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”Buppah Saichol ”
さっきゴミ出しに行ってきたらさあ。あ、ウチの方はいつ出してもいいの。ゴミステーションっていう建物の中へゴミ袋を置くんでね。まあ、それはそれとして。
その時、軽く雨が降っていて風も吹いていたんだけれど、もう真冬の寒さじゃなくてね。なんだか吹き付ける雨が、夜中にパソコンに向って煮詰まっていた頭を洗い流してすっきり心地良くしてくれるみたいな感触があり、うわあ、一気に春がやって来ているんだなあとビックリした次第。
そんな春の気配だけでも妙に心が騒ぐのは、春風の運んでくる南の気配のせいだろうなあとか思いつつ、このアルバムを取り出してしまったのだった。70年代タイの名女性歌手、プッパー・サーイチョンの復刻シリーズの第1集で、タイ音楽ファンの間では、とうに話題になっていた物件であります。
ともかく彼女がヒット曲を連発していた70年代のタイは、上に書いたような心ときめく南のエキスの香りに満たされ、風物のなにもかにもがまるでアニメで描かれた楽園の姿をしていたに違いない。その頃のタイと日本とは河一本を隔てただけの距離しか離れていず、その気になれば泳いで渡ることが出来た。その頃のタイには、諸外国からの珍奇な物品が港に山をなし、人々はそれらが与えてくれる楽しみを享受する、愉悦だけに満ちた日々を送っていた。
そして、そんな風景を中天から見下ろして、月は夜毎、眩しい明かりを放って楽園タイのすべてを明るく照らし出していた。
いや、現実がどうであれ、このアルバムから聴こえてくるタイは、そんな姿をしているのだから仕方がない。
冒頭、ジャジィな、ちょっと調子っぱずれでもあるホーンズに囃し立てられつつ始まるのどかなタイ風ロッカ・バラード一発で、もうやられてしまう。サーイチョンののどかで、でも艶やかでパワフルな、なんて言い方では何がなんだか分らないかも知れないが、いや実際、そんな具合なんだから。
タイの田園調あり、60年代風エレキでゴーゴーあり。ともかく彼女はグングンと歌い進んでしまう。まだまだのんびりとした時間を生きていた当時のタイ情緒を伝えるポップスは、どこかに昭和30年代の日本を満たしていたものとよく似た空気を孕んでいる。
なんか懐かしい気分にさせるな、この曲は?と思いつつ聴くうち、それがよく知っているあの曲の、タイ風に変質した姿だったことに気が付き、うわあ、これはやられたなと兜を脱ぎたくなるカバー曲との遭遇の楽しさ。まあ、彼女の歌う”ソーラン節”でも聞いて御覧なさいって。
私の部屋の窓に時々南国の月の光が差すのは、実はそんな理由があるのです。
(下にYou-tubeの画像を貼ったけれど、上手く再生されないなあ。でも、あなたの機材なら大丈夫かもしれないんで、このままにしておきます。まあ、他の画像を貼ろうにも、何も見つからないしね)