MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『あおぞら町 春子さんの冒険と推理』

2016年10月27日 | BOOKS
『あおぞら町 春子さんの冒険と推理』
著者:柴田よしき
出版:原書房


 『捨てる』(出版:文藝春秋)というアンソロジーの本に入っていた「花子さんと、捨てられた白い花の冒険」が改題し、2つの作品が追加され、3つのストーリーが入った連作集になりました。
 事情があって主人公の名前は「花子」から「春子」に変わったそうですが、『捨てる』のときから気に入っていた、この爽やかな夫婦の物語をまた読むことができて嬉しいです。

 スポーツ選手と結婚して仕事を辞め専業主婦をしている春子さんが、毎日を過ごす街「青空市」で出会うちょっとした不思議に向き合うことで、事件や謎が解決していきます。
(「青空市」って「あおぞらいち」とも読めて、生活するのがちょっと楽しそうですよね


 前向きで可愛い春子さんと、優しくて頼りになる拓ちゃん。
 謎解きが面白いのはもちろんですが、新婚夫婦のお互いを大切に思っているところが伝わってくる場面が素敵で、ほっこりするのです。

 あとがきで「またお届けしたい」と書かれているので、これはシリーズになってくれそう。
 続編が出るのが待ち遠しいです。
 

 
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『サクラダリセット』

2016年10月20日 | BOOKS
『サクラダリセット』
河野裕 (コウノ ユタカ)
KADOKAWA


 いわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」の青春小説ではあるのですが、きわめて複雑。
 出来事はからまり、時系列はこんがらがるので、ちょっと記憶力と思考の柔軟性が必要かもしれません。

 特殊能力を持つ人たちが住む街「咲良田(さくらだ)」。
 そんな街で、さまざまな能力を持つ少年少女が出会っていくことで物語は進んでいきます。

 「時間を巻き戻す」「未来が見える」「全ての記憶を保持する」
 最後の巻を読む頃には、読者も、幾通りもの過去と未来の記憶を持って本を読み進めていくことになります。
 彼らの能力を、本当にわずかだけれど疑似体験しているような感覚です。

 優しくて、残酷で、人を疑って、人を信じて、人を傷つけて、人を助けて、どうしようもなく恋をして、人をうらやんで、自己嫌悪して……。
 人間らしい矛盾と、若者らしい真っすぐな正しさと切なさは、けっしてライトではないのですけれど、今の若者はこういう複雑さも含めて「ライトノベル」を読みこなしているんでしょう。

 それにしても、世界を変えられるのはやっぱり少年少女なんですね。(「君の名は。」も然り)
 大人としては、彼らのその細い肩に責任と罪悪感を負わせてしまうのは不本意なんですけれど、その苦難を乗り越えられる若い人こそが世界の希望なのかもしれません。

 世界を変えてしまえるほどの力を持っていても、好きな人の「一番」が自分ではないことを許容することは難しいのだなぁ。

 シリーズは実写映画化が決まって、ライトノベルの角川スニーカー文庫版から、角川文庫でも刊行がスタートしました。
 角川文庫化では書き直されたシーンもあるいうことです。
 「加筆・修正・改題」ってあるので、角川文庫版ではそれぞれの巻にタイトルがついたんですね。
 イラストが変わってしまったのはちょっと残念。
 アニメ化の企画も進行中だとか。コミックスもあるようですから、幅広いメディアミックスになりそうです。

<角川文庫版>
(1)『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』 (発売日:2016年9月24日)
(2)『魔女と思い出と赤い目をした女の子 サクラダリセット2』(発売予定日:2016年10月25日)
(3)『機械仕掛けの選択 サクラダリセット3』(発売予定日:2016年11月25日)
(4)『さよならがまだ喉につかえていた サクラダリセット4』(発売予定日:2016年12月25日)
(5)『片手の楽園 サクラダリセット5』(発売予定日:2017年1月25日)
(6)『少年と少女と、 サクラダリセット6』(発売予定日:2017年2月25日)
(7)『少年と少女と正しさを巡る物語 サクラダリセット7』(発売予定日:2017年3月25日)

<角川スニーカー文庫版>
(1)『サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY』
(2)『サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL』
(3)『サクラダリセット3 MEMORY in CHILDREN』
(4)『サクラダリセット4 GOODBYE is not EASY to SAY』
(5)『サクラダリセット5 ONE HAND EDEN』
(6)『サクラダリセット6 BOY, GIRL and -』
(7)『サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA』
 
