映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「真実」

2019年10月16日 | 人情系

フランスを代表する大女優が自伝を出版することになり、
彼女の屋敷に娘夫婦や元夫がやってくる…というあらすじ。
是枝裕和監督最新作です。
予告だと、自伝に何か秘密や、不穏なことが書かれており
それに関してトラブルが起きるようなイメージでしたが
どちらかといえば「話盛りすぎ!」とか
「私についてなにも書いてない!」とかそういう
淡々とした内容でした。

カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュが母娘役で共演。

監督のこれまでの作品は
どちらかと言えば父親の話が圧倒的に多く、
ダメ父、問題のある父に執着する娘や息子という内容が
特に繰り返され気味だったので、
父子ドリ好きなのに母親とか描ける…?って心配してましたが、
なんかやっぱり他の作品よりは薄味に感じられました。
(個人の意見です)
でも人格に問題のある父親に振り回される周囲、
という内容の映画は、世界にウジャウジャ無数にあるのに対し、
その母親版はとても少ないので、1作増えたのは喜ばしいです。

終盤までばれ

母親が出ているSFの話がとても面白そうで
こっちの映画を見たいよ!って思ったんですが、
ケン・リュウの小説だったのか…(「母の記憶に」)。

「確かに私は悪い友達、悪い母親だったけど、
良い母親でヘタな役者よりはマシ」ってお母さん言い切ってて
それはそれで清々しかったですね。
そしてそこまで自負している演技について、
天才新人(かつて演技で勝てなかった死んだ親友似)に負けそうになって
アワアワしているところ、the人間!the業!という感じ。

亀のピエールのエピソードがかわいかった。

エンドロールの意図はよく分かりませんでした。
アジア映画っぽくNG集でもやるのかと思ったら違った。


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「イエスタデイ」

2019年10月15日 | 恋愛映画

監督ダニー・ボイル
脚本リチャード・カーティス(ラブ・アクチュアリー監督脚本)

ミュージシャンを目指している主人公。
女教師の幼馴染がマネージャー業を務めつつ励ましてくれていたが、
鳴かず飛ばずで彼は廃業を考えていた。
そんな時、主人公は交通事故に遭い、
目覚めた彼は、その世界にビートルズが存在していない事に気付く。
彼等の楽曲をカバーした主人公はたちまちスターに…というあらすじ。

どちらかといえばメインはラブストーリーです。

主人公は記憶だけを頼りに、
ビートルズの楽曲を全て復元しようとするんだけど、
歌詞がどんどん胡乱になっていくところ、フフって思いました。
きっとそれぞれの曲の知識がもっとあれば
更に面白かったんだろうな。
ビートルズの曲って、耳に馴染みすぎて、
初めて聞いたらどういう感じなのか想像が難しい。

ケイト・マッキノン演じる敏腕プロデューサーの
存在感というか圧がすごかった。
本人役エド・シーランはめちゃ噛ませ的存在だったけど
あれでいいのかな…?自分でサリエリとか言っちゃってたな。
ラップに関して侮辱された時の表情、
いかにも上品な文化人という感じだった。

オチばれ

コカコーラとか、オアシス(ミュージシャン)とか、
煙草とか、他にも色々なくなったものがあって、
オチはハリポタもなくなってた!なんだけど、
自分が全7巻あの内容を記憶だけに頼って復元できるかと言えば
それは絶対ムリだろうなと思います…。

お友達のダメ男さんが、
最終的に叔父さんポジションみたいになっちゃってるの面白いし、
主人公のお父さんもめちゃ味わい深いひとだし、
(マッキノンPも金の亡者なだけだし)
悪い人のいないホンワカ世界で良かったんですが、
ギャビンの扱いがひどすぎた点は納得できないし、
壁から女が生えてきて、その子とくっついたのはもっと不可解です。
魚類じゃないんだからさあ!もうちょっと何かあるじゃん!

停電12秒の間に世界の書き換えが起こったとも考えられるし、
事故で頭を損傷した人々が、
何か共通の存在しない楽曲のイメージを受け取ったとも考えられますね。


ビートルズと同時代の
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の話
両方の作品オチばれ注意!

シャロン・テートが殺されなかったIF話と
ジョン・レノンが殺されなかったIF話が、
同時期に上映されるとは何という偶然。
1969年と1980年の、この2件の殺人事件、
なんとなく繋がってると私は昔から思っていて、
マンソンファミリーのリーダー、チャールズ・マンソンは
ビートルズの楽曲「ヘルター・スケルター」に
インスピレーションを受けて人種抗争を引き起こそうとしたし、
ポランスキー監督の「ローズマリーの赤ちゃん」は
登場人物がダコタ・ハウスに住んでいる設定で
建物を撮影しています。
ダコタ・ハウスはジョン・レノンの住居で、
彼はそこを出たところで撃たれました。

主人公があのままずっとスターを続けていたら、
ジョンの運命を肩代わりして撃たれていたかもしれないな、
と思います。
(しかしヨーコ女史は、あれ亡くなった設定なんか?)




