MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『小説 土佐堀川―女性実業家・広岡浅子の生涯』

2015年02月16日 | BOOKS
豪商を切り盛りし、鉱山を経営し、女子大学・銀行・生命保険会社の創立・創始・創業の立役者となった女性。

 本当にこれが実在した人なの??と驚いてしまうほど、ドラマチックな「女傑」の物語です。
「女傑」を辞書でひくと、「大胆で度量が広く、すぐれた知恵と行動力をもった女性」……まさに女傑!

『小説 土佐堀川―女性実業家・広岡浅子の生涯』
(ショウセツ トサボリガワ)
著者: 古川智映子
潮出版社 (新装版・2015年)

画像は1988年出版のもの

 NHKの連続テレビ小説「あさが来た」(平成27年度後期)のドラマ原案本ということで、手に取ってみました。
 初めから、パワフルなこと。最後までエネルギーの塊のような人生です。

 「九転十起生」を信条に、人との出会いを大切にし、つねに学んでいく姿勢が周りを巻き込んで、次々と大きな事業を成し遂げていきます。
 
 でも。
 「女性の活躍」が期待される昨今ですが、ここまでの活躍を望まれちゃ困ります。

 まず、主人公・浅子は「生まれた家・嫁いだ家・資産」に恵まれています。そして、仕事に専念する自分を補う「もう一人の自分」ともいえる、家庭(家のこと・子育て・夫)を全て任せられる女性がいるんですから、同じ朝ドラでも「おしん」とは全く違う設定です。
 ある意味、戦後の企業戦士と専業主婦の家庭に近いものがあります。(もちろん、浅子が「企業戦士」です)立身出世や華々しい活躍とは無縁の女性が、主人公の人生を支えていることを忘れてはいけないと思います。
 信頼できるパートナーと仲間がいて、彼女を支える周りの人々があってこその活躍なわけですから、ドラマではそのあたりに注目したいですね。

 お話の中では、レンギョウ(連翹)の花について語る場面が印象的でした。
 読みおわってから調べてみたら、レンギョウの花言葉は「希望」。
「翹(ぎょう)」の字には「とくに秀でた人」という意味もありました。
 希望や願い、そして多くの秀でた人との出会いが連なっていく……。まさに浅子の明るく前向きな人生を象徴する花のよう。
 寒さに負けず、春を告げるレンギョウの花の季節ももうすぐです。

 ちなみに、「土佐堀川(とさぼりがわ)」というのは、大阪にある河川の名前。
 「中之島」は、この「土佐堀川」と「堂島川」に挟まれた中州のことで、このあたりが近代商都大阪の中心部でした。今でも「土佐堀川」周辺は、大阪を代表するビジネス街です。
(実は私、初め「とさほりかわ」と読んでしまって、「土佐(高知)?」「堀川(京都)?」って思ってしまったのですけれど)
 主人公・浅子に縁の深い川として、タイトルになっているのですね。



<参考>
広岡浅子 - Wikipedia
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『図書館の魔女 烏の伝言』

2015年02月13日 | BOOKS
『図書館の魔女 烏の伝言』(トショカンノマジョ カラスノツテコト)
著:高田大介
講談社


 一気に読みました。
 1年以上待っていた『図書館の魔女』の続編です。
 このシリーズは、文字が鮮やかな映像になって私の中で記憶の一つになる、そんな貴重な体験をさせてくれます。

 続編とは言え、この本だけで読んでも十分に楽しめます。
 こちらを先に読めば、『図書館の魔女』を読みたくなる事必至です。

 前作同様、「言葉」が一つのモチーフとなっていますが、人と人・人と動物との言語ではないコミュニケーションも今回は大きく物語を動かしています。
 もともとは仲間ではない寄せ集めのようなおかしな集団が、なにかに導かれるように敵へと向かっていく一部始終は、読み終えてからみると手妻のような、鮮やかな展開です。

 ううむ。面白かった。

 表紙を見て、仮のタイトルだった『売国奴の伝言』よりも『烏の伝言(カラスノツテコト)』のほうが、しっくりとくるように思いました。
 今回の装丁も本当に素敵です。青の地色に書かれた経文(?)と赤い蔦花文様のアラベスク(宝相華唐草?)。そして烏の黒。
 見返しにも感激。
 読むだけでなく、見て、手で触れて、紙の本の喜びがいっぱい詰まっていて嬉しくなっちゃいます。

 目次のページも、読み終えてから見ると、また違った目線で見えてきます。


 前作のお気に入りの登場人物がほとんど登場しないことはちょっぴり残念でしたが、さらに世界広がって、次作がますます楽しみになります。
 今度は、キリヒトとマツリカの感情のあふれるような手話のやりとりが出てくるといいなぁ。

<関連記事>
『図書館の魔女』(上)(下) - MOONIE'S TEA ROOM
『図書館の魔女』感想 つづき - MOONIE'S TEA ROOM

<関連サイト>
『図書館の魔女 烏の伝言(つてこと)』高田大介|講談社ノベルス|講談社BOOK倶楽部

<追記 2016.09.20.>
 『図書館の魔女』が文庫化されて、特設ページができてました。
 文庫版は全4巻なんですね。
高田大介『図書館の魔女』特設ページ - 講談社文庫
 第3作『図書館の魔女 霆ける塔』(トショカンノマジョ ハタタケルトウ)についても、「2016年刊行予定」と案内がありました。
 とても楽しみです。

<追記 2017.05.13.>
 『図書館の魔女 烏の伝言』の文庫版が発売になります。
『図書館の魔女 烏の伝言 (上)』 - 講談社文庫
『図書館の魔女 烏の伝言 (下)』 - 講談社文庫
 発売日は2017年5月16日です。
 昨年(2016年)刊行予定だった第3作『図書館の魔女 霆ける塔』については、「図書館の魔女」特設ページにて「2017年刊行予定」となっていました。著者ブログの更新もほぼ1年間留まった状態なのですけれど『烏の伝言』の文庫版発売で、なにか新しい情報が出てくるといいなぁ。
<追記の追記 2017.05.16.>
  著者ブログ、更新されてました。なんとはなしに、ホッとしました。

 
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『鬼まつりの夜』

2015年02月01日 | BOOKS
『2月のおはなし  鬼まつりの夜』
(「おはなし12か月」シリーズ)
作:富安陽子
絵:はせがわかこ
講談社 


 「おはなし12か月」の2月の物語。
 2月は、やまんばのむすめ「まゆ」のシリーズや「シノダ!」でもおなじみの富安陽子先生の1冊です。

 冬と春の季ける「節分」の夜。
 男の子が鬼の子と出会います。

 楽しくて面白くて、寒い冬のおはなしなのに読み終わったときにもほんわかと温かい物語になっています。
 人でないものへの優しい目線と愛情は、富安先生の物語の素敵なところですね。

 巻末には「2月のまめちしき」も。
 鬼のパンツがトラ皮なわけや、バレンタインの由来など、低学年でも分かるやさしい言葉で書かれています。
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