MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『 20歳のときに知っておきたかったこと―スタンフォード大学集中講義』

2024年07月13日 | BOOKS
『 20歳のときに知っておきたかったこと―スタンフォード大学集中講義』
ティナ・シーリグ 著
(CCCメディアハウス・旧 阪急コミュニケーションズ)


もう「20歳」どころか、倍以上生きているのですけれど、読む価値のある1冊だと感じました。
メモをとりたくなるような名言が豊富で、「スタンフォード大学集中講義」というタイトルから感じた「難しそう」という印象を良い意味で裏切って、語りかけるような文体で書かれていて読みやすいのもありがたいです。

たくさんの成功者の失敗と成功のエピソードが紹介されていて、生まれながらの成功者はいないことに気付かされます。
幸運にめぐりあうためには常日頃の努力が大切なことも分かります。

私が気に入った箇所は、第7章にある
「よき観察者であり、開かれた心を持ち、人あたりがよく、楽観的な人は、幸運を呼び込みます。」
「運のいい人たちは、(中略)自分の知識と経験を活用し、組み合わせるユニークな方法を見つけています。」
というところ。
私も、運の良さは待っていても得られないもので、幸運を呼び込むための考え方や生き方があるように思います。

第6章の
「キャリア・プランニングは、外国旅行に似ています。どれほど綿密な計画を立てて、日程や泊まる場所を決めても、予定になかったことが一番面白いものです。」
この箇所も、子育てをしている身にとっては響く言葉でした。

20歳のときにこの本を知っていたら私の人生が大きく変わっていたかというと、それほどではないかもしれませんが、「人生にはいろいろなチャンスがある。何度失敗しても世界は可能性に満ちている。」ということを若い人に伝える素晴らしい1冊だと思います。
まずは娘に薦めてみようかな。

<追記>
こちらの本には新版が出ています。
『新版 20歳のときに知っておきたかったこと』 (CCCメディアハウス)
目次を見てみると2つの章が増えているようですし、解説も新しくなっているようです。
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『1(ONE)』(駒子シリーズ4)

2024年04月13日 | BOOKS
駒子シリーズに新刊が出ました。

シリーズの4作目となる新作は、
『1(ONE)』
著者:加納朋子
出版社:東京創元社


『スペース』が2004年の作品で、あれから20年近く。
読者である私たちと同じように駒子さんも大人になって、物語は次の世代に受け継がれていきます。

『ななつのこ』は1992年(平成4年)の第3回鮎川哲也賞受賞作で、主人公の駒子さんは短大生。
気になる本の作者に手紙を書いて不思議な文通による謎解きが始まるというストーリーです。
昭和生まれには懐かしい「短大生」「文通」は今では激減しているものだと思います。

時代はちゃんと平成から動いて『1(ONE)』では、スマホやSNSも登場します。
人の悪意と善意、残忍さと優しさ。弱さと強さ。
時代を超えても変わらない人の心の動きが描かれています。
私にとっては、久しぶりに田舎の同窓会に参加したような、「駒子さん、久しぶり!ご家族は?」とおしゃべりしているような、そんな読書時間でした。

駒子シリーズを読んでいた方は懐かしい登場人物との再会を楽しんで、久しぶりにシリーズ全部を読み返すのがおすすめです。
新しい読者の方は『1(ONE)』から始めて『ななつのこ』に戻ってもいいですし第1作から読んでもいいと思います。
高校生や大学生はお父さんお母さんの若い頃を知るような感覚で読めるんじゃないでしょうか。

<駒子シリーズ一覧>(2024年4月現在)
シリーズ1作目『ななつのこ』
シリーズ2作目『魔法飛行』
シリーズ3作目『スペース』
シリーズ4作目『1(ONE)』
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『八月の御所グラウンド』

