚、自傷、鬼気迫る演技だった。
しかしこの映画のなかの彼女の症状、あそこまでいくと
薬で劇的に改善したのではないかという気がする。
専門医にかかるべきだったのでは。作中でも言われてたけど。

注意、嘔吐あり。

女王陛下の犬がかわいい。

ラストまでばれ

パブロ・ラライン監督。
「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」の監督なんですが
神経の細い女主人の苦悩と、それを支える女のしもべの話が監督の性癖なのだと思う。
今回、「ジャッキー」のアップグレード版だった。

王家には、機械のように淡々とすべきことを365日こなせる、
感情と気分を締め出しても壊れない、鉄の強さを持つ人が向いているのだと思う。
自分の気分や心を常に大切にするタイプはあんな生活には耐えられない。
彼女のような女性には、常に彼女を気にかけて見守ってくれる
毎日助言や励ましをくれるメンター兼保護者兼恋人が必要。
(もしかすると世の神経の細い女性はそれを求めて宗教に走るのかも、
あるいはモラルハランスメント配偶者にハマってしまうのかも)
ロイヤル不倫やろうには当然その役目は務まらないので、
彼女は何度も不倫に走った(映画ではそこのところは描かれなかったけども)。
しかし母親に「お母さんがおかしなことをしたら教えてね」って言われて
その後「いまおかしいよ!」って告げないとならない子供のつらさよ…。

キジの譬え、
キジは頭がよくないので、放してやってもそのへんで死ぬという話、
そして冒頭のキジ、ダイアナ妃の死因を考えると皮肉きついな?

ダイアナ妃への忠告通り、王室の人たちは彼女に対して
比較的親切だったのだと思う。少なくとも害意はなかった。たぶん。
それとこの映画はダイアナ妃視点でしたが、
王室視点の映画が2006年「クィーン」で
ダイアナ妃の死のエピソードがあります。併せて見ると興味深いかも。





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「デュアル」

2022年10月09日 | サスペンス映画


ヒロインは難病に罹り死を宣告されて
民間のクローン作製サービスを利用し、
自分の死後もクローンが遺族を慰められるように手配する。
しかし数パーセントの確率で生き延びた彼女は
生存権を訴えるクローンと、生命を賭けた殺し合いをすることになる…というあらすじ。

YAっぽい、バトルあり、心理戦ありのドキドキSFかと思ってたら
わりとダークな、微SFサイコスリラーだった。
主演はカレン・ギランさん。めずらしい、もっさり女子の役。

注意:犬の残酷死

ラストまでバレ

うん?う~ん…?という感じだったんですが、
たぶん特訓シーンがいい感じに盛り上がりすぎたので
大激突を期待してしまったのだと思います。
あのラストにするなら特訓シーンをあんなに魅力いっぱいに描くべきではなかったかも。
バランス的に。

比較的弱弱しいタイプの主人公を肉体的に鍛えるのと同時に
えぐいホラーを見せてグロ耐性をつけたり、
お金がないという主人公を、じゃあ代償として…
とか言って夜中にダンス習ったりするのがちょっと面白かった。
(そして運動神経のいいコーチがなぜかダンスヘタッぴなのも良かったです)
ハンガーゲームだったらコーチが助けてくれる展開だったんだけどなあ。
あとなんか特に必要と思われないところで犬がめちゃ残虐死したり、
片方が性犯罪に遭ったっぽい双子の姉妹が一瞬出てきたり、
「……?」という箇所が所々あった。

あなたの親しい人に、もしそっくり同じ顔と肉体を持った人物がいて
そのダブルのほうがあなたに対して親切で、明るく、魅力的であった場合
あなたはどちらを選ぶか。
オリジナルであるというのは、実はそれほど重要ではないのでは?
という皮肉を感じました。
あと割と人の意見に影響されやすく、なんとなく生きているオリジナルが、
生きるために必死で、いつも全力なダブルに勝てる訳ない。

本当に2人で逃げたケースもあったのだといいんですけど。
というか法律があのクローン会社に有利すぎる割に
会社はそれほど大きくなさそうだったところに予算の限界を感じました。
(あと冒頭の決闘ショーの規模の小ささにも)


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「ダウントン・アビー 新たなる時代へ」

2022年10月02日 | 時代劇

20世紀初めのヨークシャーの伯爵とその妻、3人の娘、
そして使用人たちが、カントリーハウス「ダウントン・アビー」で過ごす日常を描いた
英国のドラマシリーズ、映画版続編です。

今回はヴァイオレットお祖母様が若い頃に交流のあった侯爵からフランスの別荘を遺され、
家族全員仰天するが、その侯爵の子息から招待を受けて別荘に赴くパートと、
ダウントンで映画撮影をしたいという申し込みがあり
屋敷の修復費が必要だったメアリーが了承して撮影が始まるパートが交互にあります。

あい変わらず映画版は、誰も裏切らないし誰も不貞を働かないし暴力沙汰も変死もなく平和。
私はドラマ版を吹き替え放映で見ていたため、今回も吹き替え版を見たのですが
訛りと言葉遣いネタがあったため、吹き替えで良かったかもと思った。
たぶん英語だといまひとつ分からなかった。

ラストまでばれ

いつかはそうなると思ってましたがとうとう…。さみしい…。
イザベルさんを一番信頼なさってたんだなというのがよく分かる行動とセリフでした。
ヴァイオレット様はクリノリンの登場や(あ、モスリンだったかも)
写真機の発明、様々なものを見守ってきた、いわば歴史そのもの。
その知識や知恵や気概がグランサム伯爵家に引き継がれていくというお話ですね。
(しかしこのあともう少しすると、平民の就職口の種類が増えて人件費が上がり、
マナーハウスの暮らしが立ち行かなくなってくる)
メアリーに仰った「私たちのような女は二通りの道しかない。ドラゴンか、愚か者よ」
というような意味の言葉、グランサム伯爵家の女性たちはみなドラゴンになりそうですね…。

今回もお屋敷、衣装、調度、何もかもよくて堪能しました。
みんな仲良くて何よりだが、独身者の存在は許さないとばかりに
根こそぎ誰かとくっつけようとする巨大な圧力にちょっと笑ってしまった。
パットモアさんまでカップルにするというこだわりぶり!

トーマス…強引な男に弱い。
しかしお前が本編中でやらかした非道の数々を贖うには、
あと10回くらいは男に捨てられなければならない…。




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