ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

我が心のスペイン、その他のスペイン

2011-11-02 03:14:19 | ヨーロッパ

 ”CHICAS, Spanish Female Singers 1962-1974”

 1960年代から70年代にかけてのスペインの女性ポップス歌手たちを集めたコンピレーション、ということでありまして。いやあ、楽しそうな企画、楽しそうなジャケでありますなあ。
 まあ私などにとっては60年代のスペインの流行り歌というと、なにはさておきまず、ロス・ブラボーズの「ブラック・イズ・ブラック」であるのです。あの、ブリティッシュ・マナーのギンギンのブルーアイド・ソウル曲の底に脈打つどす黒いスペインの情念が忘れられない。というか、60年代のスペインの曲といったらあれしか知らない私なのでありますが。

 そんないい加減な私でありますが、このアルバムで聴ける”当時のスペインの音楽状況”が盤を編集した人のかなりの”創作”であるのは、なんとなく分かります。おそらくこの盤を編集した人は中南米の音楽のファンであるに違いない。そしてこの盤はその人にとってのアリバイ作りのニュアンスがありはしないか?”ラテンの本国スペインがこんな国だったらいいなあ”という。
 おそらくブーガルー流行あたりを紐帯の根拠として、中南米音楽の影響下にスペインで生まれたポップスを集めて、このアルバムは作られたのでしょう。「ラテンの血の源流、スペインって、こんなに”ラテンアメリカ”だったんだぜ!」とか言いたい事はそんな感じか。

 でも、そりゃないと思う。いくら”情熱の国スペイン”とは言っても、陰湿なるヨーロッパの一角を占める古い国がこんなに陽気な世界であるはずがないよ。
  ともかくこの盤、終始、南の国のリズムは弾け、明るい歌声は天高く響き、明るい太陽は盤の隅々まで光り輝いてるわけで。でもスペインてさあ、太陽が明るければその分、地上に出来る影は暗さを増す、みたいな大いなる暗さも秘めての太陽の国って気がしない?

 とかなんとかケチ付けるような事を言ってますが、この盤、結構気に入ってます。ともかく楽しい。ラテン魂漲る英米ポップスのカバーなど連発で出てくると、ニヤニヤしっぱなしなのさ。ただ、これをそのまま当時のスペインの実態と信じるのは違うんじゃないかといいたいだけで。
 まとめ。この盤は、1960年代から70年代にかけて南米大陸のどこかに存在していた”スペイン”なる陽気な国の流行り歌の忠実な記録である。という設定の、これは優れたSF作品である。紹介される女性歌手たちも皆、明るくチャーミングな人たちで楽しくなります。非常に楽しいファンタジィといえましょう。
 




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