わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

茶の話29(松平不昧)

2011-12-06 21:52:44 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
徳川三代将軍家光が、1635年「武家諸法度」を制定し、「参勤交代」の制度が設けられます。

目的は、諸国の大名が富を溜め込み、強くなる事を恐れ、国元と江戸を往復させる事により、

各藩に財政的負担を掛けると共に、妻子を人質状態にする制度です。

江戸では、「入り鉄砲、出女」と厳しく取り締まりが行われていました。

藩主は江戸屋敷に、ある期間逗留する事に成ります。

その間、大なり小なり、江戸の文化に触れる事になり、その文化が各地の藩に伝わる事にも成ります。

又、江戸との往復の為、交通の発達や江戸や諸国の文化が、広く拡散して行く結果に成ります。

島根県(出雲)松江の地に、茶の湯を根付けたのが、七代藩主、松平不昧(ふまい)です。

松平不昧(1751~1818年): 松平治郷(はるさと)は松江藩の七代藩主で、不昧と号しました。

 ① 治郷が松江藩(15万6千石)を引き継いだ時(15歳)は、他の諸国の藩と同様に、財政が

   困窮 していて、いわゆる貧乏藩でした。

 ② 財政立て直しの藩政改革を行います。

  )  人材の登用、 )銀札の廃止、)治水工事と新田開発、)薬用人参や木蝋(もくろう)の

   栽培と、野白紙の生産などの産業の振興、)公費の削減などを行い、数年で藩財政は

   好転したと言われています。

 ③ 治郷は、藩主となる以前から江戸屋敷で茶道に励み、遠州流の正井道有(まさいどうゆう)らに

  師事し、藩主に成ってからは、三代伊佐幸琢(いさこうたく)から石州流怡渓(いけい)派を

  学んでいた様です。

 ④ 藩政改革で立て直し、その余力をもって名物茶器の大蒐集を行います。

  不昧が行った茶に関する事柄は、以下の物があります。

  ) 諸国の大名や家来に、茶の湯を教授します。(後に不昧流となる)

    播州姫路15万石の二代藩主酒井忠以(ただざね)、丹波福知山藩3万2千石の藩主朽木昌綱

   (くつきまさつな)、越後与板藩の井伊直広(なおひろ)らが著名な弟子達です。

  ) 多くの名物茶道具を収集します。

   a) 墨跡: 国宝 法語(流れ圜悟) 圜悟克勤(えんごこくごん)筆

    北宋 時代の禅僧、圜悟克勤(えんごこくごん)(1063~1135)の法語は、現存する墨跡の中で

    最古の作で、古くから墨跡の第一とされてきました。

   ・ 桐の筒に入れられて、九州薩摩の坊津(ぼうのつ)海岸に流れ着いたという伝承から、

    「流れ圜悟(えんご)」と呼ばれています。後に堺の豪商谷宗臨(そうりん)の手に入りますが、

    伊達政宗に所望され、やむなく前半十七行と後半二十八行に裁断し、後半を政宗に譲り、

    後に不昧は前半を金千両で譲り受けます。

   b) 油屋肩衝を金一千五百両で入手します。

    この大名物の漢作唐物茶入は、堺の豪商油屋常裕から秀吉、福島正則、家康、土井利勝などを

    経て、不昧の手に入ります。その他大名物、中興名物、名物など839点の茶器を収集し、

    総額十万両以上を費やしたと言われています。

   c) 「古今名物類聚(るいじゅ)」18冊の発行

    収集した茶器類は、茶会に使用すると共に、書籍として残します。

    茶入、茶碗、茶杓、茶壷、茶箱、花入、水指、釜、香炉、軸(掛け物)など広範囲に取り上げ、

    約一千点を収録しています。「茶道具名」「経歴所持者」「寸法」「図面」「仕服」や

    「付属品」(箱、書付など)等を詳細に記しています。

   ・ 上記以外にも「贅言(むだごと)」「茶事覚書」「茶礎」等の書物もあります。

   d) 不昧の茶室

    隠居した後、江戸大崎の下屋敷には、11もの茶室を作り、茶の湯三昧で過します。(現存せず)

    出雲地方にも、不昧好みの茶室3ヶ所が現存しています。。

    重要文化財の「菅田庵 (かんでんあん)」、 島根県指定文化財の「明々庵 」と「独楽庵 」

    です。  尚、自ら好みの茶器を、多数製作されたとも言われています。

  この様に大金を茶道具蒐集に、注ぎ込める事が出来たのは、財力が有った事は当然ですが、

  藩の非常事態の際には、助け(換金など)になる事も、考慮されたのではないかと言う見方も

  あります。

以下次回に続きます。
    
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