MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『「1日30秒」でできる新しい自分の作り方  負けない心を作る コーピングの技術』

2013年09月28日 | BOOKS
 イラスト入りで「コーピング」の技術が、たくさん紹介されている1冊です。
 心と体を短い時間で整える「ちょいワザ」とでもいいましょうか。
 「こんなことで?」と思わずに毎日続けたら、人生がプラスに進みそうです。
 

『「1日30秒」でできる新しい自分の作り方
 負けない心を作る コーピングの技術』
著者:田中 ウルヴェ 京
出版社:フォレスト出版


 コーピングというのは、心の持ちようを変えることによって、健康にも悪影響をおよぼす「過剰なストレス」を、人生に必要な「適度なストレス」に変えるための技術といったところでしょうか?
 この本の良いところは、「心の調整テクニック」と「身体から心を鍛えるコーピング」がイラスト入りで分かりやすく、しかもどれも簡単なこと。そして、いろいろと紹介されているので、自分ができるところから始められること。
 「自分に良いこと」と実践することが、きっとプラスに働くのかもしれません。
 心が疲れてしまっているときには、まず呼吸法1つからでもできるといいですね。
コーピングを解説している前半は飛ばして、まずイラストが多い後半をパラパラ見るところから始めるのもいいと思います。
 

<関連サイト>
レビュー> 5分で読むビジネス書:「本当の実力」を発揮できているか?──『「1日30秒」でできる 新しい自分の作り方』
 Biz.IDのビジネス書レビュー。
コメント (2)
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『とっぴんぱらりの風太郎』虎の巻

2013年09月27日 | BOOKS
 『とっぴんぱらりの風太郎』 万城目 学・著(文藝春秋)の販売促進用リーフレットを書店で発見。

 発売日は、明日 2013年9月28日(土)です。

 リーフレットは、A4サイズを四つ折りにしたもので、内側には登場人物紹介と時代背景の紹介があります。外側には、著者からのメッセージと一問一答(3問あり)、著者プロフィールと、同じく文藝春秋から出ている『プリンセス・トヨトミ』の宣伝があります。
 「大大大長編」と書いてありますが、752ページだそうです。
 『偉大なる、しゅららぼん』『プリンセス・トヨトミ』が550ページ前後でしたから、それよりはちょっとページ数多めですが、『図書館の魔女』を読んだ後なので、それほど長く感じません。


 で、思ったのが「『プリンセス・トヨトミ』を手元に用意してから『とっぴんぱらりの風太郎』と読み始めよう」ということ。
「ひょうたん」「大阪城」ですものね、きっと万城目ワールドのリンクがあるはず……。
 「虎の巻」の表も、手裏剣とヒョウタンの柄です。

 さきほど、ネット書店から「発送しました」とメールが来ました。
 発売日である明日には入手できそうです。楽しみだなぁ。

<関連サイト>
『とっぴんぱらりの風太郎』特設サイト - 本の話WEB
 『とっぴんぱらりの風太郎』の宣伝動画を見ることができます。

<追記 2013.10.08.>
 『とっぴんぱらりの風太郎』を読んだ感想はコチラ。
 『とっぴんぱらりの風太郎』 - MOONIE'S TEA ROOM
 
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『図書館の魔女』感想 つづき

2013年09月26日 | BOOKS
 すっかり「『図書館の魔女』ファン」の私。

 早速、本好きの友人に『図書館の魔女』をすすめたら、「メフィスト賞って言ったら新人でしょ?」と言われてしまいました。
 うーむ。たしかに、新人作家の作品に上下巻合わせて5000円を超えるお金を出すのはためらってしまうのも分かる。上巻だけ買うのも、新人作家だと思うと勇気がいるし、しかもこのページ数と厚さ……。
 正直なことを言うと、「驚異の新人」だとか「新人離れした実力」だなんて出版社の常套の宣伝文句で、ガッカリすることも多いのが事実。でも、今回は「新人」や「処女作」ということは忘れていただきたい。
 (実際メフィスト賞は、新人という枠を超えている方が多いと思うのです。)

