MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『ぼくは君たちを憎まないことにした』

2016年09月25日 | BOOKS
『ぼくは君たちを憎まないことにした』
アントワーヌ・レリス:著
ポプラ社


 昨年(2015年)11月のパリで同時多発テロ事件の後。
 事件で妻を失ったジャーナリストの男性がFacebook上に発表した「ぼくは君たちを憎まないことにした」というテロリストに対するメッセージは、インターネットの世界だけでなく、テレビ・新聞など各種のメディアで取り上げられ、世界中で共有されました。

 この本は、そのメッセージを発表した男性、「書く」ということを仕事にしている一人の男性が、「書く」ことで自分の悲しみと変わらない事実に向き合っていく2週間の日々を、ありのままに切り取ったドキュメントです。

 妻であり母である女性を失った父子の世界は、大きく大きく変わってしまいます。
 ただ、まだ幼い1歳の子の毎日は、世界的な大事件の後も変わらずに続いていきます。
 最愛の人を失った悲しみを抱えつつ、「父親」としては普段どおりの日常を「母親」の分もこなして、そして被害者の家族として遺体を引き取り、葬儀を行う……。

 まるで詩のような美しい文章、その中の恐ろしい事実。これが作り話でなく現実だなんて。

 信じられないような悲劇の中、父子の日々は悲しくも優しく温かく、父の心は生まれてまだ17ヶ月の幼子に支えられているようにも見えます。
 テロ事件によって失われた一つの命が、どれだけ素敵で魅力的で愛された存在であったのか。
 著者の想い・愛があふれて、読んでいる私も苦しくなるほどです。

 そして、最愛の人を奪った犯人への「君たちを憎まないことにした」というメッセージの高潔さと多くの人々からの賞賛や同情・励ましの言葉は、次第に著者を苦しめていきます。
 高潔なメッセージを世界に発信した人物に期待されていることを裏切ることの怖さ。
 他の人が批判するようなことをする権利はあるのか。そんな人間らしい葛藤も綴られています。

 
 多くの人々の人生を狂わせた犯人が、この本を読むことがあるでしょうか。
 家族の大切さ、命の尊さが、彼らに届くことがあるでしょうか。
 
 
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「よんじゅうはちにんめ」?「しじゅうはちにんめ」?

2016年09月24日 | BOOKS
 毎日新聞の夕刊で連載されていた、諸田玲子さんの『四十八人目の忠臣』がドラマ化されたということで、「図書館にあるかしら?」と調べてみたら、「しじゅうはちにんめのちゅうしん」の検索では文庫版しか出てこない……。
 もしやと思って「よんじゅうはちにんめのちゅうしん」で検索してみたら、単行本版(出版:毎日新聞社)も出てきました。

 『忠臣蔵』の「赤穂四十七士」の読みは「あこう しじゅうしちし」なんですから、やっぱりここは「しじゅうはちにんめ」だと、私は思っていたんですが、どうなんでしょう?
 でも、ふだん「48人」を「しじゅうはちにん」とは読んでないですし、たとえば年齢だって「よんじっさい」って言ってます。
 算数の九九だったら「四十」は「しじゅう」ですけれど、やっぱり普通は「よんじゅう」って読んでいる気もします。

 集英社の文庫版のページを見たら、「シジュウハチニンメノチュウシン」ってフリガナがありました。
『四十八人目の忠臣』  
シジュウハチニンメノチュウシン
著者:諸田 玲子
集英社文庫


 毎日新聞社の単行本版のページには、フリガナがありません。
『四十八人目の忠臣』
ISBN:978-4-620-10774-5
諸田 玲子:著
毎日新聞社(毎日新聞出版)


 単行本版の方だけ「ヨンジュウハチニンメ ノ チュウシン」という可能性も否定できません。
 CiNii(NII学術情報ナビゲータ[サイニィ])の「CiNii Books - 大学図書館の本をさがす」でも、「タイトル読み」は「ヨンジュウハチニンメ ノ チュウシン」でした。
 Webcat Plusでは、「書名ヨミ」は「48ニンメ ノ チュウシン」になってます。文庫版はやっぱり「シジュウハチニンメ ノ チュウシン」です。
 国立国会図書館蔵書(NDL-OPAC)でも、単行本版の「タイトルよみ」は「48ニンメ ノ チュウシン.」、文庫版は「シジュウハチニンメ ノ チュウシン.」でした。

 漢字タイトルですから、読みが二通りあってもいいのかな。
 図書館で検索するときは、漢字で検索するか、違う読み方でも試してみるのがいいかもしれませんね。


ドラマのタイトルは「忠臣蔵の恋 〜四十八人目の忠臣〜」
 NHK土曜時代劇の枠で放送されるようです。
【放送予定】
 2016年9月24日(土)スタート・連続20回
 総合テレビ 午後6時10分から6時44分
 

 

 

 
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"決定版" 星へ行く船シリーズ

2016年09月16日 | BOOKS
 いよいよ発売になりました。
 出版芸術社さんの「星へ行く船シリーズ」。
 「新装版」で「完全版」で「単行本版」、そして、著者あとがき曰く「決定版」の「星へ行く船シリーズ」全5巻刊行開始です。

