ミカエルの函館散策記

美しい夜景と異国情緒溢れる町・函館。
名所・旧跡・食べ処をご紹介していましたが今や万屋。
ご訪問に謝々。

第563号 エッセイ~青函連絡船の想い出

2010年09月16日 | 乗り物

早朝の4時台、函館の町に「ボー、ボー」という音が鳴り響く。
それは、連絡船岸壁に着岸した青森からの一番船の汽笛だった。
当時の連絡船の煙突は4本で朱色に塗られ、黒い煙をもくもく。
この音を待っていたかのように、駅前・大門地区は動き出した。

  

下船口から吐き出された乗客は、二手に別れた。
プラットホームに停車している奥地へ向かう急行列車へと足を速める乗客。
飛行機が発達するまで、函館は連絡船の到着に合わせて道内奥地へ向かう長距離列車で賑わっていた。

もう一方の列は桟橋出口へ向かう人たち。
この列の主役は「しょいっこさん」とか「担ぎ屋さん」と呼ばれた女性たち。
タオルで鉢巻をしたおばさんの集団だ。
自分の体重の倍はある米を担いで「よっこらしょ、よっこらしょ」と体を重たそうにしなら足を運ぶ。モンペの着物姿は汗まみれだった。

出口には大型犬数頭をつないだ「犬リヤカー部隊」が待機。
1個何円かで運搬を請け負っていた。
今でいうところの「軽トラック運送」のはしりだった。
配送先は、旅館、すし屋、食堂、朝市界隈の米屋など。

一時期、この米は「ヤミ米」の烙印が押され、警察当局の摘発を受けることになった。逃げ遅れて捕まり、大声で泣き叫ぶおばさん。
一家の大黒柱として家計を遣り繰りし、我らの食卓のご飯として運んでくれたのに・・・。
米を没収され留置。どうしようもない悲しい場面を見た。

あまりにも潔癖な裁判官がいて、「ヤミ米は食しない」と言い張り、餓死した笑えない話もあった。

夏には、犬の主人は日陰で休息。
犬たちは日が当たる場所でぐったり。
私はこの犬が可愛くて「おじさん、水や餌をやってもいいかい?」。
「頼むな」の返事。
近くの食堂の残飯を持って行くと「ガツガツ」とあっという間になくなった。

行けない日があり、数日振りに姿を見せると「クンクン」と鼻をならしながら尾を振って、「待ってました」の歓迎動作。思わず体を撫でた。

そのうち米の流通経路が変化し、また運搬手段もオート三輪車や軽自動車へと急速に移行していった。

係留されている連絡船・摩周丸を見るたびに、「もんぺ姿のしょいっこおばさんたち」と「犬リヤカー」を思い出す。

 


(懐かしい西田佐知子さんの歌がお聴きになれます。左上の菊正宗CM中、下から3行目、左端ボタンをクリックしてください。)


          

 



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4 コメント

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思いで一杯 (きんこ)
2010-09-16 18:03:38
青函連絡船は私もいくつか思い出がありますが、特に摩周丸は、一生忘れられません。

私は子供の頃から虚弱体質だったため、高校の修学旅行は無理だったので(中学の修学旅行に参加したときは、どうも団体行動が無理だったらしく一週間寝込んでしまいました)

そこで高校3年の修学旅行の替わりに春休みに東京の友人の所に一人で遊びに行きました。

両親は初めての一人旅を心配してツテをたより、摩周丸の乗組員のかたにお願いして連絡船の中での世話や青森駅から東京行きの列車に乗るまで頼んでくれました、

お陰で一週間一生忘れられない東京見物をしました。

東京はそれ以後親戚の冠婚葬祭で行ったきり観光で行った事は一度もありません、
今でも、摩周丸・・・ときけば憧れの東京につながります。
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きんこさんへ (ミカエル4)
2010-09-18 06:41:38
おはようございます。
連絡船は物資を運ぶだけではなく、人間ドラマも積み込んでくれました。
3時間50分の航海中、そこにはいろいろな人間模様があったのでしょう。

親切な乗組員さんとお会いできて本当によかったですね。
自信がつきましたでしょう。
旧国鉄の中で、サービス一番が連絡船だと思います。

現在、体調はいかがですか?
来函のおり、、羽田での待ち時間を利用して「はとバス」はいかがですか?

私は生まれ故郷・川崎には一度も行っていません。
来春、ミケの体調とも相談しながら・・・。
はとバス、浅草、柴又などなど夢を膨らませています。


今朝は大きくなりすぎたラベンダーの剪定を終えました。
ひんやりとした空気の中での作業は、とても爽やかです。

         ミカエル
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Unknown (きんこ)
2010-09-18 09:41:54
おはようございます。

ミカエルさんの(はとバス)案良いですね~。

帰郷するときは只ひたすら函館を目指していて・・・目からうろこ・でした。

是非前向きに考えます、ありがとうございました。
私の体調は今までの一生のうちで一番快調なんです!

お二人様もどうぞお大事に良い日々を送ってください、私も来年の帰郷を目指します。
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きんこさんへ (ミカエル4)
2010-09-18 13:55:54
こんにちは!
「はとバス」がヒントになったのと、お元気なので裏しく思いました。
今日も午前はガイド研修。残すところあと2回。
参加者皆さんの勉強力に驚いています。
ステップ&ステップですね。
ミカエル
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