 そこで、「まずは冒頭だけでも立ち読みして!」と薦めてしまいました。読み始めたら、きっと気に入ってくれるはず。

 『図書館の魔女』の魅力は、やっぱり「言葉」。
 漢字をルーツにして仮名を使い、さらにアルファベットも飲み込んだ現代の日本の言語文化が、西洋の文化と東洋の文化を合わせた異世界ファンタジーをより魅力的にしていると思います。東西の文字を子どもの頃から学び使う日本人だからこそ書ける・描ける、そして日本人だからこそ、より楽しめるハイ・ファンタジーなのだと思います。
 私としては、西洋の香りだけのするファンタジーよりも、より身近に感じます。

 異世界ファンタジーと言えば、『十二国記』シリーズ『守り人』シリーズも大好きなのですが、『図書館の魔女』の主人公の二人には『十二国記』の年若き女王「珠晶」の聡明さや『守り人』の「チャグム」の運命に対する真摯な姿勢に共通するものがあります。言葉の豊かさも両シリーズをお好きな方ならば、きっと同様に引き込まれるのではないでしょうか。
 『図書館の魔女』は両シリーズと比べると「分厚い・イラストがない」という理由からとっつきにくいかもしれませんが、イラストがないのは「自分の想像力で自由に世界をイメージできる」ことですし、「分厚い」というのは「より精密に描かれている」ということですから、欠点というよりは長所なのだと思います。たしかに、イラストや映像化されたものを見たい気持ちもありますが、まずは自分の頭の中で楽しむことができるというのが、なにより有り難いです。
 大人にとっては、表紙とカバーの荘厳さが嬉しいです。「知的なものを読んでいる満足感」があると言ったら、大げさでしょうか?

 
 そして、『図書館の魔女』の魅力の一つが、主人公たちの「指での会話」。
 東京大学の福島智先生の「指点字」を思い出しました。手話通訳士が指をタイプすることでコミュニケーションする映像は、ひとつの魔法のようです。
      <参考>コミュニケーション方法の詳細 - 東京盲ろう者友の会  「触手話」「手書き文字」「指点字」など写真付きで説明されています。
 音声でも文字でもないコミュニケーションをする設定は、より一層「言葉」について深く考えさせる仕掛けになっているのだと思います。


 今は物語の消化期間。頭の中でストーリーを思い出して、整理して、もう少し時間をおいたら、また『図書館の魔女』のページを開こうと思います。


<関連サイト>
『図書館の魔女』上・下 高田大介 - メフィスト賞大特集 講談社ノベルス
 講談社のページ。
「著者コメント」「担当者コメント」「著者一問一答」「担当者一問一答」など、この本の魅力を伝えてくれます。
 著者がエンデの「ジム・ボタン」シリーズを好きというのが、なんだかとっても嬉しい!
 そして、「受賞作の続編に取り組まれています」(※「担当者一問一答」)とのこと。キリンのように首を長くして待ってます!
高田大介『図書館の魔女』特設ページ - 講談社文庫

<関連記事>
『図書館の魔女』(上)(下) - MOONIE'S TEA ROOM
『図書館の魔女 烏の伝言』 - MOONIE'S TEA ROOM

<追記 2014.01.22.>
 作者のブログ記事(2014.01.15.)によると、次の作品の仮タイトルは『売国奴の伝言』だそうです。
 講談社のページによると、「今春刊行予定」とのこと。楽しみですね。
<追記 2014.05.29.>
 「あの本」ただいま進行中! - 講談社でチェックしたら、「今夏刊行予定」に変わってました!夏休みのお楽しみかな?
<追記 2014.06.04.>
 『図書館の魔女』続編、「今秋刊行予定」になってました。期待して待ちましょう。
<追記 2015.01.26.>
 『図書館の魔女』続編の発売日は2015年01月27日。タイトルは『図書館の魔女 烏の伝言』(トショカンノマジョ カラスノツテコト)です。

<追記 2016.09.20.>
 文庫化されて、特設ページができてました。
 文庫版は全4巻なんですね。
高田大介『図書館の魔女』特設ページ - 講談社文庫
 第3作『図書館の魔女 霆ける塔』(トショカンノマジョ ハタタケルトウ)についても、「2016年刊行予定」と案内がありました。
 とても楽しみです。

