ノーラン監督の新作です。
寿命の尽きかけた地球から、移住可能な星を探すために
愛する家族を置いて旅立った1人の男性の物語です。
ノーラン監督は小説家で言えば
ネタ、文章力、共に最強というチートなエンタメ映画監督なのですが、
「インセプション」をネタに特化した作品とするなら
(4つの世界が独自の法則で相互に影響しながら同時進行するという類を見ない映画)
(ネタに特化した作品は前例がないので「~~みたいな映画」って言えない)
今回は文章力でガンガンきます。
ただし終盤のカタルシスのために、中盤までの圧迫がきつめなのと、
分かり易く説明してくれるけどSF用語が多めなのと、
あと上映時間が3時間あるので、普段あまり映画を見に行かない人が
じゃあちょっと行ってみようか、という感じの作品ではありません。
SF好きな人、面白ければ600Pでも800Pでも小説読むよ!というタイプの人、
そもそもノーラン好きな人、普段から映画をわりと見ている人におすすめ。
(というのも途中で寝息が複数聞こえたので、真顔になって考えたのです)
重要なねたばれ及び結末ばれ注意
SF用語に関しては親切にもすべて譬え話を付けてくれたので
文系の頭でも楽々理解でした。
ノーラン監督の映画は、特殊な状況下に人間をぶち込む話が多いですが、
今回も現実ではあり得ない時間の法則に翻弄される人間達の話でした。
SF部分が嘘っぽくなると全部が台無しなのできっちり作りこんではありますが、
(ノーラン弟はこの脚本のために工科大学で相対性理論を勉強したのだそう)
メインは主人公と、彼の家族の感情であると思います。
あとSFの皮をかぶった時間ものでもあると思う。
「ゼロ・グラビティ」+「コンタクト」+時間もの。
「コンタクト」に関しては「お父さんの中身が宇宙人、宇宙人(仮)の中身がお父さん。ふふ」って思った。
ちなみにブランド教授とマン博士を許すことが出来ないのですが、
父親と子供を騙して引き離して、しかも自分が楽になるために告白し、
結果、愛情を憎悪に変えるって、他人の魂にヒビを入れるレベルの非道じゃないですか。
というか私はプランAは分かるけど、プランBの理念が全然理解できない。
いま地球にいるすべての人間が苦しんで死んで、別の惑星で人類が存続したからどうなの?
人類はそこまでして残さないといけない素晴らしい生物?本当に?
探査船を何基も作るお金を、呼吸器を病んでいる多くの人を助けるのに使った方がいいのでは?
と私は思いますがたぶん意見は半々くらいに割れるでしょう。
ブランド教授に比べたらマン博士は仕方ないですが、
うーん、発狂が想定に入ってないとはどういうことよ。
信号発信を最低2名以上の秘密のパスコードによる承認制にしなさい、
宇宙兄弟とか読みなさいって思いました。
こうして書いていると1つ1つのエピソードの重さにくらくらします。
あの23年経ってた話とか、小説にしたら超大作になりそうですが
一瞬で終わりましたね。なんという贅沢。
映像表現は上げるときりがないですが、
やはり本棚の裏側の世界が、監督の本領発揮だな!というのと
あと、理屈をグダグダ述べるよりも、
テーブルの上の砂を、もはや人々が気にしないようになっているという1ショットで
状況の悪化を表現しているのとか地味に好きでした。
ブランド教授の暗唱していた詩はディラン・トマスのものですね。
「ソラリス」リメイク版で「死は支配をやめるだろう」が使われていました。
(自分のWEB日記検索をすると全文引用していてヒィ!となった訳ですが…)
(著作権死後50年+戦時加算10年と数箇月…今年そろそろOK?くらい…?)
ノーラン監督のリスペクトなのか、それとも宇宙に合うのかどっちかな。
予告で見た時は宇宙生物かなにかだと思ったTARSとCASEは
宇宙船専属アシストロボだったのですが、もう本当に性格がかわいくて…
あと結構あの形態変化が自由自在すぎて目が離せない感じでした。
あれ実際には絶対あんな風には動かないと思うけど特に水上、
すごい説得力があるのでデザイナーの人は天才だと思う。
松葉杖の人がヒントなのかな。それとも組木パズルかな。
最後のあたりで木材のポーチの上をドスドス歩いてきたときは
「重量は何キロくらいなのお前……」って思ったけど。
娘が、お父さん大好きっこだけで終わらずに、
父の助けを借りて彼の偉業をも超える成果を残すところが好きです。
でも愛情(そして受け継いだ知的好奇心)を打ち捨てなかったからこそのあの結末なので
愛情と血は時間も空間も越えたのだと思います。終盤泣きっぱなしでした。