映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」

2019年03月18日 | 歴史映画

(原題:Mary Queen of Scots)

監督ジョージー・ルーク
脚本ボー・ウィリモン

スコットランド悲劇の女王、メアリー・スチュアートが、
最初の夫と死別してスコットランドに帰還し、
女王となって国を治め、再婚と出産と3度目の結婚を経て
政治的駆け引きに翻弄され、最後は斬首されるに至る過程が、
エリザベス1世とのやりとりを交えながら描かれます。

タイトルがふたりの女王なものだから、
エリザベス1世とメアリーの複雑な関係と対立メインの作品だと思っていたら、
エリザベスの登場シーンが少なくて、「……?」だったんですけど
最後英題が出て納得しました。「Mary Queen of Scots」
これメアリーの映画だったんですね…たぶん知名度を鑑みて
この邦題になったんでしょう。

メアリーをシアーシャ・ローナンが、
エリザベスをマーゴット・ロビーが演じます。
スコットランドロケにこだわったとの事、
人間が小さく見える広大な土地と装飾の少ない王宮が、
イングランドの場面とは対称的でした。

内容ばれ

メアリー・スチュアートといえば
JOJOで初めて知ったオタクは多いと思いますが私もたぶんそうです。
若く純粋で無力なメアリーと、年増で狡猾で残酷なエリザベス…
という描き方をしているフィクションが多いですが
この映画はそうではなく、メアリーの女王として統率力もある一方で、
衝動的でプライドの高い部分も描かれますし、
エリザベスの苦悩と従妹への親近感も描かれます。

女王の目前でお気に入りの秘書がメッタ刺しにされて殺されるのとか、
2番目の旦那が爆殺される(部屋が爆発して死体が見つかる)のとか、
全部史実なんだなあ。なんて物騒なんだろう。

戦闘シーンはどちら側からどの規模の軍勢が来たのか、
ちょっと分かりにくかったりしましたが、
監督はこれがデビュー作だそうで、だったら上出来です。



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「キャプテン・マーベル」

2019年03月17日 | バトル映画

マーベル・シネマティック・ユニバース21本目の作品にして、
初の女性ヒーロ単体作品、
監督も初の女性監督(男女ペア)、女性脚本家参加、音楽も女性。
これはブラック・パンサーの時と全く同じ段取りですね。
近い将来、揺り返しで逆風が吹く事もあるかもしれないけど、
ディズニーとマーベルは負けずに前傾姿勢で走ってほしい。
エンターテインメントを通じて、理想の社会を示してほしい。
これを見て大きくなる世界中の女児ちゃんがどんな女性になるか
今から楽しみです。
だっっさい旧来の男女観なんかポイっと捨てて、ずっと先に行ってほしい。

キャプテン・マーベルは魅力的な女性で、強くて、綺麗です。
タフなシングルマザーの親友がいます。
好きな男の子の前ではかわいいところもあるの…とかそういうのナシ!
でも男勝りではないし、ゴリラでもない。

クリー人の特殊部隊のルーキーであるヴァースは、
ある星で戦闘中に宿敵スクラルに捕縛され、記憶を吸いだされそうになる。
辛くも脱出した彼女は、地球に墜落し、
失っていた自分の過去と対峙する事になる、というあらすじ。

別に過去作品1作も見てなくても大丈夫とは思いますが、
見ていたほうが、より楽しめます。
具体的にどれとは言い難いですが、アベンジャーズ1・2・3かな。

ラストまでばれ

すっごい、さりげなく、でも明確に、
大抵の女性が経験する圧力を主人公は受けるんですが、
「お前には無理だ」「怒るな」「冷静に」「笑え」「能力があることを証明してみろ」
とどんだけ言われても、怒っていいし、吠えていいし、
面白くない時に笑わなくていいし、般若みたいな顔していていいし、
誰にも何にも証明する義務はない、という事を主人公が行動で示していきます。
自分は自分であるだけで、こんなにも気持ちがいいし楽しい!
という強いメッセージがありました。

抑圧を経験せず生きてきた、あるいは旧来の価値観を持つ視聴者にも、
テーマの押しつけを感じさせず見易くなっているのは、
抑圧してきた人間をゆるさない、叩きのめす!ではなく、
私は誰なのか、私は何なのか、が主題になっており
強制するな、その足をどけろ、あっちいけ、という解決法になっていること。
あと抑圧のシーンは短くしてあって、せいぜい30秒~1分くらい。
お子様の苦手な食材を細かく刻んで騙して食わせるのに似てる。

