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南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

略式罰金とはどのような手続か

2005年11月29日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 検察官が被疑者を略式裁判で罰金にしようとする場合、被疑者の同意をとらなければならないことになっています。
 これは罰金にするということは有罪が前提なわけで、有罪か無罪かを争っている被疑者は略式裁判の手続に乗せるのは適当でないからです。
 被疑者が略式裁判に同意すれば、検察官は、被疑者を簡易裁判所に起訴します。同時に証拠を提出します。
 このとき検察官の手元にある証拠を整理している暇がないため、検察官は手持ち証拠を全部簡易裁判所に提出しているようです。
 また、検察官は「科刑意見」を裁判官に提出します。これは正式裁判では「求刑」にあたるもので、”このくらいの罰金が相当である”という検察官の意見です。
 裁判官は、これらを検討したうえで、
1 罰金が相当であると判断した場合→罰金の命令を出す
2 罰金が相当でないと判断した場合→正式裁判が相当であるとの決定をだす
こととなります。
 つまり、検察官が略式罰金を請求しても、裁判官の権限で、正式裁判のルートに乗せることは可能なわけです。
 もっとも、圧倒的多数の事案は、「1」の処理=罰金命令で決着してしまいますが。
 これらの手続では、被害者は正式な地位を与えられていません。
 検察官が略式裁判を請求しようとしても、そのことを被害者が通知される権利もありませんし、正式に意見をいう場もありません。
 簡易裁判所の裁判においてもそうです。
 ですから、被害者としては、頻繁に検察官に問い合わせし、正式裁判を望む場合は略式裁判をしないように検察官に意見書を提出するなどの行動をしておかないといけないことになります。



 

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略式罰金か公判請求かはどう決まるのか

2005年11月27日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 起訴するという場合であっても、
 A 略式裁判で罰金にするのか(略式罰金)
 B 正式裁判にするのか(公判請求)
という選択肢がありえます。
 これも第一次的には検察官がこの選択をします。
 略式罰金にするケースは、公判請求をするケースよりも、情状として軽いと検察官が見ているケースです。
 では、どのようなことを検察官が考慮してこれを決めるかといいますと、
1 まずは、過失が重大であるか否か
です。
 前方不注視、携帯電話をもって運転していて注意が散漫になったなどが過失となれば、重大な過失ととらえられ、処分は重い方向に行きます。
2 次に結果が重大であるかどうか。
 交通事故事件では、結果とは、業務上過失傷害事件では、傷害が重いかどうかということです。
 業務上過失致死事件では、死亡という結果が発生していることは明らかですし、死亡という結果が重大であることは論をまたないところです。
3 被害者の落ち度の有無、ある場合はその程度
 被害者に落ち度があるかどうか。なければ、被疑者への処分は重い方向に行きますし、そうでなければ被疑者にとっては軽い方向にいかざるをえません。
4 被害弁償ができているのか、できる見込みがあるのか
 自賠責にすら入っていない事案が一番重くなります。
 自賠責には入っていても、任意保険に入っておらず、自賠責の範囲では損害賠償が収まらない場合は、被疑者の財産で被害弁償できそうな範囲内かどうかが問題になります。
 対人賠償無制限の保険に入っていれば、被害弁償及びその見込みについては問題が少ないと見られます。
 示談がすんでいることは、もっとも検察官の判断に影響を与えます。
5 被害者の処罰感情
 以上の5点が重視されるところですがその他にも、被疑者に前科があるか、被疑者の家族状況等が考慮されますが、考慮要素としてはそれほど大きくはないといえるでしょう。
 これらを総合的に考慮して、検察官は略式請求にするか公判請求にするかを決めることになります。  



 