<関連サイト>
『サクラダリセット』原作特設サイト 河野裕 | KADOKAWA
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『色弱の子どもがわかる本 家庭・保育園・学校でできるサポート術』

2016年10月17日 | BOOKS
『色弱の子どもがわかる本 コミックQ&A 家庭・保育園・学校でできるサポート術』
原案:カラーユニバーサルデザイン機構
コミック:福井若恵
監修:岡部正隆(東京慈恵会医科大学解剖学講座 教授)
出版:かもがわ出版


 小学校から、色覚検査のための希望確認のプリントが届きました。
 娘には以前に色弱について話してたのですが、このコミックがとても分かりやすいので、オススメです!

 色弱の子が困っていること、家族が心配に思っていることなどが、漫画で分かりやすく説明されています。
 保護者や学校の先生にはもちろんですが、小学生でも理解できる内容だと思います。
 ふりがながないですし、大人向けの説明なので分からない部分もあると思いますが、先に大人が読んでから「分からないところは聞いてね」と渡せば大丈夫だと思います。

 保育園、幼稚園、小学校それぞれの学年、そして中学生。
 相談窓口に寄せられた質問から考えられた37項目のQ&Aで、生活しやすくなる工夫や対応など、年齢に応じたアドバイスがされています。
  表紙や裏表紙にQ&Aの一部が紹介されています

 教育を志す学生さんや、学校などでボランティアをする地域の方にも読んでいただけたらいいですね。
 
<関連記事>
『色弱の子を持つ全ての人へ』『CUD カラーユニバーサルデザイン』 - MOONIE'S TEA ROOM
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「かたわれ時」は夕暮れ時。「かはたれ時」は夜明け前。

2016年10月14日 | いろいろ
 古典の授業で、「黄昏時(たそかれどき・たそがれどき)は夕方、彼は誰時(かはたれどき)は朝」って習いませんでしたか?
 映画「君の名は。」で出てくる、糸守町の言葉「カタワレ時」は夕暮れ時ですけれど。

 古語辞典(旺文社「全訳古語辞典」)を引いてみたら、

・かはたれどき【彼は誰時】 =(薄暗くて彼はだれとはっきり見分けられない時の意)おもに明け方の薄暗い時。夕暮れ時にもいう。
       〔参考〕夕暮れ時を「たそかれどき」とし、「かはたれどき」を夜明け前のころにいうことが多い。
・たそかれどき【黄昏時】 =(「誰ぞ彼(だれだ、あれは)」と人の顔が見分けにくくなる時刻の意)夕方の薄暗い時。夕暮れ時。

 同じく夕暮れ時の、昼でも夜でもない時間を「逢魔が時」なんていいますが、映画「君の名は。」の夕暮れの景色はまるで「魔法に出逢う時」。
 映画を見てから、娘と綺麗なグラデーションの夕焼け空を見るたびに「かたわれどき!」と言い合っています。
 最近の観客動員数のニュースを見ていると、「かたわれ時」も新語として認知されそうな気がしますね。


〔注〕(2019.06.04.追記)
 「カタワレ時」は、2016年公開の映画「君の名は。」に出てくる大事な言葉になっています。
 糸守町の方言という設定で、もちろん辞書には載っていません。
 ふと、「かた-われ【片割れ】」を調べてみたら、「かたわれ・ぼし【片割れ星】」という言葉も載っていました。
   ・かたわれ・ぼし【片割れ星】
    流星。走り星。よばいぼし。 (岩波書店「広辞苑 第7版」)
 ちょっと、「君の名は。」を思い出してしまうような言葉ですね。

<関連記事>
『昔ばなし』と『君の名は。Another Side : Earthbound』 - MOONIE'S TEA ROOM
『小説 君の名は。』 - MOONIE'S TEA ROOM
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『昔ばなし』と『君の名は。Another Side : Earthbound』

2016年10月14日 | BOOKS
『昔ばなし あの世とこの世を結ぶ物語』
著者:古川のり子
山川出版社
(2013.05.10.発行)
『昔ばなしの謎 あの世とこの世の神話学』
角川ソフィア文庫

(2016.09.24.発行 『昔ばなし あの世とこの世を結ぶ物語』を改題・文庫化)