2023年11月13日 | BOOKS
『八月の御所グラウンド』
著者:万城目 学
出版:文藝春秋


この1冊に「十二月の都大路上下ル」と「八月の御所グラウンド」の2篇が収められています。
「上下ル」は「カケル」と読むのだとルビがふってあります。

今回はクセの強すぎない、あっさりとしたお吸い物のよな味付けで、でもしみじみと美味しい1冊だと思います。
じんわりと優しくて、心に小さな種火がつく2篇です。

冬の都大路の底冷えも、夏の御所グラウンドの陽炎立つような暑さも、
そこで起こるちょっとした不思議と「ここ、京都だし」「じゃあ、ここが京都だから」という感覚も、
「そうだよね」「わかるわかる」と思いながら読みました。
そろそろ師走の都大路を走る学校も出揃った頃。御所グラウンドの周りはドングリが落ちてるはずです。

『鴨川ホルモー』シリーズ以来の京都を舞台にした万城目作品ということで、ちゃんとあちこちに匂いが付けられています。
これを読むと、また『鴨川ホルモー』シリーズを読みたくなるんじゃないでしょうか。
(私はさっき本棚から出してきました)
年末にかけて、ゆっくり読むのもいいかもしれませんね。
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「頁」「ページ」は新しい訓読み?

2023年09月13日 | BOOKS
『遊遊漢字学 中国語には「鰯」がない』
著者:阿辻哲次
発行:日本経済新聞出版


「頁」の字を漢字変換するとき、みなさんはどう入力しますか?
音読みだと「ケツ」で変換されますが、「ページ」でもちゃんと変換されますね。
(部首名の通称「おおがい」では変換されないんですね…)
でも「ケツ」って音読みを知ってる人の方が少ないような気もします。
前から「『ページ』って音読みでも訓読みでもないよなぁ」と思っていたのです。

今回の本『遊遊漢字学』に「『頁』がページになったわけ」というコラムが入っています。
紙の枚数を数えるときに画数の多い「葉(ヨウ)」を使う代わりに、音が同じ「頁」を「当て字」として使うようになったということだそうです。西洋式の製本技術が使われるようになって、紙の枚数ではなく1枚の表も裏もそれぞれ数えるときにも「頁」の字を使うようになったんだとか。(和綴では「第○葉の表」「第○葉の裏」と言っていたわけですね…)
つまり「ヨウ」という音読みを「ページ」という意味で使っているんですね。

『遊遊漢字学』には「ちょっと大きな漢字辞典には」と書いてありましたが、我が家の辞書(小学館『新選漢和辞典 第六版』1996年第3刷、小学館『現代漢語例解辞典』1999年第4刷)にも、音読み「ケツ」と「ヨウ(エフ)」がありました。
※「エフ」は「ヨウ」の歴史的仮名遣い。

私の住む街の大きめの図書館で、大きな漢字辞書をチェックしてみました。
音読み「ヨウ」が載っていたのは、下記の4冊。
大修館書店『大漢語林』(1992年初版)
講談社『新大字典』(1993年第1刷)
旺文社『漢字典(大活字版)』(2000年発行)
三省堂『全訳 漢辞海 第三版』(2011年第1刷)

とくに「大漢語林」には「1.漢:ケツ・呉:ゲチ 2.ヨウ(エフ) 慣.コウ」と4つの音があって、「ケツ」「ゲチ」のときは、「かしら。こうべ。頭。」「首筋。うなじ。」の意味で、「ヨウ」と読むときは「ページ。書物の紙面で、その片面。またそれを数える語。北方の近代音で葉と同音であることから借り用いた(ただし、葉は枚の意味)。=葉」と詳しく記載されています。「ヨウ」は北方の近代音なんですね。
※「漢」は「漢音」、「呉」は「呉音」、「慣」は「慣用音」。

「訓読み」を「漢字を『和語』で読んだもの」とすると、外来語である「ページ」を「訓読み」と分類できないのでしょうけれど、すでに日本で日常に使われている言葉なので「新しい訓読み」と言えるんじゃないかなぁと思います。
「外来訓」という言葉はないのかもしれませんが、「米=メートル」「麦酒=ビール」も「外来訓」といえるんじゃないでしょうか。
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片仮名のペンネーム?