あとジュード・ロウが、いい仕事されてましたね。
登場から退場まですっと無意味に色っぽい。
叩きのめされたのに叩きのめされた感が少ない。
ヤレヤレ無双ならぬ、ヤレヤレ敗退。
それとバディの役割をしてくれた若い頃のフューリーくんが
かなりいい味だしてくれてました。
えっ…君そういう性格だったの…食事のあと皿洗いとか手伝うタイプだったの…
感情丸出しの面白お兄さんじゃん…20年で一体何があったのよ…。
このままのキャラクターの方が、正直いまより人望があった気がしないでもない。
ていうか目…。

男と女どっちがえらい!とかそういう話ではなく、
一番偉いのはネコ!って言いきってるのも効いてますね。
うん、とりあえずネコをトップにしておけば間違いはない。

スクラルは私の読んだ範囲では便利ヴィランで、
衝撃の展開!→スクラルでした!
衝撃の展開!→スクラルでした!
っていうパターンばかりだったので、
もっと視聴者のよく知っている、アベンジャーズに擬態する話の方がいいのでは?
と途中まで思ってましたが、なるほど納得の展開。
逆にクリー人はエージェント・オブ・シールドを5まで見ていて
態度も性格も悪いサイコパス星人だと知っているので、あまり意外性はなく…。

原作では男性のマー・ベルが女性になっていたの、かなり革新的だと思います。
それでもメインキャストの男女比率は半々くらい。
(キャロルがマー・ベルへ信頼を寄せるようになったエピソードをもう少し色々見たかった)
(飛行機が墜落して第一声が「髪はキマってる?」って相当面白いひとだなというのは分かったけど)
いかに普段見ている映画の男女比率が偏っているかが分かります。

アクションシーンは、冒頭はちょっと大丈夫なのこれ…っていう、
たらたらしたミッション描写でしたけど、
電車の中でおばあちゃんと戦う所などは好きです。
細くて小さい体を生かして、狭いスペースでくるくる回転する女性同士のアクション。

そしていよいよ次回アベンジャーズ4、エンドゲームですけど、
キャプテン・マーベル参加でかなり戦力アップしたのと、
あと彼女は「歩くタヒチ」なので、死亡者にその場で対応できそうなのと、
あと亜光速で太陽系外に資源を探して遠征するラストという可能性を提示してくれた。
どうかどうかそれで頼む。


エンドロール後の映像が2回あります。
それと今回は冒頭のマーベルロゴ重要なので遅刻されませんように。


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「シンプル・フェイバー」

2019年03月13日 | サスペンス映画

監督ポール・フェイグ
脚本ジェシカ・シャーザー
原作ダーシー・ベル

「ゴースト・バスターズ」のリブートを手掛けられた
ポール・フェイグ監督のサスペンス。
シングルマザーのステファニーは、子供同士が意気投合したのをきっかけに
ファッション業界の一線で働くエミリーと友達になる。
豪邸に住み、ハンサムでセクシーな小説家の夫を持つエミリーは
性格も奔放な非凡な女性。
かたや手作りが好きで親切なステファニーは
都合よくエミリーに使われていると周囲から見られていた。
ある日、エミリーに頼まれて彼女の息子を家で預かったステファニーだが
翌日になっても彼女からの連絡はなく、
警察は失踪事件として彼女の行方を追うが…というあらすじ。

エミリーのファッションがすごくて、
そうか、今のアメリカだとこういう格好がセンスあるのか…
という感じです。
たぶんステファニーのほうは芋…主婦…安物…って意図の
お洋服なんでしょうけど、私にはお洒落な衣裳に見えました…。
(ちょっと粒粒の衣裳は、集合恐怖症って思いましたけども)
ハンサムでセクシーな夫のひとは、
「レイジーリッチ」のハンサムでセクシーな夫だったひとですね。

サスペンスなのでどの辺まで書いていいか難しいですが、
火花散らす2人の駆け引きが、
「探偵 スルース」(1972年)女性版だなと思いました!

