映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「女王陛下のお気に入り」

2019年03月07日 | 歴史映画

監督ヨルゴス・ランティモス

フランスと膠着状態が続く18世紀初頭の英国、
アン女王は、財政を圧迫する戦争を
継続するか終結させるかの決断を迫られていた。
継続派の女傑、マールバラ公爵夫人サラは、
幼いころからの女王の友人で同性愛関係にもあり、
その影響力を政治に及ぼしていた。
ある日侯爵夫人のところに、没落した遠縁の美しい娘がやってきて、
自分を召使として雇ってくれないかと懇願する。
夫人は彼女を台所の下働きとして置くが、
やがて彼女は女王の看病をきっかけに顔を覚えられ、
徐々に女王の寵愛を得るようになっていく、というあらすじ。

3人の女性は実在する人物で、史実が元になっています。
ハートフォードシャーのハートフィールドハウスで撮影された
お屋敷の内部の重苦しい陰、背景の美術品と調度の美しさ、
3人の女性の衣裳、偏執的な美意識でまとめられています。
3人の愛情の話のような、そうでないような、
きれいはきたない、きたないはきれい、という感じの話。
演技合戦が見ものです。
3人全員がアカデミー賞助演・主演にノミネートされた。
オリヴィア・コールマンが主演女優賞をとりました。

同監督「ロブスター」を見ているので、
絶対に明るいラストではないし、
もしかすると小動物が苦しんで死ぬかも、という心の準備はしてました(笑)
とりあえずウサギ虐待はありますが、死なない。
鳥が何羽も死んで血が飛び散るのでそこは注意。

飲み過ぎげろ、食べ過ぎげろ、食あたり(毒)げろ、
フルセット揃ってます。美女のげろマニアの方は劇場へ今すぐ。

ラストばれ

欲望渦巻く宮廷劇であり、監督なりの恋愛物語でもあるような。
夫人の愛は支配と権力欲を伴うものではあったけど偽りではなかった。
アン女王は関心と愛情の餓鬼となって何も見えなくなった。
アビゲイルは他人も自分も道具のようにしか思っておらず、
それゆえに女王の望むまま躊躇なく何でも与えられたが
最後まで愛情からは遠いところにあった。

「私を取り合うなんて最高ですもの」というアン女王の台詞に、ぞわ…としました。
国境と性別を越えて、人間は取り合われるのが好きなんだな。本能だな。
映画とは関係ない現実の話だけど、
通常、人間はなぜか自分への愛情と称賛を疑えないようにできているので、
愛情と関心への飢えは注意してコントロールしなければならない。
最悪、無一文になって死にますよ本当。

この監督の作品は性愛への関心と意欲が高すぎて
「人間に性愛以上の大切なことってありますか!?」
ってパッションで他が見えにくいので、性愛抜きの映画を一度撮ってほしい。
あ、でも「聖なる鹿殺し」を見てないので、それがそうかも。
なるべく早く見ます。

痛風の痛みに牛肉を巻く!?宗教!?
って思ったんですが、冷やしてるんですね。
冷やすのは現在でも行われているらしいです。マッサージはよくないそう。
女王、終盤になるにつれ身体の左側が麻痺しているように見えましたが、
あれは痛風なんだろうか…?そして演技で表現しておられたんだろうか?





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「移動都市 モータル・エンジン」

2019年03月06日 | SF映画

指輪のPJの下で視覚効果を担当されていた、
クリスチャン・リヴァースさんの初監督作品。
同名小説を原作としています。

大量破壊兵器によって崩壊した世界が舞台。
巨大キャタピラに乗った城塞都市、といった趣の各国が、
資源をめぐる潰し合いを繰り広げていた。
負けて食われた都市は解体され、
資源はすべて奪われ、人民は奴隷として労働に従事させられる。
圧倒的武力を誇る移動都市ロンドンで史学を専門とする主人公は、
史学長にして政治的発言権も強いヴァレンタインの暗殺未遂現場に居合わせ、
その不思議な暗殺者の少女と行動を共にすることになるというあらすじ。

移動都市ロンドンのビジュアルは最高で、
オイルの臭いのしそうな駆動部の上に都市があり、獅子像があり、
てっぺんに聖ポール寺院があります。
(ほかにもメジャーなランドマークがあったかもですが確認できず)
小都市を潰して消化するロンドンと熱狂する市民って
植民地主義の隠喩でしょうけど、キッツい皮肉がいいですね。

お話は、たぶん原作が長いのか、かなり駆け足の印象。
これ途中で終わっちゃうのでは…と思ったけど、ちゃんと決着しました。

内容ばれ

シュライクが、本筋を阻害する形になっているので、
この人はもっと尺を増やすか、逆に回想シーンで済ませた方が良かったのでは…
と思いました。
いいキャラクターだったんですけどね。
この人にとって約束は絶対で、人間の心変わりとか
理解できないんだろうなと思うと可哀想だった。
言った3秒後に気が変わったりするからね、人間。
非効率的だよね。
それにしても空中都市、めちゃくちゃ燃えやすいな!

