今回のドイツの強さはブラジル戦だけではなく、圧倒的な試合が多くびっくりしました。決勝戦、胸でパスを受けて、そのまま左足でボレーシュート。サッカーW杯の決勝で優勝を決めるゴールを挙げたのはドイツ統一後に生まれた22歳のゲッツェ選手でした。
前回まで15大会連続8強入りの強豪も最後に優勝したのは1990年。当時は西ドイツ代表でした。選手と監督の両方でカップを手にしたベッケンバウアー監督は、東西統一後のドイツは「無敵」になるだろうと口にしました。しかし、ふたたび頂点に立つまでには24年の歳月がかかります。低迷期に若手育成を強化。体力中心の無骨なスタイルから、柔軟で新しい戦術を意欲的に取り入れ、成熟したチームをつくりあげました。
多民族の融合もいまの特徴です。W杯通算最多得点を更新したクローゼ選手はポーランド、中盤の要エジル選手はトルコ、守備のボアテング選手はアフリカ系。旧東独の選手も入っています。そこに戦後ドイツの歩みが重なります。
ベルリンの中心部には数十万人がくりだし、街中が夜通し歓喜に包まれました。テレビでは市民が「ベルリンの壁が崩れて以来の喜びだ」と叫んでいました。統一後初めての優勝は、ドイツに新たな歴史を刻み込みました。
今回のW杯は新時代の到来を告げました。常連のスペインやイタリア、イングランドが決勝トーナメントにも進めず、代わりに中南米やアフリカのチームが躍進。日本を含むアジア勢の低迷は残念でしたが、巻き返しを期待したい。ひとつのボールが人びとの心と世界をつなぐ、地球の祭典が幕を閉じました。一部分しんぶん赤旗「潮流」より