<追記 2017.05.13.>
 『図書館の魔女 烏の伝言』の文庫版が発売になります。
『図書館の魔女 烏の伝言 (上)』 - 講談社文庫
『図書館の魔女 烏の伝言 (下)』 - 講談社文庫
 発売日は2017年5月16日です。
 昨年(2016年)刊行予定だった第3作『図書館の魔女 霆ける塔』については、「図書館の魔女」特設ページにて「2017年刊行予定」となっていました。著者ブログの更新もほぼ1年間留まった状態なのですけれど『烏の伝言』の文庫版発売で、なにか新しい情報が出てくるといいなぁ。
 <追記の追記 2017.05.16.>
  著者ブログ、更新されてました。なんとはなしに、ホッとしました。

 
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『ケイン・クロニクル』シリーズ

2013年09月24日 | BOOKS
 『ケイン・クロニクル』(原題「Kane Chronicles」)、「ケイン一族の年代記」といった感じでしょうか。
 「ケイン」は主人公兄妹のファミリーネーム・苗字です。

 著者は、パーシー・ジャクソンが登場する『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』『オリンポスの神々と7人の英雄』の両シリーズで有名なリック・リオーダン氏。
 パーシーの物語やエジプト文明が好きな人なら、きっと気に入ると思います。

 今回はエジプトの神々・エジプト文明と魔術とが現代と交じり合い、冒険と危機と家族愛と友情と恋が織り込まれたストーリーです。
リオーダン氏お得意のジョークもあちこちに散りばめられていて、命の危険が迫っているシーンでもくすっと笑ってしまうセリフがあったり、日本製の近代製品が登場したり、「マンハッタンには違う神々が住んでいる」なんてセリフにはパーシーのファンなら思わず笑ってしまうことでしょう。
 
 日本語版(出版:メディアファクトリー)では、英語版の1冊を3冊に分けて出版しているそうです。第1巻の「The Red Pyramid」1冊が、日本の『ケイン・クロニクル1 灼熱のピラミッド』『ケイン・クロニクル2 ファラオの血統』『ケイン・クロニクル3 最強の魔術師』の3冊にあたります。
 つまり、英語版の全3巻が日本では9冊ほどになるのですね。(まだ出版されていないので、冊数は未定ですが)
 たしかに、小中学生も手に取りやすい薄さで、ふりがなもあり、イラストも可愛いので、年若い読者にも読みやすくなっています。各巻の巻末にはエジプトの神話や遺跡などの解説もあるので、エジプト文化の勉強にも役立ちます。

1.「The Red Pyramid」 - Kane Chronicles (2010)
    1.『ケイン・クロニクル1 灼熱のピラミッド』
    2.『ケイン・クロニクル2 ファラオの血統』
    3.『ケイン・クロニクル3 最強の魔術師』
2.「The Throne of Fire」 - Kane Chronicles(2011)
    1.『ケイン・クロニクル 炎の魔術師たち1』※
 (※『ケイン・クロニクル3』の巻末で、『ケイン・クロニクル4 炎の玉座』と紹介されていたのがこの本だと思います。)
    日本語版 以下続刊
3.「The Serpent's Shadow」 - Kane Chronicles(2012)


 2巻「The Throne of Fire」の邦訳からは、タイトルのつけ方を変えたのかもしれないですね。
 『ケイン・クロニクル 炎の魔術師たち2』『ケイン・クロニクル 炎の魔術師たち3』と続いていくのかな?
 細切れで読むのは辛いので「The Throne of Fire」の翻訳が終わってから読もうと思っていますが、いつになるかなぁ?


 先日、英国の出版社のサイトで、気になるショートストーリーを見つけました!
     「The Son of Sobek」
 パーシー・ジャクソンとカーター・ケインの出会いを描いた短編だそうです。
 著者のホームページで調べてみたら、Eブックで読めるほか、ペーパーバック(US)版の「The Serpent's Shadow」に収録されているようです。

<関連サイト>
The online world of Rick Riodan
 著者リック・リオーダン氏の公式ホームページ。
「Kane Chronicles」 - The online world of Rick Riodan
 著者のサイト内の「ケイン・クロニクル」シリーズのページ。
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『奥様はCEO』

2013年09月22日 | BOOKS
 現役企業経営者の書く、ITベンチャー企業の内情が分かるライトノベル風経済小説です。

『奥様はCEO』 著者:鎌田和彦
 牧野出版

 著者の鎌田氏は現役の経営者で、ベンチャー企業を大手企業にした創業者の一人。
と、いうと面白くもない自慢話のような堅苦しいビジネス書をイメージしてしまいそうですが、ちゃんと面白いのが驚きです。
 実話を元にした部分もあるのでしょう。実際にIT企業の社員になった気分を味わえますし、経営もできて小説も書けるなんて……、ちょっと羨ましい多才ぶりですね。

 内容は、企業の内情・ベンチャー企業に起こるトラブルをどう解決していくか……だけでなく、ダメダメな新入社員の成長物語でもあり、女性経営者の悩み・思い切りの良さ・経営者としての人心掌握術(と、その欠如)についても描かれています。
 著者は男性ですから、女性経営者のことはどこから取材したのでしょうね?経営者同士の恋愛とか、著者の周りでもあったのでしょうか?


