まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

彼が愛したフランケンシュタイン

2024-04-15 | 北米映画 80s~90s
 ゆっくり愛でる間もなく、今年も桜は慌ただしく儚く散ってしまいました…🌸
 今年こそたくさん映画館で映画を観る!というマニフェストも、例年通り守れていない「オッペンハイマー」もいまだに。このままだと、観なくていっか(^^♪になっちゃいそうです。オッペンはそんな感じですが、絶対に外せないのが「異人たち」です。今月中には観に行くぞ!それまで他のBL映画をアペリティフに、BL映画祭じゃ(^^♪って、もう最近ほぼBL映画しか観てねーじゃん!なんてツッコミ、自分でしてみます

「異人たち」公開記念BL映画祭①
 「ゴッド・アンド・モンスター」
 かつてフランケンシュタイン映画で人気を博し、引退後は家政婦のハンナと静かな余生を送っていた映画監督のジミーは、庭師の青年クレイトンに魅せられ彼をモデルに絵を描き始める。クレイトンと心を通わせていくにつれ、過去の記憶と死に直面している現実が老いたジミーの中で交錯し…
 去年「ザ・ホエール」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーが、イギリスの名優イアン・マッケランの相手役を演じた作品。「ザ・ホエール」は未見のままなのですが、役といい風貌といいすっかり特異な感じのおじさんになったんだな~と、若き日のブレンダンを感慨深く思い返します。ブレンダンといえば、「ジャングル・ジョージ」とか「ハムナプトラ」シリーズとか、コメディ寄りの肉体派イケメン俳優ってイメージ。それより前の青春ものに出てた頃は、何となく顔や雰囲気が筒井道隆とカブって好きだったんですよね~。そんなブレンダンの作品の中でいちばん好き、いちばんの好演を見せているのが、老人と若者の優しく切ない友情を描いたこの秀作だと思います。

 当時29か30歳ぐらいのブレンダン、当然ながら若い!そしてカッコイカワイい!イケメンというか、ファニーな漫画顔?ぶっきら棒でちょっと粗野なところはあるけど、実はすごくいい奴で老人に優しい青年を朴訥にナイーブに演じてます。常にどことなく悲しそう、寂しそうな顔が可愛い。ブルーカラーの肉体労働者役が似合うガタイも素敵。屈強で大きな体をもてあましてる、心は少年のままな若者って感じがよく出てる風貌と演技でした。この映画でのブレンダン、主人公のジミーのみならず、多くの映画ファン(ていうかゲイ)の胸をときめかせザワつかせたに違いありません。惚れ惚れするような肉体美は、まさに眼福!

 ピチピチ、ムキムキな若い肉体をさらし、おじいちゃんを回春させる罪な男。誘惑とか挑発とかいった意図は全然なく、実に無邪気にゲイのおじいちゃんをドギマギハアハアさせるところが、笑えると同時に切ない。ラスト近く、暗く落ち込んでいるジミーに、これ見て元気出せや!とばかりにサラリと全裸になるシーンは、この映画のハイライトかもしれません。彫刻のような神々しい肉体、ハラリと落とす下半身のバスタオルにドキッ(前も後ろもちゃんと見えないようになってますがお尻は出してよかったのでは)。
 ジミーとクレイトンの年の差友情が、微笑ましくも痛ましい。はじめはゲイのジミーに何となく警戒して、セクハラまがいの話をされると激怒したりもしてたけど、知的でエレガントで孤独なジミーを慕い支えるようになるクレイトンが、大きな子犬みたいで可愛いんですよ。二人の友情を深めたのも、そして壊したのも、ジミーがゲイだったからではないでしょうか。セックスはもうできないけど、ジミーのクレイトンに向ける目には熾火のような欲望と恋心が。体は枯れても心は枯れない高齢ゲイの苦しさ、絶望に暗澹となってしまいました。

 実在したイギリス出身の怪奇映画監督、主人公のジェームズ・ホエール役の名優イアン・マッケランが、まさに彼にしか演じられない、彼以外の俳優は考えられないと思える適役、名演。オスカーにノミネートされたのも当然、ていうか、受賞しなかったのが不思議。イギリス人らしいきちんとした身だしなみ、軽妙で皮肉なユーモア。そして実際にもカミングアウトしているマッケラン爺さんの面目躍如、ノンケの俳優には決して出せないモノホンなゲイゲイしさが、洗練と気品に満ちていて素敵なんです。終盤、全裸のクレイトンにガスマスクをつけさせて興奮、錯乱する物狂おしさがイタすぎる。老いてもゲイ、そして芸術家だったからこその悲しい狂態でした。

 つっけんどんだけど誠実に忠実にジミーに仕えている家政婦のハンナ役、リン・レッドグレイヴの好演も印象的です。怪奇映画の撮影現場、戦場での悲恋など、ジミーの過去と現在との交錯や、彼が創り出したフランケンシュタインとクレイトンが重なる深層心理シーンなど、脚本と演出もユニークかつ巧妙。オスカーの脚色賞受賞も納得です。腐女子向けのスウィートBLと違い、ゲイの悲しく苦しい真実を描いている作品ですが、決して暗くも重くもなく、優雅でファンタジックな作風になっているところが出色です。
 
コメント
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