デンマーク・ドイツの作品。言語はデンマーク語。
封切られたのは14年前の2005年だけど
いまなぜか限定上映をしています。
スキンヘッド、マッチョ、白人男性の主人公は
ヒトラーを信奉するバリバリのネオナチ。
刑務所を仮出所したばかりで、教会の下男として雇われる。
同僚は同じくムショ帰りの、ガソリンスタンド強盗と盗癖のある男。
すぐに銃を持ちだすし、すぐ盗む。
雇い主の牧師は超マイペースな男で、
主人公がどんなに悪態をついても、
それどころか殴る蹴るの暴行をくわえても
まったく気にする様子がない。
主人公はその信仰の強さにイラつくが…というあらすじ。
高度に発達した信仰心はコメディと見分けがつかない。
あるいは高度に発達した信仰心は狂気と見分けがつかない。
信仰についての、人と人の関係についての映画ですが
妙に脱力系です。
牧師は「本当の悪人などいない」と心から思っている
敬虔な信者で、演じるのはマッツ・ミケルセン。
様々な彼が見られるので、ファンは必見です。
猫と鳥が銃で撃たれるのと、人間の頭の中身が出ちゃうので注意。
ラストばれ
牧師は子供の頃に実の父から性的虐待を受け、姉は死に、
息子は重度の脳障害、自分は脳腫瘍で余命わずかという人生で、
それらすべては悪魔による信仰心への攻撃であると強固に考えていて、
それらが覆ると、彼の精神は崩壊する。
私はどの宗教にも懐疑的だが(仏教はブッダになるための学問だと認識してます)、
彼の信仰にはどうこう言えない。
人は罪を悔いてやり直せるということと信仰がテーマなんだと思う。
(ただしパキスタン人の更生は描かれないので、
取りこぼされる可能性も示唆されている)
ただ、登場人物が猫を撃ち殺したとき、ちょっと宗教について考えたのですが、
「老猫だった」ととりなすシーンがあって(たぶんコメディ文脈)、
例えばこれ人間相手の、例えば性暴行だった場合どういう言葉になるんだろう。
(実際、盗癖ぽっちゃりの過去の罪状に性暴行があった)
あなたは年寄りだから許しなさい?
主語が巨大になるが大抵の宗教は、繰り返し改心しては再犯する者がいた場合、
罪人の改心を助け、被害者の許しを促し平穏へと導く
というスタンスだと思いますが、、
加害者に寄り添い更生を助ける姿勢が被害者を量産するとしたら、
果たしてそれは善だろうか…?
牧師とネオナチマッチョとアップルケーキのエピソードは微笑ましいし、
運命の出会いだなって思いました。
(FBI捜査官ウィル・グレアムを地獄に導いた
「ドラマ版ハンニバル」の真逆バージョンですよね!)