 もちろん、IT企業だけではなく多くの企業であてはまるビジネスの基本・ビジネス用語も盛り込まれていますから、就職活動中の学生さんはもちろん、いろいろな業種の社会人も一読に値すると思います。とくに、冒頭の新入社員の大きな失敗は、就職活動前に読んでおくと参考になるかもしれません。

 <関連サイト>
奥様はCEO - Facebook
丸の内で働く社長のフロク
 著者のブログです。
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コーン缶の汁でパスタをゆでる

2013年09月18日 | 料理&美味しいもの
 NHK趣味Do楽(火曜日)「わたしと野菜のおいしい関係」で、とうもろこし料理を紹介していました。

 美味しそうだったのが、「とうもろこしのペペロンチーノ」。
 レシピは非常に簡単。ラップに包んでレンジしたとうもろこしの実をパスタソースを作る途中で加えるだけ。
スパゲティーをゆでるときに、実を削り取った後のとうもろこしの芯をゆで汁に一緒に入れるのがコツなんだそう。とうもろこしの風味がパスタに移るんだそうです。

 で、我が家でも真似してみました。
 生のトウモロコシはなかったので、コーン缶を使用。(もちろん紙パックのコーンでもOK)
 コーン缶のコーンと汁を分けたら、汁をパスタをゆでる熱湯に加えちゃいます。
 トウモロコシの芯から出る風味とは違うかもしれませんが、これがビックリするほどコーンの香りと甘みがパスタに移るんです。

 あとは、ベーコンとみじん切りのニンニクを入れたオリーブオイルを温めてソースを作って、コーンを合わせて、アルデンテに茹でたパスタを入れたら出来上がり。

 本当は、赤唐辛子(鷹の爪)を入れないと「ペペロンチーノ(=トウガラシの意)」じゃないのですけれど、我が家は小さい子もいるので、テーブルにタバスコと粉チーズを用意。
 家族にも大好評でした。

 
<参考>
ペペロンチーノ - NHKみんなのきょうの料理
 基本のペペロンチーノのレシピ。パスタの茹で方も載ってます。
春キャベツのシンプルパスタ - NHKみんなのきょうの料理
 ベーコンの入ったパスタ。これにコーンを加えたら、美味しそう。
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『図書館の魔女』(上)(下)

2013年09月17日 | BOOKS
 これは、傑作。

『図書館の魔女(上)』

『図書館の魔女(下)』

著者: 高田大介
出版社:講談社

 あまり夢中になってしまって、子どもたちに「お母さんをしばらく一人にしておいて!!」と頼んで奥の部屋にこもるほど。
静けさの中で文字と言葉と物語に酔いたいと真剣に願った作品なんて、この数年では記憶にないぐらい久しぶり。
 登場人物一人一人の深みある人間像・パズルのように完成していく練りこまれたストーリーはもちろんですが、作品の随所に表われる知的なやりとりが本と言葉を愛する人間にとってはたまらない物語です。
目が捉える文字から、自分のイメージ力・想像力の限りを尽くして物語の中に入り込んで、読み終えたころには疲労感と脱力感を感じるぐらい物語にのめりこんでしまいました。
 珍しく「ああ」「うわ」「えぇっ」と声を上げ、ページを行ったり来たりしながら読み続ける妻を見て、夫もさぞかしビックリしたと思います。

 書架でこの本を見つけた人は、まず本の厚さに驚くのじゃないでしょうか。
 上巻のページ数は654ページ。下巻は、806ページ。つまり、1460ページもある大作です。
 辞書と並べてみると、こんな感じ。ほぼ辞書と同じ厚みがあります。

