ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ヤシの実流れ来る故郷

2012-10-12 01:39:58 | アジア

 ”太陽月亮”by Ado' Kaliting Pacida

 演唱歌手:阿洛・卡力亭・巴奇辣 
 專輯名称:太陽月亮
 專輯語言:原住民阿美族語

 という訳で、台湾の先住民歌手、Ado女史の本年度作。2006年デビューで、これ以前にもアルバムは出ているらしいけれど、私にはこれが初対面。ともかくジャケを開き、その濃厚に”異民族”を主張しているビジュアルにまず、圧倒されます。
 台湾先住の民族というのは、北ボルネオのあたりから移ってきた人々、なんて話も聞いたけど、ともかく彼女のジャケ写真のどれもがビジュアル面で濃厚に”東南アジア”を発散していて、いわゆる台湾のイメージに対する、”異物”としての迫力が半端ではない。

 アルバムから聴こえてくる音楽も、中華民族とはとりあえず関係のないもの、を主張している。一言で印象を言えば、ハワイアンが既知の音楽で最も近い響きを持っているか。予備知識なしに冒頭のタイトル曲を聞かせれば、100人に100人がハワイの音楽と受け取るのではないか。
 時に、ヒップホップ仕立てやら普通の台湾ポップスに近い作りの歌謡ものなど挟みつつ、そんな”東南アジア出自”の色濃い先住民族古謡の世界が開陳されて行く。使用言語もアミ族の言葉ゆえ、エキゾティックな響きはいや増し、台湾がマレーシアとインドネシアのあいだのどこかにある、くらいの幻想は生まれる。

 ジャケの解説など読む限り、かなり精神性が濃厚な音楽という感じなんだけど、これはどこまでリアルなんだろうか。ともあれ、Ado女史の演出する不思議な台湾山地=東南アジア最北端幻視行に一時、魂を預けてみるのも一興であります。




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