ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

1975年のガイガーカウンター

2012-03-04 01:54:18 | エレクトロニカ、テクノなど

 ”Radio Activity”by Kraftwerk

 相変わらず気候はクソ寒いままで、”ヤケクソ北国シリーズ”を終えるきっかけもつかめずにいる。今、こうしてパソコンの前に座っていても、すぐ窓の外、土曜の深夜の街角からは、しのつく冬の雨が人影もまばらなネオン街の歩道を濡らす音が地味に続いているばかりなのである。
 その湿った音に初期クラフトワークの安い打ち込みのリズムが凄く似合っていたので、今夜はこれで行くことにしたのだった。
 すいません、私もこの冬のしつこさには根負けしました。”クソ寒い国の音楽”シリーズは中断します。とはいえ、クラフトワークの出身国、ドイツだって冬は相当にクソ寒いぞ。昔、雪の積もったベルリンの街をテレビで観てゾッとしたことがあったもん。というか、誰も楽しみにしてはいないだろうシリーズを続けようとやめようと。

 これは「時節柄、洒落にならない」と封印していたアルバムである。なにしろ冒頭の曲が”ガイガー・カウンター”であり、終わり近くには”ウラニウム”なんて曲もある。しかも全曲、いかにも原発建屋内で聴こえてきたらすごく似合うだろうなあ、というサウンド連発で、何かほんとに気持ち悪くなる代物なんだよ。
 短いパッセージが深いエコーを伴って鳴ったりすると、目の前に浮かぶのは建屋の地下に溜った大量の汚染水が懐中電灯の明かりに浮かび上がっている風景だったり。つーか、そもそもアルバムタイトル、「放射能」だしさ。
 まあなんとか最近、聴く気になってきたんだけど。テクノの開祖クラフトワーク、まだ誰もテクノがどうの、なんて騒いでいなかった時代に静かに世に出た1975年度作品。

 もちろん世はまだアナログ盤時代だった発売当初、多くの人を困惑させたであろう、アナログ盤の針飛び音に極似したパルス音が冒頭、ポッ・・・ポッ・・・ポッ・・・と続く。そのリズムが急に早くなりシンセが入り打ち込みのリズムが始まり、「人をバカにしやがって」という運びになる。それがガイガー・カウンターという曲。
 聴き直してみれば、そんな意地の悪い引っかけばかりで出来ているアルバムなのであって。まあ、「電波音」がこのアルバムのテーマだからね。モールス信号やらラジオの信号音やらがフィーチュアされるわ、意味の分からぬドイツ語のアナウンスが地下で延々と不吉に響くわ。

 とりあえず、この人の私でもガイガー・カウンターの反応音に、「住環境の中でそのような音を聞いてしまう人のお気持ち、いかばかりか」なんて感情をそれなりに持つようになり、それを当たり前に感じている事への、ある意味、これは刺激剤だ。
 この時点で、電波が立てる音を酒のサカナに、陰気に遊び倒しているテクノの帝王たちの過去の悪ふざけは、マゾヒスティックな逆療法として心にヒリヒリ爪を立てる。外は雨が降っている。隙間だらけの機械のリズムが路地に染み渡って行く。




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