 普通の小説が「アナログ」の情報量だとしたら、この物語は「デジタルハイビジョン」。冒頭から、映像が頭の中で動き出すような気がするほど細やかに描写されています。だからこそ、このページ数になるのだと非常に納得。一旦読み始めてみれば「もっと長くてもいい、まだこの続きを知りたい」と思うぐらい物語に引き込まれてしまいますし、自分の語彙力と知識の不足で全てを読み切れていない気がして不安になるほどの情報量です。きっと、学生の頃と、30代の今と、10年後に読むのではまた理解が違うのではないかと思います。(退化していかないといいんですけれど)
 できたら、『日本大辞典』『広辞苑』などの大きな辞典を手元に置いて読むことをおススメします。
 花や植物の図鑑などもあると、なお良いと思います。


 この本には、東西の文化が散りばめられています。
 現実世界の西洋と東洋、そしてその合流地点である中東・アラビア・オリエントの文化・言葉が混在し、その混在ぶりが物語世界の独自の歴史背景を伝えようとしているようです。
 舞台である地域の地図も、東西文化の交わる地中海東部・オリエント付近に似ているような気がしてなりません。
 「図書館」と「高い塔」、そして「言語」と言えば、聖書の「バベルの塔」とボルヘスの『バベルの図書館(La biblioteca de Babel)』を連想した方も多いのではないでしょうか。バベルは、バビロニア。まさにオリエントです。
 さらに、表紙はアラベスク模様で、イスラム文化圏・スペインのアルハンブラ宮殿やチュニジアのシディ・サハブ霊廟の壁面を思い起こさせます。物語の一番大切な建物の内壁はこんな感じなのでしょうね。ほのかな光は、出会いの日の蝋燭の灯りのイメージでしょうか。写真では細かい唐草模様も、独特の手触りも伝わらないと思いますが、装丁も本当に素敵です。

 ところどころに日本語以外の言語(アルファベットや漢文)が出てくるのは、著者 高田大介さんの研究領域が「印欧語比較文法・対象言語学」だからもあるのでしょう。表紙タイトルにも『de sortiaria bibliothecae』とあります。もちろん、この物語を読むうえで外国語の辞書が必要になることはないのですが、ラテン語とフランス語などの辞書を見ながら「ふむふむ」と見比べるのも一興。文法はすっかり忘れてしまいましたが「大学時代に複数言語の講義を受けておいてよかった」とさえ思いました。久しぶりに対象言語学のテキストも読もうと思ったぐらいです。(たぶん、押し入れの中
 この本を深く理解するためには、三国志や漢詩などの中国文学やオリエント文明の灌漑技術の本なども、面白いかもしれません。

 そうそう、女性が物語の中で大きな役割を持つところも、同じ女性として嬉しいところです。

 世界を武力ではなく言葉と知識で治めていけたら、本当にいいのですが。
 今まさに戦の中にあるダマスカスの歴史文書館はどうなっているでしょうか。早く平和が訪れますように。


<追記>
 『de sortiaria bibliothecae』の意味はもちろん『図書館の魔女』のようです。
 ラテン語で、「de」は「~について(奪格支配の前置詞)」、「bibliothecae」は「図書館の」(=図書館= bibliotheca の属格)かな。
  「sortiaria」 は、たぶん「sort(魔法・呪文)」+「aria(に関する女性)」ではないかと思うのですが……。ちょっと手元に羅和辞典や文法書がないので自信がありません。(例. libraria 女性司書)
 本文中にも出てくるフランス語の「sorcier(ソルシエ・魔法使い)」「sorcière(ソルシエール・魔女)」には、「運命を引く人」という原義があったようなので、この物語にとても似合っている気がします。
 ※ジーニアス英和大辞典「sorcerer」の項によると。

<追記 2015.01.26.>
 続編(第2作)の発売日は2015年01月27日。タイトルは『図書館の魔女 烏の伝言』(トショカンノマジョ カラスノツテコト)です。

<関連記事>
『図書館の魔女』感想 つづき - MOONIE'S TEA ROOM
『図書館の魔女 烏の伝言』 - MOONIE'S TEA ROOM

<追記 2016.09.20.>
 文庫化されて、特設ページができてました。
 文庫版は全4巻なんですね。
高田大介『図書館の魔女』特設ページ - 講談社文庫
 第3作『図書館の魔女 霆ける塔』(トショカンノマジョ ハタタケルトウ)についても、「2016年刊行予定」と案内がありました。
 とても楽しみです。
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『やさしい大おとこ』

