ちょい不良ゴーシュの豪酒録

何年やってもビギナーチェリストの日記

ラルス・フォークトさんのモーツアルトとシューベルト

2016年10月11日 23時13分14秒 | Weblog
モーツアルトのピアノ協奏曲第27番.
この協奏曲の主題はシューベルトのように彷徨って,再び主題に戻った時に別人になっている.

これは10月9日に放送された「クラシック音楽館」で,ピアニストのラルス・フォークトさんが語った言葉.
なるほど,こういう言い方もできるな.
思わず納得.



モーツアルトのコンチェルトの中で幾度となく繰り返されるメロディー.
これは,現れるたびにその表情を変えている.

コンチェルトのメロディーは神々しいほどシンプル.
その美しいメロディーは,ハーモニーの変化でその色合いを変える.

そして,そのメロディーは行先を求めながら,どこへもたどり着くことができない.
果てしない不安や孤独の中をさまよう旋律.
さすらいの旅人シューベルトのようだ.

そのメロディーが再び姿を見せたとき,同じ旋律なのにまるで別人のような印象を与える.
これがモーツアルトの魅力のひとつ.



シンプルな美しさは,子供が持つ純粋な感覚に通じる.
大人になるにつれて,人は純粋さを失う.
生活が苦しかった晩年のモーツアルト.
せめて僕の書く音楽は純粋でありたいと願っていた.
モーツアルトが書いた最後のコンチェルトの第3楽章は,この純粋な世界や若さへのあこがれ.

そして,第2楽章は「別れ」.
この音楽に含まれる神々しいはどの美しさや哀愁,悲しみ.
こういう感情をいとも簡単に曲に込めるのがモーツアルト.

オケとのリハーサルで,フォークトさんはオーケストラに「ここは,みにくく弾いて.」と要求.
オケのメンバーはびっくりしたらしい.
モーツアルトの音楽は,ひたすら純粋で透明だと思っていたから.
でも,美しさや哀愁,悲しみを表現するには対比が必要.

フォークトさんが要求したパッセージ.
その本番は,とてもグロテスクな音.
鬼.
デモーニッシュ.
なるほど.



モーツアルト最後のコンチェルトを弾き終えたフォークトさんは,客席の拍手にこたえてアンコール曲を弾いた.
それは,さまよい続けるシューベルトの曲だった.




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