映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「キューブリックに魅せられた男」

2019年11月20日 | ドキュメンタリー

監督トニー・ジエラ
「バリー・リンドン」に起用された若手役者レオン・ビターリさんが
キューブリックの才能に心酔して彼に弟子入りし、
監督が亡くなるまで右腕として働き続けた経過を追うドキュメンタリー。
天才の天才たるエピソード満載で、
キューブリック作品の撮影風景がふんだんに使われています。
完全にファン向け。
(しかし仕事で追い詰められている人は見ないほうがいいかも…)

気さくで人懐こい面がある一方で、表現者としてのキューブリックは
完全主義者で妥協を許さないし、
人が100%の力を出しても決して満足しない。
なぜなら天才の彼が映画に対してすべてを捧げているから。
セリフをトチった役者をすぐにクビにして、
美術監督を精神失調に追い込んだ監督の冷酷な面が描かれます。
キューブリック作品の撮影風景が幾つか映り、
現在のハートマン軍曹役のかたや、
ダニー・トランス役のかたがインタビューに答えます。

睡眠時間2時間の激務に耐え、
ドアマットの上で眠り、体重は落ち、それでも彼は忠実に監督に仕えます。
周囲の人曰く「奴隷のように」。

内容ばれ

この人を、監督あるいは撮影監督として育て、
独立させてあげることもできたと思うけど、
キューブリック監督はそうしなかった。
監督の死後、生活に困窮して息子を頼るほどの賃金しか与えず、
またキューブリックのイベントから存在を無視される程度の
権限しか持たせなかった。1人の人間の人生を使い潰した。
なぜならたぶん監督には才能がありすぎて、体が1つでは足らなかったから。
サブの体として最後まで使いたかった。
それでもレオン・ビターリさんは、天才の仕事に関われて幸せだと語ります。
凄まじい話。
でも激務に耐え、70を越えていまもお元気そうなのはよかった。
きっと頑丈でいらっしゃるのだろう。
キューブリック監督の仕事を、平均的に才能のある8人くらいで分担すれば、
奴隷労働は必要ないと思うけど、8人分の成果を1人であげちゃうのが
天才ってものなのかも。つまりはコスパがいいってことなのかも。

子供の頃、戦争で人格の変わった父からの虐待に怯えていた
レオンさんのエピソードが語られ、
観客になんらかの結論を導き出させようとするこの…
うん…何が言いたいかは分かりますよ。

余談だけど「ROOM237」の話がチラッとでていたけど、
スーパー深読みに対してはプススス、という感じでした。そりゃそうだよね。
あと日本語のフルメタルジャケットの宣伝が流れた。



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「キューブリックに愛された男」

2019年11月19日 | ドキュメンタリー

アレックス・インファセッリ 監督
お得なコンビ前売券を買ったので、
「キューブリックに愛された男」
「キューブリックに魅せられた男」
を連続で見ました。
「愛された男」のほうは監督の運転手を約30年務めた
イタリア系移民の男性の話。
「魅せられた男」は監督に惚れこんで役者を廃業し
約30年彼のアシスタントを務めた男性の話。

過去作品の撮影風景が見られるのも、
天才の残酷さが垣間見られるのも断然「魅せられた男」のほうなので、
キューブリックファンがどちらか見るなら「魅せられた男」のほうですが、
対称的な内容のドキュメンタリーなので、比べながら見るのは面白いです。

1970年、タクシードライバーだったエミリオ・ダレッサンドロさんは
映画会社の依頼で、雪の夜にある大道具を運ぶが
それは「時計じかけのオレンジ」の例の巨大なアレで、
彼はそれがきっかけでキューブリック監督に気に入られ、
長い期間彼の運転手を務める事になります。

彼はキューブリックの映画を1本も見た事がなくて
仕事を引退するまでとうとう見ないままだった。
でもそれが幸いして、監督と
人間同士の付き合いができたのではないかと思います。
キューブリック監督には、人懐こくて思いやりのある面「も」ある。
そちら側を描いたドキュメンタリーでした。

ラストばれ

故郷に帰るエミリオさんが別れの挨拶を述べようとすると
半泣きで「やめろバカ!」ってさえぎったり、
イタリアに帰るとすぐに電話をかけてきてくれたり、
映画に出させてくれて、
トムクルーズをはじめとする並居るスターの前で
妻共々丁寧に扱ってくれたり、
ホンワカエピソードの連続でした。
亡くなる直前に過労で弱って、
「猫に飲ませる錠剤がうまく割れない」
って言っていたという(監督は超愛猫家)監督の話は、
すごく生々しかった。

ラストもよかった。
一番好きな作品は「スパルタカス」ですって言ったら
監督が嫌な顔した話。
そういう、映画監督にとって異種族であるエミリオさんだからこそ、
むしろ礼節を持って接したのだと思う。
「キューブリックに魅せられた男」を見てそう思った。



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「ブライトバーン 恐怖の拡散者」

2019年11月18日 | ホラー映画

監督デヴィッド・ヤロヴェスキー
子供に恵まれなかった夫婦が、墜落してきた謎の飛行物体の中に
赤ん坊を発見し、自分達の息子として育てるが、
やがてその子はスーパーパワーを発揮し…という、
冒頭はスーパーマンそのもののスタート。
しかし子供は戦闘的な種族の生命体で、
やがて地球人に対する侮蔑と攻撃本能を抑えきれなくなり…
というあらすじ。どっちかというとホラーです。

ダイナミック反抗期。
気性荒めの男子くんは、地球人でもこんな感じじゃないだろうか。
お父さんお母さんお疲れ様です。

痛いシーンがあるので、苦手なひと注意。
そう、予告であったあれです。

内容ばれ

最初の蜂の話、ミツバチが命と引き換えに
高熱でスズメバチを殺す伏線かと思った。

暗黒スーパーマンはすでに「ザ・ボーイズ」で見ていたので
インパクトが薄れてしまったのは惜しい。
こういうアイディアはスピード勝負ですね。
というかお母さんが「ザ・ボーイズ」見ていれば
重大なヒントがあったのに…!

