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まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

家政婦は着た!

2022-12-19 | イギリス、アイルランド映画
 「ミセス・ハリス、パリへ行く」
 1950年代のロンドン。夫を戦争で亡くした家政婦のミセス・ハリスは、勤め先の家でクリスチャン・ディオールのドレスに魅せられる。一念発起しお金を貯め、ディオールのドレスを買うためにパリへと向かうミセス・ハリスだったが…
 期待してた以上に佳い映画でした!夢と希望とロマンにあふれた楽しい映画!若い人よりも、わしのような貧乏高齢者にとってキラキラワクワクな内容かも。わしも貧乏高齢者だけど、ミセス・ハリスのように優しさと勇気をもって生きていけたら、と思いました。お金のあるなし、社会的身分、年齢も関係ない!夢に向かって軽やかに爽やかに、大胆不敵に猪突猛進するミセス・ハリスの冒険が愉快痛快。もちろん彼女のマネなんかできないし、あんなにラッキーな展開になるほど世の中は甘くないとは知ってるけど、他人への思いやりを忘れず、ちょっとでも前向きに行動すれば、何かいいことがあるかも、あるはず、と思うことができました。

 とにかくミセス・ハリスがチャーミングな女性!出会う人がみんな彼女に魅了されるのも理解できる。優しく明るく元気いっぱいで、おひとよしだけど正義感が強く、いざという時は剛毅で果敢な彼女を見てると、ちょっと「はいからさんが通る」の紅緒を思い出しました。単身パリのディオールに乗り込んでいくミセス・ハリス、私ならすぐ不審者扱いされて追い出されるか通報されるかですが、ミセス・ハリスは持前の天然さと豪胆さで、あっという間にディオールで働く人々の心を掴むんですよ。それは、当時のパリの世相のおかげでもあったようです。労働者を搾取し虐げる金持ちどもクタバレ!な、ストライキや暴動で荒れてた当時のパリ、特権階級の連中にヘイコラすることにウンザリしてたディオールのスタッフたちの目には、突如ロンドンからやって来たミセス・ハリスは、まさに格差社会に戦いを挑んでる庶民の女神のように映ったみたいでした。ミセス・ハリスがリストラに抗議し、職員を率いてディオール氏のもとに乗り込むシーンは、なかなか胸アツでした。

 それにしても。ミセス・ハリスを取り巻く人々が、みんな超絶いい人ばかり。ちょっと意地悪、セコい、という人は出ても悪人は誰ひとり出てきません。みんなまるで魔法にかけられたかのように、ミセス・ハリスに親切に惜しみなく応援と協力。ありえない!と思いつつ、それは私が卑しい不徳な人間だからで、ミセス・ハリスみたいな周囲をも善に変えてしまうマジックのような人徳の持ち主って、確かにいますよね。ラスト近く、落ち込むミセス・ハリスに届くパリからの贈り物が感動的でした。日頃の善き心と行いが、不運や悲しみの後に思いがけない幸運をもたらす展開は、何だか日本昔話みたいでした。
 この作品、キャストも素晴らしいです。ヒロインのミセス・ハリス役は、「ファントム・スレッド」でオスカーにノミネートされたイギリスの名女優、レスリー・マンヴィル。

 見た目も演技も可愛い!こんなおばちゃまになれたら!気持ち悪い美魔女系高齢女優と違い、ヘンに若くキレイに見せようとしてないナチュラルさも好き。可愛いけどブリッコではなく、女を捨てたサバサバ男前きどりでもない、好感と共感しか抱けないヒロインを軽快に好演。ドレスにときめいてる表情が秀逸でした。ディオールの辣腕マネージャーであるマダム・コルベール役は、フランスの大女優イザベル・ユペール。


 慇懃無礼でカリカリしててイヂワルな今回のユペりん、ちょっと「8人の女たち」の彼女を思い出させました。イヤミな役でもコミカルなので、悪役とか敵役といった感じではありません。すごく楽しそうに演じてるユペりんでした。クールにすっとぼけた毒は、コメディでも活きます。シンプルかつフェミニンなスカートも、すごくエレガントなところがさすがフランス女優。マンヴィルVSユペール、英仏の素敵熟女対決がトレビアン。
 ディオールの会計士役アンドレ役は、いま注目のフランス俳優リュカ・ブラヴォー。


 イケメン!フランス男なのにスカしたところが全然なく、大柄で立派な体躯や、優しそうで素朴なお人よしっぽい雰囲気は、何となくアメリカ人っぽい。女たちに振り回されてオロオロする様子が可愛かった。ミセス・ハリスと親しくなる侯爵役のランベール・ウィルソンが、相変わらず美熟年!優雅な貴族役にぴったり。侯爵が飼ってる犬がカッコカワいかった。ディオールのトップモデル、ナターシャも超いい娘で好感。演じたポルトガル女優のアルバ・バチスタ(クリス・エヴァンズの今カノだって!)も、きれいで可愛かった。フランス俳優たちの、フランス語と英語がちゃんぽんな演技もカッコよかった。駅のホームレスまで上手な英語を喋ってましたが、フランス人ってみんなあんなに英語を喋れるんですね。

 ディオール全面協力のファッションも見どころ。素敵な衣装が次々とお披露目されるファッションショーが、ドリーミーで眼福でした。でもファッションには疎く興味も薄い私、服に大枚はたくとか無理!ユニクロで十分アナーキーな世情のため、花の都どころかゴミの都と化してたパリですが、セーヌ川岸の散歩道とか花市場とか、美しい場所もちゃんとあって安心。パリよりもロンドンのほうが好きなので、ロンドンのシーンがもっと見たかったです。

 ↑ ハリウッドの大物スター二人が共演した某コメディ映画にも出てたリュカ。英語圏のコメディで脇役のイケメンフランス男役ばかりでなく、本国のシリアスな作品で主役な彼が見たいです

男色の脅迫者!

