「人口の1%の富裕層の貪欲」を批判する反格差運動が広がった昨年の米国。今年は年明け早々から、「富裕層・大企業への増税」を求めるキャンペーンの先頭に、オバマ大統領自らが立っています。
今年は大統領選挙の年。長引く経済の停滞、貧困・格差拡大と固定化に国民の批判が強まる中、「経済の公正さ」の回復が、オバマ氏の再選運動の大テーマの一つです。
オバマ氏は、1月24日の一般教書演説と2月B日の予算教書で、富裕願・大企業への増税を相次いで提案しました。
有名になったのが「パフェット・ルール」です。大富豪のウォーレン・バフェット氏が「自身への税率が秘書への税率よりも低いという優遇税制はおかしい」として提案したもの。年収100万ドル(約8千万円)以上の高額所得者には最低でも30%の税金を課します。
ブッシュ前政権時代から続いている年収25万/以上の富裕層への減税も廃止。併せて10年間で1兆5千億ドル(120兆円)の税収を見込みます。
雇用を海外に移転する大企業にも、応分の責任を求めています。製造業の国内回帰を目指すとして、海外に雇用を移転した企業への税控除は廃止。多国籍企業に対しては、海外でのタックスヘイブン(租税回避地)を利用した税金逃れに規制をかけるため、一定の「基本税」を創設することも提唱しました。
また、「金融危機責任税」を創設し、国民の税金による金融機関救済のツケを大銀行への課税で回収することも提案しました。10年間で610億ドル(4兆9千億円)の税収を見込みます。
業界団体は反発
ニューヨーク・タイムズ紙などの世論調査では、「富裕層の所得税は軽すぎる」という人が55%。富裕層増税支持も52%に。低下傾向だったオバマ氏の支持率は、じわり上昇に転じています。
他方、米国商業会議所、米国銀行協会など、増税対象となる業界団体は軒並み「オバマ増税」に反対を表明。減税と規制緩和による景気回復を主張する野党・共和党も、「(オバマによる)階級闘争だ」などと反発を強めています。
オバマ氏は一般教書演説で「階級闘争と言いたければ言えばよい」と対決姿勢を鮮明にしました。とはいえオバマ氏の富裕層増税提案も、年来の大企業・富裕層優遇税制による米国の所得の再分配機能のゆがみの微調整にすぎません。
また、米国では予算の作成権は大統領ではなく連邦議会にあります。オバマ氏の提案が、このまま法制化する見込みは乏しいといわれます。それでも、やむにやまれぬ圧倒的多数の国民の願いを受けてのオバマ氏の提案。決着は1月の大統領選まで持ち越されそうです。(ワシントン赤旗特派員 小林俊哉記者)