比類ない戦闘センスを持つエージェントのウィル・スミスは
テロリストなどを秘密裏に暗殺する仕事に従事していたが
51歳になって技術の衰えが自覚され始め、引退を決意する。
しかしそんな彼を抹殺しようとする勢力が現れ、
暗殺者が襲いかかるが、
それはかつての自分とそっくりな青年で…というあらすじ。
自分のクローンと戦う男の話。
製作のいかにもブラッカイマーらしい荒っぽいプロットに
監督アン・リーのしっとりした人間味とドロッとしたエゴ、
なかなかいい塩梅だと思うんですが、興行成績は振るわず。
天才的戦闘センスを持つ男が無双する話はアホほどあるので、
もうちょっと分かりやすい差別化を図るべきだったのかも。
天才VS天才のアクションが良いです。
このウィルウィル、スミススミスの状況を作り出したヴィランが、
平たく言うと主人公の気持ち悪いファンなんですが、
もう本当頭がおかしい。
ラストばれ
最後、逃げたら助かったのに
「なんでお前が怒るのか分からない!」って
わざわウィル・スミスに説明に来たのはこわい。
ヴィランは主人公の軍属時代の友人で、
主人公があまりに強くて格好いいので勝手にクローンを作って、
自分の養子にして愛情を注いで育てて
「お前は消防署の前に捨てられとったんやで」とか
「世界中のどの父親よりお前を愛しているんやで」とか言って、
殺人マシーンにしたんですよ。
(しかも最終的にもう1人小さなウィル・スミスが出てきて
ウィルウィルウィル、スミススミススミスに)
なんでウィル・スミスとヤングウィル・スミスが
怒らないと思ったのか、むしろ聞きたい。
でもサイコがパスパスしているひとって、
本当に心から自分は悪くない、
皆が怒るのがおかしいと感じるそうですね。
ヴィランの部屋の壁に、
いかにも頭のおかしなヴィランが飾りそうな絵がありました。
知識の泉インターネットでフランシス・ベーコンの
「ある磔刑の基部にいる人物像のための三習作」という絵であることを知りました。
(割りと好きです)
そしてウィル・スミスの家には
単なる脳筋ではなく文化を解するという記号なのでしょう、
盆栽がありました。
この映画の主人公もウィル・スミスも51歳なのですが、
ヒロインの中の人は34歳、一昔前のハリウッド映画なら
余裕でラブロマンスに発展したでしょうけど、
「若かったら夢中になったと思うけど…」という主人公のセリフがあり、
2人は頼れる相棒以上の関係にはなりません。
監督のアン・リーは60越え、製作ブラッカイマーは70半ば、
脚本家3名は皆50歳前後で、
この意識のアップデートはすごいなと思いました。
(そして明言はされてないがウィルウィル・スミススミスは童貞という設定)
あ、ただ助っ人のベネディクト・ウォン氏は、
やや扱いがマジカルウォン風味だった。