2022-12-08 | イギリス、アイルランド映画
 「Victim」
 弁護士として成功し、美しい妻ローラと幸福な結婚生活を送っていたメルヴィルは、警察の拘置所でバレットという青年が自殺したと知りショックを受ける。メルヴィルは同性愛者で、バレットとはかつて深い関係にあった。バレットは生前、何者かに脅迫されていたが…
 60年代のモノクロのイギリス映画が好きです。それらの多くは冷たく乾いた映像と雰囲気で、シビアな社会や人間関係を描いているのですが、この1961年の作品もそうでした。同性愛が違法とされていたイギリスにおけるゲイの生きづらさや苦悩は、酸鼻を極めるものがあります。現代ではありえないような人権無視、人権蹂躙の非道さ。バレたら身の破滅になるほどの命がけの秘密。カミングアウトなど自殺行為。同性愛者は公然と攻撃と蔑みの対象になっていた時代。そんなに昔のことじゃないってのが信じがたい。まるで隠れキリシタンのように、ビクビクしながら息を潜めるように、本当の自分を抑圧して生きねばならない人生。まさに絶望しかありません。怯えながらも男を求めずにはいられず、危険をおかしてしまうゲイの心と体の懊悩が悲痛です。

 この映画の怖いところは、同性愛者の弱みに付け込む連中の卑劣さや残忍さや、狭隘で歪んだ憎悪や嫌悪の醜さです。金目当て、もしくは独りよがりで狭量な信条の持ち主に脅迫の標的にされてしまう同性愛者たちは、まさに社会に鬱憤を抱く人たちへのはけ口にされた犠牲者。この映画を観て、同性愛を禁じていた法律がどれほど人間を貶めていたか、あらためて痛感しました。偏見や差別に毒されず、公正公平な目を失わない人や、愛が揺るがない人が、少数派だけどいたことは救いになりました。ゲイの男性を愛してしまった女性の苦しみも、また悲痛ですよね~。メルヴィルが同性愛者と知っても、彼を愛することを止められないローラの選んだ道は、悲壮かつ峻厳。脅迫者の正体は、ちょっと意外でした。
 メルヴィル役は、ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」と「地獄に堕ちた勇者ども」での名演も忘れがたい英国の名優ダーク・ボガード。

 保身と罪悪感にがんじがらめになる男を、デリケートにデスパレートに演じてるダーク・ボガード。ほの暗い男色の悲哀を常にまとっている彼にとって、隠れゲイ役なんて適役過ぎる。実際のボガードは同性愛者だったのか、そうでなかったのか、定かでないミステリアスなところも彼の魅力で、演技に深みや陰影を与えていたように思われます。深く暗い洞のような大きな瞳が美しくも怖いです。エレガントな仕草や英語のアクセントが、まさに英国のエリート紳士って感じで素敵。モノクロで撮影された当時のロンドンも風景も興味深いです。ゲイ映画ですが、男性同士の性愛シーンなどはいっさいなし。リメイクされるなら、切ないラブシーンはマストですね。メルヴィル役はコリン・ファレルかリチャード・マッデンにやってほしいかも(^^♪

BLおまわりさん

2022-11-13 | イギリス、アイルランド映画
 「僕の巡査」
 50年代のイギリス南部ブライトン。教師のマリオンは、恋人の警察官トムから博物館で働くパトリックを紹介される。トムはパトリックとの秘密の肉体関係に溺れていた…
 イギリスの人気アーティスト、ハリー・スタイルズがBL演技に挑戦!恥ずかしながら私、彼のことはあまり存じ上げなかったんですよ。人気アイドルグループ出身で、今はソロとして活躍、クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」で俳優デビューもし話題になるなど、常に華やかな脚光を浴びてるハリーくんですが、彼の音楽活動は全然知らないし、「ダンケルク」もどこに出てたっけ?な存在感のなさだったし、ルックスもそんなにイケメンとは思えないし、私にとっては魅力がいまいち理解できない、歌手でも俳優でもなく派手なセレブって感じだったハリーくん。そんな彼が何か思うところがあったのか、本気モードで演技に挑んだのがこのBL映画です。世界的人気アーティストが本格的初主演作に選んだのがBLもの、というのが驚喜な選択。しかも男同士のラブシーンや全裸、好感も共感も抱けない役など、アイドル的スターにしてはリスキーとも言える果敢なチャレンジ。この作品でハリーのことがいい役者だと思えたし、それより何より、すごく可愛かった

 イケメンとか美男とかじゃないのですが、ちょっと猿顔なのが愛嬌があってキュート。たまにマーク・ウォールバーグに似て見えたのは私だけ?マーくんをソフトに可愛くした感じ?意外だったのは、すごく背が高くて体格ががっちりしてたこと。なので警察官の制服がよく似合っててカッコよかった!イギリスのおまわりさんの制服って、ちょっとおしゃれですよね~。実生活では超セレブなハリーですが、映画では素朴な庶民青年って感じをよく出してました。おまわりさん姿のシーンはそんなに多くなかったのが、ちょっと残念だったけど。

 そして、ハリーくんのBL!かなり頑張ってましたね~。男同士のディープキスや全裸セックスシーン、なかなか見ごたえありました。大胆だけど全然イヤらしくなく、甘く切ないラブシーンでした。攻める時も攻められる時もハリーくん、いい表情してました。ばっちり見せてるハリーの可愛いお尻も見どころ。禁断の愛にビクビク、でもワクワク。ないまぜな感情に揺れるハリーの若さあふれる、ピュアでどこか不器用なところもある演技が魅力的でした。