2013年09月16日 | BOOKS
 絵も優しい、すてきな物語です。

『やさしい大おとこ』
作・絵 ルイス・スロボドキン/訳 こみやゆう
徳間書店


 勇気ある女の子と、それを信じる家族が、淋しい思いをしていた優しい大おとこを救います。
主人公の「自分が聞いたこと、自分が見たことを信じて行動する」ところは、是非子どもたちに見習ってほしいです。



 悪いことはしていないのに誤解される人、虚言で人をだます者もいれば、それを疑わずに信じてしまう人々もいる。
1955年の作品ですが、今の世の中でもけっして変わりがないように思えます。
 多くの人が誤解しあって、正しいと思って加害者になったり、傷つかないでよかったはずの人たちが傷ついている現実があります。
 国同士のいざこざも、本当は目と目を見てゆっくりと相手の話を聞いて語り合う機会を増やすことが一番の解決法じゃないでしょうか。

 英語のタイトルは『THE AMIABLE GIANT』
 「amiable」は、ラテン語の「amicabilis(親しい・愛想の良い)」が語源。
 「男友達」を意味するフランス語の「ami」や、スペイン語の「amigo(アミーゴ)」と同じルーツなんですね。
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セレンディピティを活かせる人に! 『「赤毛のアン」が教えてくれた大切なこと』

2013年09月15日 | BOOKS
『「赤毛のアン」が教えてくれた大切なこと』
著者:茂木健一郎
出版:PHP研究所


 『赤毛のアン』は私の大好きな本で、日本語訳も英語版もシリーズ全部を持っているのですが、あらためて『赤毛のアン』に出会えた幸せを教えてくれる1冊です。
 中高生に、この本と『赤毛のアン』の両方を、ぜひ読んでもらいたい!!
 (この本にはネタバレがあるので、できれば『赤毛のアン』から読んでほしいなぁ。)

 この本は、読者である「キミ」に、著者(「僕」)が語りかけるような文体で書かれています。
 脳科学者である著者の経験や、読書の大切さについてのアドバイスも、中高生に伝えたい気持ちが伝わる優しくくだけた文です。ちょっと知り合いのおじさんと語り合うような気持ちで読んでほしいと思います。
 絵も可愛いですし、『赤毛のアン』ですけれど、男子にも読んでもらえたらいいなぁ。

 さて、この本に、「セレンディピティ」という言葉が出てきます。
 茂木さんは、「偶然の幸運に出合う能力」と訳しています。我が家にあるロングマンの英英辞典では、「Serendipity : when interesting or valuable discoveries are made by accident」、「偶然に、興味ある、価値ある発見に出合うこと」といったところでしょうか?
 一見つまらない・些細なことを自分に価値ある「発見」に変えることができる能力って、生きていくうえで、そして、幸せな人生をおくるために、本当に大切な能力だと思いますし、自分の子どもたちにも持っていてほしいと思います。

 社会的な成功も必要かもしれませんが、毎日小さな幸せや面白い発見で笑顔になれる人生のほうが、実は心豊かで人間らしいですものね。


<参考>
セレンディピティ - Wikipedia
 セレンディピティの語源も書かれています。
 「セレンディップ」は、ペルシャ語でスリランカのことだそうですから、紅茶でも有名な「セイロン」ですね。
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鉛筆を立てるように

2013年09月14日 | 家事のおはなし
 この夏。どこで見たのかは記憶がないのですが、「子どものしつけ」について、

 「食器をテーブルに置くときは鉛筆を立てるようにそっと置くように」と、子どもをしつけていた

 というようなことが書いてある新聞記事を見ました。
(ちゃんと読む時間もなかったので、たぶん実家で野菜を包んでいた新聞ではないかと

 「なんて分かりやすいんだろう」と、感激。

 「鉛筆を立てるように」といえば、小さい子どもであっても、ゆっくりそっと最後まで気を使って置くことをイメージするのは簡単です。
「ガチャンと置かないで」「丁寧に置きなさい」よりも、ずっと子どもの頭にスーッと入っていく言葉じゃないでしょうか。

 帰省から戻ってきて、我が家でも使い始めています。
自分が大きな音を立ててしまって、反省することも……。
 もちろん、食器だけではなくて本も、身近な道具の扱いも同様に。

