3)金属が独自の色彩を持つ理由。
各金属はその金属特有の色を発します。
焼成する以前であっても、焼成後であっても、色を発しますが、焼成前と焼成後では
同じ場合と、異なる場合が有ります。これは焼成によって高い温度に晒され熱的変化や
酸化又は還元変化によって化学反応が起こり、色彩が変化する為です。
① 陶芸とは直接関係しないですが、金属には炎色反応と言うものがあります。
ⅰ) 花火の発色は金属の炎色反応による物です。
この現象は金属の電子が高温により熱エネルギーをもらう事で起こります。
電子は高いエネルギーをもらうと、より高いエネルギー状態に移行します。
これを遷移(せんい)と言います。この状態では不安定のため瞬時に元の状態に
戻ります。その際、余ったエネルギーを光として放出します。
光は電磁波の一種で波長(振動数)を持っています。エネルギーの強さは波長に反比例し
紫>藍>青>緑>黄>橙>赤の順に成ります。波長は赤が一番長く、紫が最短に
成ります。
② 金属によって色が異なるのは、結晶構造の違いによる物と思われます。
物質はその種類に拠って結晶構造が異なります。結晶構造と言うのは、原子の並び方
の事です。光線が結晶に衝突すると、金属類は、一部は透過する場合も有りますが、
大部分は結晶原子によって反射されます。その際の反射の違いによって色に差が出ると
思われています。
③ 金属の種類によって、金属の色はおおむね決まっていますが、金属を取り巻く環境
によって、千変万化します。その為苦労して独自の色(光沢)を開発する人が多いのです。
ⅰ) 例えば鉄は、純鉄であればステンレスの様に白銀色をしていますが、空気中では
錆が発生し、赤、黄色、茶褐色、黒色等に変化します。これは酸化作用ですが、水中
でも起こります。それ故、陶芸では窯の雰囲気や、温度、釉の調合(含有量)によって
各種の色彩を作り出す事が可能に成ります。
ⅱ) 銅で有れば、赤銅色が基本色ですが、酸化作用によって青から緑色へ変化します。
ⅲ) コバルトは濃紺、青色を基調にしますが、濃淡によって黒色にも出来ます。
ⅳ) 黄色系であれば、チタンが入っている可能性があります。
その他、陶芸で使用する金属類は多種に渡ります。
ⅴ) 二種類以上の金属は高温で混ざり合い、合金を作ります。
合金は、発色にも影響します。
2) 金属結晶釉と金属光沢釉
① 釉の冷却時に金属が析出し、結晶化するのが結晶釉に成ります。
結晶の大小によって結晶構造が見られる物と、見た目では明確な結晶とは確認でき
なくとも、金属顕微鏡で確認できる細かな結晶が存在すると判る場合が有ります。
結晶釉と呼ばれる場合、大きな結晶を析出する場合が多いです。
② 結晶構造は金属の種類や、結晶時の温度環境や窯の雰囲気によって、千差万別の
様相を呈します。
③ 金属光沢釉とは釉の表面に金属質の光沢が現れる釉です。
勿論、光沢の無い又は光沢の少ない釉も有ります。これは梨地と呼ばれる場合が有り
一般にマット釉と呼ばれる物です。
尚、マット釉では、必ずしも金属が必要と言う訳では無く、ガラス質の成分により
マット調にする事も可能です。
光沢は、表面から反射する光の他、釉内の金属結晶からの反射による物です。
釉内の結晶は大きさと、結晶周辺の色彩によって結晶釉の良し悪しが決まります。
一方マット釉は表面と釉内に金属結晶が存在していても、表面が滑らかでなく
細かい凹凸があり、「ザラツイタ」感じの手さわりで有り、光が乱反射してた結果
光沢が出ません。
以下次回に続きます。
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