 BLといえば、やはり禁断と苦難。男女の恋愛と大して変わらないハッピーBLもいいけど、やっぱ過酷な運命と試練こそ、BLの醍醐味なんですよね~。同性愛は犯罪だった当時のイギリス、隠れキリシタンのように逢瀬を重ねるトムとパトリック、どんなに愛し合ってもそこに幸せな未来が重ならない、けど秘密が重ければ重いほど心も体も深く求め合うようになるのが切ない。現代なら、勇気さえあれば堂々と幸せになれたはずの二人。彼らが秘密の恋を続けるためにとった方法が、うう~ん、こいつらクズだなとさすがの私も思った。
“”
 パトリックと同性愛関係にありながら、マリオンと交際し結婚するトム。マリオンのことが好きだったのは真実でしょうけど、結果的には彼女を騙して利用して社会的に祝福される“まっとうな既婚者”の立場を得て、それを隠れ蓑にしてパトリックとの情交を続けようとするなんてズルくて卑劣な二股、ゲス不倫でしょ。同性愛がバレないようにマリオンともセックスする時は苦痛そうなのに、パトリックとの時は身も心も歓喜の快楽、その差が残酷すぎる。マリオンが可哀想すぎ。バレれてないとタカをくくり、二人でイタリア旅行に行ってマリオンに絵葉書を送るとか無神経すぎ、いくら何でも女をバカにしすぎでしょ。マリオンへの仕打ちが非道すぎて、そのバチが当たったかのような悲惨な恋の終わりにも同情できませんでした。甘くて弱く可愛い男と違い、女はやっぱ辛くて強い、そして怖い。でもマリオンって聖女。結局は男たちを憎悪できず、年老いてからの彼女の決断も善い人すぎ。フツーなら即離婚&慰謝料請求、二度と顔も見たくない、ですよ。マリオンにはパトリックと、トムをめぐって嫉妬や憎しみの火花を散らしてほしかったです。
 パトリック役のデヴィッド・ドーソンは、カルロス・ゴーンを細くして端正にしたような顔?年下の男への愛執や独占欲、絶望に揺れるインテリ隠れゲイを痛ましく熱演していました。マリオン役のエマ・コリン、清楚で可愛いのでハリーとお似合いのカップルでした。老トム役がライナス・ローチ、老パトリック役がルパート・エヴェレットという配役は、「アナザー・カントリー」と「司祭」の彼らを知る映画ファンにとっては感涙ものです。二人ともお爺さんになったけど、美老人です。

 ハリー・スタイルズのことが大好きになってしまった私。可愛いですよね~。独特すぎるファッションセンスも、日本人や韓国人がやると気持ち悪いけど、ハリーだとおしゃれ。シンガーなハリーにも興味がありますが、今後は俳優業にもっと本腰を入れてほしいものですとりあえず「エターナルズ」と「ドント・ウォーリー・ダーリン」観ねば!

クイズ王子

2022-10-31 | イギリス、アイルランド映画
 歓喜と戦慄のニュースに心乱れた昨日今日…
 日本シリーズ、激戦を制したオリックスが優勝し日本一に!おめでとうございます!👏オリックスファンの皆さま、心からお祝い申し上げます!ヤクルトも頑張った!燕ファンの皆さまが流す悔しい涙も、3連覇が遠い昔の夢まぼろしに思えるカープファンからしたら羨ましい幸福です。思えば両チームとも、今となってみれば信じがたいけど、カープ3連覇時代には鯉のエサな存在でした。特にオリックス、忘れもしない。鈴木誠也の神ってるを生んだ、あの交流戦。あの時のオリファンの屈辱や傷心が、今は特大ブーメランのようにわしの心に突き刺さっています。カープは最強!人気独り占め!なんて調子ぶっこいてたあの楽しすぎた3年間。ああ、あの幸せにまた酔いたい。でも今のカープはどうでしょう。弱くなっただけでなく、恥ずべき醜聞まで噴出してるありさま。野球選手に品行方正さなんて求めてないし、女遊びに目くじらなんか立てないけど、GのS本やカープのN村のやったことは、卑劣で薄汚すぎる。才能があればあんなことしてもOKだよ(^^♪なんて、とても子どもたちには言えません。

 ↑ オリックス、いやパリーグ、いや日本野球界で今No.1のイケメンだと思う福田周平くん抱いて!
 心肝を寒からしめた、韓国のソウルで起きた惨劇…梨泰院クラスならぬ梨泰院地獄…現場の映像、怖すぎてニュースがまともに見れません。最近の都会での軽佻で物騒なハロウィンの風景に、何だか不吉な予感を抱いていたのだけど、まさかあんな悲惨な形で的中してしまうなんて…先日の夜、K市の神社であった秋祭りに行ったのですが、例年とは違う異様な人込みに恐怖を覚え、すぐに帰ってしまいました。自分の安全や命を守れるのは、結局自分だけ。あらためてそう肝に銘じる私です…

 「Starter for 10」 
 幼い頃からクイズが好きだったブライアンは、入学した大学でクイズサークルに入会する。恋や友情に悩みながらも、仲間たちと共にTVの人気クイズ番組に出場し優勝を目指すブライアンだったが…
 この作品が日本未公開だなんて!イギリス映画&ドラマファンからしたら信じられない、ありえないこと。ジェームズ・マカヴォイ、ベネディクト・カンバーバッチ、ドミニク・クーパーが共演してる映画ですよ!現在は男盛りの3人が、わ、若い!若き日の彼らが同じ画面で元気いっぱいにわちゃわちゃしてる姿はすごく貴重かつ新鮮で可愛く、見ていて思わず頬が緩んでしまいました。
 

 まず、主役のブライアン役のジェームズ・マカヴォイ。か、可愛い!佳作「ペネロピ」と同年の作品。当時すでにもう27歳ぐらいなのですが、すごい童顔&チビっこなので高校生にしか見えん!同級生の女の子ふたりといい感じになるのですが、マカぼんが少年っぽすぎて年下にしか見えませんでした。小柄なので動きがチョコマカしてて、それもまた可愛いんですよ。オクテでウブな童貞感もよく出していて、上目遣いとかはにかみ、悲しくなって涙を流したり、あざといまでに母性本能をくすぐったりキュンとさせたりするマカぼんでした。古びた感じのマフラーやジャケットなど大学生ファッションも、ブリティッシュなトラッドさでオシャレに見えました。

 マカぼんは可愛いのですが、ブライアンのキャラがちょっと…甘ちゃんすぎるというか。みんなから愛され助けられ、何やっても許されたり慰められたり、彼自身が誰かを支えたり励ましたりってのは全然なくて、いろんなことがあって成長したな~と思えるラストになってなかったのが残念。女の子ふたりとの関係も、ほとんど二股だったし。周囲が優しすぎる善人ばかりだと、人間って成長できないのかもしれないと思った。
 クイズ部の部長パトリック役のベネディクト・カンバーバッチも若い!そして珍妙!