2023年08月13日 | BOOKS
 つい先日、図書館で見かけた本の作者名が欧米人の名前にありそうな片仮名の名前だったので、勝手に外国人作者だと思って借りて読んでみたら、1ページ目から「ん?日本人?」という感触。
 よく見たら、本の図書分類記号も「913」、つまり「日本語で書かれた物語」です。
(「9」は「文学」、「1」は「日本語」、「3」は「物語」)

 「あれ?日本人作者だった?」と思いましたが、よく考えたら外国人でも日本語で物語を書いていたら「913」になるわけです。
そして、洋風のカタカナの名前でも国籍は日本、つまり「日本人」の人もたくさんいるわけで、「片仮名の名前=外国人が書いている=外国文学」という考え方は偏見だったと反省しました。
 「外国ルーツでも日本生まれ日本育ち、育っていく中で吸収したのも日本文化で、話せるのは日本語だけ」という方もいるんですよね。

 世界では国籍とルーツの国が同じではない人も多いので、図書分類が「日本語」「英語」のように「原著がどの言語で書かれているか」を基準にすることに納得しました。

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未完結なのに「全○巻」?

2023年05月13日 | BOOKS
ネットの本屋さんで本を見ているとき、違和感を感じるのが「全1〜N巻セット」。
(この場合、「N」は自然数です)

私の中では「全N巻セット」は完結しているときに書いてあるもので、未完結の時は「既刊1〜N巻セット」や「以下続刊」のように表示されるものだと思ってました。

私の持っている古いコミックスなどは、本のカバーの袖に著者の既刊本リストがあって、
「〇〇」全5巻
「△△」①〜④
などと書かれているわけです。
この場合、作品「〇〇」は完結していて、作品「△△」はまだ作品が続いていることが分かったんだけど…。

大人買いができるようになってみると「完結しているかどうか」が気になります。
最初から最後まで一気読みしたい!
我がままかもしれないけれど、最終巻には「最終巻」とか「完結」って分かるように表示していただきたいし、「全○巻セット(完結)」と「既刊セット(以下続刊)」は区別していただきたいなぁ。
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『パン焼き魔法のモーナ、街を救う』

2023年03月13日 | BOOKS
『パン焼き魔法のモーナ、街を救う』
著者:T.キングフィッシャー
ハヤカワ文庫

パンの発酵を促したり、ジンジャークッキーにダンスさせたり、そんな ささやかな魔法が使える女の子 モーナ。
ある朝、いつも通りにパンを焼きに厨房に降りていくと、そこには女の子の死体が…。
容疑者として捕まってしまったモーナに、次々と厄介ごとが襲いかかります。
街を守れる魔法使いは次々といなくなり、残った魔法使いはモーナだけ。
モーナは仲間と一緒に勇気と知恵を振り絞って、街を攻撃する敵や内部の敵と向かい合います。

敵を攻撃できるような強い魔法が使えるわけでもない、人を傷つけるような魔法を使ったことも、武器を持ったこともない女の子が戦争に巻き込まれていくストーリーは、とても主人公を身近に感じられると同時に不安感さえ共有してしまいます。
容赦無く近づいてくる敵との戦いがどうなるか。
虚しさはありつつも、モーナや仲間の健闘に励まされる一冊です。

この物語を読んでいるとき、頭の片隅ではずっとウクライナへの侵攻のことがありました。
今回の戦争を見ていて思うのは、英雄が必要となるような戦争なんて起きてはいけないということ。
戦争の中で「君たちは英雄だ」と大統領や国民が讃えてくれることよりも、本当は戦争に行く必要もなく家族と穏やかに暮らしている方がずっとずっと幸せなはずで、自分たちの国と家族を守るためでも誰かが犠牲になることは、どうしても悲しくて悔しい。

考えて、考えて、少しでも より良い方へ。
モーナの物語は「自分で考えること」の大切さを教えてくれます。



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『十二国記』原画展に行ってきました

2023年02月13日 | BOOKS
大好きな『十二国記』シリーズのイラスト、山田章博さんの原画展に行ってきました。

石巻市にある「石ノ森萬画館」での開催で、JR石巻駅から「石巻マンガロード」を歩いて萬画館まで。
2階の展示室で展示されています。
文庫の印刷で見ていた絵が、大きいサイズの原画で目の前に。筆の流れも、色のぼかし具合も分かる距離。
ラフ画も、描き下ろしイラストも見ることができて、なんとも贅沢。
開催期間前半の週真ん中の午前中だったからか、本当に貸し切りのようでした。