『君の名は。 Another Side:Earthbound』
著者:加納新太
キャラクター原案:「君の名は。」製作委員会
原作:新海誠
角川スニーカー文庫


 以前にも読んでいた『昔ばなし あの世とこの世を結ぶ物語』。
 今でも語り継がれる昔ばなしには『古事記』や『日本書紀』などの神話からの流れが脈々と受け継がれていることを、各地の伝承なども合わせて書かれた興味深い1冊です。
 この秋、文庫化されたということで読み直してみたら、今話題の映画「君の名は。」に繋がる部分を発見してビックリ。
 前回は全く気にしていなかったけれど、映画を見て、映画のサイドストーリー『君の名は。Another Side : Earthbound』を読んだ後だったので、この偶然に驚いてしまいました。

 なんと、「君の名は。」の重要な舞台でもある宮水神社の御祭神「倭文神健葉槌命(しとりのかみ たけはづちのみこと・しとりかみ たけはつちのみこと)」について書かれているんです。
(御祭神については『君の名は。Another Side : Earthbound』に記載があります)

 「第五話 蛇婿入り 苧環はなぜ蛇を退治するのか」は、「糸の力」「男女を結びつける倭文の力」「秩序を織りなす運命の糸」の3つの節で構成されていますが、どの部分を読んでも、映画を見た後では結びつきがあるように思えてしまいます。

 「秩序を織りなす運命の糸」の節には、伊勢物語32段の和歌「倭文の苧環」が紹介されています。
 「いにしへの しづのをだまき 繰りかへし 昔を今になすよしも哉」
 「昔を繰り返し、今に再現する方法があったらいいのに」という意味の和歌ですが、これは……もう「君の名は。」ですよね。
 しかも、「倭文の苧環(しづのおだまき)」というのは、「倭文織りの腕輪」だとか。「君の名は。」で瀧くんが組紐を手首に巻いていたのを思い出します。

 ほかの章もよく知られている昔ばなしを扱っているので、若い人でも面白いと思います。
 今回、同じ角川の文庫から発売されているのも、なにかの縁「むすび」かもしれないですね。


 『君の名は。Another Side : Earthbound』は、映画のサイドストーリーの文庫本で、映画に登場する人物を深く掘り下げる4つのお話で構成されています。

 第1話 ブラジャーに関する一考察
 第2話 スクラップ・アンド・ビルド
 第3話 アースバウンド
 第4話 あなたが結んだもの

 第1話は瀧くん、第2話は勅使河原くん、第3話は四葉ちゃん、そして第4話は三葉のお父さんとお母さんの話になっています。
 この本を読まなくても映画の面白さや感動はちっとも損なわれないのですが、この本を読むことで納得できることも多いので、映画を見てからでも、気になったら手に取ってみてはいかがでしょう。


<関連記事>
『小説 君の名は。』 - MOONIE'S TEA ROOM
「かたわれ時」は夕暮れ時。「かはたれ時」は夜明け前。
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『ごんぎつね』の兵十は何歳か

2016年10月10日 | BOOKS
 娘が学校の宿題で『ごんぎつね』を音読しています。

 ふと、「兵十(ひょうじゅう)って、まだ若かったんだ」と気がつきました。

 娘に「兵十って何才だと思う?」と聞いたら「40才ぐらい?」との答え。
 私も小学生のときはそう思っていたのですが、今回初めて「違う」と感じたのでした。
 長男や次男が小学生のときも『ごんぎつね』を音読していたのに、こんな考え、思いつきもしませんでした。

 「病気の母親を亡くす」という設定や鉄砲を撃つという場面などで、もっと年上だと思っていましたが、よくよく考えてみると、お歯黒の女性がいる時代にまだ結婚していないことや、母を亡くしひとりぼっちになった兵十に「ごん」が同情していることを考えると、まだ10代後半から20代前半じゃないかと思うのです。

 Wikipediaによると、新美南吉が『ごん狐』(『権狐』)を執筆したのは17歳のときだそう。
 兵十もその年頃だったのではないでしょうか。
 病気の母親は、もしかしたら私と同じくらいの年齢だったかもしれません。

 初めて読んでから30年も経って、気がつくなんて。
 あらためて読んでみると、物語全体が少し違って見えてきます。

<参考サイト>
新美南吉 『ごん狐』(新字新仮名) - 青空文庫
新美南吉の作品 - 新美南吉記念館
ごん狐 - Wikipedia


<追記 2016.10.13.>
 では、「ごん」は何歳か?という問題ですが、キツネは春に生まれて、秋には親ギツネと同じサイズになり、単独生活になるそうです。生まれた年の冬には成熟する、つまり大人になるということですから、「ごん」は生まれて半年ぐらいのキツネじゃないかなぁと思います。
 野生のキツネの寿命は3年から4年ということですし、1歳では親と同じサイズということですから、「小ぎつね」は1歳までじゃないでしょうか。
 大人になる前の兵十に、やはり大人になる前のごん。そう考えて読むと、また結末が切ないですね。
 <追記の参考サイト>
 ・ホンドギツネ - 河川生態ナレッジデータベース
 ・ホンドギツネ - Wikipedia
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アニメ映画における「母親不在」