 バッチさん、ほんと独特の顔してますよね~。シリアスなイメージがあるバッチさんですが、コメディの才能もズバ抜けてます。アカデミー賞授賞式や出演作のプレミアなどでのバッチさん、いつもノリのいいおもろい人って感じですもんね。この作品の彼は見た目も演技も漫画チックで、完全にお笑い担当。昔の漫画に出てくる、エラソーだけど滑稽な優等生そのもの。ちびまる子ちゃんの丸尾くんとちょっとカブるキャラでした。学生パーティーでスペンサーとケンカになり、こんちきしょー!と殴り掛かる姿がギャグ漫画みたいで笑えた。
 ブライアンの親友スペンサー役のドミニク・クーパーも若い!そしてカッコいい!秀作「ヒストリー・ボーイズ」と同年の作品。

 チョイワル風なローカルヤンキーな役だけど、ドミ公なので全然ダサい田舎者には見えません。ワイルド&セクシーなイケメン!なにげない目線や仕草が、ん・色っぽいby 工藤静香(^^♪マカぼんとの仲良しイチャイチャシーンに萌え~。女好きに見えて、実はブライアンのことが好き?と腐の妄想を甘くかきたてるドミ公でした。可愛いマカぼんと男らしいドミ公が、あまりにもお似合い、理想的なBLカップルに見えて♡


 ブライアンがアリスに恋していることを知ってるのにアリスとエッチし、ブライアンを怒らせ傷つけるスペンサーですが。これってBL漫画でよくあるパターンですよね。女から愛する男を引き離したかったからとか、自分を差し置いて勝手に女と恋愛しようとしてる男を罰するためとか、切ない屈折BL!なら最高だったのにな~。でもスペンサーはアリスのことが好きになったわけではなく、何となくノリでヤっちゃっただけで、ブライアンとケンカ別れした後に悲しそうに後悔してる様子が、やっぱ友情以上の感情をブライアンに抱いてる感じでキュンキュンしちゃいました(^^♪

 とにもかくにも、若かりしマカぼん、バッチさん、ドミ公がチャーミングでした。いい男いい俳優になった40代の彼らの再共演が見たい!ブライアン、パトリック、スペンサーがどうなったか気になるので、この映画の続編できないかな~。
 お嬢様ギャルのアリス、活動家の男前女子レベッカ、二人とも素敵な人柄で好感度が高かったです。マカぼんがあまりにも可愛いちびっこなので、二人とは姉弟にしか見えなかったけど。キャンパスライフも楽しそうでした。大学の校舎やパブ、街路、鉄道、クリスマスなど、イギリスいいな~行きたいな~と思いました。肝心のクイズが、あまり話に活かされてなかったような。もっとスポ根っぽくしてもよかったのでは。

メンヘラ妃殿下

2022-10-26 | イギリス、アイルランド映画
 「スペンサー ダイアナの決意」
 1991年のイギリス。夫チャールズ皇太子との破綻した結婚生活に悩むダイアナ妃は、重い気鬱を抱えたままロイヤルファミリーがクリスマス休暇を過ごす離宮サンドリンガム・ハウスにやって来るが…
 ダイアナさんが亡くなってから、もう25年も経つんですね。彼女の衝撃的な事故死のニュースを聞いた日のことは、よく覚えています。それよりさらに前の、彼女とチャールズ皇太子とのロイヤルウェディングも、日本に来日した時のダイアナフィーバーも、鮮明に記憶してます。美しく咲いて無惨に散ったバラのような女性でした。あまりにも人々に愛されるのも、人気者になるのも悲劇だな~と、何だかみんなに寄ってたかってグチャグチャにされてしまったような彼女の最期に、今も胸が痛みます。今やエリザベス女王も亡くなり、チャール皇太子が王になるなど、隔世の念を禁じ得ません。
 
 ダイアナさんの華麗なる人生と悲劇は、まさに映画のヒロインにはぴったり。イギリス王室や貴族ものの映画やドラマが大好きなので、この作品もずっと気になってました。やっと観ることができたのですが、ちょっと思ってたような内容と違ってたのが驚き、かつ面白かったです。ロイヤルファミリーと最後に過ごすことになるクリスマス休暇の間、彼女がどう苦悩し葛藤したかを描いているのですが。ダイアナさんの懊悩、惑乱や錯乱ぶりがかなりニューロティックで、精神病院に入院レベルなんですよ。奇行や妄想、過食と嘔吐、徘徊に幻覚・幻聴、自傷行為など、そのメンヘラぶりはほとんどホラー。周囲のロイヤルファミリーやお仕えする人々が、それを目の当たりにしながらも冷たい目でスルーしてるのも、これが上流社会の冷酷さなのねと戦慄。愛と悲しみのプリンセス物語ではなく、追い詰められて精神を病んでいく女のサイコロジカルドラマでした。