 「鉛筆を立てるように」 なんだか大きな一言です。
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『泣き童子 三島屋変調百物語参之続』

2013年09月12日 | BOOKS
『泣き童子 (ナキワラシ)三島屋変調百物語参之続』
宮部 みゆき・著
文藝春秋


 三島屋のおちかさんが百物語を聞くシリーズ、3冊目。
 今回も、人間の怖さ・切なさ・優しさが静かに伝わってくる宮部さんの時代物ならではの人間味のある物語です。


 夏休みの帰省の間、1冊の本も新聞も読む時間がなかった私のイライラをきっちり鎮めてくれました。
忙しいと忘れがちな幸せも、自分の中にある暗く汚い感情も思い出して、読むことで自分を洗ったようなリセットしたような気持ちになるのは、辛い過去を持つおちかさんが百物語を聞くことで得ている何かと一緒のものかもしれません。
 もしも、このシリーズが本当に「百物語」だとしたら、1~3巻で15話、とても先の長い話です。物語の中では1年ちょっとの歳月ですが、物語が語りつくされるまで、こちらは何年かかるでしょう?作者にも、読者にも歳月が流れて、百話目を読むころにはどうなっているか、なんだか楽しみでもあります。
 面白いのが、1巻・2巻・3巻に収録されている物語は、それぞれ掲載されていた雑誌も単行本の出版社も違うこと。
 1巻「おそろし」の角川文庫版の解説で、縄田一男氏がこの物語を「怪談による心療内科」と評していますが、場所を変えあちこちで診察している町医者のようなものかもしれないですね。

 思わず笑みがこぼれるような、人との交流もでてきて、希望の光が見える3巻。
 続きをまた待ちましょう。


<関連サイト>
宮部みゆき『泣き童子 三島屋変調百物語参之続』特設サイト - 本の話WEB
『おそろし 三島屋変調百物語事始』 角川書店
 「三島屋」シリーズ第1弾
『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』 中央公論新社
 「三島屋」シリーズ第2弾
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『おにいちゃんといもうと』と『にいさんといもうと』

2013年09月11日 | BOOKS
 名作絵本が、新しい訳とイラストで出版されたというので、読み比べてみました。
『おにいちゃんといもうと』(2013年7月)
シャーロット・ゾロトウ 文
おーなり由子 訳
はたこうしろう 絵
出版:あすなろ書房


『にいさんといもうと』(1978年7月)
シャーロット・ゾロトウ 文
メアリ・チャルマーズ 絵
矢川 澄子 訳
出版:岩波書店


 『おにいちゃんといもうと』、まず表紙のイラストから頬を緩めずにはいられません。
原作の素晴らしさもありますが、新しい はたこうしろうさんの絵が何とも可愛い。
 おにいちゃんは小学生中学年ぐらいかな?妹は幼稚園から低学年ぐらい。
 カラフルな絵には、小さな女の子の可愛い楽しみが描かれていて、娘を持つ母として共感するところばかり。それぞれのシーンのおにいちゃんといもうとの表情が、ふたりの感情をしっかり表していて、なんど読んでも胸が温かくなります。とくに、おにいちゃんの表情が良いのです。
 おーなり由子さんの分かりやすくて、読みやすい文もとても素敵です。読み聞かせにも、いいですね。

 そして、今回読み直して『にいさんといもうと』の素晴らしさを再確認。
 新しい絵本との読み比べのおかげで、前に読んだ時は気が付かなかったことに気が付いて、あらためて大好きになりました。
 色は水色と黄色のたった2色。新しいものに比べると分も会話も少なくて、言葉足らずのようにも見えます。
 ところが、チャルマーズさんの絵の中に、大きな魅力があるのです。
 妹が泣くときの様子、泣いた後の兄への目線・表情。妹が少しずつ成長して、にいさんを理解していく姿が、小さい小さい箇所でしっかりと表現されているのです。
 そこが、新しい『おにいちゃんといもうと』にはないところですね。

 我が家にも同じような「兄と妹」がいますから、本当は仲が良い兄妹の姿を描いたこの絵本は一つの愛しい宝物のようです。
原作『BIG BROTHER』は、1960年発行。53年も前!昔から、おにいちゃんは可愛い妹をかまわずにはいられないのですね。
 ぜひぜひ、両方の絵本を読み比べてみてください!
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『ストグレ!』

