本日のしんぶん「赤旗」の今日の「潮流」は素晴らしく含蓄のあるものだったので紹介することにしました。
「戦争は、人間の腐敗の果実であり、政治体のけいれん性の重病である」。およそ250年前の文章です▼書き手は、フランスのダミラヴィルという人らしい。「一言でいえば、平和は、すべての社会の目的である幸福を人民に得させる」。逆に戦争が国家にとっていかに有害か、さまざまな理由をあげて説きます
▼「…いかなる国家であろうと、もっとも目ざましい勝利でも、戦争の犠牲となった多くの成員の損失の埋め合わせをつけることは決してできない」。わが日本国憲法9条にいたる、人類の平和思想の脈々とした流れの一こまです
▼筆者は、戦争をあおる者への警戒も忘れません。「戦争の党派は、混乱を煽動(せんどう)し」、「彼らはいう。『…国民は、平和のうちにあっては柔弱となり堕落する。…平和の党は弱者の党にすぎない』と」。いまも、思い当たるふしが多い
▼紹介した文章は、ちょうど240年前の1772年にひとまず完結した、フランスの『百科全書』の一項目「平和」です(岩波文庫『百科全書』から)。26年の歳月を費やし、180人を超える人が書いた『百科全書』。編集にあたった思想家ディドロは、こう予言しました。「この書物はやがて人々の心にまちがいなく革命をひきおこすでしょう」
▼現実にフランス大革命を準備したとされる『百科全書』は、進歩派の書き手の「共同戦線」でした。仲間同士の論争や別れもありましたが、いまの激動の世界でも、現代版の知の共同が求められているのかもしれません。
※フランスのルイ15世の公妾であった『ポンパドゥール夫人肖像画』に描かれた夫人の左手の先にある大判の書物は百科全書の1巻であるといわれています。マルクスが資本主義社会を批判するときよく使われる言葉「わが亡きあとに洪水は来たれ」を発したのはこのポンパドゥール夫人であることは、よく知られていることです。