 社会や環境に馴染めない、どうしても適応できない。欺瞞と偽善に満ちた冷ややかな人間関係。自由のない窮屈な暮らし。常に監視、品定めの目線にさらされている息苦しさやプレッシャー。自分を押し殺して迎合、服従。王室と平民という違いはあれど、心が病んでしまうほどの不安や絶望は理解できます。ダイアナが勝ち気で感受性と自立心が強い女性だったのも、返って不幸だった。ダイアナが気の弱い鈍感な、何でもハイハイと従うほうが楽と思える受け身な女だったら、彼女にとっても王室にとっても幸せだった(都合がよかった)だろうし。劇中のダイアナを見ながら、適応障害やマスコミ報道に苦しまれた雅子さまのことを思い出しました。当時の雅子さまや皇室の方々のことを映画にするとか日本では絶対ありえないので、ヘレン・ミレンの「クィーン」とかドラマの「ザ・クラウン」とかが許されるイギリスって、いろんな意味でスゴいと感嘆。それはそうと。籠の鳥生活と言いつつダイアナ、割と自由に動き回ってたような。迷子になったのと突然フラっとカフェに入ってきて、客の一般人たちを驚かせたり。息子二人とケンタッキーでテイクアウトとか。雅子さまがもし同じことやったら、映画のイギリス人みたいなリアクションは日本人にはできないのでは。


 イギリス王室・貴族もの映画&ドラマファンにはおなじみ、お楽しみの優雅で美しい上流階級の暮らしぶりにも感嘆。アメリカや韓国の金にあかせた成金とは、やっぱ全然ちがうんですよね~。壮麗なサンドリンガム・ハウスの高雅かつ重厚な内装や雰囲気、上品かつ贅沢な食事、優雅かつ厳格なマナー、一日に何度も着替える衣装、ほんと憧れる~けど、一瞬も気が抜けない休まらない。ダイアナじゃなくても疲労困憊します。それにしても。国民の税金で優雅に贅沢に暮らししている!と、厳しい目で見られることもある英国の王室や日本の皇室。国民が誇れる、大切に敬愛できる高貴な存在なら、国の力にも財産にもなれるので税金も惜しくはないのですが、こんな連中に我々の血税が!と顰蹙や嫌悪感を抱かせるようになっては、その存在意義を疑わざるを得なくなります。特権や何不自由ない生活は、国民の願う神さまのような清く正しい生活や行い、というパフォーマンスのギャラのようなもの、と思うのは不敬でしょうか。
 アカデミー賞主演女優賞ノミネートも納得の、クリステン・スチュワート渾身の熱演が鮮烈です。

 ダイアナ妃には似てないけど、そっくりさんモノマネ演技ではなく、クリステンの個性と魅力で創造したダイアナって感じでした。「セバーグ」でも精神ブッコワレてましたが、今回はイタさもヤバさも増してました。でも哀れな弱い女ではなく、壊されそうになっても屈しない戦う強い女。オンナオンナしてない媚びないシャープな演技や美しさで、キレイカワイイではなくカッコいい女優として独自のポジションを固めてるクリステン、ほんといい女優になりましたね。王室の保守的で古めかしいファッションも、クリステンが着るとモダンでスタイリッシュに。スタイル抜群で、特に足がきれいで長い!ロイヤルな装いやイギリス英語でプリンセスに化けてたけど、たまに吐く下品で口汚い台詞がアメリカンで笑えた。


 ダイアナの息子たち、ウィリアム王子とヘンリー王子役の男の子たちが可愛かった!本物に何となく似つつも、本物よりかなり可愛い。特にウィリアム王子役の子。品があって優しそうで賢そうなイケメン。将来が楽しみな子です。ベテラン侍従役のティモシー・スポール、侍女役のサリー・ホーキンスも印象的な好演。サンドリンガム・ハウスがあるノーフォークの風景も、神秘的なまでに清澄で美しかったです。イギリスにますます行きたくなりました。

 


死刑台の情痴!

2022-10-12 | イギリス、アイルランド映画
 「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」
 50年代のロンドン。ナイトクラブの雇われママでシングルマザーのルースは、名門出身の美青年デイヴィッドと出会い彼との情事にのめり込む。不誠実なデイヴィッドに傷つき憤りながらも、彼との関係を断ち切れないルースだったが…
 イギリスで最後に絞首刑となった女性の物語。イザベル・ユペール主演の「主婦マリーがしたこと」のヒロインは、フランスで最後にギロチン処刑された女性でしたが、どっちも奔放で愚かで男運が悪すぎる、自業自得なんだけど哀れな女たち。それにしても。死刑になるような女性の人生、映画や小説の題材にはぴったりな濃密さ、激しい濁流のようで憧れはしないけど畏怖はしてしまいます。でもこの映画のルースも「主婦マリーがしたこと」のヒロインも、やったことは罪深いが死刑はさすがに厳しすぎて理不尽。ルースの場合、被害者は一人で彼にも非があるので情状酌量の余地があり、殺害時には明らかに心神喪失状態で精神鑑定コース、日本だと懲役10年ぐらいで片付けられそうなケース。時代が悪かった。まさに悪運の星のもとに生まれた女。

 死刑はあんまりだけど、ルースの人格や生き方には共感も同情もできません。運もないけど思慮も分別もなさすぎ、自分勝手すぎ。まだ幼い息子をほったらかして男に入れあげるとか、あまりにも女であることを優先しすぎでしょ。息子が可哀想だった。自分だけ身を滅ぼすのは自由だけど、子どもを不幸にするのは許せません。でも誰かを狂おしいほど愛してしまうと、そんなことどうでもよくなるのでしょうか。そんな愛には無縁な私からすると、もうそこで男はあきらめようよ、生活立て直そうよと、デイヴィッドとの爛れた腐れ縁を断ち切れないルースに何度も言いたくなりました。でもデイヴィッドと出会わなくても、あの下半身のユルさと不安定なメンタルで、ルースはまともな人生を歩めなかったのでは。でも、まともって?ルースとは真逆な私はまともなの?女の性と業についても考えさせられました。