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「ジョンウィック パラベラム」

2019年10月14日 | バトル映画

むかしのサザエさんのOPのように、
ジョン・ウィックが気球に乗って(嘘です)
色々な土地に行き、色々な殺しをするお話。
昨今珍しいくらいたくさん人が死にますが、
一気に爆殺とかそういう雑な殺しではなく、
職人が丹精込めて一人一人殺します。
眼球や手のひらに刃物が突き刺さったり、末端を切断したり、
足の親指の爪がバリっと剥げたりするシーンがあるので
(あのシーン必要か?)苦手なひとは注意。
犬くんは死なないけど、ちょっと痛い目に遭います注意。

今回は人間のアクションも凄いけど、
犬くんのアクションもすごいので、戦う犬くんが見たい方は是非!

あらすじ
掟を破り、全世界の賞金首となったジョン・ウィック。
彼の逃亡に手を貸した嫌疑をかけられたコンチネンタルホテル支配人や、
キングも制裁を受ける。
ジョンは様々な人を頼って世界を渡り歩きます。

内容ばれ

ジョンのファンの鮨屋団が面白かったです。
ヤヤン先生、ジョンとの戦いを楽しみたくて
ジョンが倒れたら手を貸して起こしてしまうところ、
「ザ・レイド」の彼の役柄マッドドック先生を思い出しました。
ジョンに上着を剥かれて「ハッ…!☆」ってなったシーンは、
乙女ゲーの素材にしか見えなかった。
(そしてヤヤン先生の役名「シノビ」だった)

ジョン、本当に知り合いが多いし、みんなに好かれているので
副業でビジネス書とか出せばいいのではないか。
「無口人間のコミュニケーション」とかって。
でもまあジョンの場合は、「めちゃくちゃ仕事ができて人柄も信頼できる」
これに尽きるんだろうな。

ジョンはどうやらロシアの少数部族?出身で
そこは女子はバレエ、男子は格闘技を仕込まれる様子。
ブラックウィドウが暗殺技術を学んだレッドルームや、
映画「レッド・スパロウ」に出てきた諜報員養成学校を思い出します。
しかしよく奥さんと出会えたねジョン。
このカップルの馴れ初めが知りたい2019第一位。

あの世界の人、みんな犬派なんかしら…。



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「HiGH&LOW THE WORST」

2019年10月08日 | バトル映画

仮想日本の関東で群雄割拠が繰り広げられるSWORD地区、
その一角を治める鬼邪高校を舞台にしたスピンオフ映画。
同名のドラマ版があって、この映画はその続きの話となります。
しかしドラマ版とは関係ないエピソードが半分を占めるので
この映画版をお試しに見てみるのもよいかもしれません。
それでアクションと世界観が気にいったらHiGH&LOW THE MOVIEへ、
鬼邪高の生徒が気になったらTHE WORSTドラマ版へ(huluで視聴可)
鳳仙の生徒が気になったら漫画「クローズ」へどうぞ。

エグザイルを擁するLDHには謎の資金力があって、
美術とアクションが邦画にあるまじき出来栄えです。
芳醇な予算の香りを感じて頂きたい。予算の香りはフルーティですよ。
老舗芸能事務所の売り出しタレントがねじ込まれたりもしないので、
キャラクターも比較的自由度が高い。

校舎と体育館と団地をよく見てください。作画コスト……ってなります。
アクションのアイディアも豊富だし、新しい事をやろうという姿勢が強い。
なによりカメラワークがすごい。
もうちょっと引いてほしいとかズームしてほしいとか不満が一切ない。
めちゃくちゃリズムよく動くし、まさにそこ!というタイミングでピタっと止まる。
特に地獄河原の決闘の序盤がゾクゾクしました。
団地戦は城攻めっぽくて燃えた。

ただ、ヤンキー価値観を基準に考えられた話なので、
ドラマ部分がクラシックすぎて人を選ぶのと、
ヤンキーが大声で怒鳴ったり、小突き合ったりするのが苦手なひとには
おすすめしません。

あらすじ
鬼邪高と鳳仙が戦うヨ!
(東映の「仮面ライダーVSスーパー戦隊」的に)

内容ばれ

予算、いくらあっても爆発!!とか空撮!!とか首都高速封鎖!!とか
そういうのじゃない。そういうのじゃないんですよ。
LDHはお金の使い方がうまいんですよ。

このドラマ版がスタートする前は、「轟さんが噛ませになって、
新しい登場人物にボコボコしされたら嫌だね」って言ってたんですが、
むしろ新しい登場人物全員に狙われ、
村山さんに人生を変える諫言を貰い(ドラマで)少し学び、
ちょっとだけ仲良しができて、また少し学ぶという
轟さん成長の物語でもあったので、心から良かったなあって思ってます。
(それに結局村山さん以外には負けてないしね!)

