天燈茶房 TENDANCAFE

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2015初夏 オランダ・チェコ紀行 14:The Gate of Infinity ~旅の終わりに思ったこと

2015-07-05 | 旅行記:2015 オランダ・チェコ
Nádraží Praha-Bubny 2015


13:チェコの首都プラハを走る鉄道からの続き

プラハの街外れ、裏町の住宅街の片隅にひっそりと、その駅はあった。



プラハBUBNY駅
プラハ都心と郊外とを結ぶ非電化のローカル線の駅である。



首都の駅とは思えないほど閑散としていて、乗客の姿も無い駅だが、
それ以上に奇妙なものを駅前に見つけた。





天に向かって突き出した、これは鉄道の線路のようだが…
不思議な線路のオブジェの根本に掲げられたプレートにはThe Gate of Infinity とある。

The Gate of Infinity…これは一体何を意図しているのだろうと不思議に思いながら駅舎に近づくと、黒い看板が並んで張り出されているのが目に止まった。
そして、そこに書かれた英文の説明を読み始めて瞬時に、あのオブジェの意味を僕は理解した。
いや…あのオブジェの理由が心に突き刺さってきた。



天空の門を目指して続く線路は、ホロコーストからの旅路を象徴していた。
ここは、かつてプラハに暮らしていたユダヤ人たちを収容所へと送り出した駅だったのである。



駅舎の建物に入ってみると、中にはホロコーストの資料パネルが展示されていた。





この小さな駅舎内が、収容所送りとなる人々で溢れかえった日があったのだ。




ホロコーストの犠牲者たちを追悼する花が手向けられていた。




BUBNY駅に、小さなレールバスが到着したのが駅舎の窓から見える。
ホロコーストの犠牲者たちは、この駅から家畜用の貨車に乗せられて旅立ったという。
人々は当時のチェコスロバキアとドイツ・オーストリアの国境近くにあるテレジーンの収容所へと送られ、その後はポーランドのアウシュビッツへと移動させられた。






この駅から旅立つ時、ホロコーストへと向かう人々は
線路の彼方の旅路に何を思い何を見たのか…





現在、BUBNY駅はプラハの裏町の静かな通勤駅として、今なお鉄道駅としての役目を果たし続けている。
駅舎裏に貼られた小さな時刻表には、早朝から深夜までプラハ市内に暮らす人々の日常を支えて走る近郊列車の発着時刻が並んでいた。

やがて、BUBNY駅にまた列車がやって来た。



もう二度とこの駅から、いや世界中のすべての街の駅から、ホロコーストに向かう列車が発車することが無いように…

僕にはそう祈ることしか出来ない。
でも、世界中の人々が皆そう祈り、心を一つにすることが何よりも大事なのだ、きっと。

皆の祈りの心が一つになった時、この駅は本当のThe Gate of Infinityになるのだろう。
そう思いながら、今回の旅を終えることにしよう。


Nádraží Praha-Bubny 2015 ~The Gate of Infinity~


…次の旅は、2015年の夏休み。
闘いの傷跡から平和への願いを込めて、生まれ変わる街サラエボを目指す。
久々の旧ユーゴスラビア、クロアチアからボスニア・ヘルツェゴビナを旅します。
真夏のバルカン半島で、またお会いしましょう。
天燈茶房亭主mitsuto1976 拝

2015初夏 オランダ・チェコ紀行 13:チェコの首都プラハを走る鉄道

2015-07-05 | 旅行記:2015 オランダ・チェコ
Praha hlavní nádraží 2015


12:オランダ鉄道の旅からの続き

チェコ共和国の首都プラハの鉄路の玄関、プラハ本駅(中央駅)。
美しいアール・ヌーヴォー調の駅舎で知られるが、大ドームで覆われたプラットホームは閑散としている事も多く、首都の中央駅としてはどこか寂しげな雰囲気が漂う。







朝のプラハ本駅プラットホームには、通勤列車が停車中。
ヨーロッパではドイツ圏でよく見かける、2階建て客車に運転室を設けた推進運転可能なペンデルツーク式の列車だ。
(※この通勤列車はペンデルツーク式の客車列車ではなく電車だと読者の方から指摘がありましたので訂正します)



チェコのペンデルツークにはCity Elefantという楽しい愛称が付けられていた。
確かに運転室付き2階建て客車の巨体はどことなく「象さん」のような愛嬌がある。




