安倍晋三首相らは、国立大学の学費値上げの危険性について「デマ」だと国会で繰り返しています。しかし、値上げの危険性はデマどころか、現実にあることは隠せません。
安倍政権による国立大学の学費値上げ計画は、昨年10月、政府の財政制度等審議会で「(国からの)運営費交付金に依存する割合と自己収入割合を同じ割合とする」という財務省の方針が了承されたのが発端です。
方針は撤回せず
財務省方針は、今後15年間、交付金を毎年1%削減して1948億円も削減する一方、大学の自己収入を2437億円も増やせというもので、同省は現在もこの方針を撤回していません。
同審議会がとりまとめた昨年11月の「建議」は、国立大学に対し、数値目標は示さなかったものの「運営費交付金の削減を通じた財政への貢献」を求め、「授業料の値上げについても議論が必要」「国費に頼らずに自らの収益で経営を強化していくことが必要」と打ち出しました。
自己収入増を授業料だけで賄えばどうなるのか―。日本共産党の畑野君枝衆院議員が昨年12月に国会でただすと、文科省は「授業料は40万円増えて93万円になる」と答えました。
若者が奨学金で多額の借金を背負う実態を無視した暴論であり、高等教育の段階的な無償化を求める国際人権規約や、憲法が定める教育機会の均等にも反するものです。馳浩文科相も「一律削減ありきの考え方に反対だ」と答えざるをえませんでした。
運営費交付金の削減に対しては大学関係者や学生、保護者からも反対の声が広がり、来年度予算案では交付金は前年度と同額になりました。しかし、交付金と一体に配分されていた補助金が半減され、各大学に配分される予算は88億円減となっています。
交付金削減へ新方式導入
さらに重大なのは、最も基盤的な経費である基幹運営費交付金は毎年1%、100億円も削減する新たなルールが導入されました。文科省は、この100億円を使って各大学の「機能強化」を支援するとしていますが、これはそのままでは「人・物・施設」には使えません。
国立大学協会の里見進会長も「機能強化促進分は使途が限定されているので、教育研究活動に必要な基盤的予算(基盤経費)はこれまで以上に減らさざるをえません」「高等教育局の予算もかなり減額されたので、補助金として大学に配分される予算も少なくなる」と指摘しています。
値上げの悪循環
結局、民間企業からの資金獲得が困難な大学は、学費値上げに踏み切らざるをえなくなります。国立大学への予算削減による学費値上げの危険が現実にあることは明らかです。
公明党も前出の「建議」について、昨年12月11日の参院文教科学委員会で「授業料の値上げによって教育の格差が拡大してしまう」(新妻秀規議員)と批判し、「わが党として到底容認できません」と明言していました。
国立大の学費値上げは私大にも波及し、学費値上げの悪循環を招くことは必至です。日本共産党は「国の大学予算削減のために学費を値上げする方針を撤回させるという一点で、引き続き世論と運動を広げよう」と呼びかけています。