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私は障害者向けのデリヘル嬢(大森みゆき著)を読んだ

2011-01-01 | 障害者・福祉
この本の初版は2005年12月、それから5年経て僕はこの本を手にした。
何年か前にこの本の存在を何かで目にした記憶はあるが、何時頃だったのかは忘れた。でも確実に言える事は買わなかったと言うことだ。
何故手にしなかったといえば、障害者の性を取り上げて本を出せば、ある程度売れるという下心がありありといった、勝手な偏見があったからだ。
しかし或る日ネットで「私は障害者向けのデリヘル嬢」を目にしたとき、これは必ず読もうと決め購入することにした。

ただ本にしろ大学の研究テーマにしろ、健常者が障害者の性に付いてテーマを取り上げるケースと言うのは、第三者的考察が主であって自らが直接関わらないことが多いなか、この本のタイトルにもあるように著者自らが全裸で、まさしく文字通り裸で障害者と接したという点では大きく異なるし、また説得力もある。

本書では仕事を通じて知り合った客(障害者)とのことが幾つが紹介されている。
なかには遠方からの依頼で交通費を含めると、かなりの高額になってしまうにも関わらずデリヘルを頼む客がいたのは、さすがのボクも驚いた。
また障害者施設に入所している客などの話を読んでいると、ずいぶんと施設も様変わりしたものだなとつくづく思った次第だ。
でも施設は施設に変わりないことは確かである。在宅で暮らすのが良いのか、それとも施設で暮らすのが良いのかは個々の問題であって一概に、どうのこうのと判断することは出来ない。

日常生活で障害者と関わることの無い人がこの本を読む場合、何を期待して本書を読むのだろう。
やはり障害者はどのような方法で性の欲求を満たすのだろうか、という点に付いてだろうか。
そういったことを期待して読むのもいいだろう。しかし本書を最後まで読むと単に障害者の性のみに付いて、興味本位で書かれたものでないことを知るだろう。

また著者が本書で指摘している「差別をなくすことの鍵」では、福祉従事者や福祉を専門に勉強している人たちよりも、遥かに大事なことに気がついていることは嬉しく思う。
改めてボク個人的に昔から疑問を抱いてきた「福祉のエキスパート」「福祉専門職」とは、いったい何なんだろうと思ってしまうのだ。
それは優秀な経済学者が沢山いても、たいして経済が良くならないのと同じような感覚だ。

本書を読む限り著者は真面目で優しい女性なんだと勝手に思っている。そのことは随所で感じることを出来たが、なかでも店が介護の基礎知識を教えてくれなかったことに付いて強く感じた。
客と接しその奮闘振りは本を読めば判るが、たいぶ苦労されたことを窺い知る事が出来る。でも基本はハートだと思う。

さてボクも今回この本を読んでデリヘルを頼みたいかと問われれば、今のところは「ノー」と答えておこう。
もちろん将来的なことはボクにも判らない。もし仮に利用するとしら、ぜひ著者を指名したいところだが、残念ながら「みゆき」と称する著者はデリヘルを辞めている。

私は障害者向けのデリヘル嬢

大森 みゆき
ブックマン社


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ボクが著者に言いたいことは仕事上とは言え、障害者と裸で接してくれたことに感謝したいのと、元気で幸せに暮らして欲しい。
この二つのみ。