『星へ行く船シリーズ1 星へ行く船』 新井素子・出版芸術社
『星へ行く船シリーズ2 通りすがりのレイディ』 新井素子・出版芸術社
『星へ行く船シリーズ3 カレンダー・ガール』 新井素子・出版芸術社(出版予定日 2016年11月16日)
『星へ行く船シリーズ4 逆恨みのネメシス』 新井素子・出版芸術社(出版予定日 2017年1月)
『星へ行く船シリーズ5 そして、星へ行く船』 新井素子・出版芸術社(出版予定日 2017年3月)

 集英社のコバルト文庫版を全部持っているし、本当は買うかどうか悩んでいたのですが、「書き下ろし短編」が気になって、そして表紙のイラストを見て心が動いて、さらに夫が「プレゼントしてあげるよ」と言ってくれたので、まずシリーズ第1作と第2作、『星へ行く船』と『通りすがりのレイディ』を購入しました。
 発売されたばっかりなのに、もう「第二刷発行」ってなってるし、すごいなぁ。
 それだけ、復刊を待ち望んでいたファンがたくさんいた証拠ですね。

 えっと、まず、多くの方が気にしてると思うところですが、挿絵イラストはありません。
 (表紙イラストは大槻香奈さん)
 んで、あとがきによると、校正がきっちり入ったうえに、「時代的な齟齬」は「違和感がないように」直したそうです。
(今のところ少しだけだけど、直したところを発見。読み比べたり、もう数回読むともっと分かるかな?)
 ますます文庫版も手放せなくなった感じ。

 ありがたいことに、字が大きくなってます!
(少し老眼が入り始めたご同輩の皆さま、だいぶ違いますよ!)


 1冊ごとに「限定ペーパー」が挟み込んである様子。(左が「限定ペーパー第1号」、右が「第2号」)
 表はシリーズ刊行のご案内。裏は、購入した人のお楽しみ……かな。

 それにしても、「新あとがきを併録」っていうのが宣伝文句に使えるなんて、新井素子先生以外に誰がいるだろう??
 でも、出版社も違うので「旧あとがき(文庫版あとがき)」は併録されてません。

 今回収録の書き下ろし短編は、1巻『星へ行く船』に入っているのが「水沢良行の決断」で、2巻『通りすがりのレイディ』に入っているのが「中谷広明の決意」。
 新しい書き下ろしだけど、違和感はあんまりなかったです。
 ただ、20代当時の著者だったら、この内容は書けないんじゃなかろうか。
 あと、この中谷くんの話を読んじゃうと、きっと『星から来た船』のエピソードを読まずにはいられなくなるわけで……。
 (やっぱり、『星から来た船』も新装版が出ることになるのかなぁ?)

 もしかして「書き下ろし短編」のタイトル、「決」の字でそろえてる?じゃあ3巻とか4巻は「決心」とか「決定」、「決起」「決別」とかがくるかなぁ……。 
 ( <追記 2016.10.20.>違いました! 3巻の短編は「熊谷正浩は〝おもし〟」です。)


 次は11月の『カレンダー・ガール』。こちらも予約注文しようっと。

<関連記事>
「星へ行く船」シリーズ - MOONIE'S TEA ROOM
「図書館戦争」と「星へ行く船」 - MOONIE'S TEA ROOM

シリーズ名について
 新井素子先生は、『星へ行く船』のあとがきで 『星へ行く船』シリーズ って二重鉤括弧つきで書いてらっしゃいます。
 出版芸術社さんは、ホームページもカバーも売り上げスリップ(短冊)も 星へ行く船シリーズ と鉤括弧なしで書くので統一している様子。
 私は 「星へ行く船」シリーズ って、前の記事までは書いていたんですけれど、今回は悩んで鉤括弧なしにしてみました。

<追記 2016.10.20.>
 11月発売のシリーズ第3巻『カレンダー・ガール』の装丁が公開されました。これは、水沢所長と麻子さんよね。
 じゃあ、4巻は熊さんと中谷くんかなぁ。5巻はレイディ?
 本当に、表紙も楽しみですね。
 そして、3巻の書き下ろし短編のタイトルは「熊谷正浩は〝おもし〟」でした。
 と、いうことは、4巻は麻子さんですよね。(5巻は「αだより」が収録ですもん。)

<追記 2016.12.23.>
 1月発売のシリーズ第4巻『逆恨みのネメシス』の装丁が公開されました。
これは、レイディ。力強さと可愛さと……。
 発売日は1月の27日。全国の書店に並ぶのは1月31日頃だそうです。
 書き下ろし短編は「田崎麻子の特技」。特技、いろいろお持ちだからなぁ。

<追記 2017.02.21.>
 3月発売の『そして、星へ行く船』、表紙公開されました。表紙はあゆみちゃんですから、裏表紙には太一郎さんかな?
 5巻には、文庫版ではシリーズに収録されてなかった後日譚「α(アルファ)だより」が入ります!
 そして、なんと5巻にも書き下ろし短編が。これは予想外だったので、嬉しい!
 タイトルは「バタカップの幸福」。どんなお話になってるんでしょう。楽しみですね。

