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金正恩氏がチャン・ソンテク解任劇で見せたものは

2013-12-12 | ラジオ
2013年12月9日、北朝鮮のテレビが流した映像は、この国始まって以来最も興味深いものと言えるだろう。テレビでは前日に、朝鮮中央労働党の政治局会議で、国防委員会副委員長のチャン・ソンテク氏が解任される様子が映し出された。
チャン氏は金正恩氏の叔母を妻としており、金一族のメンバーとなっている。

北朝鮮始まって以来、初めてのお偉いさんの失脚は騒々しく、芝居がかったものだった。始まりは9日の朝。朝鮮中央通信がチャン・ソンテク氏の違法行為について大々的なコメントを発表した。
金正恩第1書記の、かつての第1参事官、したる参事官は党に背き、反革命的、反派閥的行為を行い、淫蕩、汚職にふけったと糾弾されたのだ。
チャン氏のいほん行為(?)は、ノドン新聞の一面を飾った。過去の糾弾内容に新たな書き込みがなされた。チャン氏は反人民的、反国家的キャンペーンを張ったと告発されたのだ。極めつけは、政治局の会議で撮られた逮捕の瞬間の映像が白昼堂々テレビで放映されたことだろう。このようなキャンペーンは北朝鮮の歴史だけでなく、社会主義陣営史上、前代未聞のものだ。

北朝鮮の標準からすれば、こうしたあまりの開示性は非常に稀な例だ。50年代、北朝鮮はスターリン時代のソ連を手本にしていたため、地元のプレスには、ある役人が、または英雄、また共産党運動の功労者が突如として破壊分子となり、アメリカや日本のスパイとなったという記事が踊ったものだった。
ですが、こうした時代でさえノドン新聞一面が、こうした事件に割かれる事態は想像だにできないことだった。60年以降、北朝鮮では高官の、こうした高い地位の役人の逮捕については一切報じられなくなった。
いくつかの例は、公式的なピラミッドの高い地位を占める人にしか読むことのできない情報紙に記載されることはあったが、失墜した要人は、ただ消えて終わりとなるのが普通だった。こうした失墜者については記事にならなくなり、公式行事にも人物は姿を現さなくなるものだ。そして北朝鮮でその人物の行方に興味を持つ者など、誰もいなかったのだ。

ところが今、正恩氏はこの伝統を破り、チャン氏の失脚を最大限広く知らしめようと決めた。この決定が何によってなされたものかは、現段階では分からない。正恩氏が元摂政に個人的に抱いた敵意が、ここで少なからぬ役割を果たした可能性もないわけではない。
ひょっとすると正恩氏は、自分を相手に冗談を飛ばすとどうなるか、自分の敵となる者は誰かれかまわず抹殺する、ということを見せ付けたのではないだろうか。

「いほん行為」って何だ???

北朝鮮秘録 軍・経済・世襲権力の内幕 (文春新書 932)
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文藝春秋

12月10日放送 ロシアの声・ラジオジャーナル