ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

女子高生島歌戦記

2008-08-22 02:27:06 | 沖縄の音楽


 ”アダンの実”by 麻乃

 今は本名の伊禮麻乃を名乗って、どちらかといえば”Jポップ”寄りのサウンド展開をしている沖縄出身のシンガー・ソングライターの、若き日のご乱行(?)アルバムである。なにしろ”怪作”なんて書き方をしている批評にもであった事があるからね、この盤。
 あ、彼女の名は知らない人でも、彼女の歌声は耳にしているんじゃないかなあ。日清オイリオのCMソングであるでしょう、「ビュ~ティ~フル・エ~ナ~ジィ~♪」っての。あの、フォークロック調のメロディを沖縄民謡のコブシ入りで歌っているのが伊禮麻乃です。

 彼女はともかく音楽に関しては早熟の天才とも言うべき人のようで、高校生の時に古典音楽三味線優秀賞、古典音楽太鼓優秀賞など、さまざまな賞を得、その上、琉球古典音楽安冨祖流教師免許なんて資格まで取ってしまっている。最年少だそうです、この資格を高校1年で取ったなんてのは。

 そのまま順調に音楽生活を続けている彼女なんだけど、その音楽を聴いてみると、その種の才能ある人に時にある器用貧乏の気配も感じないではないのですね。洗練されたポップスもあれば、ド~ンとディープに民謡を聴かせてみたり。
 どれも見事に出来ちゃうんで、焦点が絞りきれないんじゃないか。私としてはやはり、彼女の出発点である民謡をもっと聞かせて欲しい気がするんだけどね。まあ、私が言いたいのはどっちかといえばこれなのかも知れない(?)

 伊禮麻乃のファンになったのは、何か調べごとがあって検索を重ねていた際、偶然、彼女のインタビュー動画を収めたサイトに出会ってしまってからだった。
 彼女は三線を抱えて芝生の上に腰を下ろし、弾き語りで民謡を歌ったり、自分の生い立ちや音楽に対する考えなどを語っていた。その快活な語りや立ち居振る舞いがなんとも気持ちよく感じられた。
 で、私は「なんだか元モーニング娘のヨッスィーこと吉澤ひとみみたいな”オトコマエ”な良さのある子だなあ」なんて思いつつ見ているうちに、彼女のアルバムをすべて集めたくなっていた次第。

 で、話は彼女のデビューアルバム、”アダンの実”なんだけれど。

 これは上に述べたような絢爛たる”音楽賞ハンター”ぶりを展開していた高校生当時の伊禮麻乃が、自身の三線や鼓にドラムやベースといったリズムセクションを加え、レゲやファンクの要素もある、いや、”ヒップホップ調”とか”クラブっぽい音”とか言った方が通じやすいのかな?ともかくそんな方向性のバック・トラックを創造し、自在に沖縄民謡の古典を歌いまくった一枚である。

 今のオトナの彼女と比べるとまだまだ幼い伊禮麻乃の歌声の自由さが心地良い。ここで展開されているサウンドがどこまで彼女の意向に沿っていたのか分からないのだが。
 ともあれ、やや荒い、隙間の多い音作りゆえにサウンド全体に圧迫感がなく、それに乗って傍若無人の女子高校生たる若き伊禮麻乃がやりたい放題”沖縄古典”を遊びまくる、この痛快さが最高なのさっ!

 怪作なんて言う奴の気が知れないね。こいつは沖縄民謡アルバムの大傑作と私は思うぞ。願わくは伊禮麻乃に”アダンの実2”とか”帰って来たアダンの実”とか”アダンの実の逆襲”とか、作って欲しいです。いや、本気で。


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