ちょい不良ゴーシュの豪酒録

何年やってもビギナーチェリストの日記

コスモサイエンス

2009年02月18日 17時35分10秒 | Weblog
2月13日(金)にスーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)に指定されている金沢市内の高校生たちが薬学部にやって来ました.

SSHとは,文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度のことです.
その目的は,理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発や大学・研究機関との連携し,科学技術系人材を育成することです.

近年の日本では,若者の理系離れが深刻です.
そこで文科省が音頭をとり,頭が柔軟な高校生が多方面の研究施設を直接訪問し,見学,研修,実習などを体験することにより科学技術に対する興味や理解を深めてもらおうという趣旨です.
そのプログラムの一環として,今回彼らは薬学部を訪問しました.

薬学部というと,薬剤師の育成のための学部というイメージが強いかも知れません.
しかし,実際は薬に関するさまざまな生命現象を幅広く研究している学際的な学部なのです.
薬と患者のかかわりを専門とする臨床系の講座,薬の効き目や剤形を研究する講座,病気の原因となる遺伝子や微生物を研究する講座,薬効が期待できる生理活性物質を天然から探ったり合成法を研究する講座など,いろいろな分野のエキスパートが活発に働いています.

これらの中で,今回は創薬科学のスタッフが高校生と一緒に人工甘味料として利用されているサッカリンの合成を行いました.
サッカリンは,病気で血糖調節が出来ない人が甘みを楽しむために,現在でも使われています.



o-トルエンスルホンアミドを使えば,酸化して閉環させるだけの簡単な化学実験です.
簡単だけど,高校生たちは日ごろ勉強ばかりで,理科の実験なんてほとんどやらない.
実験室の器具や装置を実際に利用するのは初めての初心者のはずです.
それでも,素早く理解して,楽しそうに手を動かすなんて,さすがSSHの生徒たちだなぁと感心しました.


ワイワイ,ガヤガヤ2~3時間悪戦苦闘して,いろいろなサッカリンの結晶が出来ました.
うまく出来たり,そうでなかったり,結果はまちまちです.
でも今日は,化学合成を体験することが目的です.
結果なんて,どうでもいいんです.

合成した甘味料をなめた高校生の感想が素直で面白い.

粉っぽい.(注:結晶が荒いとザラザラします)
ちょっと苦い.(注:塩酸をよく洗浄していないと雑味がします)
甘みが強い.(そりゃそうだ.人工甘味料だもの)
上品な甘さ.(そう言う君はサッカリンのソムリエになれるぞ?)

自分たちが造った結晶が甘みを有することに全員感動していました.

実験終了後,高校生は学食へ移動して本物のスイーツを食べながら,本日の感想をアンケートに記入.
春色を思わせるピンク色のストロベリークリームで包まれたフルーツケーキは,甘くてちょっぴりすっぱい.




高校生諸君には言えなかった本音をここで披露しよう.

化学ってこんなに「甘いもの」じゃない.
本当は,つらく厳しく大変な作業の連続なんだ.
だから,毎日の勤勉の代償として美しい自然の法則を見出した時,我々はそれに敬意を払い,誇りに思うんだ.

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