ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

雨降る永東橋

2010-02-11 22:05:12 | アジア
 ”雨ふる永東橋 by 周美”

 今日は一日雨だったよなあ。うっとうしいなあ。なんかやるべき事があったんだけど、雨で出るのが億劫だとか言っているうちに忘れてしまった。まあ、忘れるくらいだからたいした用事じゃないんだろう。
 以前、「橋をテーマにした歌が気になる」なんて文章を書いたけど、雨をテーマにした歌はいちいち挙げている暇もないくらいに多い。大体が雨によってセンチメンタルというかウエットになっている心情を歌っているものがほとんどなのだけれど、でもなんで雨に降られると人はウエットな心情になるのかね?考えてみると、これがよく分らない。
 生物の習性から言えば、雨に降られるとエサの捕食が難しくなるから、出歩いても仕方がない。動き回っても腹が減るだけだから寝ちゃおう。というわけで、生物は雨に降られると眠くなるように出来ているらしい。眠くなるのとセンチメンタルとは、なんかちょっと違うような気もするな。どうなってるんだろうな。

 というわけで韓国演歌の傑作、”雨降る永東橋(ヨンドンキョ)”であります。かの国の演歌の女王と呼ばれる周美(チュ・ヒョンミ)のデビュー曲にして大ヒット曲。
 チュ・ヒョンミは中国人と韓国人のハーフとして1961年、韓国の光州市に生まれました。子供の頃からのど自慢荒らしとして鳴らし、その後、大学の薬学部を卒業した後の1985年に歌手デビューしている。
 血筋や系図に関してはいろいろうるさいらしい韓国社会で、華僑社会出身としては初の人気歌手となり、しかも薬学部出身という無駄にインテリだったりする経歴もありで、なんか不思議な人ですな。
 この歌、NHKの韓国語講座の初期の頃に”今月の歌”かなんかで紹介されていたそうで、それは見たかったなあと残念に思えども、その時点で私は韓国演歌などに興味はなかったのだから、これは仕方がない。

 ”雨降る永東橋”は、もうイントロからして優雅な3拍子の、典型的な韓国演歌のメロディを持っています。韓国語は分らないから言葉の意味そのものは分からないんだけど、でも何を歌っているのから同じ東アジア人として、何となく見当が付く感じだ。まあ、リフレインの部分で”ミリョン、ミリョン、ミリョン”と繰り返すけれど、これはきっと”未練”なんだろうなとか、見当つける材料はあるんだけど。
 いやでもそればかりじゃなく、このメロディ、この歌い方ならば、東アジアの民族は必ず、「雨降る永東橋を夜更けに一人彷徨うこの私。もうもどらないあの人の面影を諦めきれないこの心は、未練、未練、未練なのね~♪」との歌のテーマを、言葉が分からなくとも読み取ってしまうであろうと私は信ずるのですがね。そしてほんとに原詩の日本語訳を読むとそんな詩内容なんだから。実際にこの歌を聴いてあなたは、「当たり前じゃないか」といわれるかもしれませんけどね、いや、モーリタニア人とかルクセンブルク国民とかがこの歌を聴いてどう思うか。

 日頃、刹那的な歌唱法とディスコ・アレンジをされたサウンドが刺激的な最近のトロット演歌のCDを好んで聴き、「演歌は韓国民にとってはロックンロールなのではなかろうか」などと訳の分からない事を言っている私ですが、ヒョンミ女史の艶やかな歌唱に、「こっちが演歌の本道なのかもなあ」などと反省したりする私なのでした。
 そういえば、同時期デビューの彼女のライバルである沈守峰という人は、暗く沈んだイメージで聴く者の心に食い入ったそうですが、それに対しヒョンミ女史は、あくまでも明るい調子の演歌で人々に愛されているんだそうです。
 ちなみに永東橋なる橋、歌を聴くと小さな橋みたいだけれど、地図など見ると、大型ホテルや国道なんかに通ずる、結構な大橋みたいですね。もっとも、歌の発表された当時は、そのあたりはまだ「新興」の地であり、その後の発展が目覚しかった、なんて話も聞きました。

 それにしても雨はひどくなるばかりだなあ。あなたの地方もそうですか?明日、朝に出かけねばならない用事があるんだけどなあ。それまでにやんでくれるといいんだけれど。





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