 これぞダメ男!クズ男!なデイヴィッド。ルースを翻弄し傷つけ蔑ろにする彼の言動、すべてが非道すぎて最低なんだけど、計算ずくとか手練手管とかではなく天然なのが魔性の魅力。もちろん絶世の美貌も。あんな若く美しい男に優しくされたり甘えられたり追いかけられたりしたら、たいていのことは許してしまうのは理解できる。もちろんルースみたいな悪い男中毒者には、たいていの女性はならない。裏切りも暴力も愛!DV被害に遭っても我慢してる女性の多くが、そんな精神状態なんだろうな~。美しき害虫のような男デイヴィッドを演じたのは、若き日のルパート・エヴェレット。「アナザー・カントリー」の2年後の作品です。

 宇宙人的な独特の美しさが気持ち悪くもあったアナカンのルパートですが、この作品の彼はすごく可愛い!アナカンの時より顔があどけなく見えた。甘えん坊で寂しがり屋な笑顔や傷ついた捨て犬のような瞳で、おんな心を見事にたらしこみます。スラ~っとした長身は何を着ても似合ってて、どのシーンでも雑誌のグラビアみたいなカッコよさ。ルパート級の美しい男には、いい人な役よりも悪い男、クズゲス野郎の役のほうが相応しい。ブサイクなクズゲスなど言語道断ですが、美しすぎる男は卑劣さや下劣ささえも魅力にしてしまう。イケメンと美男は違う、この作品のルパートを見てあらためてそう思いました。ラブシーンで見せる裸も、細いけど硬く引き締まっていて美しかったです。日本の若い人気男優にも、ぜひデイヴィッドみたいな役に挑戦してほしいんだけど。
 ルース役のミランダ・リチャードソン、大好きな女優。この頃は「クライング・ゲーム」や「ダメージ」など、傑作秀作で好演した絶頂期でしたね。激情的かつガラス細工な繊細さ不安定さ、狂気の淵に堕ちた目つきのヤバさ、白い肌の美しさ、大胆かつ自然な脱ぎなど、ほんと女優の鑑のよう。彼女みたいな女優、日本にもほしいです。ルースを愛し支える中年男デズモンド役、イアン・ホルムの好演も忘れがたいです。デズモンドのドMな献身愛も、ある意味異常に思えました。
 愛憎まみれな情痴ドラマなんだけど、ドロドロとはしていません。「フォー・ウェディング」などのマイク・ニューウェル監督らしい、重くなりすぎないライトな感じが秀逸。深い霧に包まれた夜のロンドンや、郊外の美しい風景なども、イギリス好きには魅力的でした。
 
 

かわいい子ども売られていくよ

2022-09-14 | イギリス、アイルランド映画
 「ロスト・サン」
 ロンドンで探偵をしている元刑事のフランス人グザヴィエは、ある裕福な一家から失踪した息子を見つけ出すよう依頼される。行方を追ううちにグザヴィエは、忌まわしい少年売春組織の存在を探り当てるが…
 ほとんど予備知識なしで観たのですが、掘り出し物的な良作でした。私にとってこの世でいちばん忌まわしい、許しがたいことは、いたいけな子どもを傷つけ苦しめること。幼児虐待なんて、どんな事情があっても酌量の余地なんかない。子どもに性的いたずらとか強姦とか、人間のすることじゃない。畜生以下。即刻死刑ものな万死に値する罪です。でもどんなに世の中が厳しくなっても、子どもを虐げる人々も犠牲になる子どももいなくなることはない。小児愛って病気でしょ?コロナのワクチンよりも先に、子どもに劣情を抱いてしまう人を治す薬を!と思ってしまいます。

 グザヴィエがたどり着く秘密の少年売春組織の実態が、ショッキングでおぞましかったです。欲情でギラつくおっさんがまだ幼げな少年の下着を脱がせ覆いかぶさり、苦痛に顔を歪ませる少年…粗い映像の盗撮ビデオには吐き気がしました。複雑で面倒な手続きや高額の利用料も厭わず少年を買う男たち同様に、組織を運営してる連中も忌まわしい存在。子どもなど家畜同然の商品扱いな非情さ。良心がちょっとでもあれば、あんな商売できないはず。売春用の子どもを家畜のように飼ってるメキシコの子ども牧場とか、こんなこと世界のどこかで実際に行われているのかと思うと、怒りよりも絶望で暗澹となってしまいます。
 グザヴィエがハードボイルドに、独りで子どもたちを救おうとするのですが、早く警察に通報しろよ~とは思った。組織のほうも、慎重に隠密に運営してるはずなのに、グザヴィエひとりに簡単に見つかって壊滅させられたり、派手なアクションとかサスペンス要素を排してリアルなドキュメンタリータッチにしてる作風なので、地味すぎ、物足りない、と感じる人もいるかもしれません。「ワールド・アパート」などのクリス・メンゲス監督らしい社会派映画です。

 グザヴィエ役は、フランスの名優ダニエル・オートゥイユ。彼の全編英語演技って初めて見た。ヨーロッパの人気スターが母国語ではなく、英語で演技するのを見るのが好きです。フランスなまりが強い英語って素敵。男前でも美男でもないけど、独特の悲哀と優しさが魅力的な役者さん。現在はもうお爺さんな風貌になってるオートゥイユ氏ですが、この映画の頃はまだ50歳ぐらい?若い頃のアクがとれて枯れたシブさが出てきた壮年期のオートゥイユ氏、さすがフランス人というかナニゲない姿、煙草を吸ってるシーンとかがカッコいい。でもあまりにもフランスなイメージなので、彼がいるとロンドンなのにパリに見えて脇役で、懐かしの美女ナスターシャ・キンスキーが。若い頃のオーラが消えて、フツーにきれいな女優さんになってました。彼女の夫役のいかついおじさん、どこかで見たことあるなと思ったら、「ベルファスト」の好演でオスカーにノミネートされたキアラン・ハインズでした。闇の深いロンドンですが、いつかまた行きたいです。