村山さんは基本的に人が好きで、興味があって、
戦う人とか、その理由とか、勝った瞬間とか負けた人とかを見るのが
とても楽しそうなんだけど
轟さんはべつに人とか嫌いで興味なくて殴っても勝っても負けても
楽しくないんだろうな、そこが違うんだろうなと思います。
でも今後は変わるのかも。高校生だもんね。

ところでドラマだけだと、ふじつかコンビ一強に思えたんですが
映画をみると、ふじさち、ふじとど、ふじあら、
と対抗カプが百花繚乱、これは血を見るのでは!?って
ジャンル識者に聞いたら、そうでもないそうです。

ん?という点は、ドラマ版から思ってたけど、
共働きの家は貧乏、お母さんが夜まで仕事してるのは貧乏かつ不幸って、
何世紀あたりからまろびでた価値観なのか。
あとお母さんの医療費、上限以上は還付金で返ってくる筈だけど、
健康保険制度がないのか(暴対法はあるのに)?
保険対象外の癌なのか?だったら300万なんか秒で消えますぞ。
それと人の心のない冷たいエリートは不良より不幸とか、
エリートは不良に憧れるとかは、ふふって思いますけど
指導室で突然曲がったキュウリの話を始める生徒はこわいし、
先生の世代だと金八先生を思い出すんじゃなかろうか。
そしてあの世界に妹は一体何人いるのか(お姉ちゃんはおらんor死んだ)。

村山さんがこれで卒業らしいと聞いて淋しいのですが、
SWORDが交替するのがすごく嫌なんですよ!
仕方ないとはいえ客演のひとから抜けていくのも嫌だ~。




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「ジョーカー」

2019年10月07日 | 精神系

精神疾患を抱えて母と2人貧しく暮らすアーサー・フレックは、
ピエロに扮して日銭を稼ぎながらコメディアンを目指していた。
しかし国の福祉の予算縮小によりカウンセリングのサービスを受けられなくなり、
薬の入手もままならず、とうとう失業してしまったアーサーは追い詰められ…
というあらすじ。

見る人の年齢や経済状態や心身疾患の有無で感想の変わる映画。
アメリカでは(以前「ダークナイトライジング」プレミア上映会で
ジョーカーに感化された青年が銃を乱射した事件も踏まえて)
暴動を警戒して、劇場に警官が配備されたと聞きます。

作るなら今この時しかない、最高のタイミングの話だった。
貧富の差が拡大して、どこの社会も貧者を弱らせて殺して、
国の負担を減らそうとしているのではないかという厳しい状況で
強い共感を得られる映画だと思う。

「社会が差別に敏感になったいま、昔のようなコメディは作れない。
だからこの映画を撮った」というような意味の事を監督が述べて、
本国でちょっと燃えた。
(差別にうるさくなったからコメディが作れない!と解釈された)

おちばれ

私は、バットマンの、あの路地裏の出来事の意味合いを、
この映画が変えてしまったところに
おお!っと思いました。すべては主観なので、きっとどれも正しい。
今後もあの路地裏のシーンは撮られるでしょうけど
私はそれを見るたびにこの映画を思い出すでしょう。

同じ階の女性に関して、リプレイして説明したのは
とっても分かりやすくて、多くの人の理解を助けただろうけど、
解釈の幅を狭めてしまったようにも思う。
最初から最後まで全部でたらめ、
最初から最後まで全部本当、どちらのルートも残しておいてほしかった。

優しくしてくれたのはお前だけだ。だから殺さない、というのは
津山三十人殺しの犯人が実際に言った言葉を彷彿とさせたけど、
あれも幻覚だったら素敵だなと思って。

トッド・フィリップス監督の作品に「ハングオーバー!」シリーズがあります。
あれに出てくるアランは、発達障害、鬱病と診断されているが、
裕福な家に生まれ、気にかけてくれる肉親と、
どれだけ加害しても味方になってくれる仲間に恵まれた男性なので、
別アースの幸せなアーサー・フレックだと私は思う。
あとトッド・フィリップス監督のジョークセンスって差別というより
お下劣が8割なので、時流は関係ない気がする。
強いて言えば、お下劣ジョークは徐々に受けなくなってるかなー?くらいの。

殺したいと思った時に、簡単に殺せる道具が傍にあるっていうのが、
そもそも精神にすごい負担をかけるんじゃないかしらと思います。
吹き矢じゃだめかしらアメリカ(ゴッサム)市民?
そして、心身に特に問題なくても日本の普通の独身者は、
あんな広いお家で、あんな凝ったセンスの調度品に囲まれて
生活するのは難しいのでは?
アーサー以上のストレスを仕事で受けている人が多いのでは?
日本が銃社会じゃなかったお蔭で一部の人は命拾いしたなと思います。

あと「このどすこい人はアルフレッド…?ちがうわ弱いもん…」
って思ったら、エンドクレジットにアルフレッド・ペニーワースってあって
解釈違いでした(笑)。従軍経験のないアルフレッドなんだろうか。

余談ですが私と同じ疑問を持った人の無駄を省くために書いておくと
ジョーカーの昇り降りしていた階段は
映画「エクソシスト」に登場した階段、所謂Exorcist Stepsとは違うようです。
エクソシストが38.905601, -77.070191
ジョーカーが40.835996, -73.924215
まあエクソシストで神父は階段から落ちるけど、
結局は1も3も悪魔に打ち勝つ話だもんね。



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