2016年10月04日 | 一考察
 映画「君の名は。」を見てきました。
 映画を見てしばらくしてから、アニメ映画には「母親不在」が多いことに改めて気がつきました。

 「君の名は。」も、主人公2人の母親は登場しません。
 そう考えると、「天空の城ラピュタ」などの宮崎アニメも母親が登場しないことが多いですね。
 または、母親との物理的な距離が遠かったり、一緒に暮らしていても母親にも自分の世界があって子どもと適度な距離感があるケースだったりします。
 子どもに関わりすぎている母親の出てくるアニメ映画をあまり思い出すことができません。
 (「ちびまるこちゃん」とか「ドラえもん」にはお母さんが出てきますけれど、けっして「関わり過ぎ」ではないですよね)

 子どもたち、とくに思春期の少年少女は、この「適度な距離感」を必要としているのでしょう。
 「自立」「成長」「冒険」「恋愛」にとって、母親の存在が「足かせ」や「ハードル」「壁」になってしまうことがあるのは、紛れもない事実なのだと思います。
 映画における「母親不在」は、主人公が自由に活躍するための条件になっているといったらおおげさでしょうか。

 映画の中で、子どもたちは、母親がいなくてもきちんと生活しています。
 主人公の多くは、「幼い頃に必要なしつけをちゃんと受けた子ども」「親だけでない周りの大人たちにもきちんと叱ってもらって育った子ども」に見えます。
 本当は、母親にとっても、「自分がいなくなった世界で、子どもが周りに迷惑をかけず愛されて生きていく」ということは、なによりも理想的ですし、ありがたいことです。
 でも実際は、信じて離れて見守るのは難しくて、過干渉だったり、過保護だったりするんじゃないでしょうか。

 思春期、親がほっといてくれたことが、私にとっても大きな力になった気がします。
 離れていても「愛されている」という自覚と「いざという時は家族に支えてもらえる」という安心感を持って新しいことにチャレンジする自由がありました。
 自立にも恋愛にも、「大人になる」過程の全てのことで、過干渉がなかったことに感謝しています。

 だからこそ、「今度は自分がちゃんと子離れしないといけない」「自分が今までしてきた子育てを信じよう」、そう言い聞かせている今日この頃です。


 余談ですが、映画の中の「母親不在」を、観客として「ありがたいなぁ」と思うことがあります。
 どうしても「母親」が登場すると、「母親」の目線で映画を見てしまうきっかけになってしまうので、主人公に感情移入したいときは「母親不在」のほうがいいのかもしれません。
 今回の「君の名は。」は「母親不在」だからこそ、楽しめた気がします。
コメント (2)
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「心の栄養」と「身体の栄養」

2016年10月01日 | FAMILY
 息子二人が受験生だった頃。

 「お母さんにできることはなんだろう?」と言ったら、
 「母さんはとにかく笑顔でいて。心配なんてしなくていいから。
  あとは、美味しいご飯をお願いします。」と、長男。

 子どもって、しっかり大きくなるもんですね。
 自分に必要なものが、ちゃんと分かってる。
 笑顔は「心の栄養」で、美味しいご飯は「身体の栄養」。
 母が心配そうな顔をしているのは、子どもにとってストレスになるみたい。

 マイペースな息子たちをみながら、母ができたことといったら、
・まず自分が風邪をひかないようにすること
・誰よりも自分が「美味しい!」って思えるご飯を作ること
・好きな読書をたくさんして、子どもたちの前ではできるだけ笑顔でいること
・なるべく心配していないふりをすること(早く寝ちゃうにかぎる!)

 二人がずっと行きたかった学校で勉強できるようになったことがなによりも嬉しいけれど、家族全員が受験シーズンの間中インフルエンザだけでなく風邪もひかずに済んだのも嬉しい結果でした。(今年も油断しないようにしないと!)

 受験期だけじゃなくて、いつだって。笑顔で、そして美味しいご飯を作らなくっちゃいけませんね。

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