初めから最後までゆっくりじっくり見て、スタンプラリーのために石巻の街なかへ。
スタンプ設置場所は一番遠いところでも歩いて15分以内。
初めての街をお散歩するのも楽しい!
散歩して、スタンプを集めて、お昼は「いしのまき元気いちば」で「石巻元気御膳」をいただいて、「石ノ森萬画館」に戻ります。
ちびキャラのスタンプがどれも綺麗に押せて大満足!
3階で「ちびキャラクリアファイル」をもらって、もう一度 原画展を見に2階の展示室へ。

最後に3階の展望喫茶「BLUE ZONE」で、原画展コラボメニューの「函養山パフェ」をいただきました。
パフェについてきたのは泰麒と驍宗さまのコースターでした。

朝9時ごろ石巻に着いて、石巻を出たのが午後4時ごろ。
帰りのJR仙石東北ラインでは『白銀の墟 玄の月』の4巻を再読して、泰麒と驍宗さまの再会シーンで涙。
朝から夕方まで しっかり『十二国記』を楽しんだ1日になりました。

<おまけ>
これから行く方にアドバイス。
『十二国記』の空気感に浸りたい方は耳栓か、イメージに合う曲を聴けるイヤフォンを持っていくことをオススメします。
萬画館の館内は石ノ森章太郎先生のマンガのキャラクターの声、音楽が流れているので、私は少し気になってしまいました。
夢中になると気にならなくなるんですけどね。
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『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら 』

2022年06月20日 | BOOKS
『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら 
 発達性読み書き障害の子の自立を考える』
著者:宇野彰(発達性ディスレクシア研究会理事長)・千葉リョウコ(漫画)
発行:ポプラ社


 以前記事にした「うちの子は字が書けない」の続編になります。

 前回は息子さんのケースの紹介でしたが、今回は娘さんの発達性読み書き障害のケースを取り上げています。
 この本を読むことで「発達性読み書き障害」にはビックリするほど多様性があることが分かります。
 前回の本を読んで、一つのケースの体験談を知っただけで分かったつもりになるのは危険だと反省しました。

 今回のサブタイトルは「発達性読み書き障害の子の自立を考える」となっています。
 子どもの時期だけでなく、一生続いていく特性に向き合って生きていくことがテーマになっています。

 第3話に、家庭教師からの目線の漫画があります。
 家庭教師をしている人は、多くが「他の人よりも勉強ができる人」です。家庭教師の考え方は、多くの学校の先生方の考え方にもつながると思います。
 「なんで、こんなこともできないんだろう?」「どうサポートしていけばいいか」
 まず、知ることが大切で、知った上で学習者本人に寄り添うことが求められているのだと思います。
 もちろん、現在は教育者を志望する人たちは、発達障害についてもしっかり学んでいると思うのですが、「一人ひとりが違うこと。全く同じケースはないこと」を肝に銘じていないと大きな危険があると感じました。

 残念なことに、まだ「発達性読み書き障害」を知らない人が多いです。
 周りの「この子は勉強ができない」という誤解も、本人の「わたしは勉強ができない」という劣等感も、日本中の学校にあるのだと思います。
 「勉強ができて、良い大学に入って、サラリーマンになる」という画一的な目標・価値観を、そろそろ見直さないといけない時代になってきてるんじゃないでしょうか。
 「できることをして、幸せな毎日を、周りの人と協力して過ごす」そんな世の中になるといいですね。
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『日本語はこわくない』

2022年05月20日 | BOOKS
『日本語はこわくない』
著者:飯間浩明
出版:PHP研究所


 国語辞典の編集委員・「ことばハンター」として有名な著者による、「正しい日本語を使えてるのかな?」と不安になっている日本人への優しいアドバイスの1冊です。
 最近見聞きする「普通においしい」「全然アリ」「こんにちわ」などの言葉の使い方の考察と解説を読むと「なるほど、これも日本語の変化なんだ!」と楽しむ余裕が生まれてきます。

 私もニュースを聞いたり本を読んだりしているときに、「ん?今の表現って違和感があるけど、何でだろう?」と考えてしまうタイプです。でも「自分が正しい!相手が間違っている!」と断言するほどの知識や自信もないので「日本語警察」にはなれそうもありません。