ミス・ファン、格好よかったし彼女の機体と内装は
エキゾチックでおしゃれだった。

量子、フィクション界で俄かに流行の兆し…?
量子の説明、哲学的でよく分からないんですが、
量子のエネルギー?って兵器として使用できるもの?

ヒューゴ・ウィーヴィング、なんか若返られたような!
よく分からない戦争おじさんだったので、
ヘルシングの少佐のように戦争ポエムでもうちょっと自己主張してほしかった。

USAが、ある文字列の一部だったところは上手い!って思いました。

冒頭、唐突にミニオンズが出てきて驚きましたが
配給が同じだからですね。原作にもあのシーンあるのかな?



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドラえもん のび太の月面探査記

2019年03月05日 | アニメ映画

監督八鍬新之介
脚本辻村深月

月にウサギがいると主張して、学校で大恥をかいたのび太は、
ドラえもんに泣きついて異説クラブメンバーズバッジを出してもらい、
月の裏側にウサギを繁殖させる計画に夢中になる。
時を同じくして、のび太のクラスに
不思議な雰囲気の少年ルカが転校してくる…というあらすじ。

ドラえもん好きで名の知れた小説家、辻村深月さん脚本。
(おすすめ作品はダントツで「スロウハイツの神様」です)

なんだか連続して月面の映画…って思ったら
今年はアポロ11号月面着陸から50周年なんですね!
なるほど納得。

ドラえもん映画鉄板の起承転結を使いつつ
オリジナル道具を使った変化球が面白かった。
映画鑑賞後にポスターを見るとウッ…ってなります。
https://matome.naver.jp/odai/2155119112145499801

オチばれ
辻村先生、ファンだけあって
ドラえもんは子供のためのお話っていうのは厳守されてます。
学校の先生の変顔や、のび太のパンツねた、ノビットのあべこべ発明で
お子さんがキャッキャ笑ってた。
ノビットのあべこべ発明は伏線でもある訳ですけど。

SF(サイエンスフィクション)は極力控えめにしてありますが、
異説クラブメンバーズバッジってよく考えると奇妙な道具じゃないです?
のび太たちの見ているものが幻覚ではないとすると
どうしてバッジを外すと消え失せるのか。
異説が存在するために必要な資源(エネルギー)はどこから来てどこに消えるのか。
私あれ、並行世界に行く道具なんだと思うんですよ。
有名な異説でないと無効なのは、
有名な異説ほど別アースの存在する確率が高いんじゃないかと。
(そして安全面に問題のありすぎる欠陥商品だと思います/笑)

のび太が最初に作ったウサギが醜くて捨てたところは
「古事記だ……」って妙に印象に残りました。
まあこれも前振りでしたけど。
あと再集合のところのしずかちゃんの犬と、
ドラえもんの「想像力は未来だ!」という言葉、
カメの大見得のところで泣きました。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「グリーンブック」

2019年03月04日 | 実話系

ピーター・ファレリー監督
アカデミー賞作品賞、脚本賞、助演男優賞獲得。

クラブの用心棒をしていたトニーは、
店舗改装のために一時的に失業し、
黒人ピアニスト、ドクターの米国南部コンサートツアーの
運転手兼世話係として雇われる事になる。
最初のうちは有色人種に対して偏見を持っていたトニーだが、
南部の人種差別に対するドクターの毅然とした態度や
彼の音楽の才能に自然と認識を改めていくというロードムービー。
学がなく粗野だけれど家族思いで陽気なトニーと、
上品で理知的で孤独を抱えたドクター、
正反対の2人が互いに影響を与え合って変っていく、
その過程のために用意された細かいエピソードが豊富で
圧倒されます。

ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリ主演。
さすがにお2人とも巧いとしか言いようがない。
ヴィゴは目の印象が知的で、粗野無教養な役はどうだろう…
って思うんですが、演技力で何とかしてました。
20キロ太ったらしい。ものの食べ方もすごかった。
ピザの食べ方に衝撃を受けました。本場の人はああいう風に食べるの!?
マハーシャラ・アリは「アリータ」にもでていらしたので
連続でこんにちはなのですが、こちらの役は
表情で多くを表現しないといけないので、
本領発揮と言わざるを得ない。
南部の差別シーンはきついですが
性的なシーン(ちょっと匂わせる程度)、過度の暴力シーンはほぼない、
誰と行っても楽しめる映画です。おすすめ。

ラストばれ

最初は黒人作業員の使ったガラスのコップを捨てる程
偏見の酷かったトニーですが、性質は素直なひとなので
ドクターのピアノの演奏を聞いて彼の才能を認め徐々に態度を改めます。
ドクターも、黒人への一種の偏見であるフライドチキンをすすめられ、
手が汚れるのを嫌がりますが、でも食べてみて気に入る。
言われるまま、車窓から鶏の骨を投げ捨てたりもする。
(でも紙コップを捨てるのは許さないし、そこは曲げない)
2つの常識の攻防が本当に面白かった。