ラストばれ

平凡で善良で優しい母親のステファニーが
一方的にエミリーの犠牲に…って序盤では思わせるんですけど、
どんどん様相が変わってきて、色々伯仲してきて
ボクシングを観戦してるみたいでした。
強敵で、絶対友情とかは生まれないんだけど、
でも互いに何となく認め合っているというか
憎からず思ってる感じがBのLでした。

子供への愛情はどっちも不変なんですよね。



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「スパイダーマン  スパイダーバース」

2019年03月12日 | アニメ映画

監督ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
脚本フィル・ロード、ロドニー・ロスマン

ブルックリンの高校生マイルスは、息子の将来に期待をかける父親の方針で
進学校に通っていたが、校風が合わずに窮屈な思いをしていた。
ある夜、マイルスは蜘蛛に噛まれ、超人的な能力を身につける。
そして偶然に、スパイダーマン、親愛なる隣人の死に立ち会う事になる…
というあらすじ。

映像がすごかったです。情報量が多い。
私は動体視力が追い付かなくて全部を見られてないですが、
全部把握できた人は、頭がパンクしたんじゃないかな。
3DCG的なアニメと、古風なアメコミ風表現、
セルアニメっぽい動き、キャラクターもそれぞれ違うけども
背景も効果も多種多様。でも不思議と統一感がありました。

見ていて、脚本これすごく上手い…?
って思ったら、「LEGOムービー」コンビの片方の人だった。
この人の書く話はすごくロジックに出来て(ると私は勝手に思って)いて、
オタク的に気持ちのいい最良の展開と、
最高のセリフをぎゅうぎゅうに袋に詰め込んだ感じ。

ラストばれ
ノアールの人とペニー・パーカーさんのことは知らなかったけど、
誰か一人が残らないといけない、って話が出た時に
全員即座に「自分が!」って言って泣きそうになった。
間違いなく同じヒーローなんだなあ…って。

マイルスがいい子で、家族親族もいい人で、
マイルスの成長譚なんだけど、でもそれだけじゃなくて、
大人もちゃんと戦っていて、成長したり救済されたりするところ
いいなあと思いました。

しかしこれよく出来た話なので、
トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールド、
トム・ホランドでやりたかっただろうなあと想像します。
すごいヒットしただろうな。
ネックとしては役者さんの年齢と(トビーさん童顔なのでいける気もするが)
あとヴィラン大量消費で、今後のシリーズで使える敵がいなくなる、
あと人種が偏りすぎている…。

とりあえず実写版ねたを幾つか入れてくれたのと
グウェンの、あの、あれは嬉しかった。
アメスパ好きだけど、あれはないでしょー!!!と私は今も思ってるし
フィル・ロードも、ホームカミングの脚本の人も思ってる(たぶん)。

椅子のおばさんとなったメイおばさんと、
めちゃめちゃ楽しそうなDrオクトパス、好きです。
プラウラーは何もかも最高だったが、効果音が怖くて特に良かった。
キング・ピンさんは最近「デアデビル」で拝見してたんですが、
ずいぶん大きくなられて!という感じでした。4倍くらい…?

スタンおじいちゃん!わあわあ!キャストのところも
スタン・リーって書いてたから本物!

「大いなる力には大いなる……」
「そのセリフはウンザリだ」
「24時間でやれ」
「全部で何人いるの」
「コミコンで聞け」
「あの風はどこから吹いてるんだ」
とか、ちょっぴりメタっぽく王道をからかいながら、
でも最後は「君にもかぶれるんだ」でバーンと決めてくれる
セリフ回しが好きです。

エンドロール後に愉快な映像があります。

ところで量子って最近いろいろな映画で連続で出てきますけど、本当に何なの!?
小さくなるんじゃないの!?(アントマン)


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「ROMA ローマ」

2019年03月10日 | 美学系

アカデミー賞で監督賞、外国語映画賞、撮影賞を獲得した
アルフォンソ・キュアロン監督のNetflixオリジナル映画。
3月9日より全国48館のイオンシネマで公開が始まりました。
娯楽作品じゃないのでみんなにおすすめって訳ではないんですが、
映像の美しさが、キュアロン監督作品中最高値なのと、
あと犬の声や、クラクションなどの街の空気の音が常に鳴っている映画なので
画を見たいひと、空気を鑑賞したいひとは配信よりも映画館お勧めです。