 明治時代の文豪の本を読むと「『全然』+肯定」の形があるということは前から知っていましたが、本当に「言葉は生き物」なので時代によって言い方が変わっていくのは当たり前。
 その時代に「正しい」とされていることも誰がが言い出したことに過ぎなくて、新しい時代ではコミュニケーションも変わって、新しい言葉・新しい言い方が増え続けるのだと思います。
 今、平安時代の言葉を「古典」として学んでいるように、1000年後の子どもたちは令和の時代の言葉を「古典」として、「不思議な言い方してたんだなぁ」と思うかもしれません。(そのころまで日本語が日本語として存在するか、分かりませんが…)

 「正しいか間違ってるか」ではなくて、「自分の思っていることが、相手に誤解なく、不愉快な気持ちにさせないで伝えられる」ことが大事なのだと、あらためて感じました。
 言葉の選び方は、自分の個性。自分を伝えられる言葉を持てるようになりたいですね。

 
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『自分で名付ける』

2022年04月20日 | BOOKS
『自分で名付ける』
著者:松田青子
発行:集英社


 世の中の、そして自分の中にある「偏見」に対する気づきがあるエッセイ。

 なんだかモヤモヤとしていた「結婚・妊娠・出産・子育て」に対する感情が、言葉にされていることが嬉しい。
 この本のあちこちで「うんうん、分かる。でも、私はこの感情を上手く説明できなかったなぁ」と頷きながら読んだ。
 合理的でも優しくもない「常識」だとか「普通」が偉そうな顔をしていることを、私は見ているようで見ないで来たのかもしれない。

 これからの時代は「それは変でしょ」とか「なんで私が我慢してるのかな」と声をあげることが当たり前になってほしいと思う。

 そして、この本では、さらりと子育ての楽しさが書かれていることが良い。肩が凝りそうな子育て論は展開されず、「大変なこともあるけど、面白いよね」という著者の好奇心のおかげで、読んでいて重い気持ちにならないで済む。
 なにより、この本の一番最後、第12章「保護する者でございます」で書かれている想いが、私が思う親の姿と同じで嬉しかった。
 子どもを保護する者として自分も学び成長し、いつか子どもが自分の世界を見つけて羽ばたいていけるようにする「仮どめ」の居場所としての親の役割を全うしたいと思う。

 学び続けること、疑問をスルーしないで言葉にすること、考え続けること。子どもの前に、まず大人から始めることが大切なのだと、感じ入る一冊である。
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『JK、インドで常識ぶっ壊される』

2022年03月21日 | BOOKS
『JK、インドで常識ぶっ壊される』
熊谷 はるか 著
河出書房新社

 出版社の紹介ページには「普通の女子高生が、突然インドへ引っ越すことに。」と書いてあるけど、全然「普通」じゃないです。
 いろんなことを「見る目」と「聞く耳」「考える頭」、そして「伝える言葉」を持っている凄い女子高生です。

 この本は「第16回出版甲子園」のグランプリ受賞作。
 家族の仕事の都合で滞在したインドでの経験と思いが、分かりやすく生き生きと伝わってきます。
 インドで感じた格差への疑問や罪悪感、そして「自分ができること」を考える前向きな気持ち…。
 ウクライナへの侵攻をニュースで見ながら「私ができることなんて、何もないのでは」と思っていたところへ、この本はまさに「ハチドリの一滴」でした。
 「自分ができることをする」まずは、それから。

 著者のこれからの活動が楽しみです。
 多感な時期に感じたことを、生かしてほしい。そして伝えてほしい。
 私も自分なりの活動をしながら、若い世代の活動を見守っていきたいと思います。
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装幀を楽しむ

2021年11月06日 | BOOKS
 本を読むのが大好きで、でも好きだからこそスペースの問題で文庫本を買う事が多い私ですが、装幀が素敵な本に出会うと単行本が欲しくなってしまいます。

 一番初めに装幀に感動したのは「はてしない物語」。
 物語から出てきたような装幀、印刷。
 バスチアンが体育用具倉庫で今まさに読んでいるのと同じものを読んでいるのではないかという興奮。
 この本ばかりは単行本で読まなければならないと、今でも思います。

