ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

呻き屋のラプソディ。

2012-03-02 02:18:59 | 60~70年代音楽

 ”Mourner's Rhapsody”by NIEMEN

 いつまでも寒い気候が続くのでヤケになって始めた自虐シリーズ、”クソ寒い国の音楽”ですが、こちらも続いております。今回はポーランド。あの国も寒そうだよな。もう、カチンの森の記憶にかけても、寒い。そして暗い、辛い。

 NIEMEN。この人はもう何度か取り上げたことがあるけど、ポーランドを代表するロッカーだった。だったというのは、2004年に亡くなっているから。生年は1939だったか。60年代から活躍していたけど、その当時はありがちな60年代ビートグループの一員。まあ、当時から、その振り絞るようなシャウトは異彩を放ってはいたんだけれど。
 その後、70年代に至り、ブルージーで重厚な響きのある独特の個性を発揮した音楽を続々と発表し始める。その、深い哀切な響きのあるシャウトは、これも彼独特の荘重な教会調のオルガンの調べと相まって、陰りのあるモノクロームの美学を形成していった。
 彼の音楽の悲痛な雰囲気は聴く者の頭の中で、苦難続きのポーランド現代史の顛末と、いやが上にも重なり合ってしまう。そんな偏見の持ちかたは良くないんだろうけどさ。

 そう、モーナーズ・ラプソディとはよく言ったもので、このアルバム(1974年作)ではニューヨークのミュージシャンなど招き、いろいろなサウンドを決めているが、NIEMENの音楽が収束して行くところは、モノクロ写真の中の名も知れぬ黒人のブルースシンガーが古ぼけたギターをかき鳴らしながらSP盤の中で呻いている、そんな古い一枚の写真。
 いくらシンセやメロトロンを鳴らそうと、彼の魂の帰ってゆくのは、そんな素朴な一節のブルースだった、なんて気がする。
 それにしても、NIEMENの死因てなんだったんだろうな。いや、知らないままの方がいいのかも知れない。あの哀しみのシャウターは地球の裏、ヨーロッパの片隅でフッと風の流れが変わるみたいにある日、消えてなくなったのだ、そう空想していたほうがファンとしてはいくらかマシというもんじゃないだろうか




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