女王ふたり並び立たず

2022-09-09 | イギリス、アイルランド映画
 エリザベス女王が崩御されましたね。御年96歳。大往生なので、悲しみよりも長い間お疲れさまでした、という気持ちのほうが強いです。ロンドンオリンピックでの007との共演は、ほんとノリがよくてオチャメでしたね。それにしても。女王のいないあのスキャンダルまみれなロイヤルファミリーを、イギリス国民は敬愛できるのでしょうか。それは日本も同じ。いろんな悲惨なことだらけで、日本国民の多くは塗炭の苦しみにあえいでいます。そんな中、日本の尊い一族は?存在感、あまりにも希薄ではないでしょうか。K室M子さんの件もあり、国民がいくら皇室を敬愛しても、皇室はそんなに国民を大事には思ってなかったんだな、という悲しみと失望は深まるばかりです。いや、そんな気持ちにもならない無関心な人のほうが今や多いかも。エリザベス女王の訃報は、今やすっかり影が薄くなってしまってる我が国の雲上の方々を思い出させました。

 「クイン・メリー 愛と悲しみの生涯」
 16世紀。フランス王に嫁いでいたスコットランドの王女メアリーは、夫の死後祖国に戻り女王の座に就く。イギリスの女王エリザベス1世は、英国の王位継承権を持つメアリーを警戒するが…
 イギリス時代劇、とりわけ王室ものが大好きです。王座や権力をめぐる闘争、詐術陰謀、人間関係がとにかく血なまぐさい!王族も貴族も僧侶も学者も、宮廷に出入りしてる小物まで、ちょっとでも油断、足もとをすくわれたり巻き込まれたりしたら、問答無用に断頭台で首チョンパ、を長いこと繰り返してたイギリスですが、中でもヘンリー8世からエリザベス1世の時代が激烈に血みどろで怖い、面白いです。ネタの宝庫なイギリス王室、最も有名な悲劇のヒロインのひとりが、スコットランドの女王メアリー・スチュワートでしょうか。数々の映画、ドラマにもなっており、最近でもシアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビー主演で「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」が製作されました。前から気になってた1971年版も、先日ようやく観ることができました。
 メアリーとエリザベス、二人の女王を演じてるのは、ヴァネッサ・レッドグレイヴとグレンダ・ジャクソン、英国の大女優ふたりの豪華共演です。ハリウッド女優のような華やかさ、美貌で魅了するのではなく、堅実な演技と圧倒的な存在感で惹きつけるところが、さすがイギリスの女優。当時二人ともまだ34、5歳ぐらい(綾瀬ハルカとか石原サトミとかより年下!)ですが、すでに様々な作品でキャリアも積み国際的な名声も得てるので、すでに大女優の貫禄。「ふたりの女王」のシアーシャとマーゴットなんて、まだ小娘と思えるほどに。

 メアリー役のヴァネッサは、悲劇的な運命に流されるように見えて決してそうではなく、自分の進みたい道、欲しい男たちを選んで突き進んだ、みたいな力強さと誇り高さ、奔放さがカッコよかったです。まさに太く短く生きた人生。当時の彼女は細面の美人で、モデルのような長身、闊達で毅然とした演技など、女性が憧れる系の女優。ラストの処刑シーンでの鮮やかな赤いドレスもすごく似合ってて凛然としてて、湿っぽい悲しいシーンにしなかったのも素晴らしかったです。

 エリザベス役のグレンダ・ジャクソンは、もう黙って立ってる、座ってるだけで逆らう者なんかありえない、みたいな威風堂々さと迫力で圧巻です。冷徹だけど感情に流されない現実的な言動がカッコよくて、メアリーとは違う意味で女性が憧れる女王様っぷりでした。実質のヒロインはヴァネッサのほうで、グレンダはそんなに出番は多くない助演なんだけど、出てくるたびに場面をさらう強烈な存在感。たまにプっと笑えるイギリス人らしい皮肉を軽やかにかましたり、おちゃめな面もあるところも魅力的でした。メアリーに対して、女の嫉妬や羨望!みたいなありがち描写、設定は特になかったのも、ベタベタしい凡下の女と同レベルに堕さずにすんでよかったです。

 90年代に政治家に転身したグレンダが、最近政界を引退し女優復帰したのは喜ばしいニュースでした。メアリーの2番目の夫となるヘンリー・ダーンリー卿役は、4代目007として有名なティモシー・ダルトン。若くてイケメン!ダメ男を好演してました。ヴァネッサ・レッドグレイヴとはかつて恋人同士だったダルトン氏、この映画で出会ったのかな?
 衣装、お城、スコットランドの緑や海など風景も美しい。スコットランド、ますますまた行きたくなりました。もしまた海外旅行するなら、次は絶対イギリス&スコットランド再訪です!

BL告解!

2022-08-18 | イギリス、アイルランド映画
 夏のBL映画祭⑥
 「司祭」
 リヴァプールにある小さな村の教会に赴任した若き司祭グレッグは、誠実な人柄と熱心な仕事ぶりで村民に慕われる。グレッグには夜な夜なゲイバーに通い、セックスの相手を探すというもうひとつの顔があった…
 レンタルDVDで観た時はまだ汚れなき青少年だったので、神父さま?牧師さま?があろうことか男とチョメチョメ(死語)を!と強い衝撃を受けたことをよく覚えてます。この映画、28年も前の作品なんですね~。すっかり腐った老人と化した今あらためて観ると、スキャンダラスでショッキングな映画に狎れてしまってるせいか、あの頃のウブだった自分を懐かしく思うだけです。今やBLはそんなに禁断でも罪悪でもないので、グレッグ司祭の苦悩や苦境、周囲の人々の反応など、かなり時代錯誤に映りました。別に男同士じゃなくてもいいような、ハッピースウィートでライトなBLに物足りなさや違和感を覚えてる私なので、グレッグ司祭を襲う過酷な試練はこれぞBL!な醍醐味でした。