 近年では、『図書館の魔女』に感激しました。
 手触りや、光の反射。もう、眺めていても幸せになってしまう装幀です。
(もちろん、物語も素晴らしい本なのですが)

 最近、発見した時に大興奮して家族に呆れられてしまったのが、
 『図書館の魔女 烏の伝言』(高田大介:著・講談社)と『総理の夫 愛蔵版』(原田マハ:著 ・実業之日本社)の見返しが、色違いだけれど、同じ紙だったこと!
 写真で分かるでしょうか?
(ちなみに、両方とも書籍装幀のデザインオフィス「welle design」さんがデザインされてます)

 あぁ、これだから本屋さんが大事です。
 手にとって、開いてみて、一目惚れしちゃうような本が待っているはず。
 早く、出歩くことに罪悪感を感じないで済むようになるといいなぁ。
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『自閉症は津軽弁を話さない』

2021年01月17日 | BOOKS
『自閉症は津軽弁を話さない』
松本敏治
福村出版(2017年)

角川ソフィア文庫版(2020年)

 言語学や言語習得論を勉強していることもあって、興味を持った1冊です。
 夫婦喧嘩(?)がきっかけで、「言葉を身につけることの不思議」に取り組んでいく研究者の記録です。

 実際に子どもと接する立場と、大学で研究する立場。
 現場の実感と、一般的な知識。
 敵対しているわけではありませんが、現場側を応援したくなるのは、私も似たような立場だからかもしれません。

 小学生の支援ボランティアに入ると、子どもたちは本当に一人一人が同じではないと痛感します。
 得意不得意も、好き嫌いも、感覚も、みんな違います。
 そんな中で、私も、自閉スペクトラム症の子は共通語を話す傾向があるように感じていました。
 「共通語だな」と思ったというよりも、「アナウンサーのように丁寧な話し方をするな」という印象でした。
 なので、この本のタイトルを見たときにワクワクしました。
 はっきりと方言が現れない地域(都会)では気がつかない現象が、方言をよく使う地域(地方)で発見されて研究されることも興味深く感じました。

 社会言語学的にも、方言(地域変種)は場面や状況を判断しながら使う言葉です。
 習得する段階でも、相手の意図を読み取ったり、推測したりしながら身につけているのですね。
 日本語は「高コンテクスト文化(高文脈文化)」といって、「言外の意味」が多く含まれる言語だと言われています。
 「言外の意味」を察することが難しい人にとっては、少々生きづらい社会なのかもしれません。

 この本には続編『自閉症は津軽弁を話さない リターンズ』が出ています。
 そちらも是非読んでみたいと思います。
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『りょうしりきがく for babies』

2020年09月07日 | BOOKS
『りょうしりきがく for babies』
クリス・フェリー:作
サンマーク出版


 目に見えない 小さな世界のできごとを、簡単に描いてくれています。
 丸と線と、分かりやすい色。
 "for babies" なんて書いてありますが、赤ちゃんだけじゃなくて、理科が苦手だったお母さんにも、このあたりから絵本で教えてもらう方が良いなぁと思いました。
 「へぇ。そうなんだ!」と、私は思ったのですけれど、家族は「そうなんだよ」ですって。
 知ってる人は知ってる世界なんですね。

 子どもが小さい頃の「なんで」は 本当に多種多様で、もしかしたら「りょうしりきがく」に興味を持つ子だっているかもしれません。
 まず、「子どもに読ませよう」ではなくて、大人が手にとってパラパラと読んでみるのをオススメします。
 世の中のいろんなことに「なんて不思議なんだろう」と、大人が驚いたり気づいたりすることが、子どもたちにも良い影響があるのじゃないかと思うのです。

 不思議だなと思うこと、調べてみようと思うこと、夢中になること。
 自分は「もう大人だから」といってやらないことを、子どもにだけ期待したり押し付けないように、まず自分から。
 もしかしたら興味を持つかもしれない、そんな絵本に親子で出会えるといいですね。
 そして、今は興味を持たなくたって、いつか「そんな絵本読んだなぁ」と思い返す日が来るかもしれません。
 
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