一応子供は死なない配慮はあります。
目に尖った異物が突き刺さった場合は、
抜かないのが鉄則だった気がする…と検索しましたが
やっぱりそうでした。抜いちゃ駄目です。中身が出ちゃう!

エンディングの縄持った魔女はワンダーウーマンさんで、
半漁人はアクアマンさん!?みんな残虐超人なん!?




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「エンド・オブ・ステイツ」

2019年11月17日 | バトル映画

エンドオブシリーズ3作目です。
毎回監督が違いますが、今回はリック・ローマン・ウォーさんというひと。

仕事での負傷が原因の頭痛と不眠症に悩まされていたマイク・バニングは
周囲にそれを隠して任務にあたっていたが、限界が近付きつつあるのを感じていた。
大統領護衛中に襲撃事件が発生し、頭痛により後退していたマイク以外
同僚が全員死亡して…というあらすじ。

あれ?しかし今回の警護対象が、
じわじわと地位が上がってきたトランブル大統領(モーガン・フリーマン)なのです。
これまでマイクが命懸けで守ってきた友人のアッシャー大統領は名前さえ出てこない。
奥さん役も違う人だし、3作目は並行世界なのかもしれん…。

私はマイクが主人公なのかヴィランなのか分からなくなる残虐ファイトが好きなので、
2作目が好きかな…。今回も容赦なかったですけど。

結末ばれ

今回のヴィランは気持ち重くて、もてあまし気味のマイク・バニング…。
しかしなんというかこう、警護対象も敵も協力者も全員ご高齢の男性で
皺だらけの顔のアップが続いて、皺のない人もたまには映してくださいという感じ…。
ジェラルド・バトラー、急に老けこんで実年齢より10歳くらい上に見えるけど、
どうかなさったのか。

お父さんはチャーミング。マイクの残虐ファイトは遺伝だな。
それはそうと、脊椎は怖いから、休職して治療に専念した方がいいよ。


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「修羅天魔~髑髏城の七人」Season極

2019年11月16日 | 舞台

花、鳥、風、上弦の月、下弦の月、と連続公演を行った「髑髏城の七人」、
そのドクロイヤーのフィナーレとなる作品です。
それにふさわしい、驚きと華やかさのあるお話でした。
Season極は、髑髏城の七人という舞台劇から主要登場人物3人を抜いて
1人にまとめたストーリーなんですが、
いやあ、もはや髑髏城に変えるところはないだろう、と思ってましたが、
案外できるもんですな。
現在の中島さんによる、過去作品のアップグレードという感じ。
(でも捨之介、蘭兵衛、極楽がいなくなるというか、溶けるので
彼等に思い入れの強い人には、少し受け入れ難いかも)

主演は天海祐希さん。
舞台がぱあっと明るくなるお姿と、低いドスのきいた声、
緊張感と殺気、男性の役者さんと女性の役者さん、
両方の良いところがある演技でした。
捨之介が背負っていたつらいものが、
女性主人公になる事によって、しなやかに受け流されて、
すごいハッピーエンドの髑髏城でした。
「髑髏城の七人」を見るのは今回で10パターン目ですけど、
とうとう迎えたトゥルーエンディング…って、ちょっと思いました(笑)。
冒頭の口上が
「修羅と仏の一重の境、 渡り歩いて居どころ知らず。
渡り遊女を名乗っていても、紅は血飛沫、吐息は硝煙。
それが定めの極楽太夫!」なんですけど、
これだけで気分ブチ上がりでした…。

ただしこの「極」から見ると、普通にワクワクするスペクタクル演劇なので、
ほかの髑髏城を一度ご覧になってください。
そうですね、私のイチオシはアオドクロですが、
劇場で観るのが難しいので「下弦の月」とか如何ですか。

下弦の月予告
https://www.youtube.com/watch?v=ZlWKOaIC9Gw

一律2000円、割引なしですが、
観劇する事を思えば全然安い。チケットも簡単にとれるし。
花鳥風月極DVDボックスだと、5まんえんもするのです。

2019年現在 ゲキシネ公開予定一覧
http://www.geki-cine.jp/schedule/

オチばれ

男主人公に男狭霧もなかなかよかったですけど、
女主人公に女狭霧もいいですね…!T6といい、これは世界的流行の兆では?

信長なのか影武者なのか分からないというのは、
かなりどきどきする仕掛けでした。
そして捨がいないので、1人足りない!
6人しかいない!どうするの!?というのもかなりドキドキした(笑)。

天魔王がアホだな…というのはシリーズずっと思ってたんですが、
この天魔王はかなり改善されてた気がします。
信長が手出しをせず、ただ愛でていた女を、
どうしても手に入れたくて、それで判断が狂ってしまったという背景が
なんとなく察せられて。

最後、完全復興した無界の里で
極楽太夫が出て来てフィナーレかなと思ったけど、それはなかった。残念。
これまで何度となく虐殺されてきた無界の住人が最後に蘇ったのを見届けて
髑髏城の見納めにしたかったなあ。
勿論あのセリフを太夫が言って、締めるというのも実にいいんですけどね。

まったくどうでもいいことですが、家康の首がものすごくよくできてた。
肌の質感、切断面といい、垂れ下がった何かといい、
舞台レベルの首ではなかった(首評論家)。




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