プラハ本駅の地下にもぐれば、メトロ(地下鉄)のC線も運行中。
かつては共産圏時代からの古いソ連製車輌が多く走っていたというが、今では近代的なインバータ制御の電車が軽快に行き交う。

プラハ市内ではメトロやトラム(路面電車)以外にも、チェコ鉄道の近郊列車も都市交通の一端を担う。







プラハ市内で宿泊していたホテルの近くを散歩していたら、偶然見つけた電化されていない線路の踏切を通過する近郊列車。
チェコ鉄道の長距離国際列車ユーロシティと同じ青と白のツートンカラーをまとった客車を、ディーゼル機関車が推して走る推進運転列車だった。






同じ踏切を、小さな車体のレールバスも通過する。
おそらく近郊の小さな町とプラハ都心とを結んで走っているこの列車に乗って、ふらりと鉄道の旅に出てみるのも楽しそうだ。

それにしても、この列車たちにはどこで乗れるのだろう。この近所にも駅はあるのだろうか。
線路に沿って暫く歩いて、プラハの裏町の駅を探してみることにした。

14:The Gate of Infinity ~旅の終わりに思ったことに続く

2015初夏 オランダ・チェコ紀行 12:オランダ鉄道の旅

2015-07-05 | 旅行記:2015 オランダ・チェコ

11:ホテルあれこれ アムステルダムとプラハでの住処からの続き

鮮やかな黄色に濃紺のアクセントが入った車体が特徴のオランダ鉄道の列車たち。
冒頭に載せた写真の列車はICMと呼ばれるタイプの電車で、先頭車の前面に貫通扉があり運転台が高い位置にあるデザインは、日本の懐かしい国鉄型特急485系や183系によく似ている。

実際、車輌の見た目以外にもオランダ鉄道が日本の鉄道に与えた影響は大きく、毎時同じ間隔で発車する「パターンダイヤ」で高頻度運行された国鉄の「エル特急」や大都市圏の電車網はオランダ鉄道のシステムを参考にしたとも言われている。




こちらは、全車2階建てのDD-IRMという新型車輌。
今回の旅では、スキポール空港の地下駅からLeeuwarden(レーワルデン)まで行くインターシティとして運行されていたこのDD-IRMに乗車してオランダ鉄道の旅を楽しんだ。






DD-IRMの2等車・2階車内。
オランダ鉄道のインターシティは日本のJRで言うと「新快速」的な位置づけの列車であり、主要駅以外には停車せず高速運転を行うにも関わらず「特急券」のような追加の特別料金は必要としない。
座席も全て自由席であり、2等車でもこのようにゆったりとしたクロスシートで快適な旅を満喫出来る。






インターシティの終点となるLeeuwarden(レーワルデン)駅。





Leeuwarden(レーワルデン)駅のプラットホーム上に設置されたこの設備は、ICカード乗車券の「乗り継ぎ機」。

オランダ鉄道では自動券売機で発行される乗車券類は全て紙製ながらもICチップが埋め込まれたICカード乗車券となっており、またインターシティの終点となる駅から発着するローカル線は第3セクターに移管された別会社が運営する地方鉄道となっているケースが多い。
インターシティからそういった地方鉄道に乗り継ぐ場合でも1枚のICカード乗車券で通しで乗車出来るようになっているのだが、乗り継ぎ前にはちゃんとICカード乗車券をリーダーにかざして「乗り継ぎ手続き」を行う必要がある。

おそらく、この手続きを怠って乗車し続けてそれが車内検札等で発覚した場合は、相当高額なペナルティが容赦なく科せられる筈。
何事も厳格なルールが適用される契約社会のヨーロッパでは「うっかり忘れました、すみません」等という言い訳は一切通用しない。旅先での思わぬ出費に泣く羽目に陥らない為にも、くれぐれも「乗り継ぎ手続き」は忘れないように注意!




こちらがLeeuwarden(レーワルデン)駅から乗り継ぐ地方鉄道のディーゼルカー。
丸みのある愛嬌のあるデザインの近代的なローカル列車に乗って、世界で最初のプラネタリウム「Eise Eisinga Planetarium(アイジンガー・プラネタリウム)」があるFraneker(フラネケル)の町にさぁ出発!

13:チェコの首都プラハを走る鉄道に続く