同名小説の映画化です。
戦火の激しくなる都会から、双子の息子を疎開させた母親が
長年交流のなかった郷里の老母に預けるのですが、老女は双子を虐待し、
2人の少年は暴力や寒さや飢えに対する訓練を始める、というあらすじです。
ちなみに悪童日記という言葉は非常に素敵ですが
あまり内容に即しているようには思えません。(原題は「大きなノート」)
昔の翻訳小説のタイトルは鮮烈で痺れるけど
内容とはちょっと違う…というものが結構ありますね
忠実な映画化です。トーンが非常に淡々としているので
話の重さがかなり軽減されます。
双子の、整った顔立ちの中のぽっかりと空洞のような暗い目が印象的です。
1点だけ原作と違うのは、双子が最初は愛情深い子供たちだったという設定です。
おばあちゃん役の人がものすごい怪演です。
体型は原作と真逆ですが、夫だけじゃなくてあと5人くらい殺してるように見えた。
家の中に入ったら現代でもあるあるのゴミ屋敷状態だし
ニワトリが床を歩いているし、こりゃもうだめだ…という感じだった。
内容ばれ
当然ながら原作の少年たちへの性的な虐待は一切カットです。
あと犬猫への虐待もカット。(鶏はOKなのね)
お金を着服するのもカット。
途中で出てくるユダヤ人の?女の子もカット。
でも性的なシーンを描かずに、エロスを表現していたのは凄いと思いました。
特に将校が、寝ている双子の顔に触れるシーン。思わず拳を握りしめた(笑)
将校の友人役の人も、登場しただけで「同性愛関係にあるのですね、ハイ」って分かる顔。
教会の若い女中さんは、最初天女みたいにきれいで優しい人だなー…と
思わせておいてからの差別行為、密告は強烈なインパクトがありました。
原作だと双子の行動が行き過ぎに思えたんですが、映画版だと納得できる。
映画のおばあちゃん、前半は怖くて仕方ないんですが
後半からは段々頼もしく見えてきます。
目の前で爆死した自分の娘を、
双子には見るなって命じて、一晩かかって埋葬してぶっ倒れるの、
めっちゃ格好いいんですけど。
彼女のやっているのは孫への虐待ですが、
でも歪んだ、奇妙な愛情もちゃんと表現されている。
あと2人のノートが禍々しく美しかったですね。
写真のコラージュや、殺した虫の死骸や、残酷な絵で埋まったノート。
優れた映画ですが、見るのには体力が必要です。