有色人種は白人と同じトイレは使えない、夜に外出してはいけない、
服の試着も出来ないし、レストランで食事もできない。
差別はとても楽しいと感じる人が思ったよりたぶん多いので、
こういう時代に戻ろう戻ろうとする動きもありますが、とんでもない。

ドクターの仲間の音楽家2人も、
ドクターの執事の人も、トニーの奥さんも、みんないい人達で、
よいクリスマス映画でした。
最後警官に撃たれるかと思ってヒヤヒヤしましたが、
普通のいいお巡りさんで良かった。
あとドクターが1人のまま終わらなくて良かった。
映画を見終わったあと、ケンタッキーフライドチキンが食べたくなる。
あとカティーサークを飲みたくなります。

ピッツバーグ、イタリア語、翡翠の石、そして手紙の代筆、
あとで回収されていく前振りや伏線が多くて面白かった。


論争
以降は、感激に水を差す内容なのでご注意ください。
異人種間の友情を描いた作品でありながら、
主な製作スタッフに有色人種がいないこと、
脚本にトニーの息子氏が名を連ねていながら、
ドクターの親族には打診すら無かったこと、
内容が、主人公の白人に模範的な黒人が気付きをもたらすストーリーである点が
バッシングを受けました。
アカデミー賞の作品賞候補に、おなじく差別を描いたスパイク・リー監督の
「ブラック・クランズマン」があって賞を逃し、
この「グリーンブック」が受賞したことで更に火が付きました。
(まあこれは女性差別と性暴力を描いた女性監督の作品が賞を逃し、
万事控えめな女性が中年男性主人公に優しく差別の現状を教える内容を男性スタッフが撮った作品が
受賞したと考えると、激怒するスパイク・リー監督の気持ちも少しわかる気がする)
(がしかし、作品の面白さはクリエイターの思いや感情の強さに比例する訳じゃないからな…)
尚悪い事に、20年ほど前に監督が、製作現場で女優含むスタッフに対し
性器を露出するジョークを頻繁に行っていた記事が発掘され謝罪、
脚本に名を連ねるトニーの息子氏が3年前に「911の際にイスラム教徒が大勢集まって
踊って喜んでいる映像を見た」という書きこみをネットにしていたことが判明、
(このイスラム教徒が集まって喜んでいた話はデマであることが検証済みである)
謝罪というグダグダの流れ…。
セクハラジョークは論外にしても、
自分が迂闊気味だなーって自覚のあるクリエイターおよびその卵は、
SNSの発言を慎んだ方がいいんじゃないですかねそろそろ…。
あと男性監督より女性監督のほうが過去のイタタやらかし確率が低いのでは?

今後は、被害者のいる事件を起こした人物の作品は、監督・役者・漫画家・小説家、
示談、有罪関係なく、ネット上で称賛意見を書くのはやめようかと
私は考えているところなのですが
(どの言語の国の人であっても翻訳可能な以上、被害者に無力感を突き付けたくないので)、
この件は20年前の露出かー、うーん、ってしばらく考えました。
お金を払ってるのだから、普通に作品を楽しませてくださいお願いします。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「アンフレンデッド ダークウェブ」

2019年03月03日 | ホラー映画

パソコン画面上でのやりとりのみで進行する映画の先駆けだった
「アンフレンデッド」続編。といっても前作とは繋っていないので、
今作から見てもOKです。

中古パソコンを入手した主人公は、
さっそく仲間たちと定例のスカイプで会話を楽しむが
パソコンの前の持ち主の知り合いらしき人物からFacebookにメッセージが入り、
やがてそれは脅迫めいたものに変わっていく。
一方主人公は、パソコンの隠しフォルダからおびただしい数の動画を見つけ…
というあらすじ。

監督と脚本は前作からチェンジ。
前作は霊でしたが今回はnot霊です。
やっぱりこの映画に限っては、
スクリーンより自宅のデスクトップか
ノートパソコンくらいの大きさの画面で見たほうが臨場感があると思う。

ラストばれ

相手が人間だと、「いうて尖ったものでちょっと刺したら死ぬやん?」
と思ってしまう。特にあの人たち別に身体能力が高いわけでもないし。

ホラー映画で盗みを働く奴は高い確率で死ぬので
主人公は死ぬ!と序盤で思いましたが
お友達さんはみないいひとなので気の毒だった。
とくにカップルの子たち、色々つらい目に遭ってるのに。

というかホラー映画で同性カップルがいちゃいちゃして
殺される時代まで来たので感慨深いです。

あのメッセージ受信の音「ドゥーー…ン」って
わざわざカロンさんたちが設定したと考えるとちょっと面白い。
三途の川の渡し守カロンさん、英語だとシャロンなんだね。

霊の方が恐いので、続編があるなら霊に戻してほしい。


「SAYONARA!」って突然出てきてふいた。
日本語ってギークの間で気のきいた外国語てきな位置なのかな?

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする