MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『海に降る』

2015年08月30日 | BOOKS
『海に降る』
朱野帰子(アケノ カエルコ):著
幻冬舎<単行本版>


<文庫版>

 ドラマ化されると聞いて、また読んでみました。

 「海洋科学研究」というお仕事小説でもあり、未確認生物を追う海洋ロマンSF小説でもあり、潜水調査船パイロットの成長物語でもあると同時に、恋愛小説でもあります。
(こう書くと、なんだか欲張りな感じですが、有川浩さんの「自衛隊3部作」みたいな感じだと思っていただければ……)

 宇宙よりも近いのに、宇宙よりも行くのが難しいという深海。
 海底資源や未知の生命体……、地球上に、人類がまだ知らない部分がまだまだあることに驚かされます。

 近年、生きたダイオウイカの撮影などが話題になっていますが、なかなか深海の秘密のベールがはがされないのは、深海の水圧に耐えうる調査船を作るのが難しいからなんだそうです。
 それでも、日本の深海調査技術というのはスゴイらしいのです。
 この本では、話の流れを損なうことなく、日本の「海洋科学研究」の中心・JAMSTEC(海洋研究開発機構・ジャムステック)の仕事・今まで培ってきた技術を紹介してくれていて、ストーリーだけでなく感動してしまいます。

 ドラマでは、なんと、物語で主要な役割をする有人潜水調査船「しんかい6500」を含めた、実際使われている潜水船、研究船で撮影をしているんだそうです。
 4Kで収録し、フルハイビジョン画質で放送するというから、ものすごく見てみたい……でも、WOWOW加入予定はないので残念!
 原作とドラマでは少し設定が違うようですが、深海の映像だけでも見る価値があると思います。

 地球上にも、まだまだロマンがある。
 そして、資源の少ない日本を救ってくれる希望もあるかもしれません。
 「海洋科学研究」がもっと注目されて、多くの国民からも応援されるようになるといいですね。

<関連サイト>
連続ドラマW 「海に降る」 - WOWOW
JAMSTEC | 海洋研究開発機構 | ジャムステック
「しんかい6500」が舞台の小説『海に降る』がドラマ化決定! - JAMSTEC
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『ドミトリーともきんす』

2015年08月21日 | BOOKS
『ドミトリーともきんす』
高野文子 著
中央公論新社


 不思議なドミトリー(寮)を舞台に、寮母さん親子と日本を代表する4人の科学者たちとの交流が描かれている漫画です。

 ノーベル物理学賞の 朝永振一郎(トモナガ シンイチロウ)、湯川秀樹。
  「日本の植物学の父」 牧野富太郎。
 「雪は天から送られた手紙である」という言葉でも有名な、雪の結晶の研究者 中谷宇吉郎(ナカヤ ウキチロウ)

 朝永氏と湯川氏は、実際に中学・高校・大学と同じ世代で京都にいたのですが、牧野氏はもう40年ほど前に生まれた人ですし、中谷氏は雪の研究で北のほうに住んでおられたはずですし、現実ではありえない、時空を超えた共同生活です。

 寮母さん親子は、まじめそうなお母さん「とも子さん」と小さな女の子「きん子ちゃん」。
 日常の中に、優れた科学者がいることで、凡人には想像もできない学問に触れていきます。
 各章の終わりには、4人の科学者の著書の読書案内があるのです……が、やっぱりちょっと難しそうです。

 ただ、4人の若者が自然科学に夢中になる様子、自分の学問を語る様子は、「理科とか科学なんて苦手」と思っていた私でも親しみが持てます。
 それぞれの科学者の特徴をつかんだキャラクターが本当によく描かれていて、本当にこういう人だったんじゃないかと思ってしまうぐらい。
 「科学=難しそう」だけではなくて、「科学=面白いのかも」と思える1冊になっています。

 漫画ですけれど、中学の理科の時間ででも紹介してもらえたら素敵ですね。

<関連サイト>
「1.トモナガ君、おうどんです」 - WEBメディア Matogrosso
 第1話を読むことができます。


<追記>
 「ドミトリー」ですが、私の辞書では「ドーミトリー」で載っていました。
 英語「dormitory」発音も、たしかに「ドーミトリー」のほうが近いかな?
 もともとはラテン語で「dormitorium(寝室・睡眠をとる場所)」だそうです。
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『夏休みの秘密の友だち』

2015年08月15日 | BOOKS
シノダ!
『夏休みの秘密の友だち』
作:富安陽子
偕成社


 「シノダ!」シリーズの新刊・第9弾は、夏休みの読書にぴったりな1冊です。

 夏休みにパパの田舎に行った、ユイとタクミが出会う、思い出に深く刻まれるような不思議な体験が描かれています。
 ハラハラドキドキだけでなくて、「田舎に行く」「お祭りに行く」という非日常の楽しさ・ワクワク感が、いっぱい伝わってきます。

 田舎の夏の草の香り、せせらぎの音、虫の声。
 祖父母と過ごす時間や、夜中の暗闇におびえたこと。
 ……そんな自分の夏休みを鮮やかに思い出しました。
 この春から「シノダ!」シリーズを読むようになった娘は、今がまさに「思い出を作る夏」なのだなぁ。 

 この作品は、富安先生の『やまんば山のモッコたち』や『キツネ山の夏休み』と空気感が似ている気がします。
 楽しいだけでもない、恐いだけでもない、不思議と生命にあふれている山への尊敬と畏怖が伝わってきます。

 パパのお母さん・門前町のおばあちゃんが素敵です!
 私もきちんといろんなことを、子どもたちに伝えていけるおばあちゃんになりたいものです。
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『トオリヌケキンシ』

2015年08月09日 | BOOKS
『トオリヌケ キンシ』
加納朋子
文芸春秋


 つらい経験を越えて、「生き直す」物語です。
 まったく違う状況で、それぞれに悩みを抱えた人たちが「出会い」を通じて動き出す、そんな6つの短編が収められています。

 人生には「岐路」だけでなくて、小さなツマヅキがたくさんあって、ときには大きな「落とし穴」が忽然と口を開いて待っていたりするのです。
 ほかの人も見えず、声も届かず、孤独の中で絶望を感じる日々が、この世の中にはたしかに存在して、今この瞬間も「出口」のない場所に閉じ込められたように感じている人がいることを、私たちは日常生活では忘れています。

 この本は、私たちが「見ていない」「見えていない」苦しみや辛さを抱えている人を、取り上げて描いてくれています。

 そして、ご都合主義と言われようとも、どの短編も、一歩明るいほうへ進みだすストーリーになっています。
 「行き止まり」ではなくて、「トオリヌケキンシ」ということは、どこかへ通じているのです。
 人の優しさや一生懸命さ、人と人とのつながりが大切なことを、伝えてくれる1冊です。


 どうか、全ての人に少しでも明るい「出口」がありますように。
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『八月の六日間』

2015年08月06日 | BOOKS
『八月の六日間』
北村薫
角川書店


 ちょうど同世代の女性が主人公。
 40歳を間近に控えた編集者である主人公が、山に登る経験を通じて成長する物語です。

 30代後半から40代の初めの「いい大人」に「成長」なんて言葉を使うのは、昔だったら違和感があったのですけれど、今自分がその年代になってみると、まだまだ未熟でまだまだ成長の余地があると思うようになりました。

 一人で山を登って、いろいろな人と出会って、大きな自然の中で、山の素晴らしさ・山の恐さを感じるだけでなく、自分を見つめ直すようになる主人公。劇的ではないけれど、静かにゆるやかな心境の変化が、5つの短編(5回の山登り)を通じて描かれます。

・九月の五日間
・二月の三日間
・十月の五日間
・五月の三日間
・八月の六日間(表題作)
 ※タイトルですから、横書きでも漢数字にしています。

 それぞれの短編の始めに、イラスト入りの登山地図があって、主人公の通ったルートが分かります。


 「思い通りの道を行けないことがあっても、ああ、今がいい。わたしであることがいい。」

 このセリフは、わたしも同感。

 過去がどんなものだったかよりも、過去をどう受容しているかが、大人になってからは大切なのかもしれません。

<関連サイト>
『八月の六日間』公式サイト - 角川書店
 試し読みあり。 
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「りぼん」創刊60周年記念切手セット

2015年08月05日 | いろいろ
 オリジナル フレーム切手セット「りぼん創刊60周年記念」を買ってきちゃいました。
 販売開始日は8月3日(月)だったのですが、なんと販売局が全国約80の郵便局と限られていて、最寄りの郵便局では買えなかったのです。
(発売日の朝、勇んで買いに行ったのに……、ちゃんと細かいところまでチェックしてないとダメですね
 よく書類を読んでみると、「別添記載の郵便局以外でもお取り寄せによる販売は可能です」とのことで、取り寄せを依頼していたのが今日届いたのでした。
 切手セットは2種類。

りぼん創刊60周年記念〈1〉(1980~1990年代ver.)
 切手になっている漫画10作品(52円切手10枚)
 ・「有閑倶楽部」
 ・「ときめきトゥナイト」
 ・「銀曜日のおとぎばなし」
 ・「月の夜 星の朝」
 ・「お父さんは心配性」
 ・「星の瞳のシルエット」
 ・「ねこ・ねこ・幻想曲(ファンタジア)」
 ・「姫ちゃんのリボン」
 ・「天使なんかじゃない」
 ・「ママレード・ボーイ」
りぼん創刊60周年記念〈2〉(1990~2000年代ver.)
 切手になっている漫画10作品(52円切手10枚)
 ・「赤ずきんチャチャ」
 ・「こどものおもちゃ」
 ・「ご近所物語」
 ・「HIGH SCORE」
 ・「ベイビィ★LOVE」
 ・「ケロケロちゃいむ」
 ・「めだかの学校」
 ・「ミントな僕ら」
 ・「グッドモーニング・コール」
 ・「GALS!」

 私は〈1〉のほうの世代なので、〈2〉は購入しませんでした。(〈1〉は全部読んだことがあるけど、〈2〉は2つぐらいしか読んだことがありませんし……)
 郵便局の窓口の女性と、「私もこの世代です!!」と盛り上がってしまいました。
 〈1〉のほうの世代も、30代40代ってことですよね。

 52円切手が10枚のセットですが、台紙などとセットで1500円ですから、よく考えたら贅沢な商品です。
 でも、小さく「郵便料金納付のためにこの切手をご利用の場合、写真部分に消印がかかることがあります」なんて書いてありますから、しばらくは使えそうもないなぁ。
 使ってもイラストが残るように、裏面は切手と同じイラストが大きく印刷されているのですが。


 郵便局のネットショップでは、既に「在庫がなくなりました」になっていました。
 かつての「りぼんっ子」たちが、私と同じように「懐かしい!」と購入している様子を想像したら、楽しくなりました。



<関連サイト>
日本郵便 - オリジナル フレーム切手セット「りぼん創刊60周年記念」の販売開始
オリジナル フレーム切手セット「りぼん創刊60周年記念」の販売開始(PDF87kバイト)
 オリジナル フレーム切手セット「りぼん創刊60周年記念」販売の詳細のPDFです。
別紙(PDF699kバイト)
 オリジナル フレーム切手セット「りぼん創刊60周年記念」のの画像PDF2ページです。
別添(PDF56kバイト)
 オリジナル フレーム切手セット「りぼん創刊60周年記念」の販売局の一覧です。
コメント (2)
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『無菌病棟より愛をこめて』

2015年08月02日 | BOOKS
『無菌病棟より愛をこめて』<単行本>
加納朋子
文芸春秋

<文春文庫版>
<電子書籍版>

 急性白血病の闘病記なのですが、「患者本人が小説家」ということが、重くて複雑な事実を読みやすくしてくれていると思います。
さすがに、「文を書くプロ」です。
 次から次へとやってくる苦しい症状の中、書けない日がありながらも、書くことができる日は書き続けてくださったからこそ、臨場感のある闘病記になっています。
 闘病の毎日に楽しみを見つけたり、美味しいものを楽しんだり……、「白血病の闘病記」の薄幸なイメージとは違う一面も見られます。

 なによりも、この本の素晴らしいところは「患者の家族」のことが描かれているところです。

 愛のある家族が登場します。ユーモアのあるパートナー・我がままを言わないお子さん・仲の良い兄弟姉妹、そして見守る親。多くのフィクションよりも、理想的な家族なのじゃないでしょうか。
 そして素晴らしい友人・仕事仲間が登場します。
 ご本人の仁徳の賜物でしょうけれど、辛い病気のときに、こんな家族や仲間に恵まれている人は幸せです。
 患者の周りにいる人たちの苦悩だけでなく、思いやり・心配り・そして治療に協力する勇気……。こんなに患者のことを思ってくれる家族がいたからこそ、この本には「涙」だけでなく「笑い」もあるのでしょう。

 もしも、そんな家族や友人がいなかったら……きっと闘病生活は何倍も何倍も辛いはず。生きる気力さえ失ってしまうのではないかと思います。

 この本を読んで、「ある日突然、深刻な病気になったら」ということを考えました。
 自分がなるケース、大切な人がなるケース。
 私も前向きに、頑張れるだろうか?楽しみを見つけられるだろうか?
 そして、家族との関係はどうなるだろう?

 病気になる前の、普段の何気ない毎日の人間関係が大切なのだと、つくづく感じます。
 周りの人への感謝と気配りが、常日頃からできる人でいたいものです。


<関連サイト>
本の話WEB - 自著を語る(2014.09.22)加納朋子「おかげさまで、急性白血病の告知後四年が過ぎました」(文庫版あとがきより)
 文庫化の際に、この本の後日譚をご本人が書いてらっしゃいます。
 あきらめず最後まで頑張っていても亡くなってしまう方もいる……、生還できた人は幸運だったということを改めて感じました。
本の話WEB - 自著を語る(2012.03.23)加納朋子「白血病患者面会マニュアル」
 「お見舞いの心構え」です。どんな病気のときにも参考になると感じました。
 「励まし」どころか「迷惑」にならないようなお見舞いにしたいですね。
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