2013年09月10日 | BOOKS
『ストグレ!』著者: 小川智子
講談社


 読んでまず、中学生の次男に薦めました。
 読んで、「よかったよ」と一言。
反抗期入りする小学校高学年から中学生に、是非読んでもらいたい1冊です。

 空手少女が主人公。でも、女の子が主人公だからといって「女の子向け」の本ではありません。
いろいろな家庭の事情、大人の持っている過去、子どもが抱えているイライラ感。
 「あぁ、自分の周りにもあるな」と、感じながら読めると思います。

 おじいちゃん子である主人公の「勝利の女神がほほえんでくれる毎日の心がけ」が本当に素敵です。
自分も他人も気持ち良くなる、毎日の心がけ。……現代の子育てに不足しているかもしれません。
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『負けないパティシエガール』

2013年09月08日 | BOOKS
『負けないパティシエガール』
作/ジョーン・バウアー 訳/灰島かり
小学館


 『靴を売るシンデレラ』のジョーン・バウアーさんの新作。
 前作も、とんでもない試練に立ち向かう一生懸命な女の子が素敵な物語でしたが、今回の作品も元気がもらえる1冊です。
表紙のカップケーキが可愛くて、美味しそう!!

 カップケーキを作ることは天才的に上手、でも文字を読む子ことが苦手な「読み書き障害・難読症(ディスレクシア)」の女の子が主人公。
 学校では障害が原因で、おちこぼれ。でも、辛く大変な状況を乗り越えて、自分の道を切り開いていきます。
 自分の頑張りと、ほかの人と関わっていく前向きさが大切なこと。毎日単調で平凡な学生生活を嘆いている10代の女の子、中学生・高校生におススメしたい物語です。


 アメリカでは約1割の人が「ディスレクシア」で読み書きに支障があると言われていて、俳優のトム・クルーズさんや映画監督のスピルバーグ氏、エジソンやアインシュタインもそうだったそうです。
 きっと、アメリカでは周りの友達にもいる、そんな身近な障害なのかもしれませんね。


 原作のタイトルは『Close to Famous』。
 「有名になるまで、もうちょっと」ぐらいの意味でしょうか?テレビのお菓子作りタレントに憧れている主人公にぴったりのタイトルです。
 ちなみに、パティシエ(お菓子職人)は男性形。女性形はパティシエールなのですが、日本語訳では分かりやすいように「パティシエガール」になったのかな?「パティシエールガール」だと、ちょっと読みづらいですもんね。


<参考>
『Close to Famous』Joan Bauer
 原作者のサイトです。アメリカ版の表紙も可愛いですよ。
 英語ですが、カップケーキのレシピ付き!
ディスレクシア - Wikipedia


9月8日は「国際識字デー International Literacy Day」です。
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『小野寺の弟 小野寺の姉』

2013年09月06日 | BOOKS
 家族って、優しくてせつない。

 『小野寺の弟・小野寺の姉』 西田征史 
出版社:リンダパブリッシャーズ


 「あまちゃん」にも出演している片桐はいりさんと、「ゲゲゲの女房」の向井 理さんが姉弟役で舞台化されたという、『小野寺の弟・小野寺の姉』。

 姉の視点と弟の視点が章ごとに切り替わって、二人の何気ない毎日の生活・心の中を描いていきます。

 読後感は、ほのぼの。「読んでよかった」「友だちにも薦めよう!」と思うのに、自分が同じ立場だったらと思うと私は苦しい。
お互いを大切に思う気持ちが、「家族」の温かさが、どうしてこんなにせつないんだろう。

 40歳の姉と33歳の弟。
 両親はなくて、古い一軒家に二人暮らし。
 こっそりとお互いを気遣って、喧嘩しながらも仲良く暮らしている毎日。

 誰よりも分かりあえて、誰よりも近くにいて、でも恋愛とは違う二人の関係が、この先どうなるんだろう?
おばあちゃんになって、おじいちゃんになっても、きっと並んで憎まれ口をたたいていそう。

 家族二人でいるのがあまりに自然で、楽で、快適だと、やっぱり新しい人間が入っていくのは難しいのかな。
『赤毛のアン』のマリラとマシューの老兄妹を思い出したら、「こういう二人の老後もありかな」って思えたのですけれど。
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