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起訴か不起訴かはどうかはどうきまるのか

2005年11月26日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 業務上過失傷害事件や業務上過失致死事件などで被疑者が検挙された場合の刑事事件の流れは、
 警察が事件を探知→警察で捜査
 →検察に事件を送致→検察で捜査
 →検察が起訴・不起訴を決定
となります。
 起訴・不起訴を決定するのは唯一検察官だけであり、その意味で検察官の権限は絶大なものがあります。
 検察官が起訴・不起訴をどのように決めるのかというと、まず、
”犯罪自体を裁判所で立証できるだけの証拠があるのかどうか”
ということを最重要視します。
 裁判は、証拠によって証明することになっていますので、証拠がないか不足していれば不起訴方向にいかざるをえません。
 つまり、
 十分な証拠がある→起訴
 十分な証拠がないあるいは不足→不起訴
となります。
 業務上過失傷害・致死事件の場合で、もっとも問題になるのは、「過失」があるのか否かということです。
 例えば、死亡事故の場合で、被疑者側が青色を主張しているというケースなどは非常に過失の認定が難しいケースです。
 というのは、信号が何色であったかについては、基本的には目撃証言に頼るほかはなく、上記のようなケースで被疑者以外に目撃者がいないときは、被疑者の主張を覆すことができないという理由から、検察官が不起訴にする場合があるからです。
 

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業務上過失致死事件で逮捕されるか

2005年11月26日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 刑事事件といいますと、被疑者が逮捕とか勾留などというイメージが強いのですが、全ての刑事事件の被疑者が逮捕されるわけではありません。
 逮捕されないで裁判を受けるケースもあります。
 これを「在宅事件」といいます。
 10年くらい前は、業務上過失致死(つまり死亡事故)のみのケースで逮捕・勾留されるというケースは少なく、ほとんどが在宅事件(逮捕も勾留もされない処理方法)でした。
 つまり、被疑者を逮捕せず、警察は事件を検察に送致するという手法です。
 この在宅事件での処理方法だと、事故から起訴まで1年くらいかかることも珍しくありません。
 現在、千葉県警の扱いでは、業務上過失致死は原則逮捕に傾いているようです。そして、裁判所も勾留を認める扱いが増えてきているようです。
 
 ここで、逮捕と勾留の違いについて触れておきますと、
 逮捕というのは、一番最初の身体拘束です。警察がすることが多く、警察が逮捕した場合、逮捕したときから48時間(つまり2日間)以内に検察官に事件を送致しなければなりません。
 検察官は、被疑者を釈放するか、さらに身体を拘束するか検討し、後者の場合は、裁判官に勾留請求をします。
 裁判官が勾留を決定すればさらに身体拘束が続くことになります。
 検察官は、被疑者が勾留されてから、最長20日の間に起訴するか否かを決めなければなりません(事件が軽ければ10日間のケースもありえます)。起訴しない場合は、釈放されます。起訴された場合は、勾留が起訴後も続くことになります。

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交通事故刑事事件の基礎知識(はじめに)

2005年11月25日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 これまでは交通事故民事裁判の用語を解説してきましたが、本日からしばらくの間、交通事故刑事事件の基礎的な知識について解説していきたいと思います。
 民事裁判よりも刑事事件の方が先行することが多いですし、刑事事件の記録が民事事件でも使用されることが多いことから、刑事事件の流れやどのような証拠が作られるのかということをお分かりいただけた方がよいと思うからです。

 刑事事件は、刑事の処分を決めるためのものです。
 交通事故を起こした行為が「犯罪」に当たらなければ、刑事事件にはなりません。
 交通事故で問われることの多い犯罪は、
  被害者が怪我を負った場合は→業務上過失傷害
  被害者が死亡した場合は→業務上過失致死
です。
 なぜ、「業務上」という言葉を使用するのかというと、「過失傷害」という犯罪もあるので、それと区別するためで、「業務上過失傷害」の方が法定刑が重いですから、業務上であるか否かは重大な区別なのです。
 車を運転することは「業務上」にあたると考えられていますので、車を運転して事故を起こした場合は、業務上過失傷害になります。
 自転車を運転した場合は、「業務上」にあたらないと考えられていますので、自転車に乗って人に怪我をさせた場合は「過失傷害」となります。
 もっとも、その過失が重大であれば、「重過失傷害」となって、業務上過失傷害と同じ法定刑になってしまいます。

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