ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

バンコック・シティライツ

2010-02-01 03:27:39 | アジア

 ”Yah Mong Karm Kwarm Sei Jai”by Earn The Star

 寒中、南国の歌を聴くにはそれなりの思いがある・・・とか大上段に振りかぶってみても、一年中赤道直下の歌ばかり聴いている人が普通にいるわけで、まるで意味はないわけですが。冬の間はなるべくシベリア送り気分を味わおうとロシアのポップスとかばかり聴いている北志向の私にとっては、それなりに例外的な行為の内に入る次第で。
 というわけで、タイの歌謡曲であるルークトゥンの歌手、アーン・ザ・スター嬢の2ndアルバムであります。”スターのアーン”とは大きく出たものですが、美女の誉れ高き彼女ですから、私は普通に納得しております。

 タイの演歌と呼ばれるルークトゥンですが、その中でも都会派の道を行く彼女であります。演歌でありますからコブシをコロコロ廻しつつ歌いつずって行くのですが、アーン嬢の場合、そのありようはその美貌にふさわしく、と言うことなんだかどうだか知りませんが洗練されておりまして、演歌の臭味はあまり感ずることはない。
 なおかつ抑え目の曲調が多いこのアルバムではアーンは、より内省的な歌い方を行なっており、演歌というよりはやや民俗調の都会派歌謡曲という味わいがあります。
 バックのサウンドも全体の音数を抑え、キーボードやギターの音を前に出したクールな都会派の音作り。

 全体に、枯葉舞う秋口の都会の歩道なんかに似合いの哀愁など感じさせる出来上がりなんですね。この、抑制されたメランコリーが南国の、どちらかといえば土俗系のポップスには珍しく思え、なんか気になる一枚となっているのです、私には。
 タイの音楽をメインに聴いている人には、ルークトゥンを明るく歌っている前作、デビュー作のほうが納得できる出来上がりなのかも知れません。でも私としては、この路線をこの先も行ってくれれば、その美貌も相まって、”お気に入りのルークトゥン歌手”とでっかいハンコを押してしまえるんだがなあ、なんて勝手な事を言ってるんですが。

 そして、このアルバムを聴きつつ、ふと感じたりするのですねえ、すっかりアジアをリードする近代国家になってしまった今日のタイ国(まあ、様々なご意見もございましょうが)が、大都市バンコックの雑踏の真ん中で立ち止まり、「あれれ、なぜ自分はこんなところに来てしまっているのだろう?」と戸惑いの表情を浮かべている、なんて幻想を。





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