 4巻に入っていた限定ペーパーによると「全巻購入特典を検討中!」とのこと。「帯に応募券が付いている」というので、思わず1〜4巻の帯をチェックしてしまいました。詳細は5巻でお知らせくださるそうですよ。
 私は、レイディの息子の太一郎くんの後日譚が読みたいなぁ。

<関連サイト>
「あゆみちゃんって”理想の私”かも知れません」– 新井素子『新装・完全版 星へ行く船シリーズ』発売記念!独占インタビュー
2016年9月16日 - ブクログ通信

 『星から来た船』の刊行予定?についても、ちょこっと書いてありますね。
ファンの質問に全部答えます!新井素子「星へ行く船」シリーズ完全版の刊行記念企画、第2弾!2016年9月28日 - ブクログ通信
 もうこれ以上の外伝や続きの物語は出ないということ、書いてあります。
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『宇宙探偵マグナス・リドルフ』

2016年09月12日 | BOOKS
『宇宙探偵マグナス・リドルフ』
ジャック・ヴァンス著
浅倉久志/酒井昭伸 訳
図書刊行会


 「宙をかけるトラブルシューター」「宇宙の揉め事処理・問題解決のプロ」なんて文字を見つけると、「星へ行く船」シリーズファンは気になるんじゃないでしょうか?(つまり「やっかいごとよろず引き受け業」ですもんね)
 チャンドラーのフィリップ・マーロウじゃないけれど「Trouble is My Business.」という言葉が似合う、そんな探偵(?)マグナス・リドルフが主人公の連作10篇によるSFミステリ短編集です。

 表紙を見ればお分かりになると思うのですけれど、マグナス・リドルフが相手にするのは奇怪な容姿の宇宙人が多数。
 見た目だけでなく風習もモラルも違うんですから、厄介です。
 でも、リドルフは、そんな宇宙人よりもさらに上を行く、とっても喰えない男なんです。
 白髪で、白いヒゲ。そして、まるで名家の執事のような丁寧な言葉遣い。
 落ち着いた老紳士のようで、やっていることは危険きわまりない綱渡り。
 どちらかというと、交渉人であり工作員。「ミッション・インポッシブル」な感じです。

 「え?こんな解決でいいの?」と思ってしまうような、とんでもない結末があったり、驚かされることばかり。
 依頼もとんでもない依頼ばかりですけれど、はっきり言って一番性格が悪いのはリドルフなんじゃないでしょうか。
 敵にするのも仲間にするのも遠慮しておきたいようなキャラクター。
 哲学的で、理論的で、数学的。
 知的で皮肉が効いた台詞もあちこちに散りばめられていて、困った人なのにどこかカッコいいのです。

 「知性、機転、機略のたぐいは、外見から価値を量れるものではありませんよ。ネクタイとはわけがちがいます」(「暗黒神降臨」)
 ね、ちょっとカッコいいでしょう。

 清濁併せ吞むハードボイルドと思いきや、場所が宇宙で相手が異星人だけに「なんでもあり」。
 苦笑いしつつも読むのが止まらないのは、リドルフの容赦ないトラブルシューティングが痛快だからでしょうね。

 図書刊行会からは「〈ジャック・ヴァンス・トレジャリー〉全3巻」として、ジャック・ヴァンスの著作が刊行されます。
続刊は『天界の眼 - 切れ者キューゲルの冒険』と『スペース・オペラ』、こちらも手に取ってみたくなります。
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はしか 母子手帳を再確認

2016年09月05日 | いろいろ
 はしか(麻疹)の感染のニュース。
 少し心配になって、念のため、母子手帳を再確認しました。

 現在、はしかの予防接種は2回が推奨されています。
 ただ、わが家の子どもたちの頃の母子手帳の予防接種ページでは、「麻しん(はしか)」の欄は1つしかないため、「1回接種でいい?」と思ってらっしゃった方もいるのではないかと思います。(たしか、途中から「2回接種」になったのです)
 
 息子たちのときは、1歳のときに「はしかワクチン」と「風しんワクチン」の接種をそれぞれ受けて、その後「MRワクチン」を1回。
 娘のときは、「MRワクチン」を2回接種しました。
 ちなみに、「MR」は「Measles(はしか・麻疹)」と「Rubella(風疹)」を合わせたワクチンです。

 私自身の母子手帳をチェックすると、私は2歳のときに麻疹(はしか)になっていたようです。
 麻しんワクチンの定期接種の開始が1978年。……もしかして、ギリギリ間に合わなかったのかな?
 インフルエンザよりもずっと感染力の強いウイルスだそうですから、ワクチン接種をしていなければ高い確率で感染してしまうのでしょうね。

 子どもが多い家庭では、予防接種は「誰が何を何回接種した?」と分からなくなりがちです。
 感染や流行のニュースのたびに、家族みんなの母子手帳をチェックするのもいいかもしれません。

 
 
 
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