MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『日本人に知ってほしいイスラムのこと』

2018年08月29日 | BOOKS
日本人に知ってほしいイスラムのこと
フィフィ
祥伝社新書

 非常に分かりやすくて読みやすい1冊です。
 日本で育ち、日本のことをよく理解している著者だからこそ、日本人が分かっていない「イスラム」のことを、的確に伝えられるのだと感じました。
 まずは、最初の7ページ(p.12〜18)「フィフィ版・そうだったのか!イスラム」だけでも、目を通してみてください。

 「2020年には全人口の4人に1人がイスラム教徒になる」「2050年までには世界の人口の3割をイスラム教徒が占めるだろう」という今、イスラムについて知らないでいること、誤解したままでいることは、未来を担う子どもたちにとっても、ビジネスにとっても、日本の観光にとっても、大損失だと思います。
 しかし、つくづく私も含め、日本人は「イスラム」を誤解していると、読んでいる間も反省しきりでした。これでは、イスラム教を信じている人たちは、残念で仕方がないと思います。

 私が感じたのは、「イスラム教を信じる人たちって、江戸の町人たちにちょっと似ている!」ということでした。
 例えば、
・できることなら一生に一度はお伊勢参り(イスラムの人たちは「ハッジ=メッカ巡礼」)
・裕福でなくても自分より貧しいものには施しをする
・お寺や神社に寄進する(イスラムの人たちは「モスク」)
・徳を積む
・知恵袋としてのお寺や住職(イスラムの人たちは「モスク」や「イマーム(宗教指導者)」)

 落語や時代物で出てくる人情味あふれる町人たちの助け合って生きる姿と、この本で紹介されている「イスラム」の人たちは重なります。

 一夫多妻も、誤解だらけでした。(p.156〜)
 「すべての妻に物質的にも精神的にも平等に分け与えること(夫との時間・贈り物・財産の平等)」が条件だなんて……。それでは、一般の人たちは無理ですね。一夫多妻が許される人は限られているというのも納得です。
 それにしても、「若い妻ばかり大事にして、糟糠の妻は冷遇される」というイメージって、大きな誤解なんですね。「正妻と妾」「正室と側室」とか、『源氏物語』をはじめ日本の物語では当たり前なので、「すべての妻が平等」には驚いてしまいました。
 女性が肌を見せないことも、男性・日射し・砂嵐から女性を守るためだと考えると、決して女性差別ではないのですね。

 そして、何よりも「自爆テロ=イスラム」なんて、とんでもない。
 まるで、「仏教=仏教系カルト集団」と言っているぐらいおかしなことで、「それって別物ですからっ!!」と普通の信者の皆さんは憤りを感じていると思います。
 「誰にも他人の命を奪う権利はなく、自分の命を奪う権利もない」(p.198)という、イスラム教の姿が、もっともっと日本中に伝わらないといけないと思います。

 本来は平和的な「イスラム教」の教えを、勝手に都合の良いように解釈し悪用している集団が、精神的・経済的に不安定な若者を利用して企てた犯罪を報道するとき、「イスラム教=平和な宗教」としっかり定着していない私たちの国では、細心の配慮が必要なのだと思います。
 例えば、日本人が犯人の事件があったとして、「容疑者の家には仏壇があって、毎年神社に初詣に行き、小さい頃はお寺のお祭りに参加し、常に神社のお守りを携帯していた」と宗教的なものに関係付けて報道されたら、「え?宗教はまったく関係ないんじゃないですか?」と思うのではないでしょうか?
 孤立感、貧困、不公平感、様々な世の中への不満こそが、事件の背景であるにもかかわらず、「これは私たちではなくて、ほかの宗教を信じている人たち(ほかの国の人たち)」と切り離したい気持ちが、メディアだけでなく私たち国民にもあるからかもしれません。

 まずは、知ることから。
 「第5章 これだけは知ってほしいイスラム」と「第6章 ムスリムと付き合うために知ってほしいこと」から読み進めてもいいと思います。
 そして、大人が読んだら、ぜひお子さんにも勧めていただきたい1冊です。
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『猫はためらわずにノンと言う』

2018年08月15日 | BOOKS
『猫はためらわずにノンと言う』
著者:ステファン・ガルニエ
訳者:吉田裕美
ダイヤモンド社


「猫の行動・哲学・考え方から、私たち人間の生活を見直してみよう」という1冊。
 軽く読むことができる3〜4ページの文章とイラストから構成されている「猫から教わる知恵」が40個以上。その知恵の一つ一つに、文化人による猫にまつわる名言付き。どれも、ユーモアとウィットに富んでいて、そして優しくて賢い……、さすがネコ!
 猫のように自由に幸せに生きることは、なかなか簡単ではないけれど、この本を読んで、「あぁ、ちょっと無理しすぎていたかな」「少し、ゆっくりしようかな」と思うことから始められたらいいですね。

フランス語の原題は「Agir et penser comme un chat」。「猫のように行動し、考えよう」という感じ。日本語タイトルは、章のタイトルの一つなのですが、「NO」と言えない日本人ですから、日本語タイトルとしてピッタリかもしれないですね。

 私が一番気に入ったのは、この一文。
 「あなた自身が心も体も幸福で心地よくいられる場所と時間、それを猫のように大切に守ろう。」(p.33)
 自分だけじゃなくて大事な家族にも、同じように思っていて欲しいですね。
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