 それにしても。グレッグ司祭、苦悩してるわりには脇が甘いというか、ほんとにゲイであることを隠す気あるの?な大胆さ、不注意さに呆れてしまいます。こっそりゲイバーに通うのも危険だけど、男と浜辺でデート&キス、あげくは白昼の路上でカーセックス未遂、お巡りさんに現行犯逮捕されるとか、おいおい~な迂闊さじゃないですか。フツーの男女のカップルだってもっとわきまえてますよ。厚い信仰心でもっても性欲は抑えられないんですね。

 この映画、観たらBLに萌える代わりに宗教や信仰について考えさせられることになります。私はまったくの無神論者なので、ほんとこういう映画を観ると戸惑うばかりです。敬虔であることは、時に人間らしく生きることを否定してるようにも見えて。若くて真面目でイケメンなグレッグ司祭を、村人たちは大歓迎して親切にしてたのに、グレッグがゲイだと知ると冷たくなる手のひら返しが怖かったです。すべての人が平等ではなく、排除していい人もいるという冷厳さは、地下鉄サリン事件や同時多発テロなどキリスト教に限らず、宗教というものには不可欠なのでしょうか。
 神の教えに背く同性愛者は汚い存在として差別偏見OKみたいな考えだけでなく、告解の内容を他言してはいけないという守秘義務も何だか狂ってるとしか思えなかった。女の子が実の父親から性的虐待を受けてると知りながら黙ってるとか、ほとんど犯罪ですよ。苦しんでる人たちを救うどころかもっと苦しめる宗教って、ほんと何なん?狭量な村人たち、忌まわしい近親相姦親父、そして無力なグレッグにイライラムカムカするばかりでしたが、救えなかった少女にグレッグが逆に救われるラストは崇高で感動的でした。

 グレッグ司祭役は、「鳩の翼」での好演も忘れがたいライナス・ローチ。優しそう真面目そうなイケメンで、誰からも好感をもたれる司祭役にぴったり。司祭服?もよく似合ってて、それでいてイケメン俳優のコスプレっぽさがなく自然。現在はすっかり枯れた熟年となってるローチ氏は、ハリー・スタイルズがBL!と話題の新作「僕の巡査」に出演してるようです。グレッグと恋に落ちる若い男役は、後に「トレインスポッティング」や「フル・モンティ」で有名になるロバート・カーライル。イケメンではないけど可愛いです。二人のラブシーンは、エロくも過激でもないけど、人気俳優がBLやるならこれぐらいはと思う適度さです。グレッグの先輩司祭役の名バイプレイヤー、トム・ウィルキンソンがいぶし銀の存在感、そして最も人間味のある役でした。
 BL映画祭、これにて終了(^^♪お目汚しありがとうございました

週末のBL

2022-07-27 | イギリス、アイルランド映画
 夏のBL映画祭①
 「WEEKEND ウィークエンド」
 ラッセルはゲイバーでグレンと出会い、一夜を共にする。週末を一緒に過ごすうちに、二人の関係は体だけのもの以上になっていくが…
 秀作「さざなみ」のアンドリュー・ヘイ監督作。カミングアウトしてるヘイ監督のパーソナルなエッセンスを感じさせる、小粒ながらも珠玉のBL映画でした。近年すっかり市民権を得て人気ジャンルとなってるBLですが、そのほとんどは妄想好きの腐女子やイケメン好きの女性受けを狙った、非現実的なファンタジーっぽいものばかり。監督や脚本家など作り手がノンケ男性や女性だと、やはり味付けやデコレートが過剰なケーキみたいになってしまいます。その点、ゲイであるヘイ監督が描くBLは、変にドラマティックでもスウィートでもないゲイの日常生活や会話で成り立っていて、ああゲイの人たちってこんな風に関係を築いたり失ったりしてるんだな~と、その自然さ奇をてらわなさが腐には返って新鮮に映ります。リアルだけど決して生々しくはなく、フツーの男女の恋愛と変わらぬときめきや駆け引き、戸惑いもあるけど、やはり堂々ともスムーズにも進展させない葛藤や壁もある。そんなところも女性受けを狙った作り物めいたBLとは違う。きっとゲイの方々の共感も得られる映画です。

 同性愛を特別視しない人たちも増えてきてるけど、昔ながらの偏見や嫌悪を抱く人もまだ多い。そんな社会の中で絶望したり嘆いたりもしないけど、肩肘はって声高に反発したり抗ったりもしない、開き直りでも虚勢でもない、コソコソもしないけど堂々ともしない、ラッセルとグレンはイマドキの若いゲイって感じでした。ほぼ二人だけの会話劇で、特に小粋だったり心に刺さる映画的な台詞があるわけではないのですが、淡々と静かながらも二人の距離が近くなったり、価値観の違いで嚙み合わなくなったりする会話は、微笑ましくさりげなくも奥深かかったです。

 主演の俳優二人も魅力的でした。地味だけど腐にもゲイにも受けそうなイケメン。ラッセル役のトム・カレンは、キット・ハリントン主演の「ガンパウダー」では野性的で猛々しい感じでしたが、今回はすごく優しそうで可愛い!クマさんみたい!濃ゆく男らしい風貌だけど、一緒にいたら癒されそうなぬくもりが。シャイで無垢な笑顔、そしてヒゲ面だけど童顔、ツルツルな肌が若者らしかったです。グレン役のクリス・ニューは、カミングアウトしてるオープンゲイ俳優で、たまにポール・ウォーカー+ライアン・ゴスリングを地味にした顔に見えた。

 男性同士のラブシーンも、それでセックスしたことに?!な稚拙で雑な手抜きではなく、かつヘンに煽情的で生々しいものでもなく、全裸で絡み合うこともキスすることも性欲や愛があるならフツーでしょ?な自然さで好感。日本の俳優もBLやるならせめて、この作品の二人ぐらいはチャレンジしてほしいものです。ラッセルの住んでる団地?の生活感、質素だけどインテリアや食器がおしゃれなラッセルの部屋、ゲイバーでのナンパ、異性愛者の人たちとのやりとりなど、イギリスの庶民ゲイの生活風景も興味深かったです。