MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『妻と娘二人が選んだ「吉野弘の詩」』

2019年10月27日 | BOOKS
『妻と娘二人が選んだ「吉野弘の詩」』
吉野弘
青土社


 吉野弘氏の詩には、優しさと切なさがあります。
 奥様とお嬢さん二人の選んだ詩を集めたこの詩集は、もちろん選ばれた詩も良いのですが、娘の奈々子さんが書かれた「あとがきにかえて」の章が、この本の大きな魅力だと思います。
 どんな父であったか、どんな家族であったか。
 この「あとがきにかえて」を読んでから、詩のページに戻ると、家族の表情・営みが見えるような気がします。

 そして、「あとがきにかえて」の最後には、若き吉野氏の書いた私家版の詩集の詩が2篇紹介されています。
 とくに、二十歳前後に作ったという詩「愛を人々の上に」(収録詩集「山巓」)が、今の時代への警鐘のようで、強く印象に残りました。

 軽々しく、人を批判しないこと。不完全な人間を許し、愛すること。その大切さと難しさ。
 最近の悲しい事件を聞くたびに「どうにかならないものか」と思うのですが、一人一人が自分を省みて、少しでも周りの人を大切にすることが、小さなようで大きなことなのだと、思いました。
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『橋をかける 子供時代の読書の思い出』

2019年10月01日 | BOOKS
<単行本>
『橋をかける 子供時代の読書の思い出』
美智子
出版:文藝春秋

<文庫>
『橋をかける 子供時代の読書の思い出』
美智子
文春文庫


 本を読むことが、いかに人生を豊かにするか。
 大人から押し付けられる「読書」では伝わらない、本を読むことの素晴らしさを伝えてくれる1冊です。

 上皇后美智子様が、1998年に開催された第26回IBBY(国際児童図書評議会 = International Board on Books for Young People)ニューデリー大会の基調講演のため、「子供の本を通しての平和 ー子供時代の読書の思い出ー」と題して語られたビデオ講演の原稿を収録しています。
 表と裏の表紙から、それぞれ日本語と英語の両方を読むことができます。
   裏表紙 英語タイトル>
 単行本の表紙イラスト、風の吹く草原のような絵は、絵本でも有名な安野光雅氏です。

 美しい言葉で紡ぎ出される、子どもたちへの希望、世界中の人々への思いやりと、平和への祈り。
 一文一文に、深く博い知識と、読書の喜び、読書への感謝があふれています。

 読み終わって、「教養とはなんだろう」と考えてしまいました。
 受験勉強をすることでも、大学に入ることでも、「教養」科目を受講することでもない、本当の教養とは何か。
 ひけらかしたり人を批判するための知識ではなく、人を理解し 思いやりあふれる社会を築くために必要な知識を「教養」と呼ぶのかもしれません。
 
 「なんのために読書をするのか」「なんのために勉強をするのか」「この世界をどう生きるべきか」
 新しい「令和」の時代を生きる子どもたちに、そして、その子どもたちを導く大人たちに、ぜひ読んでいただきたいと思います。
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