MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『図書館の魔女』感想 つづき

2013年09月26日 | BOOKS
 すっかり「『図書館の魔女』ファン」の私。

 早速、本好きの友人に『図書館の魔女』をすすめたら、「メフィスト賞って言ったら新人でしょ?」と言われてしまいました。
 うーむ。たしかに、新人作家の作品に上下巻合わせて5000円を超えるお金を出すのはためらってしまうのも分かる。上巻だけ買うのも、新人作家だと思うと勇気がいるし、しかもこのページ数と厚さ……。
 正直なことを言うと、「驚異の新人」だとか「新人離れした実力」だなんて出版社の常套の宣伝文句で、ガッカリすることも多いのが事実。でも、今回は「新人」や「処女作」ということは忘れていただきたい。
 (実際メフィスト賞は、新人という枠を超えている方が多いと思うのです。)

 そこで、「まずは冒頭だけでも立ち読みして!」と薦めてしまいました。読み始めたら、きっと気に入ってくれるはず。

 『図書館の魔女』の魅力は、やっぱり「言葉」。
 漢字をルーツにして仮名を使い、さらにアルファベットも飲み込んだ現代の日本の言語文化が、西洋の文化と東洋の文化を合わせた異世界ファンタジーをより魅力的にしていると思います。東西の文字を子どもの頃から学び使う日本人だからこそ書ける・描ける、そして日本人だからこそ、より楽しめるハイ・ファンタジーなのだと思います。
 私としては、西洋の香りだけのするファンタジーよりも、より身近に感じます。

 異世界ファンタジーと言えば、『十二国記』シリーズ『守り人』シリーズも大好きなのですが、『図書館の魔女』の主人公の二人には『十二国記』の年若き女王「珠晶」の聡明さや『守り人』の「チャグム」の運命に対する真摯な姿勢に共通するものがあります。言葉の豊かさも両シリーズをお好きな方ならば、きっと同様に引き込まれるのではないでしょうか。
 『図書館の魔女』は両シリーズと比べると「分厚い・イラストがない」という理由からとっつきにくいかもしれませんが、イラストがないのは「自分の想像力で自由に世界をイメージできる」ことですし、「分厚い」というのは「より精密に描かれている」ということですから、欠点というよりは長所なのだと思います。たしかに、イラストや映像化されたものを見たい気持ちもありますが、まずは自分の頭の中で楽しむことができるというのが、なにより有り難いです。
 大人にとっては、表紙とカバーの荘厳さが嬉しいです。「知的なものを読んでいる満足感」があると言ったら、大げさでしょうか?

 
 そして、『図書館の魔女』の魅力の一つが、主人公たちの「指での会話」。
 東京大学の福島智先生の「指点字」を思い出しました。手話通訳士が指をタイプすることでコミュニケーションする映像は、ひとつの魔法のようです。
      <参考>コミュニケーション方法の詳細 - 東京盲ろう者友の会  「触手話」「手書き文字」「指点字」など写真付きで説明されています。
 音声でも文字でもないコミュニケーションをする設定は、より一層「言葉」について深く考えさせる仕掛けになっているのだと思います。


 今は物語の消化期間。頭の中でストーリーを思い出して、整理して、もう少し時間をおいたら、また『図書館の魔女』のページを開こうと思います。


<関連サイト>
『図書館の魔女』上・下 高田大介 - メフィスト賞大特集 講談社ノベルス
 講談社のページ。
「著者コメント」「担当者コメント」「著者一問一答」「担当者一問一答」など、この本の魅力を伝えてくれます。
 著者がエンデの「ジム・ボタン」シリーズを好きというのが、なんだかとっても嬉しい!
 そして、「受賞作の続編に取り組まれています」(※「担当者一問一答」)とのこと。キリンのように首を長くして待ってます!
高田大介『図書館の魔女』特設ページ - 講談社文庫

<関連記事>
『図書館の魔女』(上)(下) - MOONIE'S TEA ROOM
『図書館の魔女 烏の伝言』 - MOONIE'S TEA ROOM

<追記 2014.01.22.>
 作者のブログ記事(2014.01.15.)によると、次の作品の仮タイトルは『売国奴の伝言』だそうです。
 講談社のページによると、「今春刊行予定」とのこと。楽しみですね。
<追記 2014.05.29.>
 「あの本」ただいま進行中! - 講談社でチェックしたら、「今夏刊行予定」に変わってました!夏休みのお楽しみかな?
<追記 2014.06.04.>
 『図書館の魔女』続編、「今秋刊行予定」になってました。期待して待ちましょう。
<追記 2015.01.26.>
 『図書館の魔女』続編の発売日は2015年01月27日。タイトルは『図書館の魔女 烏の伝言』(トショカンノマジョ カラスノツテコト)です。

<追記 2016.09.20.>
 文庫化されて、特設ページができてました。
 文庫版は全4巻なんですね。
高田大介『図書館の魔女』特設ページ - 講談社文庫
 第3作『図書館の魔女 霆ける塔』(トショカンノマジョ ハタタケルトウ)についても、「2016年刊行予定」と案内がありました。
 とても楽しみです。

<追記 2017.05.13.>
 『図書館の魔女 烏の伝言』の文庫版が発売になります。
『図書館の魔女 烏の伝言 (上)』 - 講談社文庫
『図書館の魔女 烏の伝言 (下)』 - 講談社文庫
 発売日は2017年5月16日です。
 昨年(2016年)刊行予定だった第3作『図書館の魔女 霆ける塔』については、「図書館の魔女」特設ページにて「2017年刊行予定」となっていました。著者ブログの更新もほぼ1年間留まった状態なのですけれど『烏の伝言』の文庫版発売で、なにか新しい情報が出てくるといいなぁ。
 <追記の追記 2017.05.16.>
  著者ブログ、更新されてました。なんとはなしに、ホッとしました。

 
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