キュアロン監督が幼少の頃に
ROMA地区で暮らした数年間の記憶を正確に凝縮した作品で、
役者は大半が素人さんで役柄に近い職業の人なのだそうです。
そして時系列順に撮影したのだそう。
医者の白人一家と、
その家に住み込みで家政婦をしているクレオに起きた出来事を
淡々と描写しています。モノクロ作品。

私のようなセンスのないものには表現も難しいですが、
画の圧がすごかった。単純に構図が美しいのもあるけど、
それに奥行と上下の概念が加わって、異次元的な美しさでした。
手前から奥までレイヤーが何層にも重なっていて、
どのレイヤーも完璧、みたいなの。
ただ、監督の記憶を見る映画なので、
エンターテインメント的な起承転結は一切ありません。

私が週末に行った回はめちゃ大きなシアターでお客が数人という状態で、
「あああ…」って感じでした。
日本の田舎のアカデミー賞への関心は低い…。
あとメキシコを描いた白黒の半自伝的映画を見に来るような層は
ネットで告知しても拾えないんじゃないだろうか…。
新聞とかラジオでもう少しお知らせしてみては。

この映画を観た人はみんなチーンの話をしていますが(笑)
ボカシなしでかなり長くチーンが映ります。全裸のダームストラング。
私は映画でチーンが出てくると、
以前に他の映画で見たファスベンダーさんと比べてしまう悪癖を早く直したいです。

ラストまでばれ(あまりほめてない)

オープニングの床面、水が流れるだろうなとは思ってたけど、
空が映るのは予想外だった。
飛行機は最初とラストと変な日本武術の男の3回認識しましたけど他にもあったのかな。
土手の上にいるクレオが手前にいて、下の野原?畑?を子等が駆けて行き、
そのむこうにずっと自然が連なっているカットで一番ひえええと思いました。

一家の飼っている犬がぴょんぴょん跳ねてかわいいですが、
めちゃいっぱい糞が映る映画でもあります。
ていうか冒頭で掃除したばかりなのに、どんだけ食べたらあんなにいっぱい!?
犬を飼っている家が多いのか、クリスマスを過ごしたおうちに
歴代愛犬の首の剥製がズラズラ並んでいて、ちょっと銀河鉄道999を思い出した。

作中に出てきたメスカルは蒸留酒、プルケはリュウゼツランを発酵させて作る
古代からある醸造酒だそうです。度数は4%で、マッコリに似てるらしい。
ただ、プルケは発酵の進むお酒なのでメキシコ国外へ輸出はできないっぽい。
どうしても飲みたかったら、もやしもんでやったように自作するしかない…。

1971年の血の木曜日事件(コーパスクリスティの虐殺)が描かれます。
デモ中の学生たちが、政府とかかわりのある武装集団の襲撃を受けて
120人亡くなった事件です。約50年前のことですけど、
でもほんの数年前にもメキシコで学生運動をしていた子等が
43名拉致されて、今も見つかっていない恐ろしい事件が起こっていますね。

しかしこれ、クレオは友達の紹介で知り合った男性とセックスしたら妊娠して、
妊娠したと言ったら相手は秒でトンズラ決めて、
探して会いに行ったら、怒鳴られて殴られそうになって
「召使いめ!」って侮辱されて泣き寝入りで、子供は死産とか、
貧しく学もない、立場の弱い女性不憫萌えなのでは…?
違ったらしつれいだけど…。
雇用主のお父さんは浮気して出て行って養育費をビタイチ払わなくなって、
傷付いた女性同士、そっと寄り添って生きる…みたいなの分からなくはないけど、
これ「シンプル・フェイバー」だったら、
フルチンもお父さんも現住所特定されて、ぐっすりお休みの時間帯に
家に火をつけられて丸焼きですよ。

映画ではお父さん医者、お母さん生化学者だけど
リアル監督のお父さんは原子物理学者、お母さんは分からず…。
その辺は変えてあるんですね。

トゥインキー(お菓子)の名前が出てた。1971年のメキシコにすでにあったのか。

スピルバーグ監督が、アカデミー賞からのNetflix映画の締め出しを提言して、
物議を醸したりしました。
まあおじいちゃん、2015年にアメコミ映画オワコン発言とかして
ちょっと時流読み違えとかをね、たまにね。
(好き嫌いは別にしても2018年「ブラックパンサー」がエンタメ映画全体を少し変えたと思ってるので)
(もう少しマイルドに、それまでにあった